冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

天狗岳 - 強風に煽られる過酷な雪山登山

2014-03-18 21:24:12 | 旅行
大雪で交通機関がマヒしたり、週末もいろいろと忙しい時期が続いて、前回の山行から1ヶ月以上間が開いてしまいましたが、北八ヶ岳の天狗岳に挑戦してきました。
この日は午後から曇ってしまったけど、登頂は快晴の午前中に済ませたのでお天気は問題なし。相変わらず、八ヶ岳との相性はよいです。

まずはターゲットの天狗岳の写真。東天狗岳と西天狗岳の2つのピークを持ちます。北八ヶ岳では最高峰で、雑誌やブログで仕入れた情報では、雪山初心者卒業試験の対象のようなものらしいです。


そのため、私も今年の冬に挑戦したいと思っていました。そして、谷川岳などでステップアップし、ある程度自信を持って臨んだ訳です。
ところが、今回の登山では、「雪山での強風」という大敵に初めて遭遇。これほど厳しい敵だとは思いませんでした。
いつもの山行では少なくとも一日で100枚以上は写真撮ってましたが、この日は50枚弱。強風に耐えながら進むのに精一杯で、写真の余裕なし。ちゃんと撮れたか確認するのさえ大変なので、とにかく写真撮ったら直ぐにコンデジしまって風に耐える状況。

あと、少し残念だったのは樹氷がすっかり落ちてしまっていたこと。
前日まではかなり綺麗な樹氷があったり、樹林帯も樹上に雪が積もっていたようですが、強風と比較的高い気温にやられてほとんど残っていませんでした。まあ、それでも苔とか可愛い。


樹上の雪は少なくても、冬の樹林帯は針葉樹の緑と空の青、雪の白さのコントラストが美しくて好きです。


あと、ダケカンバの木の皮が相当はがれていました。自然にはがれるものらしいけど、あまりにツルツルになっていたので、鹿の食害かと思いました。

今回は、コースタイム(休憩なしで6時間半から7時間程度)を見る限り公共交通機関での日帰りはギリギリっぽかったので、最初から飛ばしました。
登山口の渋の湯からは、最初の分岐までは結構急な登りです。ここを走るように登ったので、直ぐに汗だく。冬山での汗は低体温症につながるリスクがありますが、手袋も帽子も外してどんどん登りました。結果、黒百合ヒュッテまで1時間20分弱で到着。ちなみに、コースタイムは2時間半です。


雪が締まっていれば、岩などで苦しめられる夏道よりも、雪道の方が速く登れるのだと思います。が、それにしても速かった。
それはいいんだけど、ここでアイゼンを装着していたら髪の毛についた汗が凍りました。やはり雪山で汗をかくのはご法度ですな。

で、中山峠経由で東天狗岳を目指す。ところが、峠を過ぎてちょっと歩くと、いきなり風に舞った氷のかけらが顔に当たって痛い痛い。
こりゃ、あかん、ということでバラクラバを装着し、気合を入れ直して進みます。
ところが、進むも何も強風でほとんど飛ばされそうな勢い。ほぼ同時に出発した若い男性2人組のパーティも、登山慣れしている感じの方は何とか進まれますが、もう一人の方は停滞気味。それを見ながら、「雪山初心者としては、ここは勇気ある撤退をすべきか」と迷いました。
しかし、せっかくここまでハイペースで登ってきたのに撤退しては、時間が余りまくって悲しい。行けるところまで行こうと思って登りました。結局この2人は追い抜いて、一人で進みました。

それにしても、風が右側(西側)から吹き付けるせいで、呼吸するのもたいへん。ピッケル持たずにダブルストックという夏山と同じ装備でも進めたのは、コースの大半で東側は尾根側になっており、風に煽られて一気に滑落する可能性が低い場所だったからに過ぎませんな。
トレースはついているし、3月ということで新雪パウダーではなくアイスバーンになっているためにアイゼンは利きます。しかし、踏み出した足が風で煽られて思ったところに着地できない。とにかく体中に力を入れて、踏ん張り続けていないと本当に飛ばされる。
おそらく、風速20mは超えていたのだと思います。少なくとも瞬間的には。継続的にも15m以上だったのでしょう。まあ、予報でもそうなってたのだからしょうがない。

