冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

北アルプス表銀座逆縦走 その3

2017-09-28 20:02:48 | 旅行

早朝にヒュッテ西岳のテント場を出発後、大天井岳に到着。この素晴らしい展望台で自撮りなどもして十分楽しんだら、山頂を後にして縦走を再開します。ホント、人の少ない静かな山頂で、これだけの景色が楽しめるのはとてもお得ですね。大天井岳は100名山には選定されておらず(200名山ではある)、山頂も10分程度とはいっても縦走路から外れているから人気が今一つなのでしょうか。標高も2,922メートルとかなり高くて威厳のあるいい山だと思いました。
さて、逆縦走再開。大天井岳から燕岳までは3時間40分ほどのコースタイムで、途中に大下りという大きなアップダウンがありますが、既にこの程度のアップダウンはこの縦走中に出てきているのであまり気になりません。それより、東鎌尾根のようなやや厳しいハシゴやガレた道ではないということで、標高差はともかく歩きやすそうなので安心です。下の写真のように、これから行く道をパッと見たところ、休憩をかなり長く取っても3時間はかからないように見えました。


ウラシマツツジの草紅葉は始まっていました。これにチングルマやイワベンケイが加わると、真っ赤になって綺麗なんだよな。


なお、進行方向左手には黒部・裏銀座がずっと見えているという贅沢な道です。


この画像で縦走路を見るとよく分かるのですが、道はとてもなだらかですよね。そして、方向的に左手に黒部・裏銀座が見えるというパラダイスコースです。前日の東鎌尾根もそうですが、アルプスの縦走路は岩が多かったりガレ・ザレで注意を要する部分が多かったりするものですが、表銀座の大天井岳~燕岳の間は極めて歩きやすい縦走路でした。


振り返ると大天井岳と槍ヶ岳。






黒部・裏銀座もずっと美しい。


お花は相変わらずオヤマリンドウなどが中心です。基本的に花より景色を楽しむ山行ですね。9月になると。






さて、燕岳までのルートで最後の頑張りどころ、大下りです。どちらの方向から歩いても、いったん200メートルくらい下って登り返します。時間的には相当いいペースで来ているので、その前に水を補給しつつ景色を楽しみます。








花も草紅葉も悪くないです。






なお、ここでドイツ人の若い男性旅行者と遭いました。京都や東京より、日本の山岳風景に興味があって旅行しているとのこと。こういう旅行者増えましたよね。ネットで情報が伝わっているのです。2年前に黒部五郎小舎でもスイス人男女4、5人のパーティと会話したし、鬼怒沼ではテント or 監視小屋泊した5人のうち2人はフランス人だったし。
さて、十分休んだら大下りを越えていきます。燕岳が近づき、花崗岩質の土壌になっているのが分かります。奇岩も増えてきました。




そして、大下りの登り返しもほぼ終わるころ、ライチョウさんの親子に遭遇です。晴れている日は警戒してなかなか出てこないライチョウさん。この日は大きく育った2羽の雛と母鳥が出てきてくれました。ありがとう。






その後もサクサク進んで、人気#1山小屋と名高い燕山荘に到着です。早速テントの受付をしました。700円。水は1リットル200円の別売りです。この時点で12時頃だったので、時間的には十分下山できるのですが、月曜も特に予定がなかったので山の中でテントを張ってまったり過ごすというプランです。働き過ぎを改める生活スタイルを意識しています。


小屋の前から見る燕岳。とても人気のある山ですね。これまで色んなウェブサイトで紹介されている写真を見てきましたが、本物は初めて。第一印象は、意外と小さいということでしょうか。


2時までランチをやっているということなので、せっかくなら評判のよいランチも体験しようと思い、サッサとテントを張って山頂往復を済ませてしまいましょう。テント場からは場所によっては山頂も見えてよいのですが、トイレが非常に旧式で臭いがきつかったのがマイナスイメージ。燕山荘は小屋が立派だし、サービスにも相当お金をかけていると思うのですが、テント場トイレも改修するか、古いタイプならせめて大量の芳香剤で対応して欲しいです。南アの大門沢小屋みたいに。


まあ、それはともかく、山歩きを始めて5年目にして初の燕岳です。槍ヶ岳もそうでしたが、人気があって混む山を露骨に避けていましたね。でも、やはり綺麗で絵になる山だと思います。大町側からちょっとガスが出始めましたけど。


途中にある有名なイルカ岩。観光スポットを押さえます。


振り返ると槍ヶ岳が見えます。大分遠くなりましたね。1日半歩いてきていますからね。雲が信州の大町側から上がってきて、稜線を越えると西側からの風で押し戻されているのが分かります。


イルカ岩と槍ヶ岳のコラボ。


途中、コマクサの群生地があり、幾つか比較的形の良いものが残っていてくれました。




メガネ岩も観光スポット。これに登らないようにという注意書きがありました。


山頂が近づいてきました。花崗岩質の山は、鳳凰三山や甲斐駒ヶ岳など、イケメン系が多いですね。燕岳は北アの女王ということで、女性的とされるようです。


やはり鳳凰三山に似ているように思う。それは禁句なのだろうか。


そんで、サクサク進んで山頂です。


北方には登山道が続いていて、北燕岳を経て餓鬼岳・唐沢岳に至ります。そっちはかなり厳しい道だと聞きます。


槍ヶ岳方面を振り返ります。見える角度が全然違いますね。ここからだと、沢の刻んだ深い谷が印象的です。


水晶岳、裏銀座方面も見え方が違う。


山頂には続々と人がやって来ます。数時間前に独占していた大天井岳の山頂とはえらい違いだ。邪魔になっても悪いし、燕山荘でランチを食べたかったので暫く楽しんだら山頂を後にします。戻る途中で見つけた小鳥さん。イワヒバリでしょうか。


ナナカマドはここでも実だけ赤くなっていて、紅葉はまだ。お彼岸を過ぎた9月後半からが見頃でしょうね。


燕山荘に戻って食堂です。この清潔さと広さ。さすがに噂通りの下界レベル。


カツカレーにしようかと思いましたが、自分の担いでいる食料もまだ結構残っていたので、軽めのチキンカレーにしました。普通に美味しかったです。鶏肉は柔らかかった。柔らかすぎて骨から離れて崩れていることもなく、丁度よい感じ。ご馳走様です。


燕山荘のケーキは有名ですが、小屋の裏手のテラス席では多くの人がビールや紅茶・ケーキセットなどを楽しんでいました。まあ、私も誰かと一緒に来ていれば頼むのでしょう。一人だとちょっと寂しい瞬間ですね。


午後3時10分頃から30分間ほど、ブロッケン現象が見られました。山歩きを始めて5年、初めて見ました。東側から雲(ガス)が上がり、西側から太陽がある角度で差し込むと見られるらしいです。もちろん、方向は東と西と逆でもいいのでしょうけど、夏雲が上がっている午後の方がチャンスは圧倒的に多いでしょうから、太陽が西にいるタイミングなのでしょうね。




これで人生初のオコジョにでも会えれば完璧でしたが、それは叶いませんでした。この後は夕焼けに期待したのですが、残念ながらこの縦走では朝夕のお日様には微笑んでもらえませんでした。丸い大きな夕日は見られず、当然夕焼けもなし。徐々に山々の色が青から黒く変わっていくのを眺めていました。それでも、迫力ある山々なのでとてもいい景色ですけどね。
槍ヶ岳方面と黒部・裏銀座方面。




拡大すると迫力の槍ヶ岳。


水晶岳。


野口五郎岳。


燕岳。


ちょっとずらして、奥に見える立山と一緒に。


立山から見える景色は少し焼けているのでしょうか。8月に縦走した懐かしい山域です。


これは逆側の後立山連峰。こちらも鹿島槍ヶ岳辺りから見る景色は焼けているのかな。


最後に、夕暮れ時で青っぽくなった燕岳。


ということで、夕焼けは残念でしたが朝日に期待して就寝です。で、翌朝。これも夕暮れ時と似たようなパターンでした。全体的には晴れているのですが、雲が地平線というか太陽の出るところに薄い層を作って滞留している感じで、綺麗な丸いご来光は拝むことができませんでした。当然朝焼けもなし。テント場の東側に雲海ができていて格好いいですが。


