冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

老舗利用の経済

2011-04-30 14:21:39 | グルメ
私、築地や日本橋の徒歩圏に居住しています。
土日しか家の周りですごす機会はないのですが、それでも特に最近は意識して地元の老舗、あるいは有名店に行ってみることにしています。
そんなに高いものは食べられないので、しかもランチタイムが主なので、店の本当の実力は分かっていないのかもしれません。
しかし、どうもこの食べ歩き、始める前の期待度に比べるとこれまでの結果はいま一つです。
私がグルメでないのは、何食べても一応美味しいと思って全部残さず食べることから明らかですが、それでも庶民感覚としてこの値段だったらこれくらいの感動が欲しいという感覚は一般的なものに近いと思います。
そんな感覚が満足されないのはなぜか。。。

理由を考えてみた。
1) 味は実は悪くない
海外の日本食レストランでこのレベルが出てきたら、間違いなく合格です。
東京でも、一応美味しい部類だと思います。というか、平均くらいはいきます。

2) しかし、東京の平均が高すぎるので、この程度では驚かない
オフィス街のランチで1,000円前後のてんぷら定食、刺身定食、鉄火丼、そば、洋食など、すべて海外ではありえないレベルです。
こうした平均レベルをクリアし、大きくそれを上回るには、素材も腕も相当のものが要求されると思います。
実はそこまでの老舗は、少なくとも土曜のランチ(時々ディナー)ではほとんどお目にかかれません。

3) さらに、変に凝った味付けだったりすることも
江戸前は味が濃いってやつですかね。
海外に6年くらい暮らした以外は、ほぼ40年の人生のほとんどを東京で暮らしている私も、ちょっと驚く濃い味付けだったりする店があります。

4) 決定的なのはコストパフォーマンス
そして、上天丼3,000円とかなると、どうしてもその値段に比例して期待が大きくなるので、期待はずれ感は大きくなります。

特に苦しいのが天ぷらとそばだと思います。
私の中で、天ぷら(天丼)の平均点はてんやです。
バカにするなかれ、ころもに上質感はないものの、マニュアルと均質化された機器で調理された天ぷらはそれなりにさくっと、からっと揚がっており、ネタもチェーン店ならでは大量買い付けによって品質はほぼ安定、値段も安い。
経験上、普通の天ぷら屋で、味だけでなくコスパも含めてこれに勝つのは至難です。
そばは、高田屋。これもバカにするなかれ。そばの味は強めだし、マニュアル化された茹での効果で品質は安定。
つまみも出し巻き卵など難しいものでも、あの値段でこの味なら合格点。

天ぷらでよかったのは、ディナーですが銀座4丁目という銀座のど真ん中に店を出しながらコース5,000円という、天ぷら阿部。
コースはまずまず、という感じですが、一品で頼む蛤は秀逸。ここでしか食べられない味ではないでしょうか。
締めの天茶も私好みのすっきり感のあるもの。コスパよし。
あとは、ちょっと界隈を離れてしまいますが、仲御徒町の天正。ここの巨大な天丼は食べ応えあるし、下町の天ぷらの味が出ている。
よろしい。損した気には絶対ならない。

一方、老舗の中で圧倒的に旨い、コストパフォーマンスとかまったく考えなくていい、と思ったのはうなぎの丸静。
値段も普通です。肝吸いはセットでついてきます。漬物も旨い。
大将とお姐さんの勢いには負けてしまう人もいるかもしれませんが、古きよき江戸っ子気質が感じられます。

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冷たい風のような火を燃やすものたち

Jazz現代の名盤 その17

2011-04-24 21:39:59 | 息抜き
またピアノトリオが続いておりますが、自然とそうなってしまうのはやはりホーンよりもピアノが元気な時代だということなのでしょうか。


Home。アメリカのAaron Goldberの作品です。
この人はもともとJoshua Redmanのサイドマンだったように記憶しておりますが、さすがにテクニックは十分。
リーダー作品を発表するようになってからもクオリティ高い作品を出し続けておられますが、おそらくは未だ進化途中の演奏家だと思われます。
いろいろアイデアが浮かんでくる自分を何とかベストの方法で表現しようと模索している感がありますので。
今回のアルバムはそれが顕著です。

ただし、テクニックが冴えているので演奏に安心感があるのに加え、この人の良さはメロディー重視のところでしょう。
前に紹介したHabanera のように耽美的ではありませんが、それでもメロディーが綺麗で聞き心地がよい。
それがReuben Rogers (b) とEric Harland (d)という強力なリズム陣に支えられていますから、安心感はさらに増します。
3曲参加しているMark Turnerのテナーもさすがに内省的で美しい。

難を言えばもう少し即興性や演奏の意外性が欲しかったかも。
まとまりのよさと同時に追求するのは難しいのかもしれませんが。

Jazz現代の名盤 その16

2011-04-17 14:25:55 | 息抜き
このピアノトリオは、ある人がレビューで絶賛していたので購入したものです。
当時は私もピアノトリオの好みが自分の中で固まっていなかったので、詳しい人の情報に頼ったりしておりました。

