冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

ボスニア・ヘルツェゴビナ

2018-05-19 18:40:39 | 社会
サッカーが好きな人はボスニア・ヘルツェゴビナという国があることは知っているかもしれませんが、多くの日本人にとってはあまりなじみのない国でしょうね。私も実際に訪れたことはありません。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争やそれに関連するスレブレニツァ虐殺事件サラエボ包囲、人物としてカラジッチムラディッチ、民族を表す言葉としてチェトニクボシュニャクは知っていても、実際に訪れていないと感覚的に分からないことが多いのです。実際に旅行したことのある他の東ヨーロッパ諸国などとは違い、私にとっても本や映画からの情報に基づいた知識に頼っている国です。

で、思い返すと結構多くの映画を見ました。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争関連、あるいはコソボ紛争関連で。今回はその中から2つご紹介。実は以前に別の作品を1つご紹介していますけどね。最近「サラエヴォの銃声」を見て思うことがあったので。


サラエヴォの銃声

大まかなストーリーはGoogle先生やAmazon先生にお聞きすると簡単に分かるので、ここではちょっと感想めいたことを。物語の中盤で、レポーターと大セルビア主義の男性がやりあうシーンがあったけど、その瞬間に映画に引き込まれました。一般的にPolitically correctなのはレポーターの主張であって、セルビア側は虐殺者として糾弾される側だったのがあの紛争。その歴史観に従うとしても、例えばこれを太平洋戦争の日本に置き換えたとして、多くの日本人はどう思うんでしょうね。当時の世界情勢からすれば中国や東南アジアに戦線を広げていったことは必然であり、そう仕組まれたんだと主張する自称愛国者もいるかもしれないし、そうは言わなくても東京裁判に正義はないと言う人は結構いるような気がするし、日本人だって戦争の被害者だったと思う人は多数派として存在しているような気がする。ボスニア・ヘルツェゴビナは民族的にはスラブ系が大半なんだけど、その中で大雑把に言うと宗教的にイスラム教徒のボシュニャク、正教会派のセルビア人系、カトリック派のクロアチア人系が分かれていて、それぞれ良かれと思って旧ユーゴスラビアから独立すべきとかすべきじゃないとかやり合って、そんな中で不信感から民族浄化合戦になって、終わってみても何が正義だったかは国連やアメリカ・EUあたりから押し付けられた感も残っていて、それぞれの言い分を腹割って言い合ったら今でも絶対的に平行線。そこで直接関係ないからと言って日本人の私が「客観的な」目で評価しようとしても無理~無理~と言うか空しいな感じで、だいたいサラエヴォ包囲は4年も続いて人口の3分の1が死んだとか言われている訳で、もう深く考えずに単に戦争はダメよとかいうレベルで合意できればいいのにくらいにしか感じられなくなっている自分の知性の貧困さに呆れる始末。
そんな複雑さを感じながら見ると深い映画だと思います。そんな複雑さがあるのに、偉いEUさん達はそんな話はともかくヨーロッパを哲学的に論じたり歴史イベントをやることに忙しくて、市井の人は日々の暮らしが経済的にも恋愛的にも家族的にもたいへんで、経営者も銀行もやくざも警察もそれぞれ自分の仕事に忙しくて、そんな中ちょっとした弾みに銃声が響くと背景にあった複雑さに点火して世界大戦になったりするんでしょうね。



サラエボの花

これはかなり前に見た映画。その時は正直言ってそこまで心に残った感じがしなかったのだけど、最近上記の「サラエヴォの銃声」を見て思い出して、今では両方一緒にして心に残った感じになっている。国家って(あるいは民族って)幻想よね。ベネディクト・アンダーソンを持ち出すまでもなく。あえて言えば、国家は制度なんでしょうね。民族の定義はさらにかなり難しい。そういう曖昧なものについて真剣に殺しあったりレイプしたりした結果の悲劇と、それを乗り越える話。そして、悲劇の側面よりもそれを乗り越える方に見る人も本当は焦点を当てるべきなのかもしれないのだけど、私としては悲劇の側面の喜劇性のようなものに気が向いてしまう。ここでも、直接関係ない日本人の私が「客観的に」見ようとしても無理なものが巨大にそびえていて、もう深く考えずに「何でそんなことになってるのよおかしいでしょこれ」とかいうレベルで終わらせたい気がしてしまう自分の根性のなさに呆れる始末。
真面目に見ると悲劇の大きさ(主人公達だけではなくて紛争全体の悲劇を想像するとなおさら)に圧倒されるので、そんな悲劇性と表裏一体のような喜劇性を感じながら見ると深い映画だと思います。そんな喜劇的悲劇の世の中なのに、食べていくための経済的環境についてはレベルの差こそあってもどこの国も似たような苦しさで、学校では子供達はどこの国でも似たような言い合いをしていて、悲劇のトラウマに苦しむ人はどこの国でも似たようなセラピーを受けいて、そんな中ちょっとした弾みに子供の喧嘩が本気モードになったりすると良かれと思ってついた嘘が破綻する時がやって来るんでしょうね。

日本、この70年は平和なんだと思いますよ。いろいろあっても世界レベルで比較すると平和と言わないと罰が当たる。それを認識した上で現実的な安全保障を考えるべきなんだろうけど、日本には日本の複雑さや喜劇的悲劇性があって、市井の人はやっぱり日々の暮らしに忙しくて、そもそもジャーナリストでも英語すらまともに使いこなせる人が少ないから国民全体的に国際感覚がヘロヘロで、そんな中にちょっとした弾みにアメリカの大統領がジコチュー決め込んだりするとにっちもさっちも行かないで国際的な発言力失うことになるんでしょうね。

新緑の川苔山、蕎麦粒山

2018-05-14 21:40:33 | 息抜き
GWに長沢背稜を経て雲取山、飛龍山まで縦走しましたが、その長沢背稜でまだ歩いていない部分の稜線を5月12日の土曜日に踏破しました。川苔山へのアプローチとして最も魅力的な川乗林道の通行止が解除され、百尋ノ滝にも行けるようになったので、川苔山に登るついでに蕎麦粒山も登って一杯水の避難小屋まで一回りしてきたのです。
結論。この道(蕎麦粒山~一杯水避難小屋)素晴らしい。奥多摩でも指折りの広葉樹林で、新緑や紅葉の時期は絶対行くべき道。今回は行かなかったけど、ハナド岩で小川谷を眺めるのと合わせると、奥多摩の山深さと広葉樹林の美しさを完全に堪能できると思います。

