冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

「魔の山」谷川岳、雪山初心者挑戦記

2014-01-28 21:03:35 | 旅行
なんか、この真冬に太平洋側から高気圧が張り出してる感じで、気温が上がるのは予想できるけど晴れるのか曇るのかよく分からん。
先週後半は天気図を見ながらそう考えてました。2月の最初の土日は用があるので登山には行かれません。だから、天気が良ければこの週末は北八ヶ岳辺りに行きたいな、と。
しかし、日曜には低気圧が発達してきそうで天気も風も心配な感じだし、公共交通機関を使った日帰りで土曜日に登る初心者向けの山となると、ある程度限られてきます。
そこで、自分の中で急浮上したのが上越国境の谷川岳。遭難者数世界一、ヒマラヤの8,000メートル峰での死者を全部合計しても谷川岳での遭難死者の方が多い(もちろん入山者の母数が違うが)という魔の山です。
まあ、魔の山って言っても、遭難のほとんどは日本3大岩場の1つである大岩壁を登る人たちとか、バックカントリースキーで雪崩の危険性の高い沢に下って行く人なので、慎重に準備して行けば大丈夫なはず、と思います。
実際、谷川岳は雪の締まった3月に天神尾根を登るコースなら初心者向けとして紹介されています。が、厳冬期には豪雪地帯で粉雪をラッセルして進まなければならない可能性もあり、お勧めされていません。
先週赤城山で雪山デビューしたばかりの初心者中年は山頂にたどり着いて無事下山できるのか。。。

文章だけだと気分が乗らないので、とりあえずゲレンデ脇を登り切ったところから撮った谷川岳の雄姿を一枚。


朝6時36分に東京を出る上越新幹線「MAXたにがわ」の自由席は、スキーヤー、ボーダーで満席。ほとんどの人は終点のガーラ湯沢まで行くのでしょうが、私は手前の上毛高原駅で降り、関越バスで水上を経由して谷川岳ロープウェイ駅を目指します。
この時点では私も含めて3名しか乗っていなかったけど、水上駅で鈍行に乗って東京・埼玉方面からやってきたと思われる方々を拾い、10名以上の登山者が谷川岳を目指しました。
天気は曇り。気温は高めで、まさかの厳冬期の雪崩を勝手に想像して恐怖しながらバスに揺られていきます。
双耳峰と言われ、二つのピークを持つ谷川岳の姿は、すでにバスの車窓からずっと見えていました。どっしりとして威厳のある山です。
耳というのは、山頂の形を猫の耳のイメージに重ねて呼ぶものですが、「魔の山」なだけにモンスターの角のように見えてしまう。

9時ごろに天神平のロープウェイの山麓駅に着き、スキー場のある1,300m地点まで運んでもらいます。
いよいよ本格的な雪山登山が始まります。気温は高く、この地点ではプラスの温度だったと思われます。
アイゼンを装着してゲレンデ脇の結構急な坂を20分ほど登ると、最初の写真のようにこれから登る谷川岳がきれいに見えます。
そして、目を北東方向に向けると別の山が。これは白毛門。この一帯を縦走する馬蹄形縦走コースで最初か最後に登られる山ですな。


その後も順調に登っていきます。
粉雪をラッセルして進む必要がある場合に備え、実はAmazonで買ったスノーシューを持ってきていました。しかし、実際には先行者のトレースがしっかりついていて、雪も比較的締まっていたのでアイゼンでも大丈夫でした。
この日はバックカントリースキーをやる人を含めて30人くらいの登山者がいたのではないかと思いますが、多くの人はアイゼンで登っていました。

しかし、豪雪地帯であることに変わりはない。避難小屋は埋没。


風もほとんどなく、初心者に優しい天候でした。
それでも、アイゼンを蹴り込みながら登っていくのは結構たいへんで、何度か雪に腿まで埋まって体力を削られながら進みます。
途中で景色を堪能するために(実は息を整えるために)少し止まって周りを見回すと、雪山の絶景が見られます。
これは上州武尊山。


その奥に見える尾瀬方面。至仏山と思われる。雪の量がこちらも半端ではない。


自分の息遣いと風の音以外、何も聞こえないし、山の匂いもしません。
夏山であれば、鳥の声が聞こえたり草や土の匂いがするし、沢の水の音が聞こえたりします。しかし、雪山は静まり返り、色も白と灰色の2色の世界。
神秘的なものです。晴れて真っ青な空もいいけど、こういう墨絵のような世界も素晴らしい。静謐な美しさ。

