冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

八ヶ岳テント泊縦断 その3

2019-09-22 21:34:06 | 旅行
観音平から麦草峠まで八ヶ岳を縦断する山旅の3日目。いよいよ最終日です。この日はオーレン小屋を出発して蓑冠山を越えて根石岳、天狗岳に至り、黒百合平を経由して中山展望台、高見石、白駒池を通って麦草峠に至ります。冬に歩いたことのあるコースが多いですが、八ヶ岳の中では標高が比較的低いエリアなので夏は暑いと思って避けていました。しかし、実は山歩きを始めた直後から見てみたいと思っていた景色があるルートなので、お天気がよいことを願っていました。

さて、余裕を持って5時半ごろに出発。まずはシラビソの樹林帯をコースタイム50分ほど登ります。香りのよい気持ちのいい道です。


登山道は多少えぐれている。


大きなバイケイソウ。今年は北アルプスはコバイケイソウの当たり年だったらしいけど、行く機会がなかった。


高度を上げると樹間から硫黄岳が見えるようになります。


割といいペースで登って、6時10分ごろに蓑冠山に到着。


蓑冠山は山頂が樹木に囲まれていて展望がないので、ここでは休憩せずに根石岳を目指します。根石岳(右)と天狗岳(左)が樹間から見えるところにホシガラスがいました。




と、ここでアクシデント。何でもない道で軽くスリップする形で左足首をひねってしまいました。一瞬ズキッと痛みが走って焦りました。が、2年前から使っている好日山荘のバーゲンで安く買ったものの元々はいい値段がするハイカットのシューズのおかげか、ダメージは最小限に抑えられたようです。この後の山行にも支障はありませんでした。しかし、下山後に靴下を取り換える時に見ると踝の辺りの内出血がひどく、ギリギリで運がよかっただけですね。単独行はリスクが大きいです。

さて、気を取り直して歩き始めましょう。根石岳への道はこんな感じで樹木どころか草もほとんど見えませんね。ここは根石のコルと言われるところで、風が猛烈に吹き抜けるようです。この日は快晴無風のコンディションでしたが、積雪期に来た時は蓑冠山までは登ったけれどこっちに行くのは断念したことがあります。


根石岳方面、赤岳など南八ヶ岳に比べると人気が少ないのですが、実は絶景ポイントが多いのです。まず、樹林帯を抜けた瞬間にこの雲海。


そして根石岳に向けて根石のコルを歩いていくと、左手には根石岳山荘があります。


そして、そちらの方面はかるく柵が作られています。


何故かというと、それはコマクサの群落があるから。コマクサはこの3日間でたくさん目にしました。2日目の硫黄岳のコマクサ群生地も凄かったですが、この根石のコルの群生地も見事です。




コマクサ、高山植物の女王とか言われているけれど、ホントに過酷なコンディションを好む花ですね。そして、他の花は根付かないようなところだからコマクサだけの一大群落を作る。
ちなみに、、右側を見ると先ほどからずっと雲海の上に朝日が浮かんだ絶景です。


で、サクサク歩いて6:30に根石岳登頂。これで八ヶ岳の主要なピークは全部制覇したかな。ニュウとかまだだけど。


南の展望は当然硫黄岳とその後ろに赤岳。


根石のコルはこんな感じです。


空気が澄んでいて、南アルプスもかなりクッキリ見えます。


右端の仙丈ケ岳から左端の鳳凰三山まで全部見える。


贔屓の北岳を拡大。やはり格好いい。こんな感じなのに実際には高山植物の宝庫でライチョウさんもいるという。右に塩見岳(これも厳しい割に花が多い山)や三峰岳の岩、左に間ノ岳と農鳥岳も見えますね。


硫黄岳の爆裂火口を拡大。ジオパークっぷりが凄い。


縦の写真の方が実際に見ている景色の感覚に合うような気がする。


ここでも東側は雲海が素晴らしく、朝日とのコラボが美しい。


ちなみに、茅野側はそれほど雲海になっておらず。でも空気は澄んでいるので乗鞍や北アルプスまで見えました。
これから進む道。


その先にある東天狗岳と西天狗岳。積雪期に登頂していますが、無雪期は初めてです。西天狗岳は稜線の縦走ルートを外れるので、今回は東天狗岳のみを通る予定。


根石岳は素晴らしい展望台なので、しばらく写真を撮ったりしながら遊んでいました。でも、ここから少し下ったところに本日のハイライトとなるべき目的の場所があるので、そちらを目指します。
それは、白砂新道という本沢温泉と稜線をつなぐ道が合流する地点。この地点の写真が、私が山歩きを始めたばかりに買った登山関係のムック本に載っていて、その景色に感動していつかは来てみたいと思っていたのです。
そして6:52にその目的地に到着。


ムック本にはこちら側の図が載っていたのですが、この風景は広角でパノラマ画像にしないと伝わらないですね。


左右は根石岳と天狗岳。これらが一枚に入り切ると素晴らしいはず。




まあ、写真は私のコンデジでは限界がありますが、この眺めは素晴らしいもので、この場所に佇んでしばらく時間を過ごしました。屏風の耳から眺める紅葉の穂高連峰、鏡池越しの八ヶ岳、五色ヶ原、針ノ木稜線から黒部湖越しの立山・劒、北岳・間ノ岳稜線、北荒川岳からの眺め、塩見岳からの眺め、鬼怒沼、谷川岳東面、禿岩からの眺め、などと比肩し得る、まさにここにしかない景色として心に刻まれるものです。

