冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

ノンフィクションのお勧め

2013-10-22 20:57:00 | 息抜き
小説(物語)から世の中への洞察を得るのもいいけど、ノンフィクションはインパクトの大きな事件や政治経済、国際関係におけるいろんな出来事についてファクトをベースに考察されているものなので、やっぱり世の中への洞察という意味ではより直接的。
ノンフィクション、結構読みます。取材のしっかりしたものは面白いね。ファクトベースが甘いとつまらない。
で、八ヶ岳屏風の耳に行って楽しんだこともあり、最近読んだものの中から山岳関連のものを3つほどご紹介。
景色を楽しむのと体力減退を食い止めるくらいの目的で行っている自分の登山とはレベル違いますけど。どれもヒマラヤに取材したものだし。


「空へ―悪夢のエヴェレスト1996年5月10日」

一冊読むならこれでしょう。
世界最高峰のエベレストも、素人がガイドに連れられて登るツアー登山の対象になって久しいわけですが、その中で起き大量遭難の話。
著者自身が、アウトドア雑誌の記事を書くための取材として顧客としてツアーに参加していたため、臨場感が極めて高い。
また、冷静に事実を並べながら分析的に進められるストーリーは迫力十分。
極限状態での行動とかも当然読みどころだが、本来行かなくてもいいはずのところ(世界最高峰の山頂)に行きたくてしょうがないという欲求を持ってしまった人達の行動を冷静に突き放して観察しながらも、引き込まれてその場に居合わせたような感覚になる。
そして、共感するところ多い。
登山スケジュールに沿って徐々に高度が上がっていくのと章立てがリンクしているので、自分もだんだん登っているような感覚になるんでしょうな。


「凍」

人気のノンフィクション作家、沢木耕太郎の作品。
日本が誇る世界レベルのクライマー、山野井泰史・妙子夫妻がヒマラヤの超難峰ギャチュンカンを遭難寸前に追い込まれながら制覇・生還した物語。
地上の3分の1ほどしか酸素のないところで、しかも猛吹雪の氷点下二桁の世界で、ちょっと寄りかかるくらいのスペースしかないところで2晩野宿することを余儀なくされたり滑落してギリギリで助かったりしながら生きて帰る生命力は凄い。が、それよりも局面局面での判断がドライで凄い。
ドライな判断と折れない精神力が最高レベルのスキルと合わさっても、遭難一歩手前まで行くヒマラヤ。遭難一歩手前まで行っても辞められないクライミング。
別にクライミングじゃなくてもいいんですけどね。説明不可能なアグレッシブさを生み出すものを持ってるのって強いと思いますね。
そういうのない人ってつまらんと思うし。


「精鋭たちの挽歌―運命のエベレスト1983年10月8日」

凄い登山家って最後には遭難して死んでしまうイメージが何となくあったけど、そのイメージ通りの話。
今ではどうなのか分からんけど、やっぱり80年代頃までは、世界最先端のクライミングをする人でも日本人はかなり根性論的なマチズモの世界にいたんだなと思わせられる。
それはそれで意味あったのだと思うし、実は世界も結構似たようなものだったのかもしれないけど、印象としては死ぬために冒険している感じ。
そして、このノンフィクションに登場する人は、途中でクライミング辞めた人以外はこれまでにほぼ全員死亡。
そんな感じなんだけど、これもやっぱり共感できるところが多いです。純粋な感じがするんですかね。

結局、3冊ともいわゆる草食系の人にはあんまり向いてない本だと思います。

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冷たい風のような火を燃やすものたち

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上高地~穂高連峰の紅葉見に行った

2013-10-13 18:57:51 | 旅行
ll昨年に続いて紅葉の当たり年と言われている今年。失われゆく日本の絶景を見るために登山を始めた私としては、これは外せない。
特に北アルプスの涸沢が紅葉の聖地のように言われているので、穂高連峰の3,000メートル級の山に挑戦しながら涸沢を訪れるのが王道。
地図も買った。
しかし、9月の連休でお天気に最高に恵まれた八ヶ岳登山ではしゃぎ過ぎた代償に、膝を痛烈に痛めるアクシデント。重めの腸脛靭帯炎ですな。
それから2週間が経過したものの、右膝に痛みが残る状態。今年から登山始めた初心者がこの状態で穂高岳は苦しいでしょ。
それでも諦めの悪い性質なので、いろいろ調査して比較的楽な登山で紅葉を楽しむコースを組み立ててみた。
ポイントは以下の4点:
1) 楽チンテント泊ができる
2) 途中で膝の状態が悪化しても日没までに自力でテント場に戻れる程度のコースである
3) 当たり年に見逃せない絶景ポイントを押さえることができる
4) 観光客・登山客の波に飲まれて辟易する可能性が低い