週末の奥多摩駅名物トイレダッシュを横目に7時27分発の東日原行のバスの列に並びましたが、この日は晴れ予報&日曜は雨予報だったので人出が多くてバスでは座れませんでした。まあ、15分くらいなので平気ですが。半分くらいの人が川乗橋バス停で下車し、川苔山を目指すようでした。奥多摩にはよく行く私ですが、なぜか川苔山は初めてです。メジャーな山なのですけどね。それはともかく、林道脇には川乗谷の沢が流れており、とても清涼感があります。朝は気温も低いので、気持ちのよいスタート。


沢沿いなので、この時期はウツギ系の木の花が目立ちます。マルバウツギだと思う。ヒメウツギかもしれない。


ガクウツギも多かったです。白いウツギの花は沢の流れる音と合わせて清涼感を強化。


この辺りのガクウツギの生息状況はかなり楽観的になれるものがあります。すごい数だった。


そして新緑も綺麗。ブナ系、カエデ系ともに多かった。


藤も綺麗。今年はお花が早いので、藤の季節もほぼ終了っぽかったですが。


40分ほどで林道の終点まで来て、登山道に入ります。なお、バイオトイレは故障中なのか、使えませんでした。


この登山道、お勧めです。沢沿いでとても涼しいし、沢の音が癒しになる。とても気持ちのいい道です。


新緑のトンネルである。


ヤマツツジがありました。今年はヤマツツジも早くも終盤っぽいけど。


とにかく、清涼感という言葉が合う登山道である。




水の透明度も素晴らしい。アルプス行かないでも、奥多摩で十分美しい。




新緑も言うことなしである。


と、楽しくハイキングして有名な百尋ノ滝への分岐に到着。当然ここは滝の見物に寄ります。落差約40mの滝は迫力十分で、周囲の新緑と合わさってとても綺麗でした。滝つぼ近くまで行けるので、写真が好きな人は凝った写真を撮りそうですね。




さて、この日は先が長いので、あまり長居しないでサクサク行きます。百尋ノ滝を後にしてしばらく、比較的急な道を進んだら沢を横切るところに出ました。ここで小鳥さんが登場。声は聞こえてもほとんど姿を見せることはないし、見えても高い樹上でズームしてやっと、そしてフォーカスすると直ぐに飛び去るのが常ですが、この小鳥さんは沢に下りてきて比較的近い距離にいました。他の登山者が気付かずに近づいてしまったのですぐに飛び去ってしまったのが残念ですが、なんとか後姿を撮りました。いや、ホント、野鳥の写真はめったに撮れないよ。ミソサザイかな、と思いますが確信はありません。


相変わらず、沢沿いの道を行きます。ヒメレンゲも咲いていました。




しばらく行くとついに沢の音が聞こえなくなり、小鳥の声がよく聞こえるようになります。あと一頑張りで山頂でしょうか。


山頂に続く尾根道に出ました。防火帯なのか道幅が広く、解放感のある道です。




そして、川乗橋のバス停から約2時間半で山頂に到着。コースタイムとあまり変わりませんが、百尋ノ滝に寄ったりしているから実際には余裕がある感じ。テント泊装備でない山行、余裕があって安心だと思う。


山頂からは西側が開けていて眺望があります。左の尖がりは鷹ノ巣山でしょうね。中央の一番高くて奥にあるのが雲取山。


視線をずらして右側を見ると、三ツドッケこと天目山が見えますね。今日は直下の一杯水の避難小屋までは行くけれど、天目山の山頂は行かない予定。2週間前にに行ったし。いずれにしても、あそこまで歩くのかと思うとちょっと気が滅入る。まあ、テント泊装備じゃないし、大丈夫だろう。


で、ここでもパンを一つ食べたら直ぐに出発です。まだまだ先が長いから。川苔山の山頂付近には、ツルキンバイが群生していました。奥多摩では珍しくない花ですが、白いお花の多い時期に黄色いお花はなんとなくホンワカしていいものです。




そして、ここから稜線上でたくさん出てきたのはミツバツツジとシロヤシオ。ミツバツツジは時期的にもっと前のイメージですが、標高が高めのせいか、結構残っていました。シロヤシオは全体的にはまだ5分咲きですかね。赤紫色と白のツツジの競演は見ごたえありです。














川苔山山頂付近は道が入り組んでいますが、今回は蕎麦粒山方面を目指して西に進路を取ります。日向沢の峰(ひなたざわのうら)は途中にある小ピークです。


やはり防火帯なのか、広い道が続きます。正面に目指す蕎麦粒山をとらえています。


この白いお花、多かったけど終盤っぽかった。名前が不明。


時々樹間から富士山が見えますが、限りなく薄い。


相変わらずの登山道。なだらかに見えますが、意外とアップダウンがあります。特に、川苔山から一気に200mくらい下るイメージなので、その後の登りを気にすると下り坂が憂鬱になります。


ここでサラサドウダンの花が登場です。昨年は奥秩父の甲武信ケ岳で見ています。






川苔山の山頂から40分ほどで分岐に出ました。巻き道は崩壊しているところがあるらしく、通行止めです。私は奥多摩ビジターセンターのウェブサイトで情報を仕入れていたのですが、この標識で薄めに消されているのを見て危険に気付く人がいるのだろうか。


川苔山を振り返る。山頂直下までは結構急坂もありますが、山頂は丸い感じで優しいイメージの山容ですね。


稜線上でもミツバツツジとシロヤシオの競演。


ツツジは、5枚の花弁の上のやつの内側に見える点々が綺麗だと思っている。シロヤシオは黄緑の点々。


三ツドッケも蕎麦粒山もまだ遠いなあ。


11:20頃、川苔山の山頂から約一時間で日向沢の峰に到着。この辺りからアップダウンが結構キツイ。つーか、アップがキツイ。


お天気的には薄めながら雲が出てきてしまい、青空は隠れてしまいました。まあ、広葉樹が綺麗だし、時々樹間から見える景色も山深い感じでなかなか趣があります。






そして、蕎麦粒山への急登。いったん少し下ってから登り返すのがえげつない。


11:55に蕎麦粒山の山頂に到着。川苔山から1時間40分弱で着きました。最後にかなりコースタイムを巻いた。登り返しのところでコースタイムが緩めに設定されていたようですが、この日は日帰り装備で軽装だったので、お花の写真などで時間を取られなければサクサク登っていました。まあ、全体的に言って、奥多摩のアップダウンの中では普通レベルだと思います。大岳山から御前山に縦走したり、奥多摩駅から石尾根で六石山、鷹ノ巣山と行くよりはずっと楽です。


