新緑シーズンは、一年で山林が最も美しい時期かもしれません。晴れた日には黄緑色の葉がキラキラと輝いているし、空はこのシーズンらしい気持ちのよい青空。濃すぎない緑と青のコラボレーションは、強すぎない光と好相性。小鳥の声も絶え間なく聞こえているし、晩春~初夏の花、特にこの時期はツツジなど木の花が艶やか。日が長いので日没を気にして焦るようなこともなく、気軽なハイキングが楽しめます。
で、今年も例年どおり5月に奥多摩にハイキングに行っていたのですが、少しだけ遠出しようということで6月4日(日)と5日(月)は有給休暇を利用して奥秩父の百名山の一角である甲武信ヶ岳に登りました。本格的な夏山シーズンを控え、体慣らしのためにテント泊装備を背負っての山行をするという目的もあります。
甲武信ヶ岳は地味系百名山という扱いをされることが多いと思いますが、今回初めて行ってみて確かに地味だと思います。が、このシーズンの甲武信ヶ岳は石楠花で彩られるということをヤマレコなどで情報収集する中で知っていたので、新緑に加えてそれも狙っていました。今回もお天気に恵まれ、かなり充実した山行となりました。
最初に写真を幾つかアップしておくと、まずは毛木平からの千曲川源流コースの新緑。
とがったおにぎりのような甲武信型山頂。
山頂からの早朝の景色。奥秩父の山深いエリアが一望され、何だか畏怖の念を感じつつも深い森に癒されます。
そしてお目当ての石楠花。
公共交通機関利用の場合、甲武信ヶ岳のアクセスはあまりよくありません。山梨県の西沢渓谷からアプローチするにしても、長野県の毛木平からにしても、いずれも電車とバスを乗り継いでお昼少し前から登り始めるということになります。しかし、今は日が長い時期。これを最大限に活用し、テントを張る甲武信小屋のテント場まで5時間程度かかっても日没までは余裕という計画。ということで、朝8時に新宿を出るスーパーあずさで小淵沢に出てからメルヘン感あるローカル線の小海線に乗り継いで信濃川上駅へ。この時点で既に10時40分。そこからは路線バスで梓山のバス停へ。このバス停からはコースタイム90分の一般道をてくてく歩いて毛木平までという感じで、予定では12時40分ごろに登山開始というのんびりした計画です。
で、やって来ました梓山バス停。バスの運行が結構早くて、予定より早めの12時15分にはここについていてました。周囲を高原野菜の畑に囲まれた集落です。
翌日が平日な上に、普通は自家用車で毛木平にアプローチするでしょうから、ここで降りたのは私ともう一人だけでした。この方はバス停近くのコンビニ的な商店に入られ、その後会いませんでした。基本的にここからはほとんどずっと完全ソロでした。
それはともかく、毛木平までの一般道、お天気に恵まれ過ぎて過酷でした。暑い、というか、まぶしい。こんな感じの一本道で、周囲はレタスなどの畑。地元の農家の方が作業しているのを横目にひたすら毛木平を目指しました。
最後の10分くらいは舗装されていない道になって、登山口が近いのが分かります。天気の良い週末だったので、毛木平の駐車場に停めきれなかった車がこの道にたくさん路駐していました。
この段階で既に新緑が楽しめるのですが、八ヶ岳の美濃戸口からアプローチするのと同じで、本格的な登山道に入るまでのアプローチ道はなぜか景色を楽しむ気がしてこないものです。そんなこんなで、やっと毛木平。時刻は12時15分くらいで、予定よりは少し早く着きました。周囲を森に囲まれた綺麗な駐車場で、トイレも完備です。と言うか、この時期の空の青さと緑の美しさのために綺麗な駐車場が演出されていたんでしょう。
さて、準備を済ませて12時半前には千曲川源流コースを目指して入山です。すると、直ぐに新緑の木々の回廊を通ることになり、深呼吸しながら森林浴して進むことになります。素晴らしい。
ちなみに、昨年9月以来のテント泊装備の重量感は凄まじく、この日は家を出てからずっと荷物の重さに苦しめられていました。そのため、比較的優しいコースとされる千曲川源流コースでも体力的には全然楽ではなかったです。新緑と小鳥のさえずり、森の香りと沢の水音&涼感が全面的にサポートしてくれなければ、気温の高いお昼時に重荷を背負っての山行は辛いだけだったでしょう。
