冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

八ヶ岳テント泊縦断 その3

2019-09-22 21:34:06 | 旅行
観音平から麦草峠まで八ヶ岳を縦断する山旅の3日目。いよいよ最終日です。この日はオーレン小屋を出発して蓑冠山を越えて根石岳、天狗岳に至り、黒百合平を経由して中山展望台、高見石、白駒池を通って麦草峠に至ります。冬に歩いたことのあるコースが多いですが、八ヶ岳の中では標高が比較的低いエリアなので夏は暑いと思って避けていました。しかし、実は山歩きを始めた直後から見てみたいと思っていた景色があるルートなので、お天気がよいことを願っていました。

さて、余裕を持って5時半ごろに出発。まずはシラビソの樹林帯をコースタイム50分ほど登ります。香りのよい気持ちのいい道です。


登山道は多少えぐれている。


大きなバイケイソウ。今年は北アルプスはコバイケイソウの当たり年だったらしいけど、行く機会がなかった。


高度を上げると樹間から硫黄岳が見えるようになります。


割といいペースで登って、6時10分ごろに蓑冠山に到着。


蓑冠山は山頂が樹木に囲まれていて展望がないので、ここでは休憩せずに根石岳を目指します。根石岳(右)と天狗岳(左)が樹間から見えるところにホシガラスがいました。




と、ここでアクシデント。何でもない道で軽くスリップする形で左足首をひねってしまいました。一瞬ズキッと痛みが走って焦りました。が、2年前から使っている好日山荘のバーゲンで安く買ったものの元々はいい値段がするハイカットのシューズのおかげか、ダメージは最小限に抑えられたようです。この後の山行にも支障はありませんでした。しかし、下山後に靴下を取り換える時に見ると踝の辺りの内出血がひどく、ギリギリで運がよかっただけですね。単独行はリスクが大きいです。

さて、気を取り直して歩き始めましょう。根石岳への道はこんな感じで樹木どころか草もほとんど見えませんね。ここは根石のコルと言われるところで、風が猛烈に吹き抜けるようです。この日は快晴無風のコンディションでしたが、積雪期に来た時は蓑冠山までは登ったけれどこっちに行くのは断念したことがあります。


根石岳方面、赤岳など南八ヶ岳に比べると人気が少ないのですが、実は絶景ポイントが多いのです。まず、樹林帯を抜けた瞬間にこの雲海。


そして根石岳に向けて根石のコルを歩いていくと、左手には根石岳山荘があります。


そして、そちらの方面はかるく柵が作られています。


何故かというと、それはコマクサの群落があるから。コマクサはこの3日間でたくさん目にしました。2日目の硫黄岳のコマクサ群生地も凄かったですが、この根石のコルの群生地も見事です。




コマクサ、高山植物の女王とか言われているけれど、ホントに過酷なコンディションを好む花ですね。そして、他の花は根付かないようなところだからコマクサだけの一大群落を作る。
ちなみに、、右側を見ると先ほどからずっと雲海の上に朝日が浮かんだ絶景です。


で、サクサク歩いて6:30に根石岳登頂。これで八ヶ岳の主要なピークは全部制覇したかな。ニュウとかまだだけど。


南の展望は当然硫黄岳とその後ろに赤岳。


根石のコルはこんな感じです。


空気が澄んでいて、南アルプスもかなりクッキリ見えます。


右端の仙丈ケ岳から左端の鳳凰三山まで全部見える。


贔屓の北岳を拡大。やはり格好いい。こんな感じなのに実際には高山植物の宝庫でライチョウさんもいるという。右に塩見岳(これも厳しい割に花が多い山)や三峰岳の岩、左に間ノ岳と農鳥岳も見えますね。


硫黄岳の爆裂火口を拡大。ジオパークっぷりが凄い。


縦の写真の方が実際に見ている景色の感覚に合うような気がする。


ここでも東側は雲海が素晴らしく、朝日とのコラボが美しい。


ちなみに、茅野側はそれほど雲海になっておらず。でも空気は澄んでいるので乗鞍や北アルプスまで見えました。
これから進む道。


その先にある東天狗岳と西天狗岳。積雪期に登頂していますが、無雪期は初めてです。西天狗岳は稜線の縦走ルートを外れるので、今回は東天狗岳のみを通る予定。


根石岳は素晴らしい展望台なので、しばらく写真を撮ったりしながら遊んでいました。でも、ここから少し下ったところに本日のハイライトとなるべき目的の場所があるので、そちらを目指します。
それは、白砂新道という本沢温泉と稜線をつなぐ道が合流する地点。この地点の写真が、私が山歩きを始めたばかりに買った登山関係のムック本に載っていて、その景色に感動していつかは来てみたいと思っていたのです。
そして6:52にその目的地に到着。


