冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

北アルプス表銀座逆縦走 その1

2017-09-17 16:33:37 | 旅行
好天が予報された9月の第2週末、これまで他の山から眺めるだけでその山頂にたどり着いていなかった北アの名峰、槍ヶ岳に登ってきました。実際にはそんなに長期の休暇がいつでも取れる訳ではないのに、どうせ槍ヶ岳に登るなら表銀座または裏銀座を縦走して登りたいとわがままなことを考えていたせいで、これまで後回しになっていた山です。
北アルプスに関しては今年は既に7月に白馬岳でウルップソウを楽しみ、8月初めには薬師岳から立山まで縦走しているので、実は槍ヶ岳の表または裏銀座は来年以降のプランにしようと思っていました。が、ある事情で使える時間に相当余裕が生まれたのと、槍ヶ岳のような岩峰はお花のシーズンが終わった後でも楽しめるという2つの理由からこの9月に決行となりました。そして、公共交通機関利用者としては何だかんだ言って一番アプローチしやすい上高地から入山することにしたので、逆縦走プランとなりました。あっ、裏銀座ではなくて表銀座を選んだのは、黒部方面は既に8月に至近の薬師岳に行っていたのと、裏銀座はやはりお花の綺麗な梅雨明け~盛夏に行きたいと思ったからです。表銀座の混雑地帯の燕岳も、この時期なら8月よりは空いていると思われたし。

で、結果的には朝夕のご来光・夕焼けは残念でしたが、日中の天気は風もなく最高で、槍ヶ岳を中心に北アルプスど真ん中の景色を楽しみながらテントでまったりという山旅ができました。まずは今回の山行のまとめ的な写真を数枚。











さて、9月8日の金曜日、朝6時5分にバスタ新宿を出発する高速バスで松本に向かいます。土日が天気図的に晴れが間違いないので、金曜のうちに入山してフルに週末を山で過ごすプランです。この高速バスに乗ると、松本バスターミナルを10:15に出発して12:00に上高地バスターミナルに直行してくれる路線バスに間に合うので、都合がいいのです。


金曜の午前までは雨または曇りの予報だったので実際に曇っていても心配はしていないのですが、やはりスタート時点の天気は今一つ。そして、松本でバスを乗り換えて上高地に入っても基本的に曇りのままでした。2014年の夏に前穂高岳~奥穂高岳を縦走して以来の上高地です。




そうは言っても日本を代表する高原・山岳観光地。気持ちのよい遊歩道を歩み始めます。この日は槍沢ロッジが管理するババ平のテント場まで、コースタイムで5時間ちょっとの道です(ロッジからテント場まで30分ほど離れている)。12時スタートで5時着だとちょっと遅いですが、コースタイムよりは早く歩けることを想定しています。


秋の始まりの時期で高山植物の盛りは過ぎています。そんな中、上高地ではサラシナショウマの群生が随所に見られました。大きな白い猫の尻尾のイメージ。




たくさんの茶色い蝶がサラシナショウマに群がっていました。蝶の名前は勉強不足で不明。


花では、この菊の花が薄紫で綺麗でした。ノコンギクでしょうか。


蝶ヶ岳かな。


サクサク歩いて徳沢に到着です。13時15分くらいだったので、かなり速いペースで歩けました。ちょっと休憩して水分補給。徳沢園名物のソフトクリームは今回はなし。上高地に下山する人が食べるべきものです。


次のチェックポイントは横尾です。横尾と言えば屏風岩。クライミングの対象ですが、私にとってはこの岩のてっぺん付近にある「屏風の耳」から見る穂高連峰の絶景シーン。山歩きを始めたばかりの2013年の紅葉シーズンに登り、これまでの山行すべてでももしかすると最高の景色かもしれないものを見られた場所です。


横尾はソフトバンクの電波が入る最後のポイントなので、金曜であることも踏まえてメールなどをチェックして身をきれいにしてから槍沢方面に向かいます。ここからは梓川もこれまでより川幅が狭くなりますし、梓川に流れ込む小さな沢が幾つか出てきて涼し気な道です。


一ノ俣という立派な橋のあるところ。沢に降りられるので水を汲んで飲むのと、手ぬぐいを濡らして汗を拭きます。時間的には、コースタイムの設定はかなり緩めで、実際にはかなり余裕を持って歩くことができると思います。


ここからは沢沿いを進みます。前日が雨だったとは思えないほど澄んだ水の流れ。




お花はぼりぼち。種類が少なくなっていました。この青紫の花は上高地からちらほら出てきました。コウシンヤマハッカという花らしい。


トリカブトやソバナなど、青紫の花が多いのは秋の特徴と言えるでしょう。




この白い花は不明。オオカメノキに似ているような気がするけど、時期が違うんじゃないかな。


あとは、菊の仲間と思われる白い花(ゴマナかな)やミヤマアキノキリンソウなどが見られました。ヨツバヒヨドリは終盤でした。そして、この看板が現れると、やっと道に明確な勾配が出てきて登山道らしくなります。