たどり着いた結論は「屏風の耳」。登山コースのムック本で「初めてのテント泊」コースとしてお勧めされていたものです。
10月に入ってからほぼ毎日、上高地や涸沢ヒュッテのホームページで紅葉の進み具合をチェックし、いつものように天気図も検討。10月の最初の週末~2週目辺りが狙い目と判断しました。
幸いなことに過去数年の未取得有給休暇がたまっていたので、7日と8日の月・火に有給を取得していざ決行。
電車と路線バスを乗り継ぐのは時間もお金も余計にかかるので、直行の高速バスを使います。この予約がたいへんだった。と言うか、空きがある日を選ぶと必然的に6日の日曜に上高地入りして8日の火曜に東京に戻るという組み合わせしかなかった。この時季、誰もが上高地に殺到しているのでしょう。。。涸沢ヒュッテは3人で1つの布団をシェアするらしいです(正気の沙汰ではないですな)。

1) 「屏風の耳」
ところで、「屏風の耳」とは何か。誰も知りませんね。
結論から申し上げます。北アルプスの絶景の名所です。このとおり。




上高地から奥穂高岳や北穂高岳の登山拠点である涸沢に向かう途中、梓川を挟んで対岸に「屏風岩」という国内最大級の岩が見えてきます。
そのほぼ頂上が「屏風の耳」です。おそらく日本の山用語ですが、耳というのは猫の耳のような形をしたピークのことです。

2) いよいよ上高地へ。徳沢のテント場にて幕営
高級避暑地のイメージもあり、これまで縁のなかった上高地に初めて足を踏み入れます。
松本インターを下りて暫くすると、バスは山間部に入って行きます。すると、徐々に梓川が削ってできた渓谷の風景が広がってきます。車窓からの風景は、高度がそれほど高くないところではまだ紅葉は目立ちませんが、緑と梓川の清流、そして所々にある湖が非常に美しいです。
お昼過ぎに上高地バスターミナルに到着。お天気に恵まれて暑いくらい。この日は20℃を超えたようです。
頂上に雲がかかっているものの、奥穂高岳、前穂高岳の威容が出向えてくれました。


そして、日曜午後にも関わらず凄まじい数の観光客&登山者。紅葉シーズンの上高地は銀座のようだ。


とりあえず、2日間テントを張る予定の徳沢を目指します。上高地の散策路は整備されていて歩きやすく、景色が実に美しい。
林の木々や池、梓川の透明な流れ、そして前穂高岳や霞沢岳、振り返れば焼岳を見ながら進みます。








バスターミナルからは、最初のチェックポイントである明神まで約1時間、その次の徳沢までさらに1時間ですが、ある程度慣れていればそれぞれ40~45分で歩けます。私も、テント泊装備を背負いつつも今回から活用し始めたトレッキングポールのお蔭もあり、順調に歩きました。
一方で、上高地のハイカーは誰もが穂高岳の縦走をこなす高レベル登山者のイメージがあったのですが、この時期に来ている人は単なる観光客や登山初心者も相当多いようですな。
すれ違いざまに挨拶しても、必死の形相で挨拶を返す余裕もない人が8割だったと思います。

徳沢のテント場は、井上靖の小説「氷壁」と縁のある徳沢園という山小屋に併設されています。山小屋は高級感ある清潔で気持ちのいいところで、食事もできるし(ソフトクリームやコーラも売っている)お土産も売っています。
芝生がきれいな快適なテント場で、一晩500円で水も使えます。トイレは100メートルくらい離れてますが、何と水洗です。上高地、やはり高級仕様ですが、500円という安さが非常に良心的ですな。ありがたい話です。