まあ、景色がいいから何とかなるんです。カラマツの新緑が素晴らしい。
見上げると夏空である。
そして、千曲川と思われる沢から涼しげな風が時折吹いてきてくれるのが助かる。
お花はそれほど種類はなかったですが、定番のニリンソウ。ニリンソウと言っていますが、イチリンソウ、サンリンソウとの見分けは私には不可能。多くのブログなどでニリンソウとされているのを踏襲します。と、最初は書いていたのですが、どうやらシロバナノヘビイチゴという花のようです。ニリンソウにしては時期的に遅いですからね。
スミレさん。タチツボスミレかな。
黄色のスミレさん。キバナノコマノツメでしょう。
コミヤマカタバミもちらほらと。
いつもはコースタイムをある程度巻いて歩くことができますが、テント泊装備の重みにやられてこの日はほぼコースタイム通りで歩いていました。毛木平から1位間35分ほどで、最初のチェックポイントのナメ滝に到着です。ツルっとした岩の滝はナメ滝と呼ばれることが多いようですね。
この辺りまで来ると、カラマツなどの新緑はまだまだ始まったばかり。新緑のピークは毛木平からナメ滝までの間でした。標高の高いところのダケカンバとかはまだまだこれからも新緑が楽しめるのでしょう。
さて、暫しの休憩の後は千曲川源流を目指します。沢沿いのコースのよいところは、沢を詰め切るまではあまり傾斜が厳しくないこと。それでも徐々に疲労感が出てきますが。景色はだいぶ森深くなり、うっそうと苔の茂る森になってきました。
何度か木橋を渡って沢を横切ります。
苔の中にバイカオウレン。数は多くなかったですが、種類の違う花が出てくると楽しい。
最初のうちは轟々と音を立てて流れていた千曲川の源流も、ここまで来るとかなり細い流れに。
八ヶ岳の赤岳から流れる南沢のように、ちょっと赤みがかった感じの水。この辺りで少しだけ水を汲みました。この水は美味しかったですね。後で甲武信小屋で1リットル50円で買う笛吹川の水よりも美味しかったと思います。
そんなこんなで千曲川源流にたどり着きました。ほぼコースタイムどおり。やはりテント泊装備だとペースが上がらず。
千曲川源流は残念ながら水が出ていませんでした。季節や年によって状況は違うんでしょうね。
少し休憩してからいよいよ甲武信ヶ岳山頂を目指します。地図でも明らかなのは、ここからの道が急登だということ。沢沿いの道はどうしても最後に急登が待ち構えています。植生的にはシラビソが多くなっていました。
約25分の登りを経て稜線に出ます。金峰山や国師ヶ岳を西側に、東側には雁坂峠などを経て最後は雲取山まで続く長大な稜線です。まあ、奥秩父の主脈稜線の場合、その大きさに反して実態はとても地味。樹林帯が多く、深い森の稜線です。これはこれでとても香りもよいし好きなのですが、やはり大人気のエリアにはなり得ないのでしょう。
道はこんな感じ。
ちょっと見上げると雰囲気も違う。
ここからさらに25分程度のコースタイムで甲武信ヶ岳山頂なのですが、最後の登りがキツくて30分以上かかってしまいました。途中、樹幹から展望が少し開けるところがあって、明日の下山路で通る木賊山が見えました。
ちょっと視線をずらすと甲武信ヶ岳山頂も。直下は結構ガレているようだ。
それにしても森深いと言うか、山深いというか。この深さが奥秩父の醍醐味です。
そして、テント泊装備に苦しみつつもやっと登頂。標高2,475メートル。4時半少し前でした。この時期は日が長くて助かる。
山梨県、長野県、埼玉県の3県の県境のはずですが、圧倒的に目立つ埼玉県の山頂標識があるものの、他の2県のものは見当たりませんでした。
山頂からの風景はやはり森深い。金峰山方面。
北側の三宝山。実はこっちの方が少しだけ標高が高く、埼玉県の最高峰です。こっちへ縦走する道は結構険しいらしい。
八ヶ岳方面。ちなみに、南アルプスも少し見えましたが、翌朝の方が綺麗に見えているので後ほどアップ。
結構雲が出ているのと、この週末は気温も低くて肌寒かったので、20分ほどの山頂滞在で甲武信小屋を目指すことにしました。山頂直下にあったイワカガミ。