途中、雪山慣れした感じの若い男性(ソロ)に抜かれましたが、この人が登っていくのが見えたのがよかったです。「意外と登れるものですよ」と実例を目の前で示してくれているようなものなので、それに付いていきました。
結果、一時間弱で東天狗岳山頂(2,640メートル)に到着。達成感。


南八ヶ岳方面が大きく見えます。この時はそんなこと考える余裕なかったですが、今写真を見ると、来年は冬の赤岳を制覇したくなります。


本当は南アルプスとかも見えていたのかもしれませんが、風のせいでしっかり目を見張って遠くの景色を見る気力なし。蓼科山くらいがせいぜい。


それに、サングラスも自分の息で曇った上に水蒸気は冷たい風で凍りつくので、その氷をはがさないといけません。烈風の中でそんなことしてカメラ構えて写真撮るような余裕なし。
東天狗岳を制覇したと言っても、天狗岳の最高峰は西天狗岳の2,646メートル。まだ本当の意味では制覇していません。
実は、前を行っていたソロの男性は、私が東天狗の山頂に着く前にサッサと引き返していました。すれ違い際にお互い「台風ですね」とか声を掛け合いましたが、「この人でも今日は西天狗岳は行かないのか」とその時は思いました。しかし、東天狗岳山頂から見る限り西天狗岳への道は広く、少し飛ばされても大きく滑落するようには見えません。進むべきか撤退すべきか。


そうこうしているうちに、出発地点で一緒だった男性2人のパーティが到着。この方々に聞いてみると、西天狗に向かうとのこと。それなら、ということで私も出発。
トレースは風でほとんど消えていましたが、雪が凍って締まっていたので特に問題なく進むことができました。斜面では足首まで沈むくらいのプチラッセル。それより何より、風で押されてずり落ちることが多々あって、3歩進んで1歩下がるくらいの感じ。
それでも何とか西天狗岳も登頂。これで雪山一年目の目標であった、天狗岳を制覇です。この時、めったに買わない山バッジを買うことを決めていました。


西天狗の山頂から見る南八ヶ岳のパノラマ。硫黄岳の爆裂火口が目を引きます。去年の夏に、硫黄岳から横岳、赤岳、阿弥陀岳と制覇しています


そして、西天狗から見る東天狗。全然形が違うのが面白いですね。山頂には、後続のパーティが到達した模様。


ここからは下山ですが、下山中も容赦ない強風に煽られ続けました。
完全に吹き飛ばされることはなかったものの、広めの道ではまっすぐに進むことを諦めていました。多少斜めに進むことになっても、コースを外れない限り進んだ方がましだという感覚です。
気温は恐らく0度前後で比較的暖かかったのが幸いでした。
マイナス10度とかだったら、一層過酷だったのは間違いありません。

一応周回コースを通り、「天狗の奥庭」と名付けられた、溶岩のごろごろしているところを通過しました。


しかし、大きな溶岩ではまったく風よけになりません。
休憩もかねて溶岩に背を預けながら寝転がり、やっと何とか少し楽になります。そして撮った写真が上のものです。
なお、この道標にあるスリバチ池は、そもそも完全凍結した上に雪が積もっていて、強風の中では発見が難しかったと思います。自分が歩いていたら、地面が透明な氷になったところがあったので、恐らくスリバチ池の上を歩いたのだと思います。

そんな感じで苦労しつつも、快晴の下の天狗岳とそこからの眺望はは絶景。
結果的には登頂も果たし、心地よい疲労感と達成感でした。
結局、5時間かからないで登山口まで戻ってきてしまいました。風がなければもっと景色を楽しんだんだけど、今回はそれはできませんでした。
帰りは、茅野駅のお土産売り場で贔屓の地ビールを買って帰りました。


時期的にはまだ残雪期が続くので、もう一度か二度は東北方面や谷川連峰へ行く機会があるかもしれません。
それでも、今回の天狗岳は、今期の冬山の1つの区切りでした。
達成感とか呑気なこと言ってますが、あの強風の中ソロで登ったので、生還できてよかったというのが初心者としての感想です。