これは谷川連峰の仙ノ倉山方面。


その先に浅間山。存在感あります。


振り返ると、先週登った赤城山。すそ野が広い。


気温が高かったせいか、急な斜面にはクラックがたくさんできていました。雪崩の元ですな。バックカントリースキーの人たちは大丈夫だったんだろうか。


とにかく、気温が高かったせいで汗はかくし、手袋も脱いで帽子も耳を出してアウターの前を開けて登っていました。
徐々に高度を上げると、谷川連峰の稜線の奥に、越後の山々も見えてきました。やはり雪の量が凄い。


この辺りになると、さすがに風が出てきて、気温も下がります。慌てて手袋をつけて帽子も深めにかぶります。
そして、山頂直下の山小屋近くの道標。3~4メートルの高さがあると思いますが、ほとんど埋まっている上に雪がこびりついています。エビの尻尾状態に近い。


ここまで来れば山頂はもうすぐ。まずは双耳峰の手前側、トマノ耳に到着。標高1,963m。
空気が澄んでいて、曇りだけど周囲を360度見渡すことができました。
これは、トマノ耳からもう一つのピークであるオキノ耳。


拡大すると、雪庇が凄い。谷川岳の天神尾根においては、この雪庇に近づかないことだけは気をつけないといけません。


仙ノ倉山方面の稜線。真っ白。


ここから10分ほど歩いて、オキノ耳を目指します。
その途中の岩と雪と風の芸術。


もう一つ雪と風の芸術。


やはり雪山、登った者しか味わうことのできない何かがあります。
そうこうしているうちに、オキノ耳に到着。標高1,977m。谷川岳を制覇しました。

オキノ耳から先は危険なので行けませんが、凄い雪です。下手に歩くと崩れ落ちるのでしょう。谷底まで。


オキノ耳から、先ほどまでいたトマノ耳を望む。凄いとこですね。


トマノ耳から谷川連峰の稜線。


絶景を20分くらい楽しんで、下山です。途中、山小屋のあたりで持ってきたパンと魔法瓶に入れた甜茶を飲んでエネルギー補給。
下りはふかふかの雪の上を楽しく下ることができるのですが、踏み固められたところは意外と固いのでちゃんとアイゼンを蹴り込まないと危険なこともあります。
何だかんだ言って、注意しながら下山。

途中、少しだけ日が差しました。風景の印象が変わります。


私としては、適度な標高差・ルートの長さで、楽しむことができる山でした。
ある意味畏怖の念さえ感じさせる格好いい山容の谷川岳は、いつか登ってみたい山でもありました。
それを、本格的な雪山デビューの対象として無事に制覇でき、有意義な山行でした。
下山してもう一度振り返ります。


午後2時ちょうどにロープウェイ駅に到着。山麓まで運んでもらったところ、次のバスまでは1時間近くあったので、地酒などお土産を買って休憩。
水上の駅までバスで出ると駅前にはお土産屋さんがたくさんあったので、おやきを買って小腹を満たしました。


その後は鈍行で東京まで帰りました。
雪山、楽しいものです。春まであと数回はチャンスがあると思うので、週末の天気がよさそうなら北八ヶ岳とか福島県あたりの山にも挑戦したいと思っております。

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冷たい風のような火を燃やすものたち

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赤城山ハイクで雪山デビュー

2014-01-19 22:35:31 | 旅行
18日の土曜日に赤城山に登りました。雪山初挑戦には手ごろな、危険の比較的少ない山です。百名山指定されているので、人気あるものと思われます。
赤城山は付近の山の総称で、独立峰の火山です。最高峰は黒桧山の標高1,828メートルだけど、カルデラ湖である大沼にビジターセンターがあり、そこまでバス路線があります。
大沼が1,345メートル地点なので、実際の標高差は500メートルもありません。
雪山はアイゼンをつけたりして装備が重いし、先行者がトレースを踏み固めていない場合には自分で雪をかき分けて進まなければならないなど、雪のない山行に比べて楽ではありません。
しかし、赤城山なら登山口から頂上までの標高差も小さい上に、アクセスのよい人気の山ということでトレースもしっかりついています。
危険度も難易度も低いので、アイゼンをつけての歩行の練習など、雪山初心者の自分にとってもトライしてみるにはよい山です。
それでも、吹雪の中を登るのは嫌なので、天気図をよく見て晴れると確信した日に登りました。結果は上々。雪山らしい絶景に遭遇できました。まあこのレベルではプチ絶景かもしれないけれど。