十分堪能したら、まだまだ先が長いので出発。まずは目の前の天狗岳から。この辺りから高山植物の花々が再び出てきます。イブキジャコウソウ、イワオウギ、ミヤマオトコヨモギ、イワベンケイなど。




そして、7:15に東天狗岳登頂。この日はプリンのような形の蓼科山の方までクッキリ見えていますね。ホントに八ヶ岳連峰縦走というなら、あそこまで行くべきかもしれないですけどね。


これが西天狗岳。標高的には西天狗岳の方がちょっと高いです。


ちなみに、積雪期の西天狗岳はこんな感じ。山歩きを始めた年の冬に登り、雪山の強風という試練を初めて経験した場所です。


南八ヶ岳方面。ずっと歩いてきたわけで、やはり感慨深い。


ちょっと目をずらすと奥秩父方面は雲海の上にでていていい感じですね。下界は曇りですね。


北八ヶ岳方面。森深いことを示す濃い緑色。北八ヶ岳は苔生す原生林のイメージですね。


北アルプスも見えています。


さて、これから進む道ですが、天狗岳から中山峠に至るには樹林帯の道を素直に下るか、天狗の奥庭と呼ばれる岩場を行くか、2つのルートから選べます。ちなみに、樹林帯のルートはこの切れ落ちた右側の崖の直上を歩きます。


樹林帯はその後も続くことが分かっているので、どうせならということで天狗の奥庭を選択。写真のやや左前方に続くルートです。これがとんでもないミスジャッジだったことを思い知らされるのに時間はかかりませんでしたが。


積雪期に天狗の奥庭を歩いた時は、装備も比較的軽かったし雪が岩の上に積もっていたせいで、岩の形が隠されてデコボコがほとんどなくなっていました。つまり、歩きやすかった。そのイメージで行ったのがいけなかったですね。そもそもテント泊装備で大きな岩の道を行くのが大変なのは、初日の網笠山で思い知らされていたのに。


こんな道なので、空身なら跳びはねたり悠々と手足を使ってアスレチックな山行を楽しめるのでしょうが、テント泊装備では転ばないようにするのが大変。時間もかかるし神経も使う。余裕がなくてほとんど写真もありません。これは振り返って天狗岳を見た図。


積雪期に来た時は、強風に苦労していたので天狗の奥庭の大きな岩が風よけになってくれたりしたのですが、今回はまったくもって大変なだけ。
やっと少し平坦なところに出たので休憩です。


で、前夜の夜露で濡れたフライシートを干して乾かす。


岩の隙間に一輪だけ咲いているタカネニガナが可愛い。


トウヤクリンドウ。秋の花と言われるけど、盛夏の山行でちょくちょく見かけますね。


そんな感じで苦戦しつつ、休憩も取ったのであまり参考にはならないですが、コースタイム1時間のところ1時間40分ほどかかってやっと黒百合ヒュッテに到着。ここでも休憩しようかと思いましたが、スタッフが布団干しに忙しそうにしていたのでパス。小屋周辺にはヤマハハコがたくさん咲いていて綺麗でした。




で、黒百合ヒュッテからは5分ほど木道を通って中山峠へ。ここからは樹林帯です。


中山峠からの展望。やはり緑濃い。


中山峠から中山展望台への道は、一部でぬかるんだ所があったものの木道も登場するなど全体的に歩きやすく、アップダウンも少ない道でした。
景色は北八ヶ岳らしく、一部で縞枯れが見られる針葉樹林です。香りもよく、天気がいいのでやや暑いですが気持ちのいい道でした。


中山展望台はこんな感じ。広くて解放感ある場所です。積雪期に来た時にはまさに展望台として楽しんだのですが、夏だと岩がゴツゴツしていて歩きにくく、既に根石岳や天狗岳の山頂からの景色も十分楽しんでいるので今回はほどんど時間を使わずに直ぐに高見石を目指して高度を下げます。




そして、ここからのコースタイム1時間の道が苦行でした。始まりからこんな感じ。


必ずしも急な坂ではないのですが、大きな石が多くてテント泊装備だと苦労するパターン。北八ヶ岳らしく苔生して滑りやすいという特徴も加わり、相当に神経を使います。これだと、特に下りは小屋泊装備でも結構たいへんな感じで、他の登山者も皆苦労していました。




オコジョの森。コケ丸が登場。懐かしい。北八ヶ岳の森にはこのような名前がついていて、特徴的な苔の解説があります。冬に来た時には当然すべてが雪の下でした。雪の道の方がどう考えても歩きやすい。




冬の道。北欧かカナダの森のよう。美しく歩きやすい。雪って素晴らしい。


あまりに苦戦して感覚的には永久に歩いているのではないかと思われるほど長く感じた道でしたが、それでも実際にはコースタイムより5分ほど遅れただけで高見石小屋に到着。夏に来るのは初めてです。ここでソフトドリンクを購入してしばし休憩。一息ついたら、山小屋の裏手にある高見石に登ります。ここからは白駒池や北八ヶ岳、そして浅間山方面がよく見えるのです。