そして、本日のテント場である甲武信小屋に到着。奥秩父の山小屋は、八ヶ岳やアルプスのようなこ慣れた感じがしなくて独特の風情があります。
早速テントを張って少し休み、フリーズドライのお米にカレーとソーセージ、ゆで卵という簡単夕食を準備します。テント場は30張程度は十分張れる感じでした。土曜日は満員だったと思われますが、流石に日曜は余裕があります。
気温は3~4度程度と結構寒かったです。それでもテラス席では宴会している人たちがいました。中高年は本当に元気だ。
ソロテント泊なのでいつも夜更かしせずに早寝早起きなのですが、この日は特に疲労していたのか7時半頃には寝入ってしまったようです。真夜中頃に一回目が覚めました。防寒着とシュラフのおかげで、あまり寒さは感じませんでした。
そして翌朝。気温はやはり低いですが、大陸からの冷たい高気圧が張り出してくれたおかげでひんやり気持ちいいし、何より天気がよろしい。4時20分少し過ぎにご来光ということで、小屋前には多くの人が。
狙った通り綺麗なご来光。今年の山でのご来光第1弾。今年も何度か見られるといいと思います。
気温は氷点下でした。当然霜も降りていた。
さて、多くの人は下山の準備に入っていましたが。私はここでもう一度甲武信ヶ岳山頂を目指します。甲武信ヶ岳自体も百名山ですが、山頂は大展望台で他の多くの百名山を見ることができるとか。このコンディションなら行って損はないでしょう。テント泊装備なしの空身だとサクサク登れますし。で、木賊山の右奥に富士山。ちょっと雲海もできていて格好いい。
やはりこういうシーンが楽しい。新緑も花もとても大切だけれど、山頂や稜線からの絶景もとても大事。
奥秩父の主脈稜線を西側に見ると、国師ヶ岳や金峰山の山深いエリアが趣あります。
その少し北西には八ヶ岳。
拡大。いつもは茅野側から見ることが多いので、こっちから見ると少し印象違います。
そして、奥秩父主脈の奥には巨大な南アルプスの山々も見えます。迫力が違う。
これは白峰三山だと思う。雪も残っているし。見える角度のせいか、間ノ岳の印象がちょっと違いますが。
金峰山拡大。五丈岩はよく分かります。その横の山は鳳凰三山だろうか。
御嶽山と、
中央アルプス。
北アルプスも何だかんだ言って探してしまう。
ぐるっと一周して富士山と山頂標識。
最後に奥秩父の深い森をもう一度。
ひんやりした空気の中、朝の森の香りと小鳥の声、そして山頂からの景色を十分に楽しむことができました。他に2人くらいしか人がいなかったのも静かでよかった。
さて、十分遊んだらテントをたたみに戻ります。山頂付近の石楠花はまだ蕾でしたが、この日は霜が降りていた。
テントに着いてからはコーヒーを入れてクロワッサンなどのパンで簡単にエネルギー補給してからテントを撤収。テント場を出たのは最後から2番目でした。甲武信ヶ岳は地味系なので次にいつ来るか分かりませんが、落ち着いたよいテント場でした。
さて、下山ですが、まずは木賊山に登り返します。道はシラビソの原生林で気持ちがいいです。針葉樹の香りがよい。
奥秩父らしく苔も多いです。そこにバイカオウレンが咲いていたりする。
木賊山への登りの途中で少し開けたところから甲武信ヶ岳を振り返ることができます。ここからの甲武信ヶ岳が一番格好いいですかね。
ちょっと拡大。おむすび山である。
八ヶ岳と一緒に。これが一番絵になるかな。
木賊山の山頂では他の登山者のグループが休憩していたので、眺望もないからスルーして先を急ぎます。この辺りでは、標高の高いところではまだ残雪がありました。まあ、アイゼンは必要ないレベルです。
途中、開けたところから南側を眺められます。下山目的地である西沢渓谷の先にある広瀬湖でしょう。遠くに富士山も見えます。いい天気で楽しい。
しかし、この下山路、戸渡尾根と徳ちゃん新道ですが、かなりの急坂が続きます。テント泊装備だと足を滑らさないように踏ん張るのが大変でした。序盤はそれなりにいいペースで進んでいたのだけれど、途中から疲労のためか踏ん張るのが結構つらく、そうなるとペースも上がらずに苦戦しました。