後立山方面は雲海をまとっています。


そして槍ヶ岳。


太陽が上がってくると思われるところはオレンジ色になりつつあるんですけどね。これ以上のパフォーマンスがない日でした。


だいぶ明るくなってきてしまい、もう実質的には夜明けで太陽が昇っている時間です。綺麗な朝日は拝めず。諦めて最後に燕岳を臨む。


同じく、諦めて最後に大天井岳と槍ヶ岳を臨む。表銀座逆縦走の見納めです。






テントを撤収し、下山です。麓の中房温泉は幾つかの施設があるようで、8時過ぎには入れる温泉もある模様。下山に3時間はかからないと思うので、6時前にはに出発しました。燕山荘の直下のお花畑は、秋の花であるアザミなども既に終盤。この後二週間ほどで紅葉が本格的に始まったようです。見頃は9月末~10月の第一週なのだと思います。


テント場直下も秋の色が濃い。


下山途中、餓鬼岳方面の縦走路が見えました。確かに険しそうだ。




大天井岳も。この山は常念岳のように安曇野の町から見えないし、槍ヶ岳のような圧倒的な格好良さもないのだけど、コマクサも咲いていたし展望台としてもいい所にあるし、もっと人気が出もいいと思う。


下山路は、合戦小屋までは極めて歩きやすい。と言うか、全体的に歩きやすい。登山者が多くてよく踏まれているせいでしょうね。時々花崗岩質の山らしいえぐれた部分が出てきますが、滑りやすい岩や石の道ではないので危険はほぼ皆無。




標高が低くなってきて樹林帯に入るとさすがに暑いし、展望もないし、登ってくる人がとても多くてすれ違いが大変だったりしましたが、全体的には特に問題なく下山しました。それにしても、翌日の天気予報は激しい風と雨だったと思うけど、明らかに日帰りではない団体とか結構多かったです。皆さん、アグレッシブですね。樹林帯はクロベと思われる針葉樹が多く、標高が下がってくるとシラカバなどの広葉樹が増えて紅葉や新緑の時期は綺麗だろうと思わせてくれました。苔も意外なほど多かった。








で、8時10分頃中房温泉の登山口に下山し、温泉です。日帰り温泉施設の湯原の湯。700円だったかな。


露天風呂だけの小さい施設でしたが、他にはもう一人の下山者がいただけなので余裕を持って入浴できました。




帰りは、乗り合いタクシー(バス)にて穂高駅に出ます。1,700円。


交通費を浮かせる&シートが比較的楽なので、高速バスで松本から新宿に帰りました。そのため、昼食は松本で。Twitterなどでも時々登山者の方が下山後に利用されている投稿がありますが、松本から揚げセンターにて山賊焼き定食+ミニ鶏ラーメンのセットを頼みました。まったくミニではなく、完全にラーメン1杯とガッツリ山賊焼き定食だったので苦戦しましたが、ちゃんと完食しました。美味しかったからね。


表銀座縦走路が人気なのは納得ですね。燕岳も、規模感では鳳凰三山などに劣ると思いますが、花崗岩質の山独特の美しさが際立ちます。大天井岳へのルートは歩きやすい絶景ルート。大天井岳そのものが名山だと思うし、そこから東鎌尾根を槍ヶ岳までは、それなりに歩き甲斐もあるし何と言っても槍ヶ岳がイケメン。距離的にも、普通は2泊で十分でしょうし、健脚なら1泊でも可能でしょう。今回は逆走なのでちょっと勝手が違いましたが、それでも十分楽しめました。北アルプス、来年は裏銀座に行けるといいと思います。

秋の夜長にDVDで映画鑑賞 リドリー・スコット監督作品を2つ

2017-09-26 21:39:58 | 息抜き
英国人映画監督のリドリー・スコット(Ridley Scott)。エイリアンやブレイドランナーなどの往年のSFの大名作や、松田優作、高倉健らが出演したブラックレインなどで知られるハリウッドの大監督です。が、こういったある意味で古典と言えるような作品だけ終わっているのではなく、最近までずっと作品を作り続けている人でもあります。それでも、昔の作品に比べるとそこまで話題性もなかったせいか、この15年くらい彼の作品を見ていませんでした。映画館でもDVDでも。それが、今年は2作品をDVDで見ました。まあ、たまたまなんですが。1つは「オデッセイ」(原題 The Martian) でもう一つは「テルマ&ルイーズ」 (原題 Thelma & Louise) 。オデッセイの方は2015年の作品で、DVDになってからまだ時間もあまりたっていません。アカデミー賞にもノミネートされ、興行的にも成功した作品です。こっちが話題になっていたのでレンタルで借りて見て、良かったので全然違うモチーフの作品なんだけど有名なテルマ&ルイーズも後から借りてみたというわけ。結論的には、両作品ともお勧め。秋の夜長に見てもよいと思います。

オデッセイは、マット・デイモン主演の映画で、私の評価としては彼の好演というか彼の役がとてもよかったと思う。絶望的な状況設定なのですが、常にポジティブというかしぶとい。リドリー・スコットのSFにはこうした人が映えるような気がする。また、テンポがよい。NASAなどの大組織の論理や国際関係、科学者の立場やチームワークなど、どれも古典的というかありふれた要素が詰め込まれていて、ともすればありきたりのストーリーで退屈になってしまうところだと思う。が、そこはテンポよく、小気味いいセリフなどで話がダレることなく進む。アメリカ映画なのでハッピーエンドを約束されていると思いつつ、最後まで飽きさせない。エイリアンやブレイドランナーの時代に比べると、流石に科学に対する理解も現代的で、少なくとも科学者ではない私にとっては十分楽しめた。そして、基本的に本当に悪い奴が登場しない映画。これは精神衛生上とてもよろしい。

テルマ&ルイーズは、SFとは関係ないアメリカ人女性二人のロードムービー。しかも別に若くはない。アーカンソーいう南部のド田舎に住む二人の女友達。おっとり型の主婦テルマには相性の良くない夫がおり、現実派のルイーズはある理由もあって独身。一晩二人でバケーションに出たらアクシデントによって殺人を犯してしまう。そして、出頭せずに逃避を選んだことでさらにアクシデントが重なる。その過程で二人の言動にも変化が出てくる。これもとてもテンポがよい。あり得ないような話だけど、十分あり得るアクシデントなので臨場感がある。ちなみに、若い時のブラッド・ピットが出ていて、女性から見るとお宝映像らしい。私としては、ハーヴィ・カーテイルやマイケル・マドセンが重要な役で出ていて嬉しい。登場人物は多くないのに、とても印象に残る役が多いと思う。91年の作品とは思えない。心理描写は全然古くない。ラストシーンは伝説になったのだと思う。DVDでは、監督自身の解説を踏まえた映像があるので、それを見るといろいろ考えさせられて面白かった。

一応、Amazonのリンクを以下にのっけておきます。

オデッセイ


テルマ&ルイーズ

北アルプス表銀座逆縦走 その2

2017-09-24 20:00:58 | 旅行
快晴の槍ヶ岳山頂を楽しんだら、縦走に出発です。東鎌尾根と呼ばれる切り立った尾根を行くのが表銀座。まずは北アルプスらしいガレた道を慎重に下ります。その前に、槍ヶ岳山荘付近からの景色を数枚。まずは槍ヶ岳の穂先と小槍。よく、アルプス一万尺の歌で「小槍の上で踊りましょ」ってのが不可能だと言われるやつ。


黒部方面と槍沢方面の眺め。




始まったばかりの草紅葉。イワベンケイもウラシマツツジも真っ赤になって、他の葉も黄色や赤に染まって岩峰を彩るのでしょう。




さて、まずは東鎌尾根をヒュッテ大槍という別の山小屋の方に降りていきます。その途中、イワヒバリと思われる小鳥さんがたくさん。ライチョウさんはハイマツすらない岩岩しいところには出てこないですが、この手の小鳥さんは多いですね。