いやー、ホントに、空身で大きな岩を登るのは楽しい。アスレチックで楽しいし、何より体の自由がきくからスイスイ行ける。ジャンプも可能。これなら登りも下りもへたな道より早いくらいスピード出せます。これがテント泊装備を背負っているとまったくの苦行。テントでプライベート空間を作って山に入って溶け込んでいくというのは、非日常への脱出という意味ではとてもいいのですが、事故も起こりやすいだろうしデメリットも大きいです。
それはともかく、高見石からの展望はすばらしい。大きな石に寝転がって楽しむ人続出。




夏雲が上がってきていて、それがこの季節らしい雰囲気を演出していました。




時刻は11:45頃。麦草峠からのバスは15:40なので、時間的にはかなり余裕があります。しかし、足首をちょっと怪我していることもあるし、夏雲の状態によってはにわか雨もあり得るので、動けるうちに動いてしまうのが単独行の鉄則。次は白駒池を目指します。この道も、多少は斜度が緩くなるものの高見石へと下った道に似て大きな石が多く、コースタイムをややオーバーしました。まあ、針葉樹と苔の森の雰囲気は素晴らしい。






高見の森。




で、やっとのことで白駒池に到着。ここまで来ると登山者よりも一般観光客が多くなります。国道が近くを通っていてバスも来ているし、池の周りの道は整備されているのでスニーカーでも問題なしですから。そして、その雰囲気に今回の3日間の山行がついに終わったことを感じさせられる。


池の周りの山小屋は、観光地の食堂っぽい雰囲気もあり、汗だくの登山者は入りにくいですね。ソフトクリームなどにもあまり興味がないのでここは池の写真だけ撮ったらすぐに退散。麦草峠に向かいます。途中の道は登山者でなくても十分楽しめる整備された道ですが、左右の森を見渡すと苔が美しく、散策にはもってこいの場所だと思います。










コケ丸も相変わらず頑張っている。


針葉樹も美しい。




そして、白駒の奥庭に到着。開けたところですが、針葉樹と岩のコントラストの面白いところで、積雪期だと雪が作る吹き溜まりの形がとても楽しいところです。ちょっとしたスノーモンスターがたくさん出現していました。夏は木々の緑と岩の灰色の競演。




冬の白駒の奥庭。


白駒の奥庭を過ぎて少し歩くと、茶臼山や縞枯山が見えてきます。


そして麦草ヒュッテも見えてきました。いよいよ3日間の旅の終わりが近い。


冬の麦草ヒュッテ周辺です。雪原。


夏の麦草ヒュッテ周辺の景色。とても夏らしい。


そして13:30頃に麦草ヒュッテに到着です。


ヒュッテでは昼食に山菜蕎麦をいただき、八ヶ岳全山が描かれた手拭いを記念に買いました。
アルペンな岩々しい道も苔むした原生林の樹林帯も楽しめる八ヶ岳は、多くの高山植物の花が咲き誇る花の名山でもあります。日本アルプスに比べると地味な印象かもしれませんが、私はいつもお天気の相性もよく、楽しませてもらっている山域です。夏も冬も楽しい。山小屋がルート上に多くあることも、安心感があるし。
ということで、3か月ぶりの山行に二泊三日のテント泊装備で挑むという若干厳しいプランもほぼ完璧に終えることができ、とても充実した山旅になりました。八ヶ岳に感謝です。

八ヶ岳テント泊縦断 その2

2019-09-16 21:58:39 | 旅行
8月3日から5日の八ヶ岳縦断旅。中日の8月4日の記録です。前日は久々のテント泊山行でコースタイムより大幅に遅れての苦しい道でしたが、何とか累積標高差1,400mを乗り越えて難所のキレット前半戦を終了。針葉樹の香りのよいキレット小屋のテント場に癒されながら眠りにつきました。テント場に最後にやって来たのは3人の外国人の方々で、私は英語は普通に喋るので会話したところ、なんとそれぞれポーランド、スウェーデン、イギリスの3か国の出身ということでした。日本の山に魅せられる外国人が多いのは嬉しいですね。

さて、この日も夜明けは5時ちょうどくらいなのですが、その20分くらい前から既に明るいのでそれに合わせて準備も完了。4:45頃に出発です。シラビソの香りの豊かなキレット小屋のテント場を後にするのはちょっと寂しいけど。


中日のこの日は、キレットを越えて赤岳に登頂。そして人気の横岳~硫黄岳に続く稜線を経て、夏沢峠に下降。最後はオーレン小屋のテント場を目指します。累積標高差は大したことないですが、まずは赤岳への登りが厳しい道だし、横岳は岩場で細かなアップダウンが結構面倒です。今日も気が抜けません。ソロテント泊は厳しいのだ。