まあ、この日はそれでもよくて、それは石楠花の時期だから。このルートは石楠花の回廊になっていて、花を愛でるということで遅いペースでもいいのです。
色の濃いものは華があります。
蕾も綺麗。
ちょっと薄めのピンク色くらいのが結構好みかもしれない。
白っぽいものも上品な感じです。
急坂にやられつつも、花に助けられました。花と言えば、標高が下がってきてからはツツジが多かったです。ミツバツツジかな。
針葉樹の新緑も個人的には好み。
しかし、下山路は険しい。スリップしないように気を使いました。
途中でサラサドウダンも見つけました。ドウダンツツジは奥多摩にもあるはずですが、これまでは発見できないでいたのでちょっと嬉しい。意外なほど背の高い木でした。
だいぶ標高が下がってきた感じ。
少し平らなところ。広葉樹の新緑が綺麗なエリア。標高的にもあと少しで下山完了かと期待が持てます。
カラマツの見事なエリアがありました。カラマツの新緑もいいですね。落葉する針葉樹は珍しいし。
最後にヤマツツジも登場。
そしてトチノキも。栃は巨木に育つので頼れる感じで好きな木です。西沢渓谷にはかなり群生している模様です。
10時半頃、やっと下山です。コースタイムを若干オーバーということで、やはり体力の減退が否めません。テント泊装備に耐えうる体を作り直さないと、本格的な縦走は危険ですね。
下山地点には田部重治の碑があります。
西沢渓谷はハイキングコースとしてよさそうですね。新緑や紅葉のシーズンは人気なのでしょう。流石に月曜なのでそれほど人はいませんでしたが。
その後は11時台のバスに乗って、運転手さんお勧めの「ハヤブサの湯」へ。かけ流しの温泉で600円でした。私としてはもう少し温度が高いほうが好みかもしれないけれど、この辺りでは瑞牆山の後の増冨の湯も湯温が低めだったから土地の文化なのかもしれない。まあ、十分疲れをいやすことはできました。
ここで軽く昼食も取って、その後塩山駅にバスで出て帰りました。
甲武信ヶ岳、確かに山としては地味ですが、新緑と石楠花のシーズンであれば十分楽しめます。奥秩父の山深さ、森深さは健在で、ゆっくりとテントを張って楽しむとよいと思います。奥秩父は行くと好きなのに、どうしてもアルプスなどに比べて計画されにくいエリアですが、近いのだしもっと遊ぶべきですね。
で、今年も例年どおり5月に奥多摩にハイキングに行っていたのですが、少しだけ遠出しようということで6月4日(日)と5日(月)は有給休暇を利用して奥秩父の百名山の一角である甲武信ヶ岳に登りました。本格的な夏山シーズンを控え、体慣らしのためにテント泊装備を背負っての山行をするという目的もあります。
甲武信ヶ岳は地味系百名山という扱いをされることが多いと思いますが、今回初めて行ってみて確かに地味だと思います。が、このシーズンの甲武信ヶ岳は石楠花で彩られるということをヤマレコなどで情報収集する中で知っていたので、新緑に加えてそれも狙っていました。今回もお天気に恵まれ、かなり充実した山行となりました。
最初に写真を幾つかアップしておくと、まずは毛木平からの千曲川源流コースの新緑。
とがったおにぎりのような甲武信型山頂。
山頂からの早朝の景色。奥秩父の山深いエリアが一望され、何だか畏怖の念を感じつつも深い森に癒されます。
そしてお目当ての石楠花。
公共交通機関利用の場合、甲武信ヶ岳のアクセスはあまりよくありません。山梨県の西沢渓谷からアプローチするにしても、長野県の毛木平からにしても、いずれも電車とバスを乗り継いでお昼少し前から登り始めるということになります。しかし、今は日が長い時期。これを最大限に活用し、テントを張る甲武信小屋のテント場まで5時間程度かかっても日没までは余裕という計画。ということで、朝8時に新宿を出るスーパーあずさで小淵沢に出てからメルヘン感あるローカル線の小海線に乗り継いで信濃川上駅へ。この時点で既に10時40分。そこからは路線バスで梓山のバス停へ。このバス停からはコースタイム90分の一般道をてくてく歩いて毛木平までという感じで、予定では12時40分ごろに登山開始というのんびりした計画です。
