冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

里山の可憐な花々

2018-03-28 23:12:28 | 息抜き
山歩きを始めた理由の一つは、希少な高山植物を自分の目で見て、写真に撮っておきたいと思ったから。
2052」という本を読んで、地球温暖化は止まらないと確信したんですよね。悲しいけど。温暖化のために気候が変わると植生も変わってしまい、自然に予想不可能な影響を与えるのはほぼ確実。繊細なバランスで生きてきた動植物にとっては危機です。
そして、日本には固有種の動植物がとても多くて、その中でも高山植物は特に固有種が豊富。日本の固有種というレベルではなく、その山域にしか咲かない花、その山にしか咲かない花などがたくさんあって、それらの多くは特別な自然環境に適応した結果として今の生態がある訳で、繊細なバランスが崩れたら真っ先に絶滅してしまうと考えられる。
だからその前に見ておきたかった。

まだまだ東北地方や北海道のお花をはじめとして見ていないものも多いのですが、過去5年間の山行でかなりの種類の高山植物に出会うことができました。希少種としては、キタダケソウ、ナンブトラノオ、ミヤマサラシナショウマ、ハヤチネウスユキソウ、ホソバヒナウスユキソウ、オゼソウ、ウルップソウ、ツクモグサ、クモマグサなどなど。いわゆる稜線の高山植物ではなくても、ミヤマハナシノブやホテイランのような樹林帯の希少なお花にも出会いました。不思議な形の花も多いけど、可憐なものもやはり多くて、花を目的とした山行はとても楽しいです。

閑話休題。本日は里山のお花。
高山植物とは違うのですが、里山にも多くの可憐なお花が咲きます。特に春にはスプリングエフェメラルと呼ばれる花々が咲き乱れ、とても賑やか。最近では、こうした里山の花々にもこれまで以上に関心を持っています。理由は、姿がとても可憐なものが多くて愛らしいのと、中にはやはり日本の固有種のような珍しいものもあるからです。また、高山植物同様にどんどん個体数が減っている様子だからです。気候変動も要因かもしれませんが、里山の荒廃やハイカー・トレランランナーの増加も大きな要因のようです。ヤマレコなどを見ると、貴重なお花畑の位置はあえて曖昧にして登山記録を書いている人が結構います。場所を教えると人がなだれ込むのでしょう。
私の場合はほとんど一般登山道のメジャーなところでの撮影なのでそれほど隠すこともないのですが、それでも先週末に出会ったハナネコノメは場所をあまり明確にしない方がいいと思いました。

で、これまでの里山山行で出会ったお花の写真を幾つか掲載。


カタクリ。


ニリンソウ。


ムラサキケマン。


カキドオシ。


ヒメレンゲ。


ハナネコノメ。


ナガバノスミレサイシン。


クワガタソウ。


ヒトリシズカ。


レンゲショウマ。

今後のターゲットは、イワウチワ、キクザキイチゲ、アズマイチゲ、フクジュソウ、セツブンソウなど。フクジュソウは、東京と埼玉の県境に近いところに群生地があるようだけれど、いわゆるバリエーションルートになるので初心者だと道迷いで遭難するかもしれないから今年も挑戦できませんでした。長沢背稜という県境の尾根を何度か歩いて、あの山域に慣れてからでないと危ないでしょうね。
あとは、佐渡島でトレッキングをすると多くのお花が見られるようです。せっかく行くなら観光を兼ねて2~3泊したいところなので、しっかりしたプランニングと天気図解析が必要ですけど。飯豊山脈などと並んで、お花目的で行ってみたいところの一つです。

白毛門から念願の谷川岳東面を臨む

2018-03-14 21:03:16 | 旅行
昨年はクレバスに阻まれて山頂に到達できず、お天気の面でも最後まで谷川岳山頂から雲が取れなかったためにその東面の大岩壁を完璧には捉えられなかった積雪期の白毛門登山(その記録)。今年は絶対に成功させたい雪山登山の1つでした。
で、一人では不安なこともあり、昨年の唐松岳登山でたまたまご一緒した方をお誘いし、3月11日の日曜日に再挑戦してきました。結果的には、高層天気図の読図もバッチリ決まってお天気に恵まれ、下山時に山頂直下で10メートルほど滑落するという愚かな失敗を除けば最高の雪山旅になりました。
まずは山行のまとめ的な写真を幾つか。