まずは、上越・長野新幹線で高崎に向かい、両毛線に乗り換えて前橋で降ります。前橋駅前からは赤城山への直行バスが1日3本出ており、9時前に出て10時くらいに赤城山に着きます。登山目的なら、ビジターセンターではなく、あかぎ広場前のバス停の方が便利です。


快晴で風も弱く、お天気は最高ということで神に感謝。バス停付近のトイレに行ったら早速登山開始です。付近に登山口があります。
黒桧山に直接登る方がメジャーなようですが、ヤマレコや登山ブログを参考に、駒ヶ岳から登って黒桧山にプチ縦走します。この方が傾斜が楽な上に、稜線に出てからの登りで太陽を背に景色を楽しんで写真が撮りやすそうだったので。もちろん、傾斜が楽なのでアイゼン歩行の練習にもよいと思ったわけですが。


早速雪の世界。東京生まれで雪の多く降る所に住んだ経験がないので、これだけでも十分感動する。


アイゼンですが、今後のことも考えて12本爪の本格的なやつを買いました。と言うか、夏山と違って何かあったらホントに死ぬかもしれないという恐怖があったので、ウェアも値段高いけどモンベルの店員さんに勧められるままにほとんどフル装備買いました。まあ、滑落する危険の高い場所や凍結した崖にはまだ挑戦しないので、ピッケルとか買ってないですが。

登山開始直後は夏山を歩くのとたいして変わらない感じで歩いていたのだけど、15分もするとアイゼンの重さが感じられるようになります。
それに、雪や氷にちゃんと刃を食い込ませるには、やはりそれなりに蹴り込む必要があるのも実感として分かってきます。
そこで、コースタイムは3時間ちょっとで短くて時間に余裕あるし、雲も湧き上がってくる心配はなさそうだったので、敢えて時間をかけて歩行の練習をしました。
凍った階段が結構難しかった。


この日の気温はマイナス4度くらいだったらしいけど、風が弱かったので結構暑く感じましたね。
雪山では汗が冷えて凍ってしまい、稜線で風にさらされて低体温症になる恐れがあります。だから、薄めのウェアを重ね着して体温調節するんだけど、これに失敗していました。
樹林帯の登りを終えて稜線に出るころには普通に汗かいてましたが、穏やかな天候のおかげで特に問題なく帰ってくることができました。
それでも、稜線に出ると景色が一変して感動して写真撮ったりして運動が止まった時に、ちょっと強い風に吹かれたりすると、やはり急に寒さを感じましたね。






高度感はあまりないけど、綺麗な雪の稜線を楽しむことができました。
快晴だったので空の青さが素晴らしい。夏山もそうだけど、山の景色は晴れるとホントに綺麗だ。

右前方には、日光山系の山々がくっきりと見えてきました。手前の大きいのは皇海山、奥の一段高いのが日光白根山ですかね。白根山は昨年6月に男体山に登った時にも眺めました。いずれ攻略したいですが、電車ではアクセスがあまりよくありません。


赤城山は独立峰なので、登山口に着くまでに山深さを感じません。前橋からバスに乗って市街地を抜けていくと、いきなり坂になって雪が積もりだして赤城山に到着します。
日本アルプスや八ヶ岳、あるいは奥多摩であっても、徐々に山々の深いところに入っていく趣がありますが、それは感じられません。
しかし、独立峰のいいところは、付近を遮るものがないので展望台として活躍することです。この天気なら日光連山だけでなく、谷川山系や尾瀬の方の眺望も期待できます。
まあ、そのためにはサッサと黒桧山に登頂しないといけないんですが。

