ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

「認識の違い」と「紛争」

2012年09月28日 | 紛争地の子どもたち
こうじ@コタバト

平和を創ると簡単に言いますが、その平和に至る道のりはとても複雑です。紛争地域の子どもたちや学校の先生と一緒にどのように平和を創れるのかについて話し合う時、そもそもなぜ対立や紛争が起きるのかという話から始めます。その中で使われるのが、下の絵です。さて、皆さんはこの絵の中にどんな人が見えますか?この絵の人は、男性ですか女性ですか?何歳くらいですか?



子どもたちの反応はおおよそ2つに分かれます。女性で、年を取った人、女性で、若い人。

年寄りと答えた子どもと若い人と答えた子どもの代表に前に出てもらい、自分が見えたものについて説明してもらいます。そうすると最後までそれぞれ主張を変えず、ケンカのようになることがあります。そして、講師が顔の輪郭を2通りになぞると、自分が見ていたものとは違う顔が見えてきます。初めて、子どもたちは同じ絵を見ているのに、それぞれ全く違った顔を見ていたことに気が付くのです。

「皆さんが見て理解していることは皆さんの作った『認識』です。その認識にしばられる時、それは『先入観』や『偏見』となります。その偏見が他の人の意見を受け入れず、見下した態度となる時『差別』となります。」


異文化理解研修では、違う文化を披露しあい、お互いの理解を深めています。
キリスト教徒地域の衣装で歌を披露する参加者

「今、ミンダナオ島で起きている紛争の多くは、異なる人たちが同じ社会の現実を異なって『認識』し、そこから生まれた『偏見』が社会の中で『差別』的な行動になって表れているために起きているのではないでしょうか。人との認識の違いを知り、違うものを受け入れていくことが、誤解や偏見、差別をなくしていくことにつながります。それが平和を創る第一歩です。」


イスラム地域の踊りを披露する参加者


先住民マノボの衣装で歌を披露する参加者

キリスト教徒系住民、イスラム教徒系住民、先住民族という異なる文化や言語、宗教を持つ人々が一緒に生活しているミンダナオ島では、「違いを知り受け入れる」ことから、平和の第一歩が始まります。

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働き始めた職業訓練生(1)

2012年09月28日 | ごみ処分場の子どもたち
ようすけ@まにら

パヤタスの職業訓練生が訓練を終え、実際に働き始めました。マニラで有名な日本風カフェ「Tokyo Cafe」に就職したミッチェル(仮名)を訪ねてみました。ここでは、他にもパヤタスから5名が働いています。


【職業訓練生のミッチェル】

店の扉を開けると、「いらっしゃいませ」と声が聞こえました。ミッチェルは、カウンターで接客をしたり、コーヒーを炒れたりする仕事をしています。訪問時は、マネージャーから、豆の入れ方、引き方、お湯の注ぎ方を丁寧に教えてもらっていました。接客時は、丁寧にお客さんに接しています。その様子は、パヤタスで見せる自由奔放な雰囲気とは違い、すでに仕事の顔を身に付けたようです。日本人が求める細かな接客レベルは高いですが、「確かに、マネージャーは厳しいこともあるけど、これも仕事のうちなので全く問題ありません。」と仕事に順応してきている様子です。


【同じ職業訓練生の同僚と一緒に働いています】

先月、とても喜ばしい出来事がありました。各店舗において、その月の最も優秀だった社員に与えられる「Employee of the Month」をもらいました。誇らしげにその盾を見せてくれました。


【Employee of the Month】

今後、さらなる成長を見せてくれることを期待しています。

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「子どもを守る委員会」調査の途中集計

2012年09月23日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

アイキャンでは、バランガイ(日本の町役場にあたる役所)と一緒に「子どもを守る委員会」の組織化を行っています。地域の状況を把握するために、世帯調査を行ってきました。(参考「子どもを守る委員会」地域調査の集計

その途中集計のご報告です。
A地域では、799世帯の調査を終えました。調査に選んだ地域は、Aバランガイの中で、もっとも厳しい環境の場所です。

Aバランガイの調査地域




2012年7月に出された国の調査(NSO調査結果)では、フィリピンの失業率は7%。一番高いマニラ首都圏でも10%との統計が出ています。(15歳以上の労働人口)