狭い山頂には10名程度の人がいて、かなり混んでいたイメージです。この山ってそんなに人気がないと思うんですが、やはり季節がいいからでしょうか。また、明らかにベテランと思われる方は、川乗橋から直の破線ルートである鳥屋戸尾根を登ってきたようです。登りなら私も何とか行けるかもしれませんが、下りに使うと道に迷うんだろうな。奥多摩の深いところは、森は魅力的ですが道迷いが怖いです。写真は、登ってきた川苔山方面を振り返った図。こちら以外は眺望がありません。


ここでもちょっとパンを食べつつ短めの休憩を取ったらすぐ出発。時間的にはだいぶ余裕ができていましたが、何となくあまりゆっくり休みたくなかった。で、ここから一杯水の避難小屋までの道は本当に素晴らしい広葉樹林です。道自体は長沢背稜らしいフラットでよく整備された道です。


とにかくブナ(カエデも少々)の大木が多くて、行ったことないけど白神山地かと思いました。






















大きな木はそれだけで圧倒的な存在感があって素敵ですが、新緑に日光が当たってキラキラしてとても綺麗でした。都内でこの景色が楽しめるとは。とにかく、奥多摩の他の山域よりも絶対的に木が大きい。森の香りがよい。ただ足早に歩くだけではもったいないですよ、この道は。
そして、やはり足元の春のお花は終盤でスミレがちらほら程度の感じだったのですが、少ないながらもヒゲネワチガイソウが残っていました。これは嬉しい。






ヒゲネワチガイソウは、ツルキンバイの群落の中に交じって咲いていました。




楽しい広葉樹林歩きもいよいよ終盤。一杯水の水場まで来ました。GW後に雨が降ったせいか、水量は多かったです。せっかくなのでここで水分補給。


水場から避難小屋へは5分もかかりません。この日は三ツドッケには登らないで、小屋前のベンチで持ってきたおにぎりなどを食べて少し休憩。GWには咲いていなかったツツジが綺麗です。人が多かったです。時間的にはまだ下山も余裕でできますが、中には泊まる人もいたのかもしれません。


下山は、GWにはテント泊装備を担ぎ上げたヨコスズ尾根を使います。あの時はまだまだ標高の高いところでは木々の芽は出ていなくて、ほとんど冬の様相でした。今回は新緑シーズン真っただ中という感じで、とても気持ちのよい下山になりました。尾根とは違って、ミズナラとカエデ、たぶんイタヤカエデと呼ばれる種類のものが結構多かったです。ブナもありますが、ミズナラやカエデの方が目立っていました。














最後は、杉の植林帯の急坂を下って東日原のバス停付近に下山です。


日原川を通りから眺めると、その透明度の高さを認識できます。




いつもの「もえぎの湯」で汗を流して終了でしたが、満員で30分くらい待たされたのがちょっと想定外でした。まあ、時間的には余裕あったので問題なかったです。
日原方面は奥多摩でも山深いエリアで、これまではあまり来ていませんでしたが、これからは贔屓のエリアとして春や秋を中心に来ることになりそうです。

長沢背稜から雲取山、飛龍山の縦走 3

2018-05-06 21:38:46 | 旅行
4月28日から30日のGW前半、2泊3日の奥多摩~奥秩父縦走記録。最終日の3日目です。この日は雲取山の山頂直下にある避難小屋から飛龍山に縦走し、その後は山梨県の丹波山村に下山する予定です。途中、天平尾根というなだらかな広葉樹の自然林を通るので、新緑を楽しむつもりです。

4時50分の日の出ということでしたが、ご来光を拝んだらすぐに出発できるようにパッキングをしたり避難小屋の掃除をしたりしていたら、あっという間にその時間に。慌てて外に出て山頂へ。その途中で太陽が昇り始めました。危うくご来光を見逃すところだった。


空気が少し霞んでいるのか、完全に真ん丸ではない感じの太陽。でも、今季初のご来光です。手を合わせて安全祈願。


西側を見ると、この日登る予定の飛龍山。まだ雲取山など東にある山々の影になっているせいか、太陽が当たっていません。


飛龍山の奥には南アルプスの巨大な山々が見えています。甲斐駒ヶ岳、仙丈ケ岳。


そして北岳。間ノ岳も半分見えています。


荒川岳、赤石岳、聖岳。


大菩薩連山の向こうに富士山。


太陽は、前日歩いてきた長沢背稜の上に昇っていきます。




朝日に照らされる奥多摩の山々。


十分にご来光の時間を楽しんだら、5時を少し回ったくらいの時間。気温は7度ほど。飛龍山方面に出発です。




まずは、三条ダルミという鞍部まで大きく下ります。下るのは250mくらいかな。その分飛龍山に向けて登り返すことになるのが面倒ですけど。


思ったよりも急な道で、テント泊装備だとスリップしないように気を使いました。登りで使うのも楽ではないでしょうね。雲取山は、鴨沢からのコースが圧倒的に楽で、あとは三峯ルートも三条の湯ルートも普通にキツイと思います。
早朝の気持ちのよい空気の中、朝日でオレンジに輝く山々が樹間から見えています。


富士山も。


5時20分ごろに三条ダルミに到着。やはり下りは早い。


ここからも大菩薩連山の向こうに富士山が見えます。結構眺めのいいところですね。


この後は、あまり激しいアップダウンもなく、比較的歩きやすいよく踏まれた道が続きます。基本的に足元は笹原で、左右を見るとかなりの数の獣道ができています。鹿とか多いんでしょうね。




右側の笹原が開けて湿原のようになっている場所。




やはり動物が多いようで、足跡こそ確認できなかったものの糞や獣道は分かるし、そしてこの写真のように(鹿と思われる)動物の毛が落ちていたりします。


笹原と針葉樹の向こうに富士山が見える。


拡大。


富士山だけではなく、付近の山々を眺めるのもとても楽しい。なぜなら、新緑の山肌がとてもきれいだから。1日目にハナド岩から眺めた小川谷の景色は、広葉樹の自然林がとても美しかったです。それに勝るとも劣らないと思われるのが、雲取山と飛龍山に囲まれた後山川の谷です。この縦走路の樹間から眺められます。山深さを感じられる、とても豊かな森のイメージ。