ちょっと下った所から槍を見上げる。やはり尖った山頂は大迫力だ。


槍沢を挟んで対岸に当たる面の尾根。北アルプスらしい風景。


更に下って槍ヶ岳を見上げる。ある程度下から見上げた方が、標高の高い大岩峰の迫力が出ますね。稜線も視界に入るし。


バリエーションルートの北鎌尾根方面。ギザギザだな。こりゃ挑戦しなくていいや(そんなスキルない)。


進行方向です。正面の緑が濃いのは西岳。槍ヶ岳の3,180メートルから、いったん2,600メートルを切るところまで500メートル以上下ります。西岳山頂はルート上にはない(行くことはできます)ですが、標高2,758メートル。この日のテント場は山頂から100メートル弱低いところです。緑濃い山の少し右の所が平らになっていて茶色く土が見える部分がありますが、そこがテント場です。なお、左の赤茶けた平べったい感じの山が大天井岳。山頂は平らに見えるところがちょっと飛び出た部分なのですが、この時点ではそれよりやや左の尖がり(実際には東天井岳)が山頂だと思っていました。右奥の端正なピラミッド型の山は、安曇野のシンボルで有名な常念岳。


ナナカマドの実は赤い。これを猿が狙っているのでしょう。紅葉はまだ。


オヤマリンドウが多く見られましたが、基本的に閉じている花なので、いつもこんな感じ。まあ、濃い紫は上品なので、閉じている姿も気品を感じます。






少し下ると、左手に針ノ木岳を臨むことができました。高瀬湖も少し見えています。


左前方には燕岳の稜線も確認できます。甲斐駒ヶ岳などと同様の花崗岩質なので、山頂付近が白くて目立つ。燕岳は人気の山で、数々のブログやヤマレコで山頂写真も見ていますが、思ったよりも山頂は尖っていない、と言うか、平べったくて山頂が目立たないですね。


槍ヶ岳を振り返る。槍は縦画面の方がいいのではないかと思い始め、この後何枚か縦画面で撮っています。なお、お分りかもしれませんが、見えている槍ヶ岳の山頂シーンはこの日の朝に登っていた槍沢から見えるシーンとはアングルが異なります。槍沢から見えるのはこの写真の左端からさらに左の面です。縦走することによって、槍ヶ岳のことなる顔を見ることができます。


ところで、写真の左側は下りてきた道ですが、意外と険しいのが分かるでしょうか。


東鎌尾根の登山道は、ハシゴがとても多いです。ハシゴというよりは木組みの急な階段のようなものもあり、これを下る場合はわざわざ手を使うほどではないのですが、タタタッとリズムよく下りないとバランスを崩して危ない感じ。事前に思っていたよりも険しい道でした。








下の写真は来た道を振り返っているのですが、切れ落ちた道やハシゴが多いのが分かるのではないでしょうか。


紅葉の時期ならば格好いい槍ヶ岳のシーンになったであろう写真。




右手を見れば、、、槍沢方面の対岸越しに見える岩峰は南岳かな。あるいは北穂高岳か。こっちには縦走したことがないので、山の形がよく分かっていません。間違っているかも。




下を見ると、前夜にテントを張ったババ平のテント場が見えます。


西岳、だいぶ近付いてきたけどまだまだ遠く感じる。


針ノ木岳。好きなので見えると写真に収めてしまう。


ウメバチソウとオヤマリンドウ。珍しく少し花が開いていました。






それにしても、こんな感じでちょっと嫌な感じのところが次々に出てくる。まあ、稜線の岩岩しい道と違って、常にこんなところな訳ではないです。普通の土の道も当然多いのですが、随所にプチ難所が出てくるので意外とペースが上がりません。テント場まで3時間と踏んでいましたが、3時間20分かかりました。体力的にも、後半は結構しんどく感じました。






再び槍沢を見る。深い谷っていい感じだと思いました。


再び紅葉シーズンだったら格好いいと思われる槍。


ヒュッテ西岳の少し手前で、ちょっと休憩的に振り返って撮った写真。歩いて来た東鎌尾根と、右に伸びる北鎌尾根。やはり槍ヶ岳は見栄えのする山ですね。スターでありアイドルですな。




ヒュッテ西岳に着く直前の登りでは、もの凄い獣の臭いがして緊張しました。標高的に熊ではないと思ったのですが、熊だったら避ける道幅なんか全然ないところなので。恐らくは猿の集団が近くにいるのだろうと思い、声を出しながら歩きました。ザックに着いた笛を吹くなどの手段もあるのでしょうけど、逆に相手を驚かせて急に目の前に出現されるのも困るし、行動の選択に迷うシーンでしたね。
そして、12時20分頃にヒュッテ西岳に到着。ここのテント場にテントを張ります。このテント場は幕営料1,000円なのはババ平と同じですが、トイレ使用料を別に取りますのでそれは注意ですね。あと、稜線なので水も1リットル200円です。まあ、それはともかくとしてここからの景色は一級品だと思いますね。






穂高方面は山頂にやや雲がかかっているでしょうか。


大天井岳、常念岳方面。


常念岳は格好いいですね。GWの残雪の時に登りたいのだけど、タイミングを逸しています。まあ、公共交通機関利用だと夏の上高地オープン時期以外には行きにくい山ですね。常念小屋も見えますが、パッと見たところあそこから山頂までは500メートルくらいあるんじゃないかな。山頂直下かと思っていたけど、意外とキツそうですね。


大天井岳だと思って撮った東天井岳(泣)。冷静に地図を見ながら景色を眺めれば、明らかに表銀座を外れて常念山脈の稜線にあると分かるのに。


この写真の一番左が大天井岳ですね。


この日はもうやることがないので、基本的に景色を楽しみながら他の登山者の方々とおしゃべりしたりして過ごしました。写真も何度も撮る。槍と槍沢。


槍沢拡大。この写真の右手手前のちょっと窪地になっている辺りが天狗池でしょうか。紅葉の名所ですね。背景に槍ヶ岳がバッチリ決まるという。


午後3時半頃からはガスがでてしまい、テント場からはほとんど何も見えなくなってしまいました。こうなると本当にやることないです。


その後はテント場で他の登山者の方と少し喋ったりしましたが、基本的におとなしくしていて夕食を作り、この日も早めに就寝です。翌朝はガスが取れることを願います。そして翌朝。星が綺麗に見えるほどには晴れていなかったのですが、全体的には悪くない感じでした。飛騨側は雲がなく、信州側は薄い雲がかかった状況。この日も月が綺麗でした。


信州側は朝日が昇ってくるので、徐々にオレンジ色になります。常念岳方面。


そして大天井岳方面。


槍ヶ岳も穂高連峰も、まだ日が当たっていないので冷たい感じです。




テント場の他の登山者がすべて出発してしまう中5時40分過ぎまでねばったのですが、東側に薄い雲が幾つかかかってしまっているので日の出の時間を過ぎても太陽が現れず、光が槍ヶ岳を照らすこともありません。全体的に空が明るくなってくるのですが、朝焼けはあり得ない状況。運が良くて昇ってきた太陽の光で岩稜がピンクやオレンジに少し輝く程度でしょう。諦めて私も出発しました。基本的には稜線を行くので、太陽が昇ればそこで止まって景色を眺めなおせばいいという発想です。




結果的に、歩き始めて10分としないくらいで日が昇りました。ちょっと開けたところから景色を眺め、写真を撮ります。予想通り焼けることはなく、オレンジに少し照らされるだけでしたが、それでも朝日に照らされる名峰の姿は美しいものです。どうせならあと10分テント場で待っているべきでしたかね。






鷲羽岳、水晶岳、裏銀座方面も照らされますが、穂高は山頂に雲がかかっていました。全体的に、この週末は穂高より槍の方がお天気に恵まれていたようです。




ザックと槍ヶ岳。


近くに咲いていたミヤマシャジン。




そして早朝は小鳥さんがたくさん囀っています。イワヒバリでしょう。素早いので写真には撮りにくいけれど可愛い。


コゴメグサがまだ咲いているのを見つけました。残ってくれているお花は愛おしい感じ。


進行方向、大天井岳です。この頃になって、やっと東天井岳と区別がつくようになったのですが、それでも大天井岳の山頂がどれなのかよく分からず。だって、3つくらいの小さい尖がり(ピーク)がどれも同じくらいの高さに見えるし。大天井ヒュッテと大天荘という2つの山小屋があるはずなので、それも見えると思ったのに確認できないし。