この地域はどうでしょうか。18歳以上の大人のなかで仕事をしているのは、54%ほどにしか達しませんでした。つまり失業率46%です。世帯主については、56%が定期的な仕事をし、38%が不規則な仕事、6%が仕事に就いていません。さらに、仕事をしている世帯主のなかでの収入を見ると、55%が最低賃金にも満たない収入しか得られていないという結果がでました。

この地域で、18歳未満の子どもが人口比41.24%います。その子どもたちの中で、修学年齢で学校に行っているのは81%、学校に行っていない子どもが19%にも達していることが分かりました。

この数字の元には、人々の日々の暮らしがあります。1人1人の子どもたちがいます。

一軒一軒の家を回り世帯調査のためのインタビューをしてきた地域のボランティアのお母さんが言いました。
「私たちも日々楽な暮らしをしている訳ではないけれど、同じ地域にこんなにも大変な暮らしをしている人たちがこんなにたくさんいることが、地域を歩き、話を聞くなかで分かりました。」


【集計作業をする子どもを守る委員会のメンバー】

「子どもを守る委員会」は、地域のボランティアの人の働きに支えられています。大変な作業をこなす中で、見えてきたものはとても大きなものでした。これが、これからの委員会を支えていきます。

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ミンダナオ子ども議会

2012年09月23日 | 紛争地の子どもたち
こうじ@コタバト

先日ミンダナオ島、ジェネラルサントス市で32名の子どもたちが集まって「第1回ミンダナオ子ども議会」を開催しました。ミンダナオ島に住むさまざまな言語、宗教、民族の子どもたちが一堂に会して、お互いの違いや共通点を分かち合い、理解を深めました。また、異なる宗教、民族が住むミンダナオで、人々がどのように平和に暮らしていけるかについても話し合いました。


最終日に修了証を持ち、おそろいのTシャツで勢ぞろいした参加者たち

参加したのはイスラム教徒であるマラナオ(3人)、イラヌン(3人)、マギンダナオ(7人)、ティドゥライ(3人)、キリスト教徒のイロンゴ(3人)、セブアーノ(3人)、イロカノ族(2人)、そして昔ながらの土着の信仰を持つ小数民族のマノボ(3人)、ブラアン(3人)、チボリ(2人)の10の民族の子どもたちです。

自分たちの住む地域を離れたことのない子どもたちが多く、初めは少し戸惑っている子どももいました。しかし自己紹介やゲーム、ワークショップを通じて、最終日にはすっかり仲良くなり別れを惜しみました。

今回は自分たちの家族や生活について紹介し合った中から、マギンダナオのアリシアちゃん(仮名)の話を紹介します。アリシアちゃん(13歳、イスラム教徒)は、北コタバト州、ピキットから来たマギンダナオの出身です。


グループでの発表をするアリシアちゃん(左から2人目)

アリシア:アリシアといいます。家は小さな雑貨屋をやっています。でも父がいません。父が亡くなったのは私が1歳の時でした。3人姉妹で、長女のジェニファーは高校3年生、次女のアリスが14歳、私は13歳で6月から高校1年生です。うちの問題はお金がないことです。3人が学校へ通うのに十分なお金がないことが時々ありました。でも今はお母さんが何とか工面してくれています。

子ども:お父さんはどうして亡くなったの?
アリシア:撃たれて死んだって聞いたんだけど、私たち家族.にはよく分からないの。同じムスリムの人が撃ったらしいの。お父さんは正直で本当のことを言うから、父を恨んでいた人がいたらしいの。私の住んでいるところでは、土地の争いがあったりして、今でも住んでいる人たちが避難したりすることもあるの。

子ども:どこでそんなことが起きるの?
アリシア:私の隣の村でも最近あったわ。でも今は兵隊が来て守っているから大丈夫だけれど。

子ども:撃ち合いになったりしたの?
アリシア:私の地域では特別なことではなく、普通に起きることなんです。


厳しい内容の自己紹介とは裏腹に、屈託なくほかの参加者とゲームを楽しむアリシアちゃん(右)

アリシアちゃんが語ったのは、地域の中で有力な家同士が土地をめぐる争いなどで撃ち合いになるケース(リドーと呼ばれる)で、ミンダナオ西部ではこのような紛争が起きる地域がいくつかあります。アリシアちゃんの父もそうした争いの中でなくなったのでしょう。

ミンダナオ島では、リドーや独立運動に絡む武力紛争が過去40年間続き、アリシアちゃんと同じような経験をした子どもたちがたくさんいます。今回の参加者の中にも、地域の問題としてリドーを挙げる子どもたちが他にもいました。こうした紛争は子どもたちの心に大きな傷を残すだけでなく、アリシアちゃんが語ったように長期にわたって子どもたちの生活に影響を及ぼしています。