この日は珍しく新幹線を使って高崎まで行き、そこから上越線でいつもの水上駅を目指します。鈍行で全部行くよりも1時間半ほど早く登山を始められるので、ある程度危険を伴う白毛門の登山においては時間に余裕を持たせる作戦です。東京駅を6時8分に出る上越新幹線「とき301号」に乗り、高崎で上越線に乗り換えて水上駅まで。最後は水上駅を8時25分に出る関越交通バスの谷川岳ロープウェイ行きに乗って土合橋のバス停で降りると目の前が白毛門登山口です。
この日は天気予報やヤマテン予報では朝から晴れだったのですが、私は高層天気図の予想図を毎日見ながら午前中はかなりの確率で雲が出ると思っていました。雲が取れるのは、高気圧が西からある程度移動してくる正午くらいではないかと。それまでは上昇気流が雲を作りやすい環境ですが、高気圧が出てくれば西からの風が吹いて雲を払ってくれるという読みです。実はこの状況は好都合で、ヤマテン予報に乗っかって早朝から登山開始しているパーティが多いはずなのでトレースがついているのは間違いないし、下山してくる人たちとすれ違う時にクレバスの状況なども聞くことができます。私たちは公共交通機関利用なので登山開始が9時頃ですから、登頂するころに晴れてくれば、目的の谷川岳東面が白毛門山頂からバッチリ眺められるというシナリオです。
果たして、出発時の天気は曇りです。私としてはシナリオ通りなので、まったく気にせずに出発。


昨年は完全に雪に埋もれていた馬蹄形縦走路の標識。今年は既に雪の上ですね。まあ、去年は2月に来ていますから、時期も違います。


行動開始直後に現れる難所はこの橋です。雪がだいぶ解けて橋が見えていますが、実は手前側の雪がかなり積もっているので、急な坂のようになっていて、かなり神経を使います。


雪の季節の川の流れは好きな風景。


さて、橋を渡ると直ぐに白毛門名物の急登が始まります。この後、基本的に標高差1,000メートルを一気に登るイメージで、私の知る限り一番の急登ルートです。夏道はもう少しグネグネしているんでしょうけど。


曇りということもあって気温は予報ほど上がらず、出発時点では雪も締まっていて歩きやすかったです。キツいルートなのは分かっていましたから初めからハードシェルは着ずに、帽子もなし。手袋もアルパイングラブではなくて薄手のものしか着けていませんでした。それでも、すぐに汗が出てきてサングラスが曇るほど。とにかく白毛門の急登はハードです。写真はこの日の同行の方です。


松ノ木沢の頭というポイントまではダブルストックで行き、そこで山頂直下の壁のような急坂に備えるためにピッケルに持ち替える予定です。そこで少し休憩も取る。それまでは、2時間半くらいの道をあまり休憩せずに一気に行くつもりでした。実際、多少息を整えるために立ち止まりましたが、二人でかなりのペースで登りました。相変わらず雪庇が目立つ尾根道です。


