ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

クリスティンちゃんが教えてくれたこと。

2010年01月25日 | 先住民ブラアンの子どもたち
たくや@ミンダナオ



アイキャンが学校給食活動をおこなっている学校の1つサンホセ小学校は、ミンダナオ島の山奥にあります。ここでは、先住民族ブラアン族の子どもたちが勉強しています。

この近くには、アメリカの大企業のバナナ農園があります。アイキャンの学校給食活動や生計向上活動に参加している保護者の中にも、この農園に雇われている者が多くいます。




(右がクリスティンちゃん)

小学1年生のクリスティンちゃんのお父さんも、このバナナ農園で働いています。主な仕事はバナナの幹に生える不要な葉っぱを切り落とすこと。ここで働き始めてから4年間、ずっとこの仕事を担当しています。

報酬は1日8時間働いて法定最低賃金の225ペソ(約550円)、月におよそ4,200ペソ(約8,400円)の給料になります。家族4人が昼食や交通機関の利用などを我慢して、何とか暮らしています。


(クリスティンの一家4人の家。家の前はバナナ農園)

またバナナ農園近郊に住む一家にとって、怖いのが農薬による健康被害です。大量に散布される農薬は空に舞い、広範囲にわたって鼻に衝くニオイが漂います。雇用されているお父さんには年一度の健康診断がありますが、農薬散布を横目に毎日歩いて通学するクリスティンちゃんに対する健康診断はありません。もちろん健康を害したとしても、農薬が原因であることを証明するのは困難なため、企業からの保障はありません。


(農薬散布の様子)

こうしてできたバナナ、その大部分が日本へと運ばれます。昔は高級品だったバナナも、今ではスーパーでひと房200円もしないものまで出てきました。日本のバナナの安さの背景には、クリスティンちゃんのお父さんのように低賃金で働く人たちがいて、また虫に食べられることもなく、安定的に供給される背景には、クリスティンちゃんのコミュニティのように、農薬の被害があるようです。つまり、ミンダナオ島の先住民族の人たちが、食事も満足にできず、学校に通うことができない背景には、実は遠く離れた日本に住む「消費者」が大きく関わっているのかもしれません。言うまでもなく、昔ながらの自給自足の生活ができなくなり、少ない賃金でも、「労働者」として近代化の波の「一番下」に組み込まれざるを得なかった背景もまた同様です。

アイキャンはこのミンダナオ島の山奥のコミュニティの現状に対し、大きく3つの方法で活動し、なんとか変えようとしています。

1つ目は、学校給食活動や教材の提供、学校の補修等により、子どもたちが学校に通えるようにすることです。子どもたちが学校教育の機会を与えられなかった場合、将来の生計の選択肢も限られ、さらに生活が厳しくなります。この悪循環を村のレベルで打ち破る方法の1つが、「子どもの教育」です。

2つ目は、近代化の波に組み込まれていった先住民族の人々が失った、伝統文化とそれに基づく生計のあり方を蘇らせる活動です。例えば、親たちの生計向上活動は、外からのものを持ち込むのではなく、伝統的な縫物や雑貨等の伝承を促進し、それを再生させることによって、生活を向上させる取り組みです。

そして3つ目は、今まで社会の中で軽視され、見えなくされてきた子どもたちや人々の「こえ」や生活を、社会の中で伝えていく活動です。アイキャンが、このブログや会報で、子どもたちのこえを重要視しているのはこのためです。社会の中で、このような「聞こえなくされてきた声」が溢れるとき、社会は「あるべき姿」へと変わっていくのです。

会報「こどものこえ」
http://www.ican.or.jp/kodomonokoe.html

そして、その3つ目の活動はアイキャンが力を入れている「フェアトレード運動」にもつながります。フェアトレードが「公正な貿易」と訳されるように、このフェアトレード運動が活性化することにより、「消費者」の意識が変わり、企業の意識も変わり、そしてクリスティンちゃんの家族のように、働いても働いても生活が成り立たないといったような状況を作り出す国際貿易のシステムを変える力をももつものです。

東海フェアトレードフォーラム(主催:アイキャン)
http://www.ican.or.jp/tff.html

ブラアン族の子どもたちの生活が、ブラアン族だけの問題で苦境に陥っているわけではないことからも分かる通り、それに対応する活動も上記1や2のような「コミュニティでの活動」と上記3のような「見えなくされた人を見えるようにして、聞こえなくされた声を聞こえるようにする活動」が両輪として機能してはじめて、変化をもたらすことができます。

「かわいそうな」ブラアン族の人々は「恵まれている」日本の人に「支援」をされる対象なのか、それともそれぞれが国を超えて自分たちの置かれている環境を認識し、「ともに」この関係を乗り越え、搾取されることも、搾取することもない社会をつくっていくのか。

「人々の『ために』ではなく、人々と『ともに』」。アイキャンがなぜ頑固に、「ともに」活動するのか、この村は、1つの理由を教えてくれているように思えます。

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http://www.ican.or.jp/gensan_feeding.html

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