さて、歩き始めて5分もしないで富士山の絶景スポットがありました。雲海と富士山のコラボは最強。






そして赤岳は昨日から変わらず、悪役ボスキャラとして聳え立っている。ホントにあれ登るのか。一般登山道としては穂高より厳しくないか。


このルンゼ。


こう登るようだ。


振り返ると権現岳。昨日通ってきたルートも分かるけど、昨日はガスが出ていたので稜線美を楽しむことはできませんでした。ちょっと残念。


山頂部拡大。


お花は、早速本日もチシマギキョウが登場。




コマクサやヨツバシオガマも。このヨツバシオガマは形は今一つだけど、この山行で初めてピントが合った。




権現岳に朝日が当たる。富士山も奥に見えています。




いよいよルンゼに突入。当然ストックは使わず、手を使います。三点支持を確実に。それにしてもザックの重さが気になる。小屋泊装備なら楽しいアスレチックイベントだったかもしれませんが、テント泊装備だと必死。


ちょっと振り返ると、崖。崖を登ってきている。


険しい道が続きます。


ちょっとだけ平らなところに出た。でもこの先も急だなあ。


振り返って富士山に癒しを求める。


権現岳も格好いい。八ヶ岳南部は赤岳~横岳~硫黄岳が圧倒的にメジャーだと思いますが、権現岳って格好いいですね。このキレットルートは万人にお勧めはできませんが。


いい加減崖は終わりにしてほしい。


崖にもチシマギキョウが多いです。そして、タカネツメクサもたくさん出てきました。お花は嬉しいですね。素直に現実逃避しましょう。




ここに来て梯子か。足を滑らせたらまずい梯子だ。


梯子を登り切って振り返ると大きな岩。大天狗と子天狗でしょう。


どうやら最大の難所は越えたようで、少し斜度も緩くなるのでここからはお花の写真が増えます。イブキジャコウソウ、ミネウスユキソウ、イワオウギ、タカネツメクサ、ムカゴトラノオ、キンロバイ、ミヤマオトコヨモギ、タカネナデシコなど。多種多様な花々。さすが八ヶ岳。


















さて、前方には竜頭峰と思われる岩峰が聳えていますが、これは左から巻きます。


コマクサも出てきました。比較的大きな株。


このタカネツメクサは立派な株。小さくてあまり人気ない花かもしれないけど、拡大すると美しさがよく分かる。






この辺りからは基本的に難所はなくて、キレット通過でヘロヘロになっていたとはいってもやや落ち着いて歩を進めました。そして、分岐点に到着。ここからは行者小屋方面から文三郎尾根を登ってくる多くの登山者と一緒になるので、急に混雑します。


下ってくる人とのすれ違いもあるので、写真を撮る余裕はなくなります。そして、順調に登頂。変な話、文三郎尾根から日帰りとか小屋泊装備で登っている人達に対してある種の優越感のようなものを感じていましたね。キレットをテント泊装備で登ったので。まあ、つまらん話ですが、やはり難度というか要求される体力全然違いますからね。
それはそうと、3回目の赤岳山頂もピーカン。八ヶ岳の神様に感謝です。何だかんだ言って、時間的にもコースタイム通りの丁度2時間で登頂でした。


まずは登ってきた権現岳方面を眺める。キレットは見えていませんが、網笠山は見えています。それにしても結構歩いてきたもんだ。


権現岳の後方には南アルプス北部の山々も見えています。大好きな北岳も。この2年間は行く機会がないですが。


北側に目を転じると、翌日越えていく天狗岳も見えています。まだまだ遠いイメージ。


阿弥陀岳方面。こっちに行ったのは実際には1回しかないですが、途中の中岳のアップダウンが微妙に疲れたイメージ。阿弥陀岳山頂直下は斜度がかなり急ですが、岩場という訳ではないので一気に落ちる恐怖はなかったと思います。


行者小屋方面を見下ろす。あそこにテントを張ったのは、登山を始めたばかりの年の秋でした。この時期は緑が濃いですね。


さて、山頂は混雑しているので、あまり長居しないで横岳方面に縦走です。この日の目的地は最初に書いたようにオーレン小屋のテント場で、硫黄岳まで越えて夏沢峠まで出てから少し下ります。進行方向、横岳と硫黄岳が見える。


今日もチシマギキョウが多いです。


サクサク進んで、地蔵尾根との分岐からちょっと行ったところから振り返った図。この形の赤岳は見慣れています。しかし、この山行を経てあの厳しいキレットの方から見上げる赤岳の姿の方に価値を感じる。


キレットを歩いていた時は周囲に誰もいませんでしたが、横岳の稜線は写真のように人が多いですし、危険とは言えないまでもそれなりの岩場で鎖や梯子も登場しますから、テント泊装備だと周りの人に気を使います。ほとんどの人は日帰りか小屋泊装備(小屋に衣類は置いているので水と非常食と地図くらいしか持っていない)なので、どうしてもこっちの方が鈍重になりますし、すれ違い時とかこっちの大きなザックにぶつかる人も出てくるので。一方、こっちが大きな装備背負っているのは分かるだろうから、向こうも気を使ってサッサと追い抜いたり特に多人数グループはすれ違いで道を譲ってくれてもよさそうな場面もあるのだけれど、経験的に八ヶ岳や北アではそうした気遣いは先ず期待できないですね。南アだと多少は期待できる気がする。


まあ、横岳はまさに花の宝庫なので、花を愛でたり探したり写真を撮ったりしながらゆっくり進みます。やはりイブキジャコウソウやチシマギキョウ、タカネツメクサなどの定番が多かったですが、チングルマかチョウノスケソウかウメバチソウか迷うような花も。綺麗なんですけどね。後は、硫黄岳が近付くにつれてコマクサも増えてきました。
