拡大してみても分からない。


実は、2つの山小屋のうち、こちらから見ると縦走路の手前にある大天井ヒュッテは、手前の緑深い小ピークを越えた先にある鞍部のようなところに建っているのです。この時点では分かりませんでした。手前の山を越えていったんちょっと下がって登り返すのが嫌だなと思っていた程度。


景色ですが、西側を見れば相変わらず黒部・裏銀座がよく見えます。


ここからは、しばらく森林限界を微妙に行き来するような感じで進み、ビックリ平という少し開けたところまで歩きます。標識を見ると大天井ヒュッテまで45分と書いてあるんだけど、ずっと見えていた3つくらいのピークのどれかの直下に小屋があると思っているので、どう考えても1時間半近くかかるのではないかと疑問を持つ。まあ、冷静に考えれば、見えていないところにヒュッテが経っている可能性が高いという話なんですけどね。


そして、ちょっと見上げると中央の尖がりの奥にさらに尖がりがあるようです。そこが一番高いようなので、大天井岳のサミットはあそこなのでしょう。


とにかく、まだまだ遠いと思いつつもお天気もいいし、景色もお花も楽しみつつ進みます。前夜は2,600メートルくらいの標高のテント場で休んでいるせいか体が高山に慣れている感じで体調もよく、歩行自体は順調でした。秋のお花の写真を撮る余裕も結構あった。








で、ガシガシ頑張って進んでいると、ビックリ平から30分ちょっとで急に大天井ヒュッテが眼前に現れました。これにはそれこそちょっとビックリしましたが、ここで冷静に状況を分析。地図も出して見直して理解しました。まあ、5万分の1の地図では分かりにくい地形でした。


大天井ヒュッテは槍ヶ岳山荘グループの山小屋で、毎日更新されるブログがとても丁寧です。朝焼けや夕焼けのシーン、星空、お花の時期にはお花の写真など、解説付きでとても楽しい。従業員の方の性格がうかがい知れるようなブログで、私は毎日のように読んでいるファンでした。そこで、宿泊者が出払ってお掃除などで忙しくされているスタッフから山バッジ(表銀座縦走・大天井岳となっているもの)を買い、ブログのお礼などを申し上げました。テント場がないので私が利用する可能性は高くないのですが、小屋泊装備で長期の縦走をするならよい山小屋だと思います。
小屋の近くには、ほんの数輪だけコマクサが残ってくれていました。


ここからは、大きな岩ではないので危険は少ないもののガレていてそれなりに斜度もある、一言でいえば疲れる道を45分くらい登ります。もう一つの山小屋である大天荘は、標高的にここよりはだいぶ上にあるようで、ここは逆縦走の場合体力的な頑張りどころの1つですね。まあ、少し疲れたら槍ヶ岳を振り返ればいいんです。前日歩いた西岳までの道とは見える角度がまた違って、東鎌尾根と北鎌尾根にはさまれた谷を正面に見る角度です。


お花は定番のイワツメクサが結構残っていました。イワツメクサはどこにでもあるし、いつでも咲いているイメージですが、よく見ると小さい星のような可愛い花で可憐です。


秋の主役のトウヤクリンドウも。まあ、実際にはトウヤクリンドウは終盤の株が多かったです。これは比較的形の良かったもの。


で、少し苦労しつつも8時20分頃には大天荘に到着です。やはり宿泊客は出払った後で、まだ縦走中の登山者もまばらな時間帯だったので静かでした。


ここで菓子パンを食べて簡単に栄養補給し、山頂に向かいます。菓子パンは日持ちするし、メロンパンとかカロリー鬼のように高いし、意外と嵩張らないしおにぎりみたいにザックの中で崩壊しないので、行動食として見直しています。さて、山頂には私の他に一人しかいなくて、その方も直ぐにいなくなってしまったので絶景の展望台を独り占めでした。


私の影が映ってしまって間抜けですが、ここにも祠がありました。


祠の向こうには黒部・裏銀座の山深いエリアが、まさに山が重なるように連なっています。


せっかく晴れていてよく見えているので、それぞれの名峰を拡大してみる。まずは裏銀座の野口五郎岳。


黒部の最高峰である水晶岳。裏銀座からの道と鷲羽岳からの道が交差するのが分かる。


その隣の百名山、鷲羽岳。


緑の稜線、三俣蓮華岳、双六岳。


ちょっと視線を右にずらすと高瀬湖も見えています。右手前の白い稜線は、これから進む燕岳方面です。


拡大すると燕山荘も分かりますね。




針ノ木岳。




そして槍ヶ岳。








穂高岳。




奥穂高岳を拡大。後ろにジャンダルムも見えていますね。


素晴らしい景色を独占して楽しんだら、いよいよ表銀座逆縦走の最終ステージ、大天井岳~燕岳の稜線に向かいます。このエントリが長くなっているので、いったんここで切って最終ステージは次のエントリで。

秋の夜長の読書 「インタビューズ」

2017-09-20 20:06:57 | 息抜き
久しぶりに本のご紹介。C. シルヴェスター編集「インタビューズ」。



文庫本で3巻になるので結構なボリュームですが、興味によってその一部を読むだけでもよいでしょう。1巻は19世紀末にインタビューというジャーナリズムの様式が確立された時期から第一次大戦前までの時期。2巻は第一次大戦からアメリカ黄金の1950年代まで。第3巻は変化と混乱の1960年代から冷戦後の90年代まで。インタビューに収録されている著名人を幾人か挙げると以下の通り。

1巻: マルクス、エジソン、セシル・ローズ、トルストイ、ウッドロー・ウィルソンなど
2巻: ジョルジュ・クレマンソー、アル・カポネ、ヒトラー、スターリン、フルシチョフ、ヘミングウェイ、ヒッチコックなど
3巻: ケネディ、毛沢東、マリリン・モンロー、サッチャー、ジョン・レノン、ナボコフなど

インタビューされる個人としてのインタビュー内容も興味深いですが、私が感じたのは時代の空気。質問の内容や話題だけでなく、部屋の様子やアポの取り方なども含めた背景描写なども含め、その時代の空気が感じられて勉強になりますし、面白いです。第一次大戦や第二次大戦、禁酒法時代や赤狩り時代、冷戦、ハリウッドの全盛期や文学の新たな潮流の時代など、生の声でそれが伝わってきます。
下手な歴史書より面白い。意外な人物の発言にとてつもない知性が閃き、著名な政治家や芸術家が驚くほど赤裸々に愚かな発言をしていたりするのも興味深いです。私は3巻から2巻、1巻と時代を遡って読みました。
私としては、最近は第一次大戦の歴史的な意義や第二次大戦後の世界の復興過程についていろいろと考えることが多いので、第2巻が特に面白かったです。

北アルプス表銀座逆縦走 その1

2017-09-17 16:33:37 | 旅行
好天が予報された9月の第2週末、これまで他の山から眺めるだけでその山頂にたどり着いていなかった北アの名峰、槍ヶ岳に登ってきました。実際にはそんなに長期の休暇がいつでも取れる訳ではないのに、どうせ槍ヶ岳に登るなら表銀座または裏銀座を縦走して登りたいとわがままなことを考えていたせいで、これまで後回しになっていた山です。
北アルプスに関しては今年は既に7月に白馬岳でウルップソウを楽しみ、8月初めには薬師岳から立山まで縦走しているので、実は槍ヶ岳の表または裏銀座は来年以降のプランにしようと思っていました。が、ある事情で使える時間に相当余裕が生まれたのと、槍ヶ岳のような岩峰はお花のシーズンが終わった後でも楽しめるという2つの理由からこの9月に決行となりました。そして、公共交通機関利用者としては何だかんだ言って一番アプローチしやすい上高地から入山することにしたので、逆縦走プランとなりました。あっ、裏銀座ではなくて表銀座を選んだのは、黒部方面は既に8月に至近の薬師岳に行っていたのと、裏銀座はやはりお花の綺麗な梅雨明け~盛夏に行きたいと思ったからです。表銀座の混雑地帯の燕岳も、この時期なら8月よりは空いていると思われたし。

で、結果的には朝夕のご来光・夕焼けは残念でしたが、日中の天気は風もなく最高で、槍ヶ岳を中心に北アルプスど真ん中の景色を楽しみながらテントでまったりという山旅ができました。まずは今回の山行のまとめ的な写真を数枚。