しかし、ミンダナオの子どもたちの生活の苦しさは、地域の紛争だけが原因ではありません。次回は、チボリの子どもジェニーとアリシアちゃんとのやり取りをご紹介します。

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学校に通う路上の子どもたち

2012年09月07日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

路上で働きながら学校に通っている子どもたちが、マニラにはたくさんいます。交通費や文房具、または家族の食費を稼ぐために学校が終わってから夜まで働く子どもたちです。アイキャンでは、小学校から大学生まで約20人に交通費や学費、教科書代などの通学補助をしています。ソーシャルワーカーのマイエンが定期的に家庭訪問や学校訪問によるモニタリングとミーティングをしています。



この日は、そのミーティングの日です。
マイエン「今日は、6月から8月にちゃんと学校に通うことができたかどうか教えてください。学校に通うだけでも大変な状況は分かっています。何か問題を抱えていたら、一緒に何かできることはないか考えましょう。」



カルラ(仮名)「夜働いて朝寝不足で、学校に行けない時がありました。それから、お昼ご飯代が払えない時もあって学校に行けない時もありました。合計8日くらい休んでしまったと思います。」

ジュン(仮名)「ずっと学校を休んでしまっています。・・・」
彼は、母親が入院し、兄が麻薬で捕まり、父親は仕事がなく、彼の収入に家族が頼っている状況です。しかし、18歳で漸く6年生になりました。もう少しなのでがんばって卒業してもらいたいと思っています。来週マイエンが学校の先生とジュンと一緒に話をすることにしました。これからのことを話合います。

リッキー(仮名)「僕は、交通費が払えないので、毎日歩いて通っています。お母さんにも交通費は払ってもらえません。でも、ちょっと危ない地域を通るので、交通費を補助してもらえるといいなと思います。ウロウロたむろしている人たちに、ケンカをしかけられたりしそうになります。おばあちゃんに、ズボンの裾を直してとお願いしたら、お金を払えと言われました。でも、長くても大丈夫。」
リッキーは、17歳ですがこの6月から小学校1年生に入学しました。今まで勉強する機会を得られなかった時間を取り戻そうとがんばって通っているのを嬉しく思います。

子どもたちは、それぞれの状況を抱えながら勉強しています。一人一人の状況に寄り添い学校に通える環境を作れるように、精神的サポートも含めて行っていきます。

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シャトル村にできる新しい教室

2012年09月01日 | 先住民ブラアンの子どもたち
あや2@ジェンサン

ミンダナオ島の奥地ブラアン族の村では、子どもの数に対して学校の教室が足りていません。人口8700人の地域で、小学校は9校(うち3校は分校)、それぞれ山の中の離れた場所にあり、設備も十分整っていません。シャトル小学校も400人近くの生徒がいますが、教室は3つしかなく、4年生から6年生は竹とヤシで作られた小屋で勉強をしています。雨が降ると、小屋の中まで雨が振り込み、床は地面のため、水びだしになってしまいます。そこで、シャトル小学校に新しく2教室を建設することになりました。2か月間での完成を目指します。


教育省の職員、校長、村のリーダーなど、この建築に関わる全ての人が最初に土を掘り、校舎完成までの工事の安全を願いました。村の人も一緒に建築工事に参加してくれることになり、「一緒に学校が建てることができてうれしい」と笑顔がこぼれていました。




ほとんどの工程が手作業で行われます。教室を建てる位置に印をつけ、柱を建てるための穴を掘ります。熟練の作業員でも苦戦するほど地盤は固く、3日かけて全ての柱を建てる穴が掘られました。




そしていよいよコンクリートで柱を固める日、「水が足りない」と作業員達は困っています。シャトル小学校には水道が引かれていません。小学校では、飲料水を近くのバナナ農園から購入、その他の水は近くの小川から汲んできます。コンクリートを混ぜるために使う水の届くまで作業が中断してしいましたが、お昼前に水が届き、無事に作業が再開されました。

 
工事が始まって1週間、校舎の構造が見えてきました。村の人たちは「学校ってこんなに早くできるの?」と驚きの様子です。子どもたちからは「学校を建ててくれてありがとう」という声も聞かれ、村全体で教室完成を心待ちにしているのがうかがえます。