しばらく行くと、このような補強された道に出ました。道の右側には紫色の花が咲いています。


コイワザクラです。1日目に見たヒゲネワチガイソウと同様、今回の山行で見られるといいなと思っていたお花です。結局ここでしか発見できませんでしたが、このポイントでは結構な数が群生しています。




サクラソウの仲間ということで、ハクサンコザクラなどと近い種類の花ですね。この手のお花はどれも可愛いですね。夏の始まりを告げる花のイメージ。






それにしても山深い感じで気持ちのよい景色が続く道だ。森林限界の下なので常に眺望があるわけではないですけどね。




三条の湯からの道が合流するチェックポイントである、北天のタルに着きました。初日に酉谷避難小屋で会ったベテランの方に、この後は少し道が厳しくなると聞いていたので、少し休憩して注意しながら歩行再開です。


途中に見える雲取山と奥多摩湖の方に延びる尾根。この尾根はなだらかですね。


雲取山拡大。正面の坂を下って三条ダルミを経て、今の位置まで歩いてきています。


谷を覗くと緑が美しい。


道自体は確かに少し荒れた感じになりますが、急坂という訳でもないのでほぼコースタイム通りに進むことができました。飛龍山直下の飛龍権現には8時10分に到着。


ここにザックをデポして空身で山頂に向かいます。山頂は樹木に覆われていて展望がなく、地味です。そのため、今回の山行でお会いした方は全員「一度行けば十分」とおっしゃっていました。確かに特徴のない道を20分ほど登って着いた山頂は地味。まあ、せっかく来たのでやはり山頂は踏んでおきたいものです。


山頂への道の途中でかろうじて雲取山が見られるところから撮った写真。これが展望の限界。


飛龍山は、山頂への道もそうですが、下山で使ったルートもシャクナゲが多かったと思います。時期が合えば、シャクナゲロードで登頂する価値ももう少し上がるのではないかと思いますが。
それはともかく、これも酉谷避難小屋でお会いしたベテランの方に教わったのですが、飛龍権現から5分も離れていないところにある禿岩が展望台として最高だということだったので、下山前に行ってみました。この禿岩、今回の山行でダントツナンバー1の大展望台でした。西は奥秩父主脈だけでなく八ヶ岳方面、その北には浅間山方面、南西には南アルプス、南面には大菩薩連山の向こうに富士山、そして東側には奥多摩の山々。もう全部。すごい眺望。そして、何よりも景色が綺麗。特に大菩薩連山と奥多摩の新緑が本当に美しい。取りあえずGoogleのサービスでパノラマ化された写真を先にあげ、それに続いていくつかの写真を載せておきます。


















南アルプスの名峰も、雲取山の山頂からよりもここからの方がよく見えます。






圧巻の景色で、30分ほど山頂で遊んでいました。大きなカメラで撮影していた人もいましたが、それも納得です。アルプスの岩々しい稜線の景色もいいですが、このような緑多い山の景色は落ち着きますね。
さて、名残惜しいところではありますが、あまり遅くならないうちに下山しないといけないので禿岩を後にします。まずは前飛龍というピークまで下りて、そこからはかなりの急坂を下ることになります。


前飛龍からの眺めもなかなか良くて、後山川の谷などの深い谷が緑を湛えています。






ここからの下りはかなり気を付けて行かないとスリップしそうな道です。


以降、ある程度斜度が緩くなるまで写真なし。かなりの急坂でやっかいな石も多い道でした。時間的には30分程度の道です。まあ、南アの農鳥岳から奈良田に下る時の大門沢の道に比べればまともだし短いので、そこまで疲れません。
難所を過ぎても、まだ標高が結構高いので針葉樹の森や新緑が芽吹いていない樹林帯がしばらく続きます。ミカサ尾根というところだと思いますが、それなりにアップダウンもあって歩き甲斐がありました。




コースタイムをよく確認していなかったために誤解していて、11時前にはチェックポイントのサオラ峠に着くと思って歩いていました。実際には、コースタイム通りなら11時15分くらいだったのですが、誤解のために、なかなか着かないなあと思っていました。

まあ、焦るというよりは周囲の景色を楽しむようにしていました。なぜなら、徐々に新緑が目立つようになっていたからです。


主役はやはりカエデやブナで、ミズナラなどはまだ裸のままでした。






気持ちのよい道。登りで使っても楽しいと思う。








実際のコースタイム通りに11時15分頃にサオラ峠に到着。祠があります。3日間の安全山行を感謝。


ここは、三条の湯方面への道、直接丹波山村につながる道、私が来た飛龍山へつながっている道、そしてこれから向かう丹波天平に連なる天平尾根への道が四方に延びています。丁度よい休憩ポイントでもあり、何人かの人が昼食を取っていました。


私も残りのパンを食べたりして少し休憩し、天平尾根へ向かいます。天平尾根はアップダウンのほとんどない歩きやすい道なので、新緑を楽しむお散歩ですね。










カラマツの新緑も多く見られます。と言うか、カラマツのとても大きな森があります。




丹波天平と呼ばれる、広く開けたところに出ました。ここだけは樹木がない草地。不思議だ。


そこから少し歩くと分岐に出ます。30分程度の新緑お散歩も終わりです。蝶が多く飛んでいたりして、メルヘン感漂う道でした。何人かのグループで丹波山村から登ってきて、天平尾根を通ってサオラ峠経由で三条の湯に宿泊するというハイキングプランは楽しいのではないでしょうか。


さて、いよいよここからは本格的に下山。しばらくは広葉樹の自然林の新緑を楽しむことができますが、徐々に杉や檜の植林帯になります。奥多摩の杉に比べ、丹波では檜が多かったように思いますが。


でも、自然林の中ではミズナラの新緑を見ることができました。ミズナラは標高の低いところでないとまだ葉が出ていないかったですね。


最後に大きなヤマツツジが登場。




ヤマツツジで締めというのはこの時期の山行の1つの典型的なパターンだと思う。もう少し時期が進むとタニウツギで終了というパターンが多い気がする。それはともかく、登山道は最後に小学校の敷地を通って終了です。地図には登山道の入り口が分かりにくいと書いてありましたが、確かにこの入り口を見つけるのは至難の業だ。私は下山してきたから自然と小学校に着いたけど。時間的には丁度午後1時でした。