さて、9月8日の金曜日、朝6時5分にバスタ新宿を出発する高速バスで松本に向かいます。土日が天気図的に晴れが間違いないので、金曜のうちに入山してフルに週末を山で過ごすプランです。この高速バスに乗ると、松本バスターミナルを10:15に出発して12:00に上高地バスターミナルに直行してくれる路線バスに間に合うので、都合がいいのです。


金曜の午前までは雨または曇りの予報だったので実際に曇っていても心配はしていないのですが、やはりスタート時点の天気は今一つ。そして、松本でバスを乗り換えて上高地に入っても基本的に曇りのままでした。2014年の夏に前穂高岳~奥穂高岳を縦走して以来の上高地です。




そうは言っても日本を代表する高原・山岳観光地。気持ちのよい遊歩道を歩み始めます。この日は槍沢ロッジが管理するババ平のテント場まで、コースタイムで5時間ちょっとの道です(ロッジからテント場まで30分ほど離れている)。12時スタートで5時着だとちょっと遅いですが、コースタイムよりは早く歩けることを想定しています。


秋の始まりの時期で高山植物の盛りは過ぎています。そんな中、上高地ではサラシナショウマの群生が随所に見られました。大きな白い猫の尻尾のイメージ。




たくさんの茶色い蝶がサラシナショウマに群がっていました。蝶の名前は勉強不足で不明。


花では、この菊の花が薄紫で綺麗でした。ノコンギクでしょうか。


蝶ヶ岳かな。


サクサク歩いて徳沢に到着です。13時15分くらいだったので、かなり速いペースで歩けました。ちょっと休憩して水分補給。徳沢園名物のソフトクリームは今回はなし。上高地に下山する人が食べるべきものです。


次のチェックポイントは横尾です。横尾と言えば屏風岩。クライミングの対象ですが、私にとってはこの岩のてっぺん付近にある「屏風の耳」から見る穂高連峰の絶景シーン。山歩きを始めたばかりの2013年の紅葉シーズンに登り、これまでの山行すべてでももしかすると最高の景色かもしれないものを見られた場所です。


横尾はソフトバンクの電波が入る最後のポイントなので、金曜であることも踏まえてメールなどをチェックして身をきれいにしてから槍沢方面に向かいます。ここからは梓川もこれまでより川幅が狭くなりますし、梓川に流れ込む小さな沢が幾つか出てきて涼し気な道です。


一ノ俣という立派な橋のあるところ。沢に降りられるので水を汲んで飲むのと、手ぬぐいを濡らして汗を拭きます。時間的には、コースタイムの設定はかなり緩めで、実際にはかなり余裕を持って歩くことができると思います。


ここからは沢沿いを進みます。前日が雨だったとは思えないほど澄んだ水の流れ。




お花はぼりぼち。種類が少なくなっていました。この青紫の花は上高地からちらほら出てきました。コウシンヤマハッカという花らしい。


トリカブトやソバナなど、青紫の花が多いのは秋の特徴と言えるでしょう。




この白い花は不明。オオカメノキに似ているような気がするけど、時期が違うんじゃないかな。


あとは、菊の仲間と思われる白い花(ゴマナかな)やミヤマアキノキリンソウなどが見られました。ヨツバヒヨドリは終盤でした。そして、この看板が現れると、やっと道に明確な勾配が出てきて登山道らしくなります。


そして槍沢ロッジに到着。週末の好天を期待しているのか、ツアーの大きなグループもいて賑わっていました。早速テントの受付をして、30分ほど離れたババ平へ向かいます。ちなみに、幕営料は1,000円でトイレ・水場の利用込み。


それまでの道は基本的に平坦だったので、この30分弱の登りが結構馬鹿に出来ないくらいキツく感じました。途中、槍見と書かれたところがあったけど、地図で見るとカブト岩となっているところですかね。


で、テント場です。既に多くの人がテントを張っており、場所を選ぶ余裕はありませんでしたが、よく整地されたテント場なので問題なかったです。そして、トイレがとてもきれいでした。今まで利用したテント場では、徳沢園のキャンプ場以外では一番きれいだったように思います。整備されている槍沢ロッジに感謝。


次の日はコースタイム的には9時間くらいの道を行くので、この日はゆっくり休むためにも7時半頃には就寝です。沢のすぐ傍ですが、耳栓をすれば音は気になりませんでした。
そして翌朝。多くの人が4時台に槍ヶ岳に向けて出発。私も4時半に出発です。まだ暗かったものの、空は晴れていて月明かりがとても強かったです。私のコンデジでは星空や月の撮影は無理なので、やや明るくなってきてからの写真しかありませんが、月の美しさが少しは伝わるかも。


この日は特に最初の暗くて景色をあまり楽しめないうちに飛ばしまくりました。結果、槍ヶ岳直下の槍ヶ岳山荘までのコースタイム4.5時間~5.0時間くらいのところを3時間で行ってしまいました。その分、稜線の縦走の時にはやや疲れていてペースが落ちましたが。それはともかく、とてもいいお天気で早朝は気温も低く、快適です。朝日が出始めると、槍ヶ岳方面が赤く染まってきました。この時点で槍ヶ岳が見えるところまで登ってきていれば、素晴らしい朝焼けのシーンが見られたはず。が、今回はルートの問題でそれはかないません。表銀座を素直に燕岳から縦走していれば綺麗な朝焼けを見られたでしょう。


振り返ると、常念山脈方面には雲海ができているようです。


もっと明るくなってきてから槍沢を見下ろした図。


明るくなるとお花にも目が行きます。既に花勢は終盤ですが、アザミは多かったです。ミヤマシャジン(ハクサンシャジンかも)もありました。






ナナカマドの紅葉には流石に早すぎですが、実は既に赤くなっています。


槍沢の対岸の風景。


ここで、やっと太陽が常念山脈を越えて姿を現しました。


雲海も色づいていきます。


そして、正面にはついに槍ヶ岳の山頂の姿を捉えました。


山を歩いていると、正面に山頂が見えると周囲に遮るものもないので意外と近くに感じるものです。が、流石に山歩きも5年目となるとそこは冷静で、これ、頂上まではかなり遠いよね、1時間半か2時間かかるよね、と分析。それでも、お天気もいいし空気も澄んでいるので山行を楽しみましょう。標識のあるところまで来ました。コースタイムでは、槍ヶ岳山荘まであと1時間20分。目視の感覚は大体正しかったようです。


この辺りから1,500、1,400と100メートルごとに数字が岩に書かれているのですが、これは槍ヶ岳山荘までの歩行距離だと思われます。ペース配分の参考にすればよいと思います。槍沢上部に来ており、既に沢の流れは消滅。最後の雪渓より上に来ています。この辺りは初夏~盛夏であれば高山植物のお花畑なのでしょう。名残というか、咲き残っているイワギキョウやウサギギク、穂になったチングルマが見られました。








と、ここでキッキと鳴き声を上げながらニホンザルの集団が目の前を横切りました。標高2,500メートルを優に超えて森林限界の上なんですけど。まったく、数年前に猿がライチョウさんの雛を襲って食べる衝撃的な映像が公開されましたが、サルは森から出てきて欲しくないですね。鹿の食害も問題だけど、サルもどんどん捕獲して頭数を減らさないと。


周囲にはオンタデと思われる植物が花を落として黄色く色づき始めていました。草紅葉になるのでしょうか。


目指す山頂、あるいはその直下の槍ヶ岳山荘がだんだん近付いてきているのですが、対象がでかいので実感がわかない。それでも、この手の登りは比較的得意です。ストックを利かせやすいので、上半身の筋肉を有効活用してガシガシ行ける感じですね。心肺機能さえ持てば、ペースは速められるパターン。足元不安定なガレ場どかだとこうはいきません。


振り返ると太陽が結構高く上がっています。


最後は空気の薄さも手伝って結構ツラく感じました。休み休み歩みを進め、7時半ぐらいに槍ヶ岳山荘に到着です。建っている場所の標高の高さとしては、穂高岳山荘や北岳肩の小屋といい勝負でしょう。


槍ヶ岳山荘から、稜線の逆側、つまり黒部方面を眺める。こちらは、2015年に雨の中半分くらい縦走。そして今年の夏に薬師岳から立山まで縦走していますので、なじみのある景色です。