イワヒバリと思われる小鳥さんも登場。


横岳稜線はゆっくりと歩きました。キレット越えで赤岳に登頂した疲労もあるし、ザックは重いし、人は多いし、天気はいいし花も綺麗なので。で、結果的にはコースタイムを30分ほどオーバーしながらも楽しいハイキングになりました。
で、次に目指すは硫黄岳。お天気がいいのはありがたいものの、やはり盛夏の稜線は暑いので、その前の硫黄岳山荘で冷たいソフトドリンクを買おうと思っていました。


クライミングの対象である大同心を左手に見ながら。


と、この辺りから八ヶ岳らしい火山性の土の上にピンク色がやけに目立つようになります。硫黄岳~横岳間のコマクサの群生地です。




この道の両側、基本的にコマクサ群生地帯です。


コマクサは群落を作りがちな花ですが、これほどの大群落は始めて見ました。北アルプスの蓮華岳も凄かったけど、こっちの方が上じゃないかな。


この他にもタカネニガナやチシマギキョウ、それに名前を特定できない白い花が咲いていました。


この白い花、とても気になります。なぜ名前が特定できないのか不明。こんな大株で葉の形も花の形もハッキリ分かっているのに。


で、トコトコ歩いているうちに硫黄岳山荘に到着。2016年の初夏に、ツクモグサを見るために宿泊したことがあります。硫黄岳山荘グループの山荘では夏沢鉱泉にも積雪期に泊ったことがありますが、いずれの山小屋もスタッフがとても丁寧親切で、食事もボリュームがあり美味しく、利用価値が高いという印象があります。ちなみに、硫黄岳山荘は稜線にあるにも拘わらず、水洗トイレやシャワー施設まである山小屋です。


今回は時間的にも9:20くらいで昼食には早いし、ソフトドリンクを購入するだけでした。それでもベンチがあるのでしばらく休憩。10時少し前に硫黄岳に向けて出発です。
この硫黄岳への道は結構好きですね。山頂の広い硫黄岳ですが、山頂直下も緩めの斜度の道がビクトリーロードっぽくて好きです。ガスが出た時には迷いやすいので、大型のケルンが一定間隔で置かれています。




西側から夏雲が上がり始めましたね。10時過ぎですからね。まあ、青空に真っ白い大きな雲は夏らしくていい景色です。


山頂近くから赤岳方面を振り返る。


そして、10時18分頃に硫黄岳登頂。人が多く、山頂標識のところで写真を撮るのは渋滞。そこでまずは爆裂火口を。夏雲が少しずつ上がってきていました。






これは積雪期の写真。まあ、迫力は同じだが趣が異なる。


硫黄岳山頂からの赤岳~阿弥陀岳の図は定番ですね。


ちなみに、積雪期のシーンはこんな感じ。


赤岳拡大。


これくらい引いてみた方が格好いいかも。


権現岳にもズーム。だいぶ遠くなった。


硫黄岳山頂の祠のような人工物の後ろに夏雲。絵になる。


天狗岳方面は雲が上がってきていて、蓼科山などは既に見えず。


山頂にはコゴメグサが結構ありました。


10分くらい山頂で遊んだら、夏沢峠に向けて高度を下げていきます。冬に登った時は風が強くて大変だったイメージですが、この日は穏やかでした。途中で爆裂火口を覗けるところがあります。


緑濃い風景だ。


進行方向。基本的に緩やかな道です。


で、11:10くらいに夏沢峠到着。少数ですが登山者がいて、時間的に皆さん軽く昼食・行動食を取られていました。私もザックを下ろして菓子パンを食べて最後の栄養補給。




これは積雪期の夏沢峠。静まり返っている。


少し休んだらオーレン小屋まで最後の20分ほどの下りです。樹林帯で針葉樹香りが強く、八ヶ岳らしい気持ちのよい原生林の中を行きます。




そしてオーレン小屋到着。テント泊でもお風呂も500円払えば入れます。トイレも屋内。八ヶ岳の山小屋は親切設計・運営です。


小屋の脇には沢が流れていて、キンキンの冷たい水が流れています。ここでシャツと手拭いを洗い、顔と体を拭く。付近には可愛いお花も。




この日は日曜日だったので、テント場もまばら。週末は混みあうようですが、月曜も山歩きの人は少ない模様。


雲が結構上がってきていましたが、この日は雷雨はありませんでした。


で、登山中としては遅めの昼食をアルファ米の山菜おこわとイワシの缶詰で取って、後はゆっくり。5時半ごろに代わり映えのしないパスタの夕食を取って就寝です。
2日目はキレット~赤岳にテント泊装備の荷物を担いで挑むという、3か月ぶりの山行としては若干無謀な挑戦でしたが、お天気にも恵まれて安全山行で楽しむことができました。やはり八ヶ岳とは相性がいい。山に感謝です。
翌日は最終日。根石岳、天狗岳を越えて白駒池に出て、最後は麦草峠でフィニッシュの予定です。