まったく雲が晴れない、と言うか、ほぼガスに巻かれたような状況。ホワイトアウトではないですが、遠くは見通せません。


そんな中、この日はヤマテン予報のせいか白毛門としては結構な人が登山していました。皆さん、この急登には苦戦です。


景色が見えれば元気も出るんでしょうけど。樹間から見える谷川岳は完全に雲の中。


さらに大きな雪庇。この尾根は雪庇見物尾根である。




標高が上がるとクラック、クレバスも左右に見えるようになります。ルート上にあると厄介ですが、今年は昨年と比べてこの面では恵まれていました。


結構登ってきた。まだまだ山頂は遠いのだろうか。


11時を過ぎ、出発から2時間経ちましたが、視界が悪いせいもあってまだ山頂はおろか松ノ木沢の頭も確認できず。同行の方は休憩を取りたいようでしたが、松ノ木沢の頭はあと少しではないかと思うので我慢して登っていました。この時、急登続きのルートの上でも結構急な坂の下部で、下山してきた方々と私の同行者が何気なく会話。「松ノ木沢の頭はまだまだでしょうか。」「えっ? もう、この急坂の先は山頂ですけど。」「はあ?」みたいなやり取りがあり、少し前に松ノ木沢の頭を通過していたことに気付きました。チェックポイントになっているとは言っても、松ノ木沢の頭はそれほど広く平らな訳ではないのです。昨年登った時の記憶ではもう少し広いところのイメージだったのですが、どうやら5分ほど前に通過した緩やかな部分がそうだった模様。休憩のタイミングを逃し、同行者は不満です。さらに、ピッケルへの持ち替えを比較的急なこの地点で行うことになり、行動的にも慎重さを求められる結果に。いやはや、視界が利かないと分からなくなるものです。山頂だけでなく、目印のジジ岩、ババ岩も見えなかったし。自分の位置が分かっていませんでした。見上げても視界はこんなもんですから。


ここからは、このルートでも最高に厳しい急坂です。かなり慣れていなければ、ストックでは無理でしょう。ピッケルを使って慎重に登ります。さすがに写真はなし。特に下山時には気温が上がって雪が緩み、ピッケル・アイゼンが利きにくくて苦労しました。
そして、最後に鎖のある岩場を通過すれば山頂はもうすぐ。どうやら右下に見えるのがジジ岩とババ岩のようだ。確かに頭に雪をかぶって白髪に見える。白毛門の名前の由来どおり。


でも、前を見ても山頂は見えない。


とは言え、歩いていれば頂上に着きます。標識は雪の中でしたが、白毛門に登頂。標高は1,720m。


振り返っても谷川岳東面は雲の中。


白毛門より先の馬蹄形縦走路、笠ヶ岳、朝日岳方面は少しましですが。この日は3名ほどの方が笠ヶ岳まで往復されていました。


結果的にはたいして休憩しなかったこともあって2時間40分ほどで山頂に到達し、ペース的には悪くないものでした。12時から1時くらいにバッチリ晴れるという自分の予言を信じ、気温が比較的高くて風もないないので山頂でパンなどを食べながら晴れるのを待ちます。お天気は明らかに回復傾向なのですが、風が相変わらず上昇気流で東からの風だったので、これが西風になるのを待ちました。同行者はTwitterに投稿などしていたようです。
山頂には我々を含めて10名程度の登山者がいましたが、皆天気の回復を祈って待っていました。12時ちょうどくらいの様子はこんな感じ。だいぶ青空が見えてきましたが、まだ谷川岳山頂付近や馬蹄形縦走路の稜線には薄く雲がかかっており、絶景ゲットという訳ではありません。これは谷川岳東面。


