冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

Jazz現代の名盤 その38

2011-09-25 20:30:15 | 息抜き
本格派ピアノトリオ作品をいってみましょう。

DEVOTED TO YOU前にも一度ご紹介した、実力派ピアノ弾きのJoel Weiskopfのトリオ作品です。この人のピアノはまったくもって演奏完璧ですね。
加えて、BaseにJohn Patitucci、DrumsにEric Harlandというこれまた強力な布陣です。
2人とも豪腕。随所に強力リズム陣のパワーが炸裂してそれはそれは楽しい。

前にご紹介したアルバムは2002年の作品で、今回のものは2007年。
5年の歳月を経て、演奏の完成度は上がっています。楽曲は今回もすばらしい。
重厚感よりもテンポで聴かせるタイプと思いますが、これだけ曲の完成度が高いといろんな感動が呼び起こされます。
スウェーデンのLars Janssonのトリオも知的で美しい旋律を確実な技術で聞かせますが、Joel Weiskopfの方が更に躍動感があり、即興性もあると思います。

演奏は極めて知的。自作曲以外へのアプローチも変化球ではなく、率直に自分のスタイルと融合させて美しく昇華しています。
自作でない分気負いがないのか、演奏を楽しんでいるような感じです。
8曲目のWondrous Loveは情感たっぷりで聞き応えがあります。
9曲目のA Mighty Fortress はテンポがよく、聞いていてとても楽しい。

そして自作曲が素晴らしい。1曲目のBeauty for Ashes は11分の長めの曲ですが、時々これだけを聞いて寝ることもあります。
とにかく完成度が高い。演奏はもちろん、トリオが映える楽曲。そしてダイナミックさとリリカルさが同居していることが何よりも魅力でしょう。
ちなみに、この曲聞いていると完全にジャズですが、サンバのリズムを取り入れているということです。
2曲目はアルバムタイトル曲ですが、Weiskopfの彼女に捧げた曲だとのこと。その女性をイメージしているということですが、軽快で楽しい感じでいいですね。でも知的ですよ。なかなかいい彼女なんではないでしょうか。まあ、どーでもいいですが。
3曲目のGiving Thanksも、曲名からわかるように極めてポジティブ。でも、馬鹿みたいにはしゃいだりしません。あくまで知的なメロディとトリオの協力による高度な演奏でそれを表現しています。

どの曲も難しさや暗さとは無縁。非常に聞きやすく、同時に高いレベルの音楽がもたらす楽しさがあります。
ちょっと変わった表現であえて形容すると、生命力ある感じですかね。
お彼岸も過ぎて、これからの秋の夜長によいのではないでしょうか。

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Jazz現代の名盤 その37

2011-09-16 21:03:23 | 息抜き
週末息抜きシリーズです。Long weekend前の金曜ですが。

Cardinal Points。フランスの前衛的ピアニスト、Jean-Michel Pilcの作品です。

この人、来日したときにはライブを見に行くなどして、一時は私の相当お気に入りのピアニストでした。
ライブ会場ではサインもいただきました(ミーハー)。
何せ思い切りがいい。超斬新で、パワフルな演奏をします。毒気たっぷりで、単純な即興性とかジャズらしいグルーヴなどを超えた恐るべき存在でした。
ところが、このアルバムの後くらいから急に失速。どうにもパワーが空回りするようになります。
やはりトリオの構成メンバーを変えたのが問題だったのでしょうか。
このアルバムまでは、Froancois Moutin (base), Ari Hoenig (drums)という、これまたちょっと癖のある演奏も難なくこなす強力なリズム陣に支えられていたのですが、このユニットをやめてからはどうも面白くないというか空回りが目立ちます。
まあ、そんなことはどうでもいいです。このアルバムまでは強力でしたから。

アルバムは、物語のような構成になっています。
1曲目から8曲目までと、その後4曲(この4曲はTrio Sonataという完全な組曲)。
私は特に前半の8曲の前衛ぶりが好きです。ライブではそれが一気に爆発していましたが、予想不能の即興性と驚くまでのテクニックに支えられた演奏は、聴いてきて気分のよいものです。
パワーと即興性は私が好きなジャズの要素ですが、それを十分感じさせてくれます。
そして、これはPilcというピアニストのマイナス面にもなり得るのですが、自信たっぷりで嫌味な知性を感じさせるメロディ。
元物理学者という経歴のフランス人ですから、このピアニストは一筋縄ではいきません。

いろいろ書きましたが、タイトル局のCardinal Pointsなどは比較的分かりやすいメロディで、聞きやすいと思います。
リリカルなだけのピアノトリオに飽きてきた方、ちょっと趣味の幅を広げるつもりで聞いてみるのもよいのではないでしょうか。

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Jazz現代の名盤 その36

2011-09-11 21:26:16 | 息抜き
今回はリリカル(?)なヨーロッパのピアノトリオを。

Seaward。イタリアの大御所、エンリコ・ピエラヌンツィの作品です。

最近はラテン音楽のアルバムを出したりしているようですが、どうなんでしょう。
この人の強みは、リズム主体の音楽よりも、やはりヨーロッパの古典的美意識を連想させる美しいメロディだと思いますが。

それはさておき、このアルバム、96年の発売ということですでに15年も前のものになるのですが、今でも活躍する大御所ピアニストの大傑作だと私は認識しています。
耽美的なアルバムについてはFaithfulなどいくつか書いてきましたが、これは耽美的というより審美的ですかね。
ただ美しいだけではない。ちょっと先鋭的なところも交えて、実験的とも思われるメロディもあります。でも基調としては美意識がしっかりと存在している。
ある種の探究心のようなものを感じます。

1曲目のSeawardは美しく物悲しい旋律で、気分が高ぶっている時など泣きたくなるようにすらなります。この曲の路線だけなら耽美的なアルバムという感じだったかもしれません。
ところが、3曲目はちょっとリズムが複雑で、美しいメロディだけでなく、変則的な曲としてのリリシズム(そんなものがあるかどうか知らんが)をピエラヌンツィ流に表現したという感じです。そして、美しいだけでなく強く、即興的です。それは4曲目で大きく花開き、極めて滑らかな演奏ながらパワフル。グルーヴ感に満ちています。でも、底流にあるのはヨーロッパ的なイメージで、とても審美的。
後半もオリジナル曲を中心に、基本的に美しいメロディを展開。しかし8曲目ではまたもトリッキーな曲で、一筋縄ではいきません。
それでも、最後の11曲目はヨーロッパの町並みを想像させるような美しい曲で終わります。

いずれにせよ、安心できる美しさと同時に退屈させない面白さが同居しているということで、綺麗なものだけが好きな場合にはあまりお勧めしません。
しかし、最初に書いたようにこのアルバムは傑作だと思いますし、綺麗なだけのものに飽き足らなければ強くお勧めです。
Needless to sayであるのは分かった上で念のために一応言っておきますが、演奏はリーダーのピアノはもちろん、ドラムとベースも含めてバカ上手です。

ちょっと話は外れますが、音楽というのは人の記憶と結構結びつきが強いようで、私もこのアルバムを聞くといろいろと思い出すことがあります。特に1曲目は。
実は必ずしもいいことばかりが思い出されるわけではないのですが、人生の一部として切り離せない記憶ですからね。
そういうアルバムはなぜかイタリアのピアニストのものに多いような気がしますね。
やはり情熱の国なんですかね。深く感情に刺さるものがあるんでしょうかね。

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