そして槍沢ロッジに到着。週末の好天を期待しているのか、ツアーの大きなグループもいて賑わっていました。早速テントの受付をして、30分ほど離れたババ平へ向かいます。ちなみに、幕営料は1,000円でトイレ・水場の利用込み。


それまでの道は基本的に平坦だったので、この30分弱の登りが結構馬鹿に出来ないくらいキツく感じました。途中、槍見と書かれたところがあったけど、地図で見るとカブト岩となっているところですかね。


で、テント場です。既に多くの人がテントを張っており、場所を選ぶ余裕はありませんでしたが、よく整地されたテント場なので問題なかったです。そして、トイレがとてもきれいでした。今まで利用したテント場では、徳沢園のキャンプ場以外では一番きれいだったように思います。整備されている槍沢ロッジに感謝。


次の日はコースタイム的には9時間くらいの道を行くので、この日はゆっくり休むためにも7時半頃には就寝です。沢のすぐ傍ですが、耳栓をすれば音は気になりませんでした。
そして翌朝。多くの人が4時台に槍ヶ岳に向けて出発。私も4時半に出発です。まだ暗かったものの、空は晴れていて月明かりがとても強かったです。私のコンデジでは星空や月の撮影は無理なので、やや明るくなってきてからの写真しかありませんが、月の美しさが少しは伝わるかも。


この日は特に最初の暗くて景色をあまり楽しめないうちに飛ばしまくりました。結果、槍ヶ岳直下の槍ヶ岳山荘までのコースタイム4.5時間~5.0時間くらいのところを3時間で行ってしまいました。その分、稜線の縦走の時にはやや疲れていてペースが落ちましたが。それはともかく、とてもいいお天気で早朝は気温も低く、快適です。朝日が出始めると、槍ヶ岳方面が赤く染まってきました。この時点で槍ヶ岳が見えるところまで登ってきていれば、素晴らしい朝焼けのシーンが見られたはず。が、今回はルートの問題でそれはかないません。表銀座を素直に燕岳から縦走していれば綺麗な朝焼けを見られたでしょう。


振り返ると、常念山脈方面には雲海ができているようです。


もっと明るくなってきてから槍沢を見下ろした図。


明るくなるとお花にも目が行きます。既に花勢は終盤ですが、アザミは多かったです。ミヤマシャジン(ハクサンシャジンかも)もありました。






ナナカマドの紅葉には流石に早すぎですが、実は既に赤くなっています。


槍沢の対岸の風景。


ここで、やっと太陽が常念山脈を越えて姿を現しました。


雲海も色づいていきます。


そして、正面にはついに槍ヶ岳の山頂の姿を捉えました。


山を歩いていると、正面に山頂が見えると周囲に遮るものもないので意外と近くに感じるものです。が、流石に山歩きも5年目となるとそこは冷静で、これ、頂上まではかなり遠いよね、1時間半か2時間かかるよね、と分析。それでも、お天気もいいし空気も澄んでいるので山行を楽しみましょう。標識のあるところまで来ました。コースタイムでは、槍ヶ岳山荘まであと1時間20分。目視の感覚は大体正しかったようです。


この辺りから1,500、1,400と100メートルごとに数字が岩に書かれているのですが、これは槍ヶ岳山荘までの歩行距離だと思われます。ペース配分の参考にすればよいと思います。槍沢上部に来ており、既に沢の流れは消滅。最後の雪渓より上に来ています。この辺りは初夏~盛夏であれば高山植物のお花畑なのでしょう。名残というか、咲き残っているイワギキョウやウサギギク、穂になったチングルマが見られました。








と、ここでキッキと鳴き声を上げながらニホンザルの集団が目の前を横切りました。標高2,500メートルを優に超えて森林限界の上なんですけど。まったく、数年前に猿がライチョウさんの雛を襲って食べる衝撃的な映像が公開されましたが、サルは森から出てきて欲しくないですね。鹿の食害も問題だけど、サルもどんどん捕獲して頭数を減らさないと。


周囲にはオンタデと思われる植物が花を落として黄色く色づき始めていました。草紅葉になるのでしょうか。


目指す山頂、あるいはその直下の槍ヶ岳山荘がだんだん近付いてきているのですが、対象がでかいので実感がわかない。それでも、この手の登りは比較的得意です。ストックを利かせやすいので、上半身の筋肉を有効活用してガシガシ行ける感じですね。心肺機能さえ持てば、ペースは速められるパターン。足元不安定なガレ場どかだとこうはいきません。


振り返ると太陽が結構高く上がっています。


最後は空気の薄さも手伝って結構ツラく感じました。休み休み歩みを進め、7時半ぐらいに槍ヶ岳山荘に到着です。建っている場所の標高の高さとしては、穂高岳山荘や北岳肩の小屋といい勝負でしょう。


槍ヶ岳山荘から、稜線の逆側、つまり黒部方面を眺める。こちらは、2015年に雨の中半分くらい縦走。そして今年の夏に薬師岳から立山まで縦走していますので、なじみのある景色です。


槍の穂先を見上げる。コースタイム30分となっていますが、そんなにかからない感じ。まあ、すべては渋滞度合いによるのでしょう。幸い、いいペースで登ってきたので今のところ大した渋滞はありません。