その後は10分ほど歩いて丹波山村の温泉施設、のめこい湯へ。ここは、道の駅に併設されている感じで、温泉施設はつり橋で川を渡ったところにあります。


お湯自体は、露天風呂も室内も結構余裕のある広さだったし温度も丁度良く、なかなかよかったと思います。ただ、一般道から車の多い道の駅に入ってさらにそこから少し歩くので、大きい荷物をもって暑い中歩いていくのは結構大変でしたね。あと、この道の駅ではジビエの鹿肉を使ったハンバーガーやカレーなどのメニューが売りなんだけど、すべて売り切れていたのも残念でした。仕方ないので豚肉の角煮丼などを食して終わりました。
帰りは、3時45分ごろのバスで奥多摩駅へ。バスで約1時間かかるので、奥多摩駅から電車に乗って都心に着くのは7時過ぎになります。1時に下山というと余裕あるように聞こえますが、空間距離よりも時間距離的に結構遠いのです。丹波山村、あるいは飛龍山は。雲取山の1つ先の山なんですけどね。

さて、GWの山行は、予報通りのお天気に恵まれて目的を完全に達成できる充実したものになりました。このところの山行はずっとお天気に恵まれて安全に歩くことができているので、とてもありがたいです。神に感謝です。この調子で本格的な夏山シーズンも充実させたいと思います。

長沢背稜から雲取山、飛龍山の縦走 2

2018-05-04 20:48:43 | 旅行
GW前半の奥多摩・奥秩父縦走山行、2日目の記録です。1日目は東日原から酉谷避難小屋まで。2日目は雲取山に到達してそこでテント泊、3日目は飛龍山に縦走して丹波山村に下山の予定です。
さて、2日目もよく晴れた朝を迎えました。宿泊した酉谷避難小屋の位置的にご来光は見えませんが、夜明け前にトイレに行った時に星がきれいに見えていました。まあ、満月が近かったのでかなり明るく、天の川はくっきりとは見えませんでした。2名の学生さんは夜明け前に出発され、私を含めて残りの3人は5時半ごろほぼ同時に出発しました。ベテランの方は手際よく小屋の掃除もされるので、少し手伝いました。無料で使わせてもらっているので最低限のマナーですね。
で、朝日の照らす長沢背稜を進みます。相変わらずブナやカラマツ主体の道。朝日を浴びてオレンジ色。




長沢背稜で唯一ちょっと危険だと思った崩落地がありましたが、特に問題なく通過できました。


足元のお花はやはりスミレなどが主体ですが、少し違った種類に見えるものがあります。記録の意味で写真を撮りましたが、種類は特定できず。


また、雨が降ると細い流れになると思われるようなところに、ネコノメソウやハナネコノメ(すでに花はほとんど落ちたもの)を見つけました。沢に咲く花々に水の少ないはずの稜線で遭遇できて、ちょっと感動。




出発から45分ほどのところで、ハシリドコロの大群落がありました。


大きな葉が茂っているだけに見えますが、よく見ると下向きに赤黒い釣鐘上の花があります。






まだ蕾のものも。


付近には、ヨゴレネコノメやヤマエンゴサクも見られました。








少し行くと、また湿り気のある地面が出てきて、ツルネコノメソウと思われる花が群生していました。




長沢背稜、いろんなお花が咲いていますね。ちょっとした群生地があるのもなかなかいい。巻き道とは言っても基本的には稜線付近なので、水が乏しくてお花は少ないかと思ったのに。嬉しい誤算です。
順調に歩き続けて出発から1時間少し。樹間から雲取山も見えてきました。


ここでヘリポート出現。やはり遭難者が出るんでしょうね。遭難話は実際によく聞くし。長沢背稜だけなら登山道が明瞭なのですが、ちょっと外すと山深いところで自分の位置が分からなくなるのでしょう。バリエーションルートを行くのはかなりのスキルが要りますね。


この日も富士山はバッチリ。


ほぼコースタイム通りに進み、水松山の辺りで分岐に出ます。芋の木ドッケ、雲取山に向かうべく右に曲がります。この辺り、道標が多く立っているので間違える人はほとんどいないと思いますが、道が広くてやや不明瞭なので注意が必要です。


しばらくはこれまで通りの道に見えますが、、、


実際にはこの分岐を超えて長沢山方面に進むにつれ、植生が明らかに変化してきます。苔が増え、広葉樹は白樺が増え、針葉樹もカラマツからツガやシラビソに変わります。奥秩父の特徴が強くなります。奥多摩は奥秩父山塊の東の端に位置しているので、基本的には似たような植生なのだと思いますが、土壌などに微妙に違いがあるのでしょう。苔が多くなると共に、バイカオーレンが一緒に咲いています。












そして、分岐から約1時間の標高差150メートル程度の渋い登りを経て長沢山に登頂。結構キツク感じます。10分ほど休憩して朝食の残りを食べていると、雲取山荘に泊まられた方々がやって来ました。以降、全部で10名以下ですが、何人かの人とすれ違いました。まあ、歩く人の少ない道です。


8時頃に長沢山を出発し、コースタイムで2時間先の芋の木ドッケを目指します。と、この道で嬉しい出会い。




何と、イワウチワではないですか。今年はこの花を見るために何度か奥多摩に出かけました。絶滅危惧種と言うと言い過ぎかもしれませんが、個体数を減らしている花です。そして、とても可愛い。アセビの咲くところに一緒に咲いていることが多く、今回もアセビの近くに見つけました。








登山道は、それまでの比較的平らで歩きやすい道から大きく変化し、木の根が張り出して歩きにくい道になります。ツガやシラビソの森です。針葉樹の本格的な森は、独特の香りがして気持ちが良いです。