その右半分の一ノ倉岳から茂倉岳、そして武能岳方面。


蓬峠や七ツ小屋山方面。


笠ヶ岳と朝日岳。


ジジ岩とババ岩もハッキリと見えてきました。確かに白髪をかぶった門に見える。


そして、12時13分。朝日岳方面はほぼ雲が取れました。登山者同士で写真を撮りあったりします。




谷川岳東面は一本の線のような形で少し雲が残っています。西風が本格的に出てくれば取れるでしょう。まだまだ待ちます。


12時22分。だいぶ雲が取れてきて、皆さん喜んで写真撮影中。


縦の図。








トマノ耳、オキノ耳拡大。




一ノ倉沢、一ノ倉岳拡大。




一ノ倉岳、茂倉岳、武能岳。


武能岳、馬蹄形縦走路。


笠ヶ岳と朝日岳。


12時29分。谷川岳東面。西風に変わってしかも少し強くなり始め、完全勝利を確信。






12時36分。完全に晴れ。


トマ、オキ。


一ノ倉、茂倉。


十分堪能し、写真を撮るよりも自分の目で楽しんだり他の登山者と会話して勝利の時間を過ごしました。そして、1時少し前に下山開始。写っているのは同行者です。






そして私。


山頂から少し下った、偽山頂付近から。




この先は例の急坂。慎重な行動が求められます。が、何とあっという間に滑落。しかも10メートル程度。止まらなければ谷底かという恐怖と、すごいスピードで落ち始めるととてもではないけどピッケルで滑落停止する余裕ないことを身をもって知る。幸い、何とか止まってくれたので助かりましたが、恐怖体験でした。それにしても、唐松の時に2メートルほど滑落した時とは異なり、今回は自分のミスに気付かないほどあっという間の滑落。理由は、下山後にアイゼンを外すときに分かりました。気温が上がったせいで雪が緩み、ダンゴなってアイゼンにつくのですが、なんとそれがアイゼンの底部のプラスチックを突き破っていて(プラスチック版は曲がっただけで折れてはいなかった)、前爪はともかくアイゼン前方の爪がまったく利かない状況だったのです。おそらく、山頂で写真を撮りながら走り回っている時からそうなっていたのでしょう。気付かずに歩いていたので、急坂でスリップしたのだと思われます。この恐怖体験がたたり、クライムダウンには必要以上に慎重になり、約1時間かけてゆっくりと下りました。同行者は我慢して待っていてくれて、ありがたかったです。やっと下って一休み。山頂を見ると、再びだいぶ雲が出てきてしまいました。


谷川岳東面も雲がかかっています。ここまで早く天気が崩れることは予想していませんでしたが、12時から1時くらいに晴れるという予想が当たって幸いでした。


少し雪も舞うような天候でしたが、逆に気温がそれほど急激に下がらなかったので、むしろ下りやすかったかもしれません。安全重視で無理せず、他の下山者に追いついても抜かないでゆっくりと下りました。そして、3時35分ごろに下山完了。


登山口で装備を外していたら臨時便が出たのかバスが来たので、飛び乗りました。その後は水上から鈍行でゆっくりと東京まで帰りました。下山中に愚かな滑落がありましたが、それ以外は極めて順調と言うか狙い通りの山行になり、2年越しで谷川岳東面の絶景を拝むことに成功しました。これまでの雪山行でも最も困難な道だったと思われ、その意味でも達成感のあるものでした。水上では、記念に地酒を購入。気温の上昇が激しくて燗酒の時期は終わったようですが、純米酒を買ったのでできれば寒い日に一肌燗で飲みたいと思います。

谷川連峰は贔屓の山域です。2,000m程度の標高ですが、豪雪地帯で冬の景色は北アルプス並みの迫力。初夏からは高山植物の宝庫にして独特の稜線美が魅力。そして紅葉の時期も圧倒的な迫力と美しさ。昨年は主脈縦走をしたので、次は馬蹄形をやりたいと思います。

とてもいい本です 「宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八」

2018-03-02 15:39:02 | 息抜き
新聞などの書評欄でも高い評価を得ている、とても読みやすい新書です。

宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八

宇宙開発・探査の歴史についてあまり詳しくない人はもちろん、ある程度知識のある人でもとても楽しめると思います。アポロやボイジャーについてはある程度知っていても、その裏で科学者や技術者がどんな夢や問題意識を持って仕事してきたのか、プロフェッショナル 仕事の流儀とかの感覚で楽しめます。さらに、惑星探査を超えて地球外生命体の探査についての部分はイマジネーションを掻き立てられます。そう、イマジネーション。これがこの本のキーワード。著者も何度もそれを強調されているのですが、本当にイマジネーションって大事だと思います。想像力と好奇心が人生を決めますよ。人生の豊かさを。この本は特にイマジネーションについてフォーカスして書かれています。想像してみよう、と何度も促されます。

純粋に、本気で夢を追い、イマジネーションを働かせている人は、短期的な利益や目の前の問題を超えたものが自然に見えてくるものです。優れた経営者も同じだけど。宇宙のことを考えれば、それは当然時間の感覚が日常生活とは全然異なるものが多くて、その夢を実現しようと本気で考えれば、短期的な利益のために地球を害する政治や経済には困惑してしまう。そんな感覚にも激しく共感します。

子供のころから宇宙にもエンジニアリングにもサイエンスにも興味なかった人でも、純粋に楽しめる本です。なぜならイマジネーションを刺激され、短期的な利益や問題から離れた視点を提供され、圧倒的に大きなものに対峙して謙虚な気持ちにさせられるから。
中学生に読んで欲しいと思うと同時に、Politically correctなことに心を砕いて小さくまとまったりストレスためている現代社会人にも読んで欲しいと思う。