八ヶ岳テント泊縦断 その1

2019-09-15 00:39:15 | 旅行
2019年8月3日から5日にかけて、観音平から麦草峠まで八ヶ岳を縦断しました。今年はGW以降はお天気も悪くて全然お山に行っていなかったので体力的にはかなり不安なものがありましたが、この時期どこかの高山に行かないとひと夏無駄にしてしまうので、混雑必至でロングコースのアルプスを避けて八ヶ岳にしました。赤岳より南の方はまだ歩いていなかったし。
結果的にはお天気にもかなり恵まれ、充実した山行でした。八ヶ岳はいつ行ってもお天気がよくて、愛されている感じがします。そして、樹林帯の香りや小鳥の声、数多くの高山植物の花々など、岩々しく格好いい稜線美だけでないたくさんの魅力にいつも癒されますね。かなり贔屓の山域です。
いつも通り、まずは山行のまとめ的な写真を数枚アップ。






















八ヶ岳を(ほぼ)全山縦走しようとすると、まずは観音平から網笠山を目指すのが一般的と思います。私もそうしたのですが、公共交通機関利用の場合小淵沢駅から登山口までのアプローチは基本的にタクシーになるので、困りもの。そこで、8,000円と安くはないのですが毎日アルペン号を利用しました。これなら夜明け前の朝4時から登山を開始できるというメリットもあるので。まあ、毎回のように寝にくい、あまり快適ではない車内ですが。


午前3時半頃には観音平の駐車場に到着し、眠いのに下ろされます。さっさと準備をして登山開始。丁度4時ごろでした。


初日は観音平から網笠山と権現岳を登頂し、権現岳と赤岳の間のキレット(八ヶ岳の一般ルートではかなりの難所)に立つキレット小屋のテント場に宿泊予定です。コースタイムこそ6時間15分となっていますが、斜度や岩場を考えると3か月ぶりの山行にしては厳しいルートだし、累積標高差も1,400mを超えるのでそれなりの覚悟は必要です。

出発から最初の20分くらいはヘッドランプの明かりが必要でしたが、夜明け前でも日の光で直ぐに明るくなりはじめ、特に問題なくコースタイム通りに最初のチェックポイントである雲海というところに到着。ベンチがあるので水を飲んでヘッドランプを外す。




周囲は八ヶ岳らしい針葉樹林。


この辺りまでは結構快調で、3か月ぶりの登山かつ今夏初めてのテント泊装備という不安を払拭させるような体調でしたが、この後しばらくすると体力減退というか、体が山慣れしていないために苦行を強いられました。
お花は地味で、トリアシショウマとかヤマホタルブクロが散見される程度。あまり癒しにならない。




網笠山、結構森深い感じ。針葉樹の香りはいいんですけどね。


この日は夜明けから暫くは好天で、それはいいんだけど真夏はやはり暑い。汗が噴き出て苦しい。登山道もこんな感じになってきて、滑りがちな大きな石はテント泊装備だとペース落ちるし。写真もブレている。既に集中力が減退。


大きな石の道は、登りも下りも日帰りや小屋泊装備なら効率よく進めると思うんですよね。一歩一歩が大きくて、ピョンピョン行ける感じで。これがテント泊装備だと重い荷物のせいで転びやすいから足の置き所探すのにも苦労して、全然ペースが上がらない。
そんな中、シャクナゲが結構咲いていたのは嬉しかった。


で、次のチェックポイントである押手川にはコースタイムより5分ほど遅れて到着。大した流れではなく、濁っているので水場にもならないところですが、なぜか名前がついていてチェックポイントになっている不思議なところ。




この後も地味ながら楽ではない道が続く。


木漏れ日が美しかったり、針葉樹に交じって白樺が出てきたりとそれなりに森歩きも楽しいのですが、汗まみれで苦行感が強い。この日はあとから来た小屋泊装備の人達に抜かれまくりました。と言うか、テント泊装備の人は少なかったですね。




シャクナゲだけは癒し。ハクサンシャクナゲですかね。まだ蕾のものもありました。


押手川から40分ほど歩いて、やっと少し展望が得られる場所に。


ここでタカネバラ。至仏山と白馬岳でしか見た記憶がない。しかも、こんな大きな木は初めてかも。網笠山の意外な実力を認識。




シャクナゲは相変わらずキレイ。


この他にもアキノキリンソウやオトギリソウが出てきて、徐々にお花が増えて嬉しい道に。そして、岩々しい感じで視界が開けたので山頂が近づいた感。ザックを下ろせるという期待が膨らむ。


振り返るとやや霞んだ空の下に小淵沢方面。


網笠山山頂直下の岩場は、オトギリソウが多く咲いていました。


そして何とミネウスユキソウも登場。可愛い。網笠山のお花の実力、侮り難い。


で、苦労しながらもコースタイムより5分ほど遅れただけでなんとか登頂。


これから向かう権現岳方面。まだひたっすら遠い感じ。阿弥陀岳も見えています。赤岳には雲がかかり始めています。南八ヶ岳山々は荒々しくて格好いいですね。この時はまだあれらの山々の厳しさを実感していませんでした・


権現岳拡大。山頂は右側。左側はギボシと呼ばれるピークでしょう。


山頂では菓子パンなどで栄養補給し、しばし休憩。これまではテント泊装備でも、休憩時間を入れてもコースタイムより遅れることは少なかったのですが、この日は流石に久しぶりの山行のせいか遅れ気味でした。それでもまあ、晴れていて展望もいいので山頂は気持ちいい。