ムック本にはこちら側の図が載っていたのですが、この風景は広角でパノラマ画像にしないと伝わらないですね。


左右は根石岳と天狗岳。これらが一枚に入り切ると素晴らしいはず。




まあ、写真は私のコンデジでは限界がありますが、この眺めは素晴らしいもので、この場所に佇んでしばらく時間を過ごしました。屏風の耳から眺める紅葉の穂高連峰、鏡池越しの八ヶ岳、五色ヶ原、針ノ木稜線から黒部湖越しの立山・劒、北岳・間ノ岳稜線、北荒川岳からの眺め、塩見岳からの眺め、鬼怒沼、谷川岳東面、禿岩からの眺め、などと比肩し得る、まさにここにしかない景色として心に刻まれるものです。

十分堪能したら、まだまだ先が長いので出発。まずは目の前の天狗岳から。この辺りから高山植物の花々が再び出てきます。イブキジャコウソウ、イワオウギ、ミヤマオトコヨモギ、イワベンケイなど。




そして、7:15に東天狗岳登頂。この日はプリンのような形の蓼科山の方までクッキリ見えていますね。ホントに八ヶ岳連峰縦走というなら、あそこまで行くべきかもしれないですけどね。


これが西天狗岳。標高的には西天狗岳の方がちょっと高いです。


ちなみに、積雪期の西天狗岳はこんな感じ。山歩きを始めた年の冬に登り、雪山の強風という試練を初めて経験した場所です。


南八ヶ岳方面。ずっと歩いてきたわけで、やはり感慨深い。


ちょっと目をずらすと奥秩父方面は雲海の上にでていていい感じですね。下界は曇りですね。


北八ヶ岳方面。森深いことを示す濃い緑色。北八ヶ岳は苔生す原生林のイメージですね。


北アルプスも見えています。


さて、これから進む道ですが、天狗岳から中山峠に至るには樹林帯の道を素直に下るか、天狗の奥庭と呼ばれる岩場を行くか、2つのルートから選べます。ちなみに、樹林帯のルートはこの切れ落ちた右側の崖の直上を歩きます。


樹林帯はその後も続くことが分かっているので、どうせならということで天狗の奥庭を選択。写真のやや左前方に続くルートです。これがとんでもないミスジャッジだったことを思い知らされるのに時間はかかりませんでしたが。


積雪期に天狗の奥庭を歩いた時は、装備も比較的軽かったし雪が岩の上に積もっていたせいで、岩の形が隠されてデコボコがほとんどなくなっていました。つまり、歩きやすかった。そのイメージで行ったのがいけなかったですね。そもそもテント泊装備で大きな岩の道を行くのが大変なのは、初日の網笠山で思い知らされていたのに。


こんな道なので、空身なら跳びはねたり悠々と手足を使ってアスレチックな山行を楽しめるのでしょうが、テント泊装備では転ばないようにするのが大変。時間もかかるし神経も使う。余裕がなくてほとんど写真もありません。これは振り返って天狗岳を見た図。


積雪期に来た時は、強風に苦労していたので天狗の奥庭の大きな岩が風よけになってくれたりしたのですが、今回はまったくもって大変なだけ。
やっと少し平坦なところに出たので休憩です。


で、前夜の夜露で濡れたフライシートを干して乾かす。


岩の隙間に一輪だけ咲いているタカネニガナが可愛い。


トウヤクリンドウ。秋の花と言われるけど、盛夏の山行でちょくちょく見かけますね。


そんな感じで苦戦しつつ、休憩も取ったのであまり参考にはならないですが、コースタイム1時間のところ1時間40分ほどかかってやっと黒百合ヒュッテに到着。ここでも休憩しようかと思いましたが、スタッフが布団干しに忙しそうにしていたのでパス。小屋周辺にはヤマハハコがたくさん咲いていて綺麗でした。




で、黒百合ヒュッテからは5分ほど木道を通って中山峠へ。ここからは樹林帯です。


中山峠からの展望。やはり緑濃い。


中山峠から中山展望台への道は、一部でぬかるんだ所があったものの木道も登場するなど全体的に歩きやすく、アップダウンも少ない道でした。
景色は北八ヶ岳らしく、一部で縞枯れが見られる針葉樹林です。香りもよく、天気がいいのでやや暑いですが気持ちのいい道でした。


中山展望台はこんな感じ。広くて解放感ある場所です。積雪期に来た時にはまさに展望台として楽しんだのですが、夏だと岩がゴツゴツしていて歩きにくく、既に根石岳や天狗岳の山頂からの景色も十分楽しんでいるので今回はほどんど時間を使わずに直ぐに高見石を目指して高度を下げます。