さて、鎖やハシゴの多い道を登って頂上を目指します。個人的な感想ですが、鎖などはやはり必須ではないですね。あくまで補助的なもの。使わない方が自分のペースで登れるのでむしろ安全だと感じました。年齢も経験も異なる多くの人が登る山なので、万一に備えて敢えてある程度過剰な設備が備えられているのだと思います。先行者が渋滞していなければ、10~15分もあれば登れるルートでしょうし、危険は感じませんでした。むしろ、立山連峰のザラ峠から獅子岳のガレ・ザレた道や越中沢岳南面の方がよほど滑落しやすいのではないでしょうか。




途中、渋滞中に振り返った図。大キレットと穂高の山々。大キレットも、天気さえ良ければ恐らくそれほど危険ではないのでしょう。でも、あまり興味ないんですよね。大キレットを通過することで見られる景色や花が特別な感じがしないので。でも、穂高岳の山頂とか槍ヶ岳からこの稜線を眺めるのは好きです。日本を代表する格好いい岩稜であることに間違いはない。




槍ヶ岳山荘を見下ろす。高度感としてはこの程度です。足場はしっかりしています。


そして、前の方々がハシゴを登り切るのをちゃんと待ってから私も登頂。ついに槍ヶ岳3,180メートルの頂です。


まさにこれこそ360度の展望台ですね。今まで、あらゆるところから槍ヶ岳を眺めてきました。その形が分かりやすいのもありますが、位置的にも北アルプスのド真ん中なのでしょう。後立山連峰の北部からはちょっと離れていますが、それでも晴れていれば眺められるし。この瞬間は、そうしたこれまで槍ヶ岳を眺めてきたすべての場所を逆に槍ヶ岳から眺められます。まずは偉大なる穂高連峰。






奥穂高岳。


前穂高岳。


北穂高岳。前穂から奥穂は縦走しましたが、北穂は未踏なのでいつか登りたいと思っています。


登ってきた槍沢。


これから進む表銀座縦走路。


その大天井岳方面を拡大。大天井岳に翌日登頂する直前まで、ずっと東天井岳を大天井岳だと勘違いしていました。一番尖って見えるのが東天井。大天井岳はその左で、翼を大きく広げたような恰好をしているピークです。実際に歩みを進めて近付くにつれ、間違いに気付きました。


そして燕岳方面拡大。


常念岳方面と常念岳拡大。




後立山連峰の白馬岳。


そして鹿島槍ヶ岳。いずれも登頂済みですが、前回とは違うシーズンに行ってみたいと思っています。冬季に登ったら感動なんだろうなあ。


黒部方面に目を転じます。


双六岳、三俣蓮華岳稜線の後ろに黒部五郎岳、そして赤木平、北ノ股岳に至る稜線。緑が美しいところですね。やはりお花の綺麗な時期に再訪したい。前回は雨&ガスにやられたので。


手前に鷲羽岳。小さく三俣山荘も見えます。中ほどに雲ノ平の爺岳。奥にスケールの大きな薬師岳。鷲羽岳は、三俣峠方面からの姿は圧倒的に格好いいのですが、それ以外は周囲の山より標高が低いこともあってあまり格好良く見えないですね。薬師岳はとにかく大きいし、カールが目立つ。存在感の大きな山だと思います。




裏銀座と、その先の黒い頭の水晶岳。そして水晶から連なる赤牛岳。黒部のボスキャラですね。


水晶岳拡大。いつも山行のターゲット候補になるのですが、奥地にあるのでなかなか行けないですね。結局、裏銀座より表銀座が先になりましたし。来年は裏銀座、もしくは雲ノ平をターゲットとする中で水晶岳にも行けるのだろうか。


奥には立山。手前の稜線は裏銀座の野口五郎岳。やはり立山は大きい。今年の夏のハイライトだった。




手前には五色ヶ原の湿原。8月に行って、素晴らしい朝日のシーンを楽しんだところです。


黒部湖は見えませんが、この写真のほぼ中央にあるはずです。それを挟んで左に立山、右に尖がった格好のいい針ノ木岳と、それから北に続く後立山連峰。左手前の赤牛岳から読売新道が黒部湖に続いていますが、究極に疲れそうなので行くのが躊躇される道。


針ノ木岳。2015年の梅雨明けに縦走して針ノ木雪渓と高山植物、ライチョウさん、そして黒部湖越しの立山連峰の絶景を楽しんだ思い出深い山です。今年は五色ヶ原から眺めています。


山頂の祠のところで、登頂者が順番にお互いの写真を撮り合います。これ、多分いつもそうなるのでしょう。




山頂には20~30分いたと思います。それほど混んでいなくて、なによりお天気が最高で、とても満足感の高い登頂でした。槍ヶ岳は、他の山から眺めてもその姿が際立つ山ですが、実際に登頂しても素晴らしい景色が楽しめる山ですね。やはり日本アルプスの大スターと認定すべきでしょう。
さて、この後は槍ヶ岳山荘まで戻り、いよいよ表銀座の逆縦走を開始です。


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