まあ、正午くらいまでにキレット小屋に着けばいいと思っていたので、それほど気にしていませんでした。この時点では。だって4時に出発でコースタイム6時間15分なら、正午までには着かないとは思わないでしょう。着かなかったら、それは無茶苦茶バテているか、事故があったか、そういうレベルでしょう。
で、10分くらい休憩して出発。コースタイムで20分下って青年小屋を目指します。そして、ここからがこの日の誤算の始まり。2019年の8月前半は、7月終わりまで続いた長梅雨が明け、猛暑の到来と共に大気は不安定なことが多く、午後は雷雨の日が多かったのです。この前日もそんな感じで、網笠山の樹林帯も道が濡れていました。そして、山頂直下は大きな石で滑りやすく、テント泊装備だと緊張感を強いられます。何でもないルートのはずがコースタイムの倍以上の45分かかりました。写真を撮る余裕もなし。ゴゼンタチバナのピントのずれた写真が2枚あるだけ。
そして、山頂直下の樹林帯を抜けると、今度は火山性の大きな岩の道。これ、小屋泊装備だとピョンピョン跳びながら走って下りられる楽しいところなんだけど、テント泊装備だと転ばないように慎重になるから遅くなるという道の典型。これも45分かかった理由の1つです。


高山蝶に癒しを求めるが、日帰り装備の女性に簡単に抜かれていく。


で、やっと青年小屋。美味しいと評判の水を汲もうかとも思いましたが、遅れが出始めているのでソイジョイで栄養補給して息を整えて直ぐに出発。


権現岳に向けて出発して5分ほどで振り返った図。網笠山の山容はまさに笠ですが、あの何でもなく見える山頂からの道にあれほど苦戦するとは。


そして、ここからも苦戦。権現岳までの道は、ハッキリ言って普通の道です。時々片側が切れ落ちた道で斜度的にも楽ではないですが、ガレもザレも斜度も際立ったものではなく、お花も多いので普通なら楽しんで登れる道でしょう。まずはミヤマセンキュウ。


しかし、この日はこの時点で既にバテ気味。ここからコースタイムに対して遅れが目立ち始めました。40分ほど歩いたところで、チシマギキョウがきれいで少し開けたところがあったので、ザックを下ろして少し休憩。いつもならお花の写真撮ったりしながら立ったまま5秒も休めば回復するのに、この日は心拍も息切れも回復しない。


見えているのはギボシかな。格好いいんだけど、この辺りから徐々にガスが湧いてきました。時刻は9時に近づいていて、夏山ではそろそろ雲が上がってくる時間なのでしょうがない。


何とか再び歩き始める。ダイナミックな景色は見ごたえがあります。体力的に余裕あれば楽しいルートでしょう。


お花もとても豊富でした。イブキジャコウソウは多かった。




イワオオギも多かった。




タカネナデシコは少なかった。


ミヤマダイコンソウは終盤で残念。黄色の花は可愛いのに。


シコタンハコベがあったのは嬉しい。赤いオシベが目立たなくてちょっと残念だけど。


コゴメグサも多かった。今年は、ほかの山域でも多くのコゴメグサを見ました。当たり年だったのかな。小さくて地味な花ですが、よく見ると複雑な色合いで、黄色と紫が芸術的な花だと思います。


そして、この山行で一番目立っていたのは青紫のチシマギキョウ。




あとは、初めて見た花としてはミヤマオトコヨモギがたくさん咲いていました。ただし、ピントが合わせづらくて、バテ気味でお花のお写真を撮るためにかがむのも一苦労のこの時は上手く撮影できず。
ミエウスユキソウもあります。いやはや、白、黄色、青、赤、紫、全ての花がある。八ヶ岳って本当に花の名山だと思う。




お花を愛でるのは私の山行の最大の目的と言っていいので、それは楽しい。しかし、やはり背景に青空があった方がいいですね。この日はそれが残念でした。そして、ガスが行く手を遮り始めます。


風景的には絶景稜線は望めなくなりましたが、お花はどんどん出てきます。タカネニガナ。


可愛いミヤママンネングサ。




そしてイワツメクサ。イワツメクサが出てくると高山のイメージ。ライチョウさんの好物だし。


ミヤマオトコヨモギをやっと少しまともに撮影。この絵にあるように、実際には多くの花々が寄り添い合って咲いています。






シコタンハコベも再び登場。可愛い。


で、ヤマレコレポートにもよく出てくる切れ落ちた岩場の道に。ホント、高山植物ってこういうところに多いから不思議だよな。


この日、一番ピントが合わなかったのが何故かヨツバシオガマ。それなりに多く咲いていましたが。


ウサギギク三連星。


そして、コースタイムより30分ほど遅れてやっとのことで権現岳直下の権現小屋に到着。遅れていることもあり、ここでは休まずに山頂を目指します。


小屋近くにもミネウスユキソウやミヤマダイコンソウ、ミヤマダイモンジソウなどが可愛く咲いていました。権現岳は花の種類が多くて素晴らしいと思います。






で、コースタイム1時間30分のところを2時間かけてやっと登頂。権現岳2,715m、この日の最高地点。


山頂の剣も一応触っておく。


網笠山を振り返る。いやー、この道に何でこれほど苦労したのか。青年小屋から権現岳山頂までは400mくらいの標高差ですから、調子がよければ1時間ちょっとで登れると思います。それが2時間かかるとは。