そして、ここからのコースタイム1時間の道が苦行でした。始まりからこんな感じ。


必ずしも急な坂ではないのですが、大きな石が多くてテント泊装備だと苦労するパターン。北八ヶ岳らしく苔生して滑りやすいという特徴も加わり、相当に神経を使います。これだと、特に下りは小屋泊装備でも結構たいへんな感じで、他の登山者も皆苦労していました。




オコジョの森。コケ丸が登場。懐かしい。北八ヶ岳の森にはこのような名前がついていて、特徴的な苔の解説があります。冬に来た時には当然すべてが雪の下でした。雪の道の方がどう考えても歩きやすい。




冬の道。北欧かカナダの森のよう。美しく歩きやすい。雪って素晴らしい。


あまりに苦戦して感覚的には永久に歩いているのではないかと思われるほど長く感じた道でしたが、それでも実際にはコースタイムより5分ほど遅れただけで高見石小屋に到着。夏に来るのは初めてです。ここでソフトドリンクを購入してしばし休憩。一息ついたら、山小屋の裏手にある高見石に登ります。ここからは白駒池や北八ヶ岳、そして浅間山方面がよく見えるのです。


いやー、ホントに、空身で大きな岩を登るのは楽しい。アスレチックで楽しいし、何より体の自由がきくからスイスイ行ける。ジャンプも可能。これなら登りも下りもへたな道より早いくらいスピード出せます。これがテント泊装備を背負っているとまったくの苦行。テントでプライベート空間を作って山に入って溶け込んでいくというのは、非日常への脱出という意味ではとてもいいのですが、事故も起こりやすいだろうしデメリットも大きいです。
それはともかく、高見石からの展望はすばらしい。大きな石に寝転がって楽しむ人続出。




夏雲が上がってきていて、それがこの季節らしい雰囲気を演出していました。




時刻は11:45頃。麦草峠からのバスは15:40なので、時間的にはかなり余裕があります。しかし、足首をちょっと怪我していることもあるし、夏雲の状態によってはにわか雨もあり得るので、動けるうちに動いてしまうのが単独行の鉄則。次は白駒池を目指します。この道も、多少は斜度が緩くなるものの高見石へと下った道に似て大きな石が多く、コースタイムをややオーバーしました。まあ、針葉樹と苔の森の雰囲気は素晴らしい。






高見の森。




で、やっとのことで白駒池に到着。ここまで来ると登山者よりも一般観光客が多くなります。国道が近くを通っていてバスも来ているし、池の周りの道は整備されているのでスニーカーでも問題なしですから。そして、その雰囲気に今回の3日間の山行がついに終わったことを感じさせられる。


池の周りの山小屋は、観光地の食堂っぽい雰囲気もあり、汗だくの登山者は入りにくいですね。ソフトクリームなどにもあまり興味がないのでここは池の写真だけ撮ったらすぐに退散。麦草峠に向かいます。途中の道は登山者でなくても十分楽しめる整備された道ですが、左右の森を見渡すと苔が美しく、散策にはもってこいの場所だと思います。










コケ丸も相変わらず頑張っている。


針葉樹も美しい。




そして、白駒の奥庭に到着。開けたところですが、針葉樹と岩のコントラストの面白いところで、積雪期だと雪が作る吹き溜まりの形がとても楽しいところです。ちょっとしたスノーモンスターがたくさん出現していました。夏は木々の緑と岩の灰色の競演。




冬の白駒の奥庭。


白駒の奥庭を過ぎて少し歩くと、茶臼山や縞枯山が見えてきます。


そして麦草ヒュッテも見えてきました。いよいよ3日間の旅の終わりが近い。


冬の麦草ヒュッテ周辺です。雪原。


夏の麦草ヒュッテ周辺の景色。とても夏らしい。


そして13:30頃に麦草ヒュッテに到着です。


ヒュッテでは昼食に山菜蕎麦をいただき、八ヶ岳全山が描かれた手拭いを記念に買いました。
アルペンな岩々しい道も苔むした原生林の樹林帯も楽しめる八ヶ岳は、多くの高山植物の花が咲き誇る花の名山でもあります。日本アルプスに比べると地味な印象かもしれませんが、私はいつもお天気の相性もよく、楽しませてもらっている山域です。夏も冬も楽しい。山小屋がルート上に多くあることも、安心感があるし。
ということで、3か月ぶりの山行に二泊三日のテント泊装備で挑むという若干厳しいプランもほぼ完璧に終えることができ、とても充実した山旅になりました。八ヶ岳に感謝です。


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