足元にはバイカオーレンやイワウチワが時々出てきて、癒しを提供してくれます。そして、小鳥の鳴き声がとても多く聞こえます。シジュウカラやコガラ、ヒガラ、あるいはウグイスなどの声は何となく分かりますが、それ以外にもたくさんの声が聞こえます。姿はほとんど見えませんが、時々背の低い木に止まっているのを見つけたり、目の前を飛び去るのが見えたりします。いずれも写真には収められません。頑張ってズームしてピントを合わせたと思ったら逃げられる。あの絶妙のタイミングでの逃げは何なんでしょうね。見られていることを察する、五感以外の感覚があるんですかね。芋の木ドッケまでの登りは結構キツイですが、何だかんだでコースタイムよりも早めに登頂です。


この辺りはツガなどの針葉樹の鬱蒼とした森です。これでも、10年程前に比べると立ち枯れた木が多くて森は明るくなっているとか。


芋の木ドッケでも小鳥さんは多く、何とか姿は捉えたものの種類すら判別できない写真。


少し休んで芋の木ドッケを下り、雲取山を目指します。かなり下ってから登り返すことになるので、途中の道から見える雲取山はだいぶ大きい。


和名倉山方面でしょうか。こっちも山深い山域で、時々遭難者が出るようですね。バリエーションルートになるので。


途中に見つけたスミレ。これはアオイスミレかと思うんだけど、確信がない。


芋の木ドッケからの下りが終わり、鞍部である大ダワに着きました。ここで鹿が出てきたんだけど、写真には撮れず。


ここから雲取山荘へは男坂と女坂のどちらかを通ります。以前は女坂を使ったので、今回は男坂。これが厳しい道。約20分の急登です。半日歩いてきてこの段階でこの急登は厳しいですが、苔やバイカオーレンを見ながら現実逃避しつつ登ります。




そして、11時5分ほど前に雲取山荘に到着です。この山域では唯一の食事を出す山小屋で、かなり大きいです。聞いた話では、この日も満員だった模様。


2日目はこの雲取山荘のテント場にテント泊の予定でいたのですが、1泊目の酉谷避難小屋で一緒になった方々から、どうせなら雲取山の山頂直下にある避難小屋に泊った方がいいと勧められました。そのうちお一人は実際に泊られる予定だったし。確かに、GWでテント場は混むし、山荘からは20分以上の比較的険しい道を経ないと山頂に着かないので、2日目のうちに少し多めの水を担ぎ上げていれば山頂の避難小屋の方が便利です。トイレもあるし。問題は、多くの人が泊まるとなると狭いだろうということと、騒ぐ人がいると困る点。それでも、あまりに酷ければテント場に戻ればいいと思い、せっかくのお誘いなので避難小屋に変更しました。結果、これが正解でした。山頂で日没もご来光も見られたし、効率的に時間を使えました。

時間的にはまだまだ早いので、トイレも水場もある雲取山荘のベンチで昼食を取りつつ時間をつぶしました。歩いてきた長沢背稜と思われる方向をを眺める。


そして、12時半ごろ山頂の避難小屋へ。30名近く収容の大きな避難小屋ですが、この日は私を含めて8名しか利用しませんでした。前日はもっと人がいたようです。3連休の中日ということで、避難小屋利用者は少なかった模様。ラッキーです。


ザックを置いて、山頂に景色を眺めに戻ります。この日は快晴に近い状態で、どの方角もとてもよく見渡すことができました。


翌日登る予定の飛龍山。ここから見ると格好いい。左側に前飛龍と呼ばれる小ピークがあり、そこから切れ落ちるようになっているので下山路は急坂で厳しいことが予想されます。


山頂自撮り。


山頂からは、奥多摩の山々や歩いてきた長沢背稜、奥秩父の主脈稜線上にある甲武信ケ岳や金峰山、その北西にある八ヶ岳、そして大菩薩嶺やその奥に大きな富士山も見えたのですが、春の空気の特徴なのか気温がそれなりに高いせいか、全体的に霞んでいて写真ではぼやけています。




しかし、夕暮れ時にはそれなりにハッキリと周囲の風景も姿を見せるようになりました。やはり飛龍山格好いい。




この日は満月で、東の空には登ってきた長沢背稜や奥多摩の山々の上に大きな月が見えました。




そして、太陽は甲武信ケ岳のやや北の辺りに沈んでいきました。


2日目もお天気に恵まれ、無事に長沢背稜を歩き通して雲取山の山頂からの景色も楽しむことができました。避難小屋も利用者が少なくて快適で、十分に休息を取ることができました。夜は7度くらいまで気温が下がりましたが、避難小屋だとテントに比べてずっと暖かいですね。この調子で3日目の飛龍山を制覇し、天平尾根の新緑を楽しめることを期待して就寝です。

長沢背稜から雲取山、飛龍山の縦走 1

2018-05-02 20:56:12 | 旅行
GWの山行は、例年より新緑の早い奥多摩~奥秩父の山を縦走して楽しむことにしました。奥多摩は東京に住んでいる私にとってはホームフィールドですが、幾つか未挑戦のルートがあります。中でも今回は玄人っぽいルートというか、前々から気になっていたマイナーで静かな稜線を選びました。東京都と埼玉県の境である長沢背稜という尾根道です。ここは避難小屋はあるものの営業小屋やテント場はありません。初の避難小屋泊体験もしてきました。なお、2泊目は雲取山荘のテント場にテントを張る予定。

今回の山行には幾つかのテーマがあります。
1. 新緑: 今年は残雪が少なく気温の上昇も早いので、お花も新緑も例年より2週間くらい早いイメージ。そんな状況なので、GWの奥多摩は新緑が楽しめます。特に、今回は飛龍山からの下山時に天平(てんでいろ)尾根という広葉樹の原生林を通る計画にしたので、期待が大きかったです。


2.今シーズン終盤となった春のお花: 今年はこれまでの年よりも多くの春のお花を見ることができましたが、奥多摩に咲く花の中にはまだ幾つかとても興味はあるのに見たことのないものがあり、それを見たいと思っていました。


3.長沢背稜: 人の少ない道ということで、難しい道というイメージがありました。奥多摩をよりよく知るためにもここを歩く経験は不可欠なので、日も長いし人出も比較的多くて安心できるこのタイミングで挑戦しました。


4.雲取山からの眺望: 前回は2014年の9月に登っていますが、この時は雲が多くて山頂からの眺望は今一つ。せっかくの東京都最高峰からの眺めは期待したいところです。ご来光も同時に期待。