で、やって来ました梓山バス停。バスの運行が結構早くて、予定より早めの12時15分にはここについていてました。周囲を高原野菜の畑に囲まれた集落です。
翌日が平日な上に、普通は自家用車で毛木平にアプローチするでしょうから、ここで降りたのは私ともう一人だけでした。この方はバス停近くのコンビニ的な商店に入られ、その後会いませんでした。基本的にここからはほとんどずっと完全ソロでした。
それはともかく、毛木平までの一般道、お天気に恵まれ過ぎて過酷でした。暑い、というか、まぶしい。こんな感じの一本道で、周囲はレタスなどの畑。地元の農家の方が作業しているのを横目にひたすら毛木平を目指しました。
最後の10分くらいは舗装されていない道になって、登山口が近いのが分かります。天気の良い週末だったので、毛木平の駐車場に停めきれなかった車がこの道にたくさん路駐していました。
この段階で既に新緑が楽しめるのですが、八ヶ岳の美濃戸口からアプローチするのと同じで、本格的な登山道に入るまでのアプローチ道はなぜか景色を楽しむ気がしてこないものです。そんなこんなで、やっと毛木平。時刻は12時15分くらいで、予定よりは少し早く着きました。周囲を森に囲まれた綺麗な駐車場で、トイレも完備です。と言うか、この時期の空の青さと緑の美しさのために綺麗な駐車場が演出されていたんでしょう。
さて、準備を済ませて12時半前には千曲川源流コースを目指して入山です。すると、直ぐに新緑の木々の回廊を通ることになり、深呼吸しながら森林浴して進むことになります。素晴らしい。
ちなみに、昨年9月以来のテント泊装備の重量感は凄まじく、この日は家を出てからずっと荷物の重さに苦しめられていました。そのため、比較的優しいコースとされる千曲川源流コースでも体力的には全然楽ではなかったです。新緑と小鳥のさえずり、森の香りと沢の水音&涼感が全面的にサポートしてくれなければ、気温の高いお昼時に重荷を背負っての山行は辛いだけだったでしょう。
まあ、景色がいいから何とかなるんです。カラマツの新緑が素晴らしい。
見上げると夏空である。
そして、千曲川と思われる沢から涼しげな風が時折吹いてきてくれるのが助かる。
お花はそれほど種類はなかったですが、定番のニリンソウ。ニリンソウと言っていますが、イチリンソウ、サンリンソウとの見分けは私には不可能。多くのブログなどでニリンソウとされているのを踏襲します。と、最初は書いていたのですが、どうやらシロバナノヘビイチゴという花のようです。ニリンソウにしては時期的に遅いですからね。
スミレさん。タチツボスミレかな。
黄色のスミレさん。キバナノコマノツメでしょう。
コミヤマカタバミもちらほらと。
いつもはコースタイムをある程度巻いて歩くことができますが、テント泊装備の重みにやられてこの日はほぼコースタイム通りで歩いていました。毛木平から1位間35分ほどで、最初のチェックポイントのナメ滝に到着です。ツルっとした岩の滝はナメ滝と呼ばれることが多いようですね。
この辺りまで来ると、カラマツなどの新緑はまだまだ始まったばかり。新緑のピークは毛木平からナメ滝までの間でした。標高の高いところのダケカンバとかはまだまだこれからも新緑が楽しめるのでしょう。
さて、暫しの休憩の後は千曲川源流を目指します。沢沿いのコースのよいところは、沢を詰め切るまではあまり傾斜が厳しくないこと。それでも徐々に疲労感が出てきますが。景色はだいぶ森深くなり、うっそうと苔の茂る森になってきました。
何度か木橋を渡って沢を横切ります。
苔の中にバイカオウレン。数は多くなかったですが、種類の違う花が出てくると楽しい。
最初のうちは轟々と音を立てて流れていた千曲川の源流も、ここまで来るとかなり細い流れに。
八ヶ岳の赤岳から流れる南沢のように、ちょっと赤みがかった感じの水。この辺りで少しだけ水を汲みました。この水は美味しかったですね。後で甲武信小屋で1リットル50円で買う笛吹川の水よりも美味しかったと思います。
そんなこんなで千曲川源流にたどり着きました。ほぼコースタイムどおり。やはりテント泊装備だとペースが上がらず。
千曲川源流は残念ながら水が出ていませんでした。季節や年によって状況は違うんでしょうね。