槍の穂先を見上げる。コースタイム30分となっていますが、そんなにかからない感じ。まあ、すべては渋滞度合いによるのでしょう。幸い、いいペースで登ってきたので今のところ大した渋滞はありません。


さて、鎖やハシゴの多い道を登って頂上を目指します。個人的な感想ですが、鎖などはやはり必須ではないですね。あくまで補助的なもの。使わない方が自分のペースで登れるのでむしろ安全だと感じました。年齢も経験も異なる多くの人が登る山なので、万一に備えて敢えてある程度過剰な設備が備えられているのだと思います。先行者が渋滞していなければ、10~15分もあれば登れるルートでしょうし、危険は感じませんでした。むしろ、立山連峰のザラ峠から獅子岳のガレ・ザレた道や越中沢岳南面の方がよほど滑落しやすいのではないでしょうか。




途中、渋滞中に振り返った図。大キレットと穂高の山々。大キレットも、天気さえ良ければ恐らくそれほど危険ではないのでしょう。でも、あまり興味ないんですよね。大キレットを通過することで見られる景色や花が特別な感じがしないので。でも、穂高岳の山頂とか槍ヶ岳からこの稜線を眺めるのは好きです。日本を代表する格好いい岩稜であることに間違いはない。




槍ヶ岳山荘を見下ろす。高度感としてはこの程度です。足場はしっかりしています。


そして、前の方々がハシゴを登り切るのをちゃんと待ってから私も登頂。ついに槍ヶ岳3,180メートルの頂です。


まさにこれこそ360度の展望台ですね。今まで、あらゆるところから槍ヶ岳を眺めてきました。その形が分かりやすいのもありますが、位置的にも北アルプスのド真ん中なのでしょう。後立山連峰の北部からはちょっと離れていますが、それでも晴れていれば眺められるし。この瞬間は、そうしたこれまで槍ヶ岳を眺めてきたすべての場所を逆に槍ヶ岳から眺められます。まずは偉大なる穂高連峰。






奥穂高岳。


前穂高岳。


北穂高岳。前穂から奥穂は縦走しましたが、北穂は未踏なのでいつか登りたいと思っています。


登ってきた槍沢。


これから進む表銀座縦走路。


その大天井岳方面を拡大。大天井岳に翌日登頂する直前まで、ずっと東天井岳を大天井岳だと勘違いしていました。一番尖って見えるのが東天井。大天井岳はその左で、翼を大きく広げたような恰好をしているピークです。実際に歩みを進めて近付くにつれ、間違いに気付きました。


そして燕岳方面拡大。


常念岳方面と常念岳拡大。




後立山連峰の白馬岳。


そして鹿島槍ヶ岳。いずれも登頂済みですが、前回とは違うシーズンに行ってみたいと思っています。冬季に登ったら感動なんだろうなあ。


黒部方面に目を転じます。


双六岳、三俣蓮華岳稜線の後ろに黒部五郎岳、そして赤木平、北ノ股岳に至る稜線。緑が美しいところですね。やはりお花の綺麗な時期に再訪したい。前回は雨&ガスにやられたので。


手前に鷲羽岳。小さく三俣山荘も見えます。中ほどに雲ノ平の爺岳。奥にスケールの大きな薬師岳。鷲羽岳は、三俣峠方面からの姿は圧倒的に格好いいのですが、それ以外は周囲の山より標高が低いこともあってあまり格好良く見えないですね。薬師岳はとにかく大きいし、カールが目立つ。存在感の大きな山だと思います。




裏銀座と、その先の黒い頭の水晶岳。そして水晶から連なる赤牛岳。黒部のボスキャラですね。


水晶岳拡大。いつも山行のターゲット候補になるのですが、奥地にあるのでなかなか行けないですね。結局、裏銀座より表銀座が先になりましたし。来年は裏銀座、もしくは雲ノ平をターゲットとする中で水晶岳にも行けるのだろうか。


奥には立山。手前の稜線は裏銀座の野口五郎岳。やはり立山は大きい。今年の夏のハイライトだった。




手前には五色ヶ原の湿原。8月に行って、素晴らしい朝日のシーンを楽しんだところです。


黒部湖は見えませんが、この写真のほぼ中央にあるはずです。それを挟んで左に立山、右に尖がった格好のいい針ノ木岳と、それから北に続く後立山連峰。左手前の赤牛岳から読売新道が黒部湖に続いていますが、究極に疲れそうなので行くのが躊躇される道。


針ノ木岳。2015年の梅雨明けに縦走して針ノ木雪渓と高山植物、ライチョウさん、そして黒部湖越しの立山連峰の絶景を楽しんだ思い出深い山です。今年は五色ヶ原から眺めています。


山頂の祠のところで、登頂者が順番にお互いの写真を撮り合います。これ、多分いつもそうなるのでしょう。




山頂には20~30分いたと思います。それほど混んでいなくて、なによりお天気が最高で、とても満足感の高い登頂でした。槍ヶ岳は、他の山から眺めてもその姿が際立つ山ですが、実際に登頂しても素晴らしい景色が楽しめる山ですね。やはり日本アルプスの大スターと認定すべきでしょう。
さて、この後は槍ヶ岳山荘まで戻り、いよいよ表銀座の逆縦走を開始です。

テント場各駅停車の薬師岳~立山縦走 4

2017-09-03 22:08:46 | 旅行
さて4日目の朝です。雨はすっかり止んで、綺麗な星空です。やはり神様はこの一番大事な朝を晴れで演出して下さいました。ホント、今回の旅は台風も来ていて天気予報は悪かったのですが、意を決してやって来てよかった。午前中は崩れないという読みはほぼ当たっていました。
針ノ木岳方面を見ると、徐々に長野県の大町側から太陽が上がってくるようです。


後立山連峰が壁になるため、日の出とともにご来光は拝めません。恐らく、太陽はもっと北側の白馬三山あたりから登るのでしょう。それを待つ必要はないですが、徐々に明るくなる景色は存分に楽しみたい。この日に進む、立山への道にある龍王岳、鬼岳、獅子岳方面。湿原の背景に荒々しい山々が格好いい。


テント場から少し登った見晴らしのいいところに出ます。




チングルマが朝露をまとって綺麗。


赤牛岳方面は綺麗に焼けています。神秘的。いやー、素晴らしい。言葉にならない。


ちょっとずらして裏銀座縦走コースとその先の槍ヶ岳。


太陽が徐々に昇ってくるのが分かりますが、尾根に隠れているので五色ヶ原が照らされるようになるにはまだ時間がかかる模様。まあ、ゆっくりとこの景色を楽しみます。


朝日が見えるようになる直前の針ノ木岳。尖がった形が格好いい。色が黒く見えるので迫力満点。




その針ノ木岳をチングルマやイワイチョウのお花畑越しに。かなり明るくなってきていますが、まだ朝日は差し込んできていません。


こちらは龍王岳、獅子岳方面。




いよいよ太陽が後立山連峰の背後から姿を現しました。素晴らしい夜明け。


一気に輝きだす草花。背景の山々もオレンジ色に。


裏銀座縦走コース方面と赤牛岳方面。




そして龍王岳、獅子岳方面。


チングルマも光を浴びて輝いています。




太陽がだんだん昇ってくると、景色全体のオレンジ色が濃くなります。






夜明けの絶景シーンを堪能し、満足してテントの撤収に向かいます。既に5時半ぐらいだったでしょうか。それでも、このまま直ぐに立山方面に向かうことはしませんでした。お昼過ぎからは台風の影響で天気が崩れる心配があったのですが、今回の旅で五色ヶ原の優先度は高かったですから、敢えて湿原をもう半周してから出発します。まあ、五色ヶ原で見逃したのは夕日に染まる針ノ木岳だけですね。これは前日の夕方が雨だったのでしょうがない。次の機会を待ちましょう。
早朝の湿原はライチョウさんこそいませんでしたが、澄んだ空気の中で気持ちのよいお散歩ができました。












それにしても、これから向かう方は岩岩しい、険しい山のようだ。これは天気の崩れる前に到達しておかないと大変なことになりそう。ところで、この写真で残雪の目立つ一番奥の大きいのは立山の雄山でしょうね。山頂神社が何となく見えます。