5.飛龍山: 雲取山の隣にあり標高も2,077mと雲取山の2,017mより高いですが、山頂が樹林に覆われていて眺望もなく、雲取山と違って日本百名山でもないという地味な存在(山梨百名山ではある)。しかし、奥秩父の主だった峰は数回に分けて制覇したいと思っているので、今回挑戦してきました。


さて、GW前半の3連休の天気はバッチリ晴れ予報。4月28日土曜日に今季初のテント泊装備約17キロを背負って出発です。まずは7時27分に奥多摩駅から東日原へ向かうバスに乗り込みます。そのためには自宅の最寄り駅を5時少し過ぎに出る電車に乗らねばならなかったわけで、結構眠いです。なお、登山者は多かったのですが、西東京バスが臨時便として川苔山方面へ向かう人には別のバスを出してくれたので、座ることができました。で、8時くらいに東日原のバス停に到着。ほとんどの人は鷹ノ巣山に向かいますが、私を含めてごく少数の人はここから一杯水の避難小屋を経て天目山方面に向かいます。


ここでちょっとアクシデント。バス停にある簡略化された地図では、登山口はバス停から少し先にあることになっているのですが、10分ほど歩いても見つからず。引き返して人に尋ねて、ようやく実際にはバス停手前に登山口があると知りました。まったく、ミスリーディングな表示は危険です。まあ、大事に至る前に引き返してよかった。ヤマレコでよく見る標識も出てきて、安心して登山開始です。


奥多摩の山の多くがそうであるように、最初の400~500mは杉を中心とした暗い植林帯の急坂を行きます。これが例によって厳しい。テント泊装備に加え、気温も結構高かったので汗は出るし息が上がる。覚悟していたものの修行のようなスタート。やがて、道の片側が広葉樹の自然林になると、明るさも増してきます。


そして、新緑はとても美しい。私は紅葉より新緑の方が好きです。




やがて植林帯の急坂が終わると、ヨコスズ尾根という自然林の緩やかな尾根に出ます。鷹ノ巣山の榧ノ木尾根に似た感じで、広葉樹の多いとても明るく歩きやすい尾根です。そして標高1,000mくらいのところにはブナの新緑。まだ葉が柔らかいのが分かる。




新緑の樹間から見えるのは川苔山ですかね。


足元を注意すると、スミレが何種類か見られました。フモトスミレやタチツボスミレなどに交じって、これはヒナスミレだと思うんだけど。これまではあまり見ることのなかった種類です。


さらにヨコスズ尾根を登り、標高が1,300mくらいになると新緑もやっと芽吹いたところという感じ。樹間からはこれから歩く長沢背稜が見えてきましたが、初めて歩くところなのでピークの名前を同定できない。


時々大きなブナの木が現れます。奥多摩は巨樹の地だ。


なお、ミズナラはまだほとんど新芽を出していませんでした。広葉樹でも少しずつタイミングが違うらしい。カエデ系とブナ系は早めなのかも。標高が上がるにつれて新緑が目立たなくなり、まだまだ冬のような装いの木も増えてきます。


と、ほぼコースタイム通りで一杯水の避難小屋に到着です。綺麗に清掃されていて快適に泊まれる様子でしたが、まだ早いので今回はもう少し先の酉谷避難小屋を目指します。


各避難小屋の近くには水場がありますが、事前リサーチでは水量は一定ではない模様でした。そのため、酉谷の水場が万一水量不足の場合に備え、一杯水で2リットルほど補給しておきます。一気に荷物が2キロも重くなりますが、水の確保を優先。これはリスク管理上しょうがない。水場は避難小屋から3~4分の場所にあり、この日は水量豊富でした。


さて、ここからは天目山の山頂を目指し、そこから長沢背稜に入ります。なお、実際には長沢背稜という名前はこの稜線のうち西側の方、具体的には雲取山の北方に位置する芋の木ドッケから酉谷山までを指すのが普通のようです。それより東は都県界尾根と呼ぶのが普通らしいですが、実際には同じ稜線なのでここでは長沢背稜で統一したいと思います。
ここでまたプチアクシデント。本来は避難小屋から天目山への直登ルートがあるのですが、なぜかこの時はピークを避ける巻き道を行ってしまいました。しばらく行くと巻き道と長沢背稜が合流するので、そこにザックをデポして空身で天目山の山頂との間をピストン。


無駄な行動のようでしたが、実際には山頂直下の急な所を大きなザックを担がずに済んだので楽だったかも。さて、11時10分くらいに天目山に登頂です。三ツドッケという別名の方が有名かもしれません。ちなみに、ドッケというのは尖った山頂を表す言葉のようです。マイナーなイメージの山ですが埼玉県の方からも登山道があるので渋めの山行を好む向きには結構知られているようで、山頂では数名の方が景色を楽しみながら昼食を取られていました。


山頂からは奥多摩の山々が見渡せます。よく行く大岳山と御前山も。写真だとうまく写っていないですが、実際には山肌が新緑の緑で綺麗です。


富士山も見えます。これを目当ての人も多いでしょうね。


これはこれから歩く方面。大きいのは雲取山の手前にある芋の木ドッケかな。


さて、三ツドッケを後にしていよいよ長沢背稜を歩きます。この標高では、木々はまだ多くは冬の状況でした。




ちょっとだけ芽が出ています。


足元で時々目立っていた葉っぱ。これはキバナノコマノツメかな。あるいはマイヅルソウか。いずれにしても、一斉に花が咲いたら結構な規模のお花畑になりそうでした。


11:45頃にチェックポイントのハナド岩に到着。


ハナド岩は、今回の山行で発見した2番目に素晴らしい展望台でした(トップは後ほど紹介)。ここからは登ってきたヨコスズ尾根と右手に見えるタワ尾根に囲まれた小川谷が眼下に広がります。正面は鷹ノ巣山が目立つ石尾根が連なり、その向こうに富士山という図式です。この小川谷ですが、植林は少ないようで広葉樹の自然林がとても目立ちます。写真ではうまく伝わりませんが、新緑が本当に美しく(恐らく秋には紅葉も同様に美しい)、感動的な景色でした。


少し視線を上げて長沢背稜とその先に見える雲取山を臨みます。写真中央のやや尖がった一番高い山が雲取山です。


雲取山拡大。山頂直下は少し急に見えますが、全体的にはなだらかな山容ですね。


そしてこれは雲取山から南東方向に延びる石尾根(奥の尾根)。手前はタワ尾根です。タワ尾根はもちろん、石尾根もこちらから見える側(北側)は広葉樹が多いようで、とても綺麗な色です。