魅せられし心Eddie Higginsという熟年ピアニストの作品です。
ジャケットも悪くないと思いますね。

落ち着いた夜に力強くも老練な音楽を聴きたいときには、今でもこのアルバムは私のリストの中ではトップクラスにランクされています。
1曲目の"My Funny Valentine"はスタンダードの中のスタンダードですが、ベストの演奏の一つと思います。
もともとリリカルな曲という位置づけだと思いますが、かなり骨太な演奏。実はベースとドラムの絡みがよい。ピアノを邪魔しない、これまた老練なサイドメンの渋み。
日本のさびの文化を感じるというと言いすぎか。
そして3曲目の"Stolen Moments / Israel"のメドレーではさらにその骨太感が強まり、この演奏家に神が舞い降りたのではないかと思うほど。
テクニックの話はどうでもいいです。とにかく心に重く響く。
なぜこういう演奏になったのか分かりませんが、驚くばかりの迫力。

ところで、この人の作品は結構CDが出ています。
しかし、ここでご紹介しているアルバム以外は駄盤のようです。
私もこれの後に1枚買いましたが、非常に失望。
あるレビュアーも似たようなことを言っていました。
他の盤もそれなりに綺麗で渋い演奏なのでしょうから、ボリュームゾーンにはまるというか、ある程度受けるのだと思いますが、私の好みは断然このアルバムですね。

長年の経歴を積んできた老ピアニストが、それを支えるサイドと共に奇跡的で神がかり的な録音に成功した1枚ということなのだと思います。

Jazz現代の名盤 その15

2011-04-10 14:33:54 | 息抜き
今週は北欧のピアノトリオに回帰。
と言ってもただの綺麗なジャズではない。機械的なサウンドとジャズのグルーヴ感が融合された前衛的なトリオです。

Strange Place for Snow。エスビョン・スベンソン・トリオ。いかにもスウェーデンなお名前。

リーダーのスベンソンは2008年にダイビング中の事故で40代の若さで世を去りました。
非常に残念。この才能があまりに早く旅立ってしまったことを嘆く文章はネット上でもよく見られました。

このトリオの素晴らしいところは、往々にしてちゃちな失敗に終わってしまいがちな、エレキトリックな楽器の音とジャズの融合を綺麗な形でできるところでしょう。
軸足をジャズに置きながらシンセサイザーを活用すると言う姿勢が明確なせいでしょうか、ジャズ的な即興性も毒もたっぷりで楽しめます。
また、アマゾンの英語の解説にもありますが、ピアノ、ベースとドラムのそれぞれが自分の役割をこなしながら非常に存在感があります。
リーダーのスベンソンがどんどん引っ張るのではなく、リズムの主張が比較的強い中で3者がうまく協調できている感じです。
90年代の終わりから2000年代には結構多作だったのでいろんなアルバムが手に入ると思いますが、前衛性と安定性が両方特に感じられるのがこの作品だったと思います。

それにしても、15週に渡って1つずつアルバムについて書いていくと、自分のちょっとした歴史を刻んでいくようで悪くないですな。
このCDをよく聴いていたときはこういうことを考えながらあんな生活をしていたなあ、と思い出すので。

Jazz現代の名盤 その14

2011-04-03 09:54:17 | 息抜き
ピアノトリオ作品が続いていたので、ホーンを一枚。


Contemporary Jazz。ブランフォード・マルサリスです。結構有名なサックス吹きですね。

私が初めてジャズのCDを買ったのは、実はこのBranford のものでした。そのアルバムもいずれご紹介するかもしれませんが。
もともとは、Sting のナッシング・ライク・ザ・サンというアルバムを高校生のときに聞き、次第にこのアルバムは私の生涯のお気に入りの一枚になっていったのですが、これにサイドミュージシャンとして参加していたのがBranford Marsalis。
冷たいホーンの音色にゾクッとしたものです。

このContemporary Jazzは2000年のアルバム。
Piano: Joey Calderazzo
Base: Eric Revis
Drums: Jeff "Tain" Watts
という、予定調和的名奏者のカルテット。

1曲目のIn The Creaseでは、かなり前衛的だった80年代のBranfordを洗練させた感じで、なおかつ勢いやグルーヴ感はそのままに。
脇を固める面々もそれぞれのパートで野心的に技を披露。まずこの曲で引き込まれます。
2曲目はバラード。Branford は2000年代のアルバムを通してバラードの名手として認識されたように思いますが、それを余すところなく発揮。
ピアノも美しい。Requiemというタイトルから、長くこの人のカルテットでピアノを支えてきたKenny Kirklandへ捧げられたものかと思います。
3曲目のElysiumは、この1枚前のアルバムにあったものの別バージョン。前のアルバムでは9分40秒、今回は15分58秒といずれも熱演。
前のアルバムはKirkland 参加の最後のアルバム。そして、そのときのクレジットを読む限り、この曲は彼の作曲だと思います。
いずれにせよ、まさに鬼気迫る演奏。ダイナミック。

私なりの曲の感想を書いていてもしょうがないですが、このアルバムをアマゾンではなんと690円で売っています。。。
価値観は人それぞれと思いますが、雑誌を買うような値段でこの音楽を聴けると思うとねえ。ちょっと複雑。