まずは、歴史ロマンのポイントであるザラ峠を目指します。戦国の世に、佐々成正という武将が真冬に北アルプス横断をした時のルートという言い伝えがあるのが、このザラ峠。まあ、信ぴょう性についてはいろんな評価があるでしょう。ここまで来るのも大変だし、ここを越えて信州側に抜けるにしても針ノ木岳周辺の後立山連峰を越える訳ですから。ここは取りあえず伝説を信じて楽しむことにしましょう。
で、ザラ峠に着くまでの下りの道はそれほど厳しくありません。左手に雄大な立山カルデラが見えてきますので、その景色を楽しみます。






正面はザラ峠からの登りで最初に出てくる獅子岳。五色ヶ原小屋の方がかなり厳しい道だとおっしゃっていたのですが、確かに険しそうだ。その奥に続くのが鬼岳、龍王岳でしょう。これらの山々は山頂を踏まずにトラバースしますが、それでも残雪地帯などで苦労する道のようです。


ザラ峠到着。


ここからの獅子岳への登りは、かなり強力なボスキャラとの闘いと言えるものでした。写真も少なめ。大きな岩をよじ登る訳ではないのですが、まずは比較的急なガレた道を長く登ります。体力をどんどん削られたところで垂直のハシゴや鎖などが登場。私はハシゴや鎖で怖いと思ったことはほとんどないのですが、高度感や足場の悪さからかなりの緊張を強いられるルートでした。お花は幾つか写真を撮ったのですが、道が険しくてあまり余裕がなかったので構図やピントが悪いものばかり。イワギキョウやイワツメクサが多かったです。






途中、振り返ると朝の五色ヶ原越しに大きな薬師岳が見えます。一日の行動時間が6時間程度という楽な行程とは言っても、流石に3日かけて歩いて来ただけあってかなり長い道だった。




前日の越中沢岳もそうなのですが、やはり厳しい道の写真を意識して撮らないと、記録としての価値は著しく減りますね。獅子岳の登りはルートタイムこそ巻いていましたが、相当に厳しくてやっとの思いで進んでいた記憶があります。それでも最後の方はだいぶ勾配がゆるくなり、お花も増えてボーナスステージ的になるのですが。こんな感じで。










そして、ザラ峠から1時間くらいで獅子岳山頂です。2名の先行者が休まれていましたが、思わず「厳しかったですね」と声をかけてしまいました。


獅子岳は絶景の展望台でもあるので、ここで20分くらい休憩しながら写真を撮ったりして楽しみました。まずは来た道を振り返る。右側からは五色ヶ原から薬師岳、そして黒部五郎岳や雲ノ平、奥には笠ヶ岳。写真中央から左は大きな赤牛岳とその左の野口五郎岳を中心とした裏銀座、奥には槍ヶ岳。まあ、全部。


五色ヶ原と薬師岳拡大。今回の旅の中心部分でした。基本的に晴れてよかった。実質最終日のこの日も晴れていて、とてもよい景色。オレンジ屋根の五色ヶ原山荘がメルヘン。


黒部五郎岳、赤牛岳、その後ろに少しだけ見える水晶岳、そして雲ノ平。もうだいぶ小さくなりました。黒部の奥地に次に来るのは何時になるのか。裏銀座縦走する時に雲ノ平も行く余裕はないと思うから、最低2回はかかるな。


そして、その裏銀座と槍ヶ岳。


富士山も見えていました。


目を転じて黒部湖と後立山連峰。


その北方は鹿島槍ヶ岳。後立山連峰の盟主。


でもやはり黒部湖越しでの主役は針ノ木岳でしょう。


最後に、これから進む方向。立山の中腹に道が見えますが、これはロープウェイの黒部平、果ては黒部湖まで下りていく道ですね。コースタイムだけ見ると大したことないんだけど、かなり長そうに見える道だ。


お天気に恵まれた気持ちのよい稜線歩きを続けましょう。まずは鬼岳の東面をトラバースすべく進みます。


ハクサンフウロが多かったです。ハクサンボウフウとかも。ミヤマダイモンジソウもあったけど、あの花はちゃんとピントが合ったためしがない。




まずは小さい雪渓。この程度ならアイゼンやチェインスパイクがなくてもまったく問題なし。


対岸の針ノ木岳を臨んで写真を撮る余裕もあります。


問題はこの標識を過ぎた後の雪渓。


先ほどのものとは全然大きさが違う。写真の左手前から右奥に進むのですが、右上の方をよく見ると分かるのですが、道がジグザグになっている。高度差があるトラバースのようで、ある程度ジグザグに道を切らないと高度が稼げないようです。


それにしても、アイゼンなしで雪の上をジグザグに方向転換して進むのは恐そうだ。雪質はザクザクなので、ツボ足でもキックステップとフラットフッティングを確実に守れば危険度はだいぶ減るはず。でも、万一足を滑らせたら谷底まで真っ逆さまでしょう。緊張しながら進みつつ、一応写真も撮った。この地点、ジグザグ方向転換していますが、雪がなくなるとハシゴが出てくるような道なんですね。そりゃ、高度差を埋めるためにジグザグにステップ切るはずだよ。


やっと通過。一安心です。まったく、一日に一回か二回は難所のあるルートだ。振り返ると、獅子岳の奥に先ほど眺めた黒部と裏銀座の絶景が浮かんでいました。


鬼岳東面に到着。取りあえず少し休憩、と言うか気を落ち着ける。


黒部湖方面を臨む。


ここからは写真の龍王岳の西側をトラバースし、浄土山方面に向かいます。天気が崩れそうなら立山は諦めて浄土山から室堂に下りる予定でしたが、少し雲が出てきたものの天気はよろしいので、立山に登頂するつもりで進みます。なお、見ての通りでここも少しだけやっかいな雪渓がありました。


これはハクサンシャジンだろうか。


龍王岳を巻きながら登る途中、西側には立山カルデラが大きく見えます。立山は大火山なんですね。


カルデラの南奥には薬師岳。


そして、龍王岳をトラバースしながら登り、浄土山の山頂隣のピークに着きました。ここには富山大学の研究施設があり、立山の手前の最後の大展望台になっています。


黒部湖方面には相変わらず針ノ木岳が格好いい。






これから向かう立山方面。やはりこれまでのピークとはスケールが違う。でかい。奥には黒々とした岩峰、剣岳も鎮座している。




これまで何度も見てきた黒部方面。まだ何とか水晶岳も雲ノ平も見えます。そしてたどってきた道。大いなる薬師岳と美しい五色ヶ原。あれほど厳しい道だった越中沢岳がとても小粒なのが不思議である。






さて、しばしの休憩と景色の鑑賞を終えたら、立山に向かいます。まずは一の越まで下ります。お花はタカネツメクサが多かったです。




室堂が見えます。まあ、これまでに比べると室堂は文明圏。町である。


そして、一の越から立山の雄山への登りです。コースタイムで1時間ですが、サッサと行けば40分と思っていました。しかし、それは甘かった。ここから急に観光登山者が増え、これまで3日間の山旅とは打って変わって渋滞登山です。結局、1時間以上かかりました。


立山は多数の登山者に踏まれ、登山ルートもめちゃくちゃと言うか、どこもかしこも人の歩いたあとがついています。それでも、イワギキョウやイワツメクサなどの高山植物を見かけました。人が来なくなれば花がたくさん咲くのでしょう。ちょっと微妙な気持ちになりますね。私自身もその登山者の一人なので偉そうなことは言えませんが。
山頂には立山雄山神社があります。鳥居の奥でお参りもできますが、渋滞しているのでそれはパス。山頂は混雑しているので、何枚かの写真を撮ったらお守りだけ購入して先を急ぎます。






立山は神社のある雄山(3,003メートル)が主峰扱いなのだと思われ、ここに登る人が圧倒的に多いです。一等三角点も雄山にあります。が、実は大汝山(3,015メートル)と富士ノ折立(2,999メートル)という3つのピークで構成されており、当然最高峰の大汝山に登った上ですべてのピークを踏みたくなります。ということで、人気のだいぶ少なくなる大汝山方面への縦走を開始です。道はそれほど険しくないですが、普通に北アルプスの岩峰なので、最低限の注意は必要です。また、こちらに来る人が少ないせいか、〇印や✖印のペンキのマーキングもかすれていて見にくいので、それなりに注意すべき道です。で、5分も歩くとライチョウさんがイワツメクサを熱心に食べている所に遭遇。逃げないのでずっと眺めていました。