大沼を見下ろしてみると、完全凍結したところに雪が積もって真っ白だった。


大したアップダウンもなく、順調に駒ヶ岳の山頂に着きました。標高1,685メートル。


頂上はちょっと霧氷っぽくなっていました。午前の早い時間ならもっと綺麗な霧氷なのでしょうが、日光と風にやられてこの時間ではかなり落ちていました。


そして、谷川山系も早々に拝むことができました。やはり雪の量が凄まじいイメージ。真っ白。日本有数の豪雪地帯ですからね。


いよいよ主峰の黒桧山を目指します。事前のリサーチによると、頂上までは結構急な登りが控えている模様。


天気がいいとはいえ、稜線で風が吹くと一気に寒くなります。この感覚を経験できたのはよかったかも。
今回は、カメラの操作がもどかしくなったりした時とかグラブを外したりしたんだけど、本来は危険な行為よね。
あとは、耳を覆う帽子は必要。自分は、極端に寒い場合に備えてバラクラバ(目出し帽)を持ってきていたけど、大して寒くなければウェアのフードをしっかりかぶれば風は防げると思ってまっした。
確かに防げるのだけど、やはり保温機能がないのは苦しい。帽子はいりますね。

稜線の鞍部では風が雪で不思議な形を作っていた。


こんな中で見ると、木々の芽も健気な感じだ。


黒桧山を直接登ってからこちらに縦走してくる人が多いので、この辺りではすれ違いが多くなります。
ちょっとトレースを外れて雪を踏むと、ズボッと膝上まで沈みますな。この感覚も初体験。
頂上までの急登は、アイゼンの練習でしっかりと爪を使ってゆっくり登りました。
すれ違いは多いけど、こっちから登っている人がほとんどいなかったので、追い抜かれたり渋滞の先頭になる心配がなかったのはよかったですな。

で、頂上近くの黒桧山大神のところまで到着。


山頂はもう少し北に向かったところです。そして、山頂からさらに少し進むと、展望の開けたところに出ます。快晴なので、皆さんそこで景色を楽しんでいました。






北西には谷川山系、北には上州武尊山から尾瀬方面、北東には日光山系がよく見えました。アルプスとかもうっすらと見えていたのかもしれないけど、それなりに風も出てきて目を見開いてよく見る余裕がない。だって、ツツジの木とかこんな風になってしまう気候ですからね。


雪が結晶のようになって積もっているところもありました。


山頂には多くの登山者がいて、皆さんガスバーナーでお湯を沸かしたりしてちゃんと食事作ってました。
私は魔法瓶に紅茶入れてきて、コンビニで買ったパンを食べた。
そして下山。これは楽だった。
雪山のいいところは、下山時に膝への負担がほとんどないことだと知る。今までは膝を壊す恐怖と戦っていたけど、雪がクッションになるので下りがとても楽。スピード下山で1時間足らずで下りきりました。


下山中、大沼と赤城神社がよく見えるところがありました。湖に浮かぶ神社って感じで格好いいです。


下山終了でアイゼンを外し、神社にお参りしました。無事な山行を感謝しようと、まずは手と口を清めようと水場に行くも、当然凍結していた。


神社ではお参りした後に登山のお守りを購入。これからも雪山に挑戦していくとなると、神の助けが必要。特に天候で。


神社は大沼に綺麗な朱塗りの橋がかかっています。これと黒桧山は絵になります。


そして大沼自体は広々と完全凍結。


時間に余裕があったので、バスルートにある富士見温泉に寄って温まりました。富士山は見えないものの、気持ちのよい露天風呂があります。これで入浴料500円は悪くないです。


温泉には食堂も併設されていたけど、夕食には早いのでパス。その代わり、土産物の販売所で漬物などを購入。地ビールは残念ながらなかった。登山で遠征する場合は旅行の一形態なので、その土地の食べ物・飲み物をできるだけ楽しみたいところです。
帰りは、高崎まで出てから快速電車で上野を経由して帰りました。新幹線使わなくても、乗り換えも含めた時間は2時間ちょっとなのでそんなに遠くないかも。
8時ごろには無事に家に着きました。
雪山デビューは天候のおかげで成功です。ウェアの調節とか、スキル面ではまだまだ問題山積だけど。

ちなみに、翌日の日曜日は東京は快晴だったけど、赤城山は猛吹雪だった模様。
運が良かったけど、天候の急転する雪山の恐ろしさを忘れるなという教訓かも。

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