冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

Jazz現代の名盤 その26

2011-06-25 19:20:49 | 息抜き
週末息抜きシリーズです。息抜きにならないくらい重いアルバムですが。

No Beginning No End。アメリカ東海岸のピアニスト、ケニー・ワーナー渾身の作品です。

最近買いました。このCD。感動しました。感涙もの。この手の音楽で心震わせられたのは久しぶりです。
ワーナーは技術も高く、白人らしい理論家ピアニストであり作曲家なのですが、どうも器用貧乏というイメージが一般には行き渡っているようです。
しかし、私がこれまで買ったアルバムは、すべて素晴らしいものだと思います。特にこの盤は美しい。
悲しさが美しい。

交通事故で娘を亡くしたことがモチーフになっています。
ワーナーの書いた詩、"No Beginning No End"をもとに、組曲として作られています。
単純なピアノアルバムではありません。ワーナーのピアノ、友人であるJoe Lovanoのテナーサックス、管を中心とした楽団、そしてワーナーの詩を歌うJudi Silvano。

詳しくはCDについているワーナー自身による説明を読まれるほうがいいと思いますが、このアルバムが作成されるにはある種の霊的な力が後押ししたと思わざるを得ないものがあります。
ワーナーが仏教に理解があるのかどうか分かりませんが、詩からは西洋的なものよりも東洋的な生死感すら感じられます。
詩の一部をここにご紹介。

No beginning no end,
No such thing as loss.
The voices say,
That we are never lost.

Family of souls
Share a love sublime.
They play throughout the universe
And beyond all space and time.

Life is not a start,
Death is not an end.
There is no loss
To the God of time.

子供を突然喪う親の思いは、子供のいない私にはとても理解しきれるものではないと思います。
そんな経験をせざるを得なかった音楽家によって生み出された奇跡の1枚。

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Jazz現代の名盤 その25

2011-06-19 20:12:24 | 息抜き
前にもご紹介したことのあるアメリカのサックス吹き、Branford Marsalisの作品をもう一つメモしておきます。

The Beautyful Ones Are Not Yet Born。1990年代初めのころの作品で、私がこのブログでメモしているJazzアルバムの中では古いものです。一番古いかも。

何となくJazzって格好いいかもしれないけど情報が少なく、どれを聞けばいいかわからなかった学生時代。
お金もないので片っ端からCD買うこともできないし、今のように曲をダウンロードしたりネットで試聴したりできなかった時代。
自分の好きなロックのアーティストのアルバムに参加していたBranfordなら安心、ということで買ったものです。
ここから私のJazz遍歴が始まった訳で、個人的には大切なアルバムなのです。

全8曲、最短が7分48秒、最長が13分42秒とどれもボリュームのあるオリジナル曲で編成されています。
ピアノレスのトリオ作品で、ドラムは今でもバンドを組むJeff "Tain" Watts. ベースはこれまた長くバンドを支えたRob Hurst。強力な布陣です。
渋い主旋律で幕を開く1曲目の"Roused About"は複雑なリズムの変化ををサックスとベースが軽くこなし、ドラムが脇を固める感じ。音楽の難しいことは抜きにして、聞いているだけである種の高尚なものを感じるはずです。
2曲目の"Beautiful Ones Are Not Yet Born"は後年のバラードの名手ぶりにつながるような趣もありながら、実に即興性ある内容。3人の演奏は緊張感に満ちながらも遊び心がある感じで面白い。
4曲目の"Cain & Abel"では弟のトランペット奏者Wynton Marsalisとの共演となり、2人のタイプの違いが感じらるのも面白いです。

とにかく丁寧に作られたアルバムという印象で、聴く側も真剣に音楽に対峙することを求められているような気がします。

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Jazz現代の名盤 その24

2011-06-11 20:31:17 | 息抜き
ソユーズが国際宇宙ステーションに無事ドッキングしたので、宇宙のジャケットのこの一枚を。

Oceans in the Sky。アメリカの大ベテランピアニスト、Steve Kuhnのトリオ作品です。この人日本でもかなり有名ですよね。CD屋さん行くとアルバムもいっぱい売ってる。

私は実はKuhnのアルバムはこれしか持っていません。
何となく理屈っぽいイメージがあって敬遠している感があります。がちゃ目ではないものの、サルトル的な風貌もあまり好感が持てない、とか無茶苦茶書いていますが、このアルバムは夜、しっとりと聞くのによいです。
ただ優しい旋律なのではありません。むしろ、2曲目のLotus Blossom、5曲目のOceans in The Skyなどはテンポもよく、力強い演奏に仕上がっています。ベースも渋い。
一方、理屈っぽい部分も、ドビュッシーの曲が上手に組み込まれていたりすると、とても良いいものです。
Kuhnは1938年生まれということで、このアルバムは1990年にパリで録音されているということは52歳。かなり老成された、計算されたアルバムになっていると思います。

これからジャズを聴いてみたい、特にピアノの演奏に興味がある場合には、この1枚から入るのも悪くないのではないかと思います。
前衛的で毒のあるフランスジャズや、叙情性の極みで迫力に欠ける一部のエヴァンス派のアルバムよりは、バランスもよいし何より手に入りやすいでしょう。

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Jazz現代の名盤 その23

2011-06-05 07:24:06 | 息抜き
週末息抜きシリーズです。

A Magyar / The Hungarian / Die Ungarische。自らレコードレーベルを主催するピアニスト、Joe Haiderのトリオ作品です。スイスのお方ですね。スイスはいいピアニストが散見される国です。

このHaider氏、実際にお幾つなのかは知りませんが、写真で見るとかなり高齢に見えます。
しかしながら、まだまだ演奏は(多少運指の怪しいところが2曲目などに感じられるものの)健在。楽曲がよろしい上に渋みと重厚感を感じるプレイで、このアルバムはかなり楽しめます。
メロディ的にも分かりやすいというか、変に凝ったテクニックを披露しようというような年でもないのだと思いますが、万人受けするとまでは言わないまでもかなり多くの人が普通に好きになる演奏ではないでしょうか。
全8曲、どれもある程度時間も長めで比較的しっかりした構成を持った曲で、聞き応えありです。

1曲目の"A Magyer"は、ハンガリー人という意味ですが、なかなか渋い。ハンガリーは私が旅したことのある国の中でも特によい思い出の多い国で、この曲は歴史ある国の知性あふれる人々を思い出させてくれます。骨太な演奏、そして力強さを感じる、ストーリー性のあるメロディ。
3曲目の"Tante Nellly"は低音のリズム的な旋律と高音域の主旋律がストレートに絡んで迫力あり。ベースもドラムも十分活躍。
5曲目の"Moving out"は曲の頭の大胆なメロディで引き込まれる。その後は軽めのメロディで楽しい。2曲目の"A Moment in Montreux"も軽めのメロディがいい。優しいというより楽しい。

それにしても2000年代はピアノトリオの作品が強い。特にヨーロッパ。
Brad Mehldauのように日本でも有名な若い才能が開花しただけでなく、北欧東欧のピアノトリオブーム、そして今回ご紹介のJoe Haider のようなベテランまで、幅広く良盤が出ました。
まだまだ数週間はヨーロッパのピアノトリオ作品についてのメモを、しかも演奏者をダブることなく続けられそうです。
まあ、贔屓のプレーヤーのアルバムはそろそろ2枚目の紹介もしたいところではありますが。。。

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