テントを張ったら、さらに奥の横尾周辺まで散歩しました。この日は登山はしないで翌日に備えるのですが、上る予定の屏風岩を見ておきたかったので。で、これが屏風岩。登る方向を間違えると単なるロッククライミングになりますな。


3) 「屏風の耳」を目指す
7日の月曜日、快晴。朝日が昇る頃テント場を出発します。徳沢を出て10分ほどのところの新村橋という吊り橋を渡り、梓川の対岸に行きます。丁度この頃朝焼けで正面の前穂高岳がオレンジに染まっていました。


暫くは平たんな遊歩道のようなところを進み、左に90度折れる分かれ道が見えてきたら本格的な登山道です。それでも最初のうちは登りも緩やかで、快調に飛ばして登ることができます。右膝の怪我もほとんど気になりません。
黄色く変わった白樺やダケカンバの林を進みます。


左前方には前穂高岳の斜面があり、そこも紅葉が見事。


拡大すると、赤や黄色が折り重なっていますね。ナナカマドや峰カエデ、山モミジや高嶺桜、そして白樺やダケカンバでしょう。


ウラジロナナカマドの紅葉アップ。


天気は快晴。日が昇るとともに汗が噴き出す夏山のような状況。まあ、それでも気温は20℃以下だと思うので、風があると気持ちいいレベルです。
余りにも完璧な天気に恵まれ、何故か頭の中にはBarenaked Ladiesの”Falling for the First Time”が鳴る。”Anyone perfect must be lying. Anything easy has its cost. Anyone plain can be lovely. Anyone loved can be lost…” 縁起でもないが。
そして、その通りに完璧はやはりあり得ないのだった。たいしたことではなかったものの。
途中、幾つか涸れた沢を渡ります。雪解けの時は水流があるのだと思いますが、今の季節は岩だらけ。その中で、かなり広いものがありました。


ここで道を見失う。正解は、何も考えずに涸れ沢を渡るべきだったんだけど、沢の上部に道が見えたように錯覚してしまってこれを登り始めてしまいました。
そして30分弱進むと、空気が異常にひんやりしてきた。その時、行く手の上方を見上げると、何と大きな雪渓が。こんなの地図になかったと思い、直ぐに地図を取り出して確認。この時点でやっと間違いを確信し、戻ります。40分以上ロスしてしまいました。何より、メジャーなルートを避けているので、この時間にこのコースを歩いている人は私しかおらず、ちょっと焦りました。


ここから屏風のコルと呼ばれる地点までや2時間弱なのですが、この登りは楽でなかった。
それなりに急だし、岩場は多いし、常に太陽に晒される道なのでこの日の天気では脱水症状にならないか気になるほどでした。


何だかんだ言っても登山道の紅葉は素晴らしい。




そして、ついに9時ごろ屏風のコルに到着。本来は、紅葉の聖地「涸沢」からパノラマコースという少し難しいルートを登って来るのがメジャーです。私が今回使っているコースは下山で使われるのがほとんどですね。危険個所はないものの、このコースは長めでキツイところもあるので、すれ違う人に時々驚かれました。膝のリハビリで登るには確かにちょっと厳しいコースでしたね。


そして、実はここからが本番。屏風の耳に向けては30分ほどの急登です。ただし、少しでも視界を移せばそこには穂高連峰が広がり、槍ヶ岳まで見渡せます。
絶景を手にするための最後の頑張りを経て、ようやく「耳」に到着するころには腹ペコで倒れるかと思いました。早速フリーズドライの山菜おこわを作り、一段落してから周囲を見渡して楽しみます。とにかく360度の大パノラマと言うのはこの場所のためにある言葉かと思うほどで、景色を楽しむための登山という意味では最高のものの1つでしょう。
奥に槍ヶ岳、手前に北穂高岳と涸沢岳


前穂高岳から屏風のコルに連なる紅葉稜線を左に、奥穂高岳から北穂高岳の連峰。涸沢カールの雪渓も見える。


紅葉の聖地「涸沢」ヒュッテ周辺を拡大。確かにあそこまで行けば至近からあの紅葉を見ることができ、穂高連峰を見上げるのだから絵になるでしょうな。


振り返れば富士山と南アルプス。


10時半くらいまで景色を楽しんでから登山時と同じコースで下山しました。やはり陽光がきつく、暑くてたいへん。それに、下りの方が膝に負担がかかるので心配も増大。実際、1度ならず膝に激痛が走って、これはやっちゃったかなと思ったけど、その場で1~2分休んだら痛みもほとんど引いて普通に歩くことができました。好天と合わせて無事に下山できたことを神に感謝。