今回の山旅で3回目の遭遇です。この日は天気がよかったのに出てきてくれてありがとう。さて、縦走を再開。サクサク進んで20分ほどで最高峰の大汝山に到着です。ここにはシンガポールからの観光登山者が数名いて、会話しながら写真を撮ってもらったりしました。
剣岳方面を臨む。




室堂方面を見下ろしつつ、緑の山は奥大日岳。天気がよければ明日の早朝にアタックを考えていた山です。


これは後立山連峰の北部、7月に登った白馬岳。


黒部湖を見下ろす。黒部ダムがよく見えます。




振り返って雄山。かなり雲が出てきました。やはり午後はお天気が崩れるのか。台風が夜には通過する予報ですからね。


シンガポールの方々に撮っていただいた写真。大汝山と富士の折立の山頂には木製の看板があります。


さて、立山の最後のピークである富士の折立に向かいます。途中の雪。立山は氷河があるくらいだから残雪レベルもハンパない。


富士の折立のピークははルートから少しだけ外れているので見落とさないようにしましょう。簡単な岩登りを経て登頂です。


大汝山を振り返りますが、上空にはかなりのガス。風も強くなっており、油断はできない天候になりつつあります。


これから向かう大走りの下山ルートや真砂岳方面はガスに巻かれている。


ということで、時間を無駄にしないでとっとと下山です。雷鳥沢にテントを張る予定。台風がやって来るのに無茶と思われますが、長距離バスの予約が翌日の12時半に室堂発ということで、今日中に町まで下山するわけにはいかないのです。最悪の場合は小屋泊に切り替えればよいので、まずは雷鳥沢に下りて天気の見通しなどを聞くつもりでした。
まずは真砂岳直下の分岐を目指します。再び、厳しくはないけれど北アルプスの岩稜帯として普通に注意を要するレベルの道を行きます。黒部湖側からガスが湧いてきているので、途中の内蔵助カールは今一な雰囲気。




でも、目を西側に転じて室堂や大日岳方面を見るとまだまだ晴れています。ガスが立山を通り越した後には室堂方面に降りて行けずに上空で拡散している模様。




何とかお天気は持ちそうですね。お花にも目が行きます。イワギキョウの大株は華やかです。


雷鳥沢のテント場までは大走りと呼ばれる下山路を取ったのですが、一日の最後に結構長くて大変でした。この日はそれまでの3日間とは違って、5時半ごろから歩き始めて午後1時半頃まで歩いていたので、途中に何度か休憩が入っているものの全体としては8時間くらい行動しています。その最終番にそれなりに長い下山はやはり疲れますね。コースタイムは1時間20分ですが、1時間30分以上かかりました。まあ、その理由の一つにはお花の写真を撮っているのもあるんですけど。チングルマを中心に、イワカガミやツガザクラなどが可愛かったです。










奥大日岳は、この辺りまで下りてきて見上げるとかなり格好いい。ちょっと剣岳にも似ている。


雷鳥沢のテント場がかなり近づいてきました。


この辺りでもまだまだお花が多いです。アオノツガザクラやミヤマキンバイ、ミネズオウなども参戦し、百花繚乱。












この橋を渡ればテント場です。かなりお天気は微妙になっています。


テント場に行く前に雷鳥沢のほとりで暫し休憩。沢の水を汲んで飲む。そして、タオルを濡らして顔を拭く。うーん、気持ちいい。水は旨いし、立山の自然に感謝です。


で、テント場の管理所で情報を仕入れたところ、台風に関する情報はほとんどなし。学生バイトと思われる人が「山の天気は変わりやすい」とか、とても為になるアドバイスをくれましたが、まったく使えません。まあ、他の登山者も数は少ないけれど10組以上テントが張られているようなので、私も小屋泊にしないで予定通りテント泊にしました。
テントを張っているうちに既に風が強くなり始め、小雨も降り始めました。が、立山室堂での温泉は楽しみにしていたので、決行です。有名なみくりが池温泉はテント場から遠いので、近くのロッジ立山連峰の温泉に入りました。700円。熱くてよい湯でした。これはロッジまでの回廊。




かけ流しってやつですね。




温泉を楽しみ、チューハイを買ってテントに戻りました。その後はお天気は悪くなる一方でしたが、夕食を調理して素直に就寝。
その夜...風速は15メートル以上でしたかね。結構テントがきしみました。が、浸水はほとんどせず。雷鳥沢のテント場が排水がよかったのか(周囲に水たまりは多数できていたので、多分テントの機能に助けられた)。定番であるアライテントのライペンですが、小さいほうの面に風が当たる分にはほとんど軋みません。流石に台風なので色んな方向から強風が吹きつけ、広い面に風が当たると相当軋みました。が、全体的にはテントの性能に感心しました。
あまり寝られなかったような気もしますが、恐らく合計4時間半程度は眠っています。朝の4時過ぎに目を覚まし、軽く朝食を取って雨が弱まった瞬間にトイレを済ませ、6時半頃に素早く撤収。撤収作業でミスしてずぶ濡れになったりしましたが、台風のテント泊も大きな混乱なく終えました。これは出発して20分くらい登ったところからテント場を見下ろしだ図。最終日に奥大日岳ピストンという野望は完全に打ち砕かれました。


室堂ターミナルまで約1時間の道のり。雨の弱まったタイミングとは言っても苦行。みくりが池もガスの中。


8時ごろからバスの予定の12時半まで暇なので、併設されている環境保護センターというところで展示を見ました。航空写真なども多用された動画などがあり、結構面白かった。




大好きなライチョウさんの保護のために募金。


雨予報が多い状況でしたが、最後の台風以外はお天気に恵まれて成功した今回の山行、最後に落とし穴です。私のように自分で車を運転しない人が使わざるを得ない、毎日あるぺん号。Twitterでは闇の登山バスサービスのように言われていますが、普通に運行する分にはまあ受容できるレベルのサービスだと思っていました。。が、この日は既に峠を越えているにも関わらず、台風を理由に運行スケジュールを変更。それはいいのだけど、その連絡が出発当日、しかも直前に電話だけというひどさ。縦走でスマホの電池も切れている人もいるはずなので、室堂のターミナルで放送してもらうとかすればいいのに。たまたま電話に気づかない人のためにも、前日にメールしておくとかさ。本当に気が利かない。まあ、私は何とかギリギリで電話がつながって事なきを得ました。が、危なかった。あと5分遅れていたら置いていかれるところだった。
バスは室堂ではなく、立山駅から出ることになりました。そのためにケーブルカーにも乗車。


立山駅のロータリーには五十嶋酒店という酒屋がありますが、このお店は実は太郎平小屋やスゴ乗越小屋の運営をされているのです。今回の山行でもお世話になったので、軽くご挨拶&バスの中で飲むお酒とおつまみを調達。


その後は高速道路の渋滞も特になく、順調に新宿に戻ることができました。
昨年の南アルプスに比べると、一日の行動時間が短かったために余裕を持って楽しむことのできる旅でした。それでも北アルプスらしいお花や稜線美、黒部川や雲ノ平、五色ヶ原などの独特の景観も素晴らしかった。全体としては満足度の高い旅でした。来年は、再び南アで赤石岳を中心に3泊程度か、北アルプスならいよいよ裏銀座縦走を狙いたいと思います。

なお、このルートは室堂出発で立山を登らずに一の越から五色ヶ原を目指すのであれば、五色ヶ原ととスゴ乗越に宿泊して2泊で折立に下りることもできるでしょう。健脚なら1日でスゴ乗越まで行って2日目で折立に下りるのも可。今回は逆ルートだったのと(折立から太郎平まで登るのか下るのかでタイムに差がある)、そもそもゆっくり日程で晴れている可能性の高い午前中に行動時間を集中したこと、最後に立山に登ったのと最終日が晴れれば奥大日岳を狙うつもりだったことなどが重なって、相当な時間をかけた旅になっています。時間のない場合は逆回りをお勧めします。