気を取り直してキレット小屋のテント場を目指します。疲れたからと言って休んでいては何時までたっても安全地帯にたどり着かないというのが登山の不都合な真実。まあ、相変わらずお花は綺麗だし。チシマギキョウやタカネニガナに加え、ムカゴトラノオも出てきました。相変わらず色とりどり。






そして、ヤマレコレポートでもよく目にする長い梯子の登場です。


ガスが出て微妙に濡れていることもあり、いつもは緊張しない梯子もこの日は少し緊張しましたね。でも、ゆっくり慎重にいけば大丈夫だと思います。梯子の転落って意外と少ないんじゃないかな。ちょっとした岩場の方が、滑ったりすると掴まる場所がなかったりして危ない気がしますね。
梯子を下りたところ。片側切れ落ちた道です。まだキレットと呼ばれるエリアではないかもしれませんが、この辺りからはずっと険しい道でした。


このお花は何ていうのかな。可愛いけど名前が分からない。


振り返ると権現岳。ガスのかかり方が悪役的。


この辺りからの道は、斜度はそれほどではなくても岩で足の置き所が限られる感じの道が続きます。特にそういう道で下りの場合、テント泊装備だとホントに気を使うからどうしてもペースが遅くなります。権現岳からキレット小屋までのコースタイムは1時間10分ですが、1時間半はかかるだろうと思いました。10時20分ごろに権現岳を出発だったので、ちょうど正午頃に着くかなと。

この後、極端に写真が減ります。理由は、ガスで景色が見えない。そしてお花も減った。そして道が険しい。何より不快だったのは、大きなアブ。ハッカ油もあまり利かず(と言うか、汗で直ぐに効果が切れた)、スポーツタイツの上からでもどんどんかみついてきます。最初のうちは払いのける余力もありましたが、そのうち険しい道をスリップしないようにする方に集中せざるを得ず、結構噛まれました。噛み後は、その後1か月たってもまだかゆいという悲惨さ。恐ろしい。

キレット小屋までは300mほど下るのですが、スリップしないように行くのがホントにたいへん。そして、結構アップダウンもあって、バテ気味の体にこたえる。


この先とか、少しのアップダウンも気がなえる。


ツルネという小ピークはコマクサの名所のようです。確かに綺麗な形のものが結構咲いていました。ただ、数では翌日以降にもっと凄い群生地を通りましたが。




そそて、ハイマツ帯から樹林帯に降りるとそろそろやっとのことでキレット小屋が近付きます。グンナイフウロも登場。


で、何と到着は12:20.権現岳から2時間かかりました。コースタイムの約2倍ですよ。まさかの正午越えでした。


小屋の近くにはコマクサも。


キレット小屋は小さくて渋い山小屋。とても趣があります。小屋番さんも山の男って感じ。でも親切でした。幕営領料550円。水場はちょっと下ったところですが、やや急坂でちょっと危険なところにあります。テント場はあまり広くないですが、私は3人目だったのでいい場所に張れました。
この日も午後は雷雨の恐れがあったので、速攻でテントを張りました。そして、予想通りに石で四隅を固定する直前に大粒の雨が降り始めました。時刻は丁度1時。雷もすごい。いやー、ギリギリ間に合ってラッキーでした。神に感謝。この夏は雷に打たれて亡くなった登山者もいるようで、雷雨は怖いですからね。
で、2時半ごろに雨が上がってから水場で汗まみれのシャツを洗ったりして、少し落ち着く。


樹林帯の中の静かなテント場。とても感じがいい。南アルプスの熊ノ平のようだ。小じんまりして木の香りのよいこういうテント場は好きです。


テント場からは赤岳方面も見えるはずですが、この時点ではガスガス。


で、17:00頃に雲がだいぶ降りて行って、顔を出してくれた赤岳。うーん、相当な悪役ボスキャラだ。






これは大天狗、子天狗と言われる岩のようです。赤岳は槍ヶ岳的な岩峰であることを思い出させますね。


赤岳山頂付近アップ。いやはや、明日のキレット後半戦はかなり辛そうだ。


逆側は緑濃い山で、テント場が山深いところにあるのを思い知らせてくれる雰囲気。この雰囲気好き。


6時前に夕食。いつものパスタとキノコスープ。疲労感あったので、もっとタンパク質を持ってくればよかったと後悔。


夕食後はさらに雲が下がり、赤岳がよりハッキリ見えました。


あのルンゼを行くのか。ほとんど垂直に見えますな。ちょっと不安。テント泊装備は失敗だった説。まあ、終わってみれば達成感かも。


ということで、筋肉痛にならないようにストレッチをしっかりして就寝です。夜中にちょっと起きて外を見ると、星空が綺麗でした。雷雨はあったものの、翌日の天気はよさそう。これまで赤岳には2回、硫黄岳には積雪期含め3回登っていますが、いずれもピーカンでした。明日も八ヶ岳の神様に愛してもらえるような気がします。