少し休憩してからいよいよ甲武信ヶ岳山頂を目指します。地図でも明らかなのは、ここからの道が急登だということ。沢沿いの道はどうしても最後に急登が待ち構えています。植生的にはシラビソが多くなっていました。
約25分の登りを経て稜線に出ます。金峰山や国師ヶ岳を西側に、東側には雁坂峠などを経て最後は雲取山まで続く長大な稜線です。まあ、奥秩父の主脈稜線の場合、その大きさに反して実態はとても地味。樹林帯が多く、深い森の稜線です。これはこれでとても香りもよいし好きなのですが、やはり大人気のエリアにはなり得ないのでしょう。
道はこんな感じ。
ちょっと見上げると雰囲気も違う。
ここからさらに25分程度のコースタイムで甲武信ヶ岳山頂なのですが、最後の登りがキツくて30分以上かかってしまいました。途中、樹幹から展望が少し開けるところがあって、明日の下山路で通る木賊山が見えました。
ちょっと視線をずらすと甲武信ヶ岳山頂も。直下は結構ガレているようだ。
それにしても森深いと言うか、山深いというか。この深さが奥秩父の醍醐味です。
そして、テント泊装備に苦しみつつもやっと登頂。標高2,475メートル。4時半少し前でした。この時期は日が長くて助かる。
山梨県、長野県、埼玉県の3県の県境のはずですが、圧倒的に目立つ埼玉県の山頂標識があるものの、他の2県のものは見当たりませんでした。
山頂からの風景はやはり森深い。金峰山方面。
北側の三宝山。実はこっちの方が少しだけ標高が高く、埼玉県の最高峰です。こっちへ縦走する道は結構険しいらしい。
八ヶ岳方面。ちなみに、南アルプスも少し見えましたが、翌朝の方が綺麗に見えているので後ほどアップ。
結構雲が出ているのと、この週末は気温も低くて肌寒かったので、20分ほどの山頂滞在で甲武信小屋を目指すことにしました。山頂直下にあったイワカガミ。
そして、本日のテント場である甲武信小屋に到着。奥秩父の山小屋は、八ヶ岳やアルプスのようなこ慣れた感じがしなくて独特の風情があります。
早速テントを張って少し休み、フリーズドライのお米にカレーとソーセージ、ゆで卵という簡単夕食を準備します。テント場は30張程度は十分張れる感じでした。土曜日は満員だったと思われますが、流石に日曜は余裕があります。
気温は3~4度程度と結構寒かったです。それでもテラス席では宴会している人たちがいました。中高年は本当に元気だ。
ソロテント泊なのでいつも夜更かしせずに早寝早起きなのですが、この日は特に疲労していたのか7時半頃には寝入ってしまったようです。真夜中頃に一回目が覚めました。防寒着とシュラフのおかげで、あまり寒さは感じませんでした。
そして翌朝。気温はやはり低いですが、大陸からの冷たい高気圧が張り出してくれたおかげでひんやり気持ちいいし、何より天気がよろしい。4時20分少し過ぎにご来光ということで、小屋前には多くの人が。
狙った通り綺麗なご来光。今年の山でのご来光第1弾。今年も何度か見られるといいと思います。
気温は氷点下でした。当然霜も降りていた。
さて、多くの人は下山の準備に入っていましたが。私はここでもう一度甲武信ヶ岳山頂を目指します。甲武信ヶ岳自体も百名山ですが、山頂は大展望台で他の多くの百名山を見ることができるとか。このコンディションなら行って損はないでしょう。テント泊装備なしの空身だとサクサク登れますし。で、木賊山の右奥に富士山。ちょっと雲海もできていて格好いい。
やはりこういうシーンが楽しい。新緑も花もとても大切だけれど、山頂や稜線からの絶景もとても大事。
奥秩父の主脈稜線を西側に見ると、国師ヶ岳や金峰山の山深いエリアが趣あります。
その少し北西には八ヶ岳。
拡大。いつもは茅野側から見ることが多いので、こっちから見ると少し印象違います。
そして、奥秩父主脈の奥には巨大な南アルプスの山々も見えます。迫力が違う。
これは白峰三山だと思う。雪も残っているし。見える角度のせいか、間ノ岳の印象がちょっと違いますが。
金峰山拡大。五丈岩はよく分かります。その横の山は鳳凰三山だろうか。
御嶽山と、
中央アルプス。
北アルプスも何だかんだ言って探してしまう。