ハナド岩に咲いていたアセビ。標高1,000mくらいのところだととっくに時期を終えたはずのアセビも稜線上には結構多くて、やはり環境が違うのだと思わせられます。


Googleのサービスでパノラマ化された写真。少しは全体の雰囲気が出ますかね。


30分近く大休止してお昼のパンを食べながら、ハナド岩からの景色を楽しみました。長沢背稜は山深い景色を見せてくれる道ですね。
さて、この日の予定ルートは残り1時間半くらいですが酉谷山の避難小屋を目指して再び長沢背稜を歩きます。オオカメノキやアカヤシオなど木の花が時々咲いていました。




アカヤシオはたぶん始めて見ました。奥多摩ではミツバツツジやヤマツツジが多いのですが、やや赤紫色の強いアカヤシオは比較的珍しいんじゃないかな。雰囲気的には、昨年谷川連峰で見たムラサキヤシオに近いです。






足元には引き続きスミレが多く、時々ツルキンバイが黄色くて可愛い姿を見せてくれます。これは斑入りのフモトスミレ。


長沢背稜の登山道ですが、これが意外なほど整備されていて安全でした。基本的に巻き道のため、無理して選ばなければ小ピークはかわすことができます。そのため体力的な負担も少なく、テント泊装備でも歩きやすかったです。確かに人は少ないので事故があった時には完全自己責任で助けは期待できませんが、道そのものはとてもよかったです。整備されている方々に感謝するとともに、これならもっと人が歩いてもいいのにと思いました。




途中、七跳山(ななはねやま)という素敵な名前のピークがあるので、ここは巻き道を外れてピークを目指しました。その直前に、今回の山行で狙っていた花を一輪だけですがついに発見。ヒゲネワチガイソウです。


白い小さな花ですが、オシベかな、小豆色っぽい赤が入ってとても可愛いです。この花は尾根に咲きますが、沢に咲く早春の花であるハナネコノメにちょっと似た雰囲気。昨年のヤマレコレポートなどではもっと咲いているように書かれていたのですが、今年は気候のせいかこのヒゲネワチガイソウはほとんど見つけられませんでした。白くて小さい花はカメラのピントが合わせにくいのですが、ザックを下ろして道に横たわって何とか撮りました。

あとは、七跳山への途中で見つけたこのスミレ。アオイスミレかと思うんだけど、確信ができず。


お花を探しつつ、七跳山に登頂。展望はないし山頂標識も簡単なものですが、素朴でいい感じ。


山頂を後にして登山道に戻ります。前方に見えてきたのが酉谷山ですかね(右)。左はタワ尾根の頭と呼ばれる滝谷ノ峰でしょう。


少し歩くと、ツルキンバイの大きなお花畑が登場です。これまでは基本的にちらほらとお花が道に沿って出てきていたのですが、ここは大群落。




ちょっと寄ってみるとこんな感じ。




大家族で可愛いです。




そして、その中にヒゲネワチガイソウも幾つか一緒に咲いていました。でも相変わらずピントが合わせづらくていい写真が少ない。




少しまとまって咲いているところもあります。




このお花畑で10分以上停滞。登山道は一人分の幅しかないのですが、他に歩いている人がいないので自由に使えます。長沢背稜、とてもいい。さて、お花畑を後にして再び歩き始めます。稜線は基本的に早春の雰囲気で、ヤマザクラが咲きはじめだったり新緑もやっと始まったところ。




2時になり、そろそろ目的地の避難小屋が近づいてきたはず。タワ尾根の頭もすぐ近くに見えるし。


この分岐の直下が避難小屋です。


で、2時10分頃に酉谷避難小屋に到着です。この日は私が最初の到着でした。GWなので混むと困ると思って早めに来ましたが、結局小屋の利用者は5名だったので、スペース的には余裕がありましった。


まずは水場をチェック。過去には愚か者によって破壊されたこともあるようで、水場は石や鉄製の覆いで補強されていました。水量は多く、安心です。ちなみに、味もよかったです。


小屋からは位置的に雲取山は見えません。正面は南東方向で、尖った鷹ノ巣山が一番目立ちます。


避難小屋はとてもよく整備・清掃されていました。こんな奥地で作業されている方に感謝ですね。トイレはバイオトイレで異臭もほとんどせず、快適でした。


ザックを下ろして整理していると、次の登山者が到着されました。70代の男性で、奥多摩の山々を歩きつくしているベテランでした。その後いらした壮年の男性も経験豊富な方で、バリエーションルートを楽しんでいるようでした。この方々からは翌日以降のルートについていろいろ教えていただきました。ありがとうございます。最後の二人はちょっと時間が経ってからやってきた学生さんでしたが、鳩ノ巣からずっと縦走してきたとのこと。距離的には私のこの日の山行の2倍くらいでしょうか。若い人の体力は凄い。
さて、日が長いので、私はこの日のうちに酉谷山の山頂を踏んでおこうと思って空身でピストンです。山頂は避難小屋から15分弱登ったところにあります。まだ葉の出ていないカラマツの林の中を登ります。


山頂到着。この日の最高点1,718mです。


そこそこの眺望があります。南東方面は奥多摩の山々。


北西方面に見えるのは雲取山から三峯方面に至る稜線でしょう。


北側には秩父の町が見えていました。秩父は山深いところに開けた盆地であることがよく分かる。


植生も、少しずつ苔が増えてきたりして奥多摩から奥秩父山塊に本格的に入っていくことが感じられます。


スミレも、これは今まで見てきたものとは葉の形が少し違うように思うけど、特定が難しい。


その後は避難小屋に戻り、ベテランの方にいろいろと教わりながら時間をつぶして5時ごろにいつもの早ゆでパスタとレトルトボロネーゼソースの夕食を取りました。他の方々はお酒も楽しんでいましたが、私はソロ山行の時はお酒は飲まないポリシーなので早めに就寝、翌日に備えました。
アルプスの稜線ももちろんいいですが、奥多摩や奥秩父の山深い、緑の多い景色もとても好きです。個人的には、癒しパワーは圧倒的に山深い、森深い山域の方が上だと思っています。特に新緑シーズンということで、この山域のベストシーズンを楽しむことができたと思っています。長くなってきたので、2日目以降の記録は次のエントリで。