そして1時15分くらいに徳沢に帰還。思ったよりだいぶ早く下れました。
実は、普通にコースタイムを考えればこの日に東京に帰るプランで十分だったんだけど、膝の心配があったので敢えて時間にゆとりを持たせていました。最悪の場合、戻りが5時くらいになることも考えていたのだけれど、杞憂に終わりました。
午後はコーラを飲んだり、徳沢園の食堂で山菜うどんを食べたり、隣の徳沢ロッジのお風呂に入ったり(600円。利用すべき)。リラックスして過ごしました。
文庫本を外で読んでたら赤とんぼがやってきた。


「屏風の耳」は標高2,565メートルで、実は焼岳より高いんですね。下山して地図を見直して知りました。上高地からは1,000メートルほどの標高差です(これは知ってた)。
膝の状態が十分ではなかったのに無事に帰ってこられたのはラッキーでしたね。

4) 穂高神社奥宮のお船祭りと上高地の紅葉
翌日の朝は、テント場の正面に見える前穂高岳の朝焼け鑑賞から始まりました。
今回は膝の件もあって穂高は諦めたんだけど、やっぱりこうして見ると登りたくなりますね。特に前穂と奥穂に惹かれました。来年の夏には縦走にチャレンジしたいですね。




帰りのバスは午後4時と遅いので、上高地を散策するのに十分の時間があります。
この日、10月8日は偶然にも穂高奥宮のお祭りの日でした。神主さんや巫女さんが、船に乗って明神池に繰り出す儀式が見られるということで、行ってみました。
明神池は入場料300円ですが、鏡面のような池は神秘的で、見る価値のあるものだと思います。


結果。確かにめったに見られないものだし、古式な儀式の雰囲気は荘厳だった。しかし、圧倒的に混雑していて死ぬかと思った。ジジババは明神池の周りの植物を踏み荒して道を無理やり作って位置取りし、写真撮りまくる。上高地(神降地)の自然や神々しさをまったくリスペクトしない態度は、中国人観光客と同レベルですな。
それはともかく、儀式は荘厳だった。


カラマツの紅葉と池の鏡が美しい。


儀式の終盤、数百人はいたと思われる見物客が本格的に動き出す前に、何とか脱出しました。あとはバスターミナルの方に進み。ザックを一時預り所において帰りのバスの出発まで大正池方面の遊歩道を散策します。
天気は曇りがちになってしまったけど、それでも景色は見事です。この辺りは高層湿原になっていて、湿原と穂高や霞沢岳の組み合わせが美しいです。また、立ち枯れた木々も趣を添えています。






梓川の岸から見る焼岳。逆光でうまく映らなかったのが残念ですが、山肌の紅葉はすばらしかった。正に錦を着ているようだった。そして、活火山ならではの荒々しい溶岩の通り道とのコントラストが面白かった。


大正池は焼岳の噴火で梓川の流れがせき止められてできたらしいですが、透明な水に立ち枯れた木々が幻想的な雰囲気を醸し出しています。
周囲はカラマツで、10月末頃には真黄色に色を変えるのでしょう。


大正池と焼岳。


遊歩道の紅葉も楽しく、ここを歩くだけでも日本の美しい秋を発見できると思いましたね。




そして、とにかく梓川の透明度は完璧。



3時過ぎにバスターミナルに着いて、カツ丼を食べてお土産を買ったらバスの時間でした。疲れていた割には眠れませんでしたね。景色に感動しすぎてたんですかね。
とにかくお天気に恵まれた素晴らしい山行でした。「屏風の耳」に登った7日の月曜が最高の天気だったのだと思います。
そして、今回は登らなかった穂高岳。強烈なイメージが残りましたね。やはり目の前に威容を誇る山を眺めながら登らないというのは精神的によくないですね。
特に縦走は難度の高いルートが多いようですが、来年は自分のスキルでも登頂できそうなルートで挑戦したいものです。




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