ぐるっと一周して富士山と山頂標識。
最後に奥秩父の深い森をもう一度。
ひんやりした空気の中、朝の森の香りと小鳥の声、そして山頂からの景色を十分に楽しむことができました。他に2人くらいしか人がいなかったのも静かでよかった。
さて、十分遊んだらテントをたたみに戻ります。山頂付近の石楠花はまだ蕾でしたが、この日は霜が降りていた。
テントに着いてからはコーヒーを入れてクロワッサンなどのパンで簡単にエネルギー補給してからテントを撤収。テント場を出たのは最後から2番目でした。甲武信ヶ岳は地味系なので次にいつ来るか分かりませんが、落ち着いたよいテント場でした。
さて、下山ですが、まずは木賊山に登り返します。道はシラビソの原生林で気持ちがいいです。針葉樹の香りがよい。
奥秩父らしく苔も多いです。そこにバイカオウレンが咲いていたりする。
木賊山への登りの途中で少し開けたところから甲武信ヶ岳を振り返ることができます。ここからの甲武信ヶ岳が一番格好いいですかね。
ちょっと拡大。おむすび山である。
八ヶ岳と一緒に。これが一番絵になるかな。
木賊山の山頂では他の登山者のグループが休憩していたので、眺望もないからスルーして先を急ぎます。この辺りでは、標高の高いところではまだ残雪がありました。まあ、アイゼンは必要ないレベルです。
途中、開けたところから南側を眺められます。下山目的地である西沢渓谷の先にある広瀬湖でしょう。遠くに富士山も見えます。いい天気で楽しい。
しかし、この下山路、戸渡尾根と徳ちゃん新道ですが、かなりの急坂が続きます。テント泊装備だと足を滑らさないように踏ん張るのが大変でした。序盤はそれなりにいいペースで進んでいたのだけれど、途中から疲労のためか踏ん張るのが結構つらく、そうなるとペースも上がらずに苦戦しました。
まあ、この日はそれでもよくて、それは石楠花の時期だから。このルートは石楠花の回廊になっていて、花を愛でるということで遅いペースでもいいのです。
色の濃いものは華があります。
蕾も綺麗。
ちょっと薄めのピンク色くらいのが結構好みかもしれない。
白っぽいものも上品な感じです。
急坂にやられつつも、花に助けられました。花と言えば、標高が下がってきてからはツツジが多かったです。ミツバツツジかな。
針葉樹の新緑も個人的には好み。
しかし、下山路は険しい。スリップしないように気を使いました。
途中でサラサドウダンも見つけました。ドウダンツツジは奥多摩にもあるはずですが、これまでは発見できないでいたのでちょっと嬉しい。意外なほど背の高い木でした。
だいぶ標高が下がってきた感じ。
少し平らなところ。広葉樹の新緑が綺麗なエリア。標高的にもあと少しで下山完了かと期待が持てます。
カラマツの見事なエリアがありました。カラマツの新緑もいいですね。落葉する針葉樹は珍しいし。
最後にヤマツツジも登場。
そしてトチノキも。栃は巨木に育つので頼れる感じで好きな木です。西沢渓谷にはかなり群生している模様です。
10時半頃、やっと下山です。コースタイムを若干オーバーということで、やはり体力の減退が否めません。テント泊装備に耐えうる体を作り直さないと、本格的な縦走は危険ですね。
下山地点には田部重治の碑があります。
西沢渓谷はハイキングコースとしてよさそうですね。新緑や紅葉のシーズンは人気なのでしょう。流石に月曜なのでそれほど人はいませんでしたが。
その後は11時台のバスに乗って、運転手さんお勧めの「ハヤブサの湯」へ。かけ流しの温泉で600円でした。私としてはもう少し温度が高いほうが好みかもしれないけれど、この辺りでは瑞牆山の後の増冨の湯も湯温が低めだったから土地の文化なのかもしれない。まあ、十分疲れをいやすことはできました。
ここで軽く昼食も取って、その後塩山駅にバスで出て帰りました。
甲武信ヶ岳、確かに山としては地味ですが、新緑と石楠花のシーズンであれば十分楽しめます。奥秩父の山深さ、森深さは健在で、ゆっくりとテントを張って楽しむとよいと思います。奥秩父は行くと好きなのに、どうしてもアルプスなどに比べて計画されにくいエリアですが、近いのだしもっと遊ぶべきですね。