ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

行政を動かす「こどものこえ」

2010年09月30日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

先日、内務省やマニラ市の路上の事業地のバランガイ(最小行政単位)の人たちとともに、「路上の子どもたち」についての研修を行いました。路上の子どもたちの問題の解決には、NGOだけでなく、行政を含めて対策を行っていくことが重要です。この日は、バランガイ(最小行政単位)の役員たちが、路上の子どもたちへの理解を深め、行政として何が出来るのか考えてもらうためのオリエンテーションです。

その中で、いつもアイキャンの活動に参加している路上の子どもの一人が、行政の人たちに自分たちの状況を知ってもらうために、勇気を出して話してくれました。

「僕は、マーク(仮名)17歳です。マニラ市に住んでいます。小さい頃から、路上にいて、スリやシンナーなどたくさん悪いことを学びました。でも、路上にいる子どもの背景には、壊れた家庭があるのです。みなさんに聞いて欲しいことがあります。僕は、14歳の時盗みをしたという理由で捕まりました。でも、その時は僕は盗みをしていなかったのです。何かあるとぼく達は見た目や住んでいる場所で判断され、疑われます。だから、みなさんにお願いです。ぼく達を、その環境だけで判断しないで下さい。同じように路上に住む子どもたちも、みんないい子ばかりです。アイキャンに関わるようになってから、僕は変わりました。盗みも止め、お給料は小さいけど、働く場所も見つけました。盗みは、もちろんご飯が食べられないから盗みをしていたのだけれども、自分で汗を流して働いたお金で、ご飯を食べるのは、やっぱり気持ちよいことです。僕の仕事は、使わないタイヤを集めて来て、タイヤから鉢を作ることです。それから、今は、アイキャンのTシャツ印刷技術のトレーニングを受けていて、それも仕事に出来るといいなと思っています。」


【Tシャツ印刷技術トレーニングに参加するマーク_写真手前】


【1年前のマーク_写真左】

あるバランガイの役員の方がマークにコメントをくれました。
バランガイ役員:「マークは、アイキャンと関わってどれくらいになるの?」
マーク:「1年ちょっとです。」
バランガイ役員:「あなたが、気が付いたこと、仕事をして生活をよくしていくこと、あなたの影響を受けて、そのことに気づいて変化していく子どもたちがたくさん出てくるといいわね。」

路上の子どもたちが直面する課題は、行政とNGO、地域や家族、そして社会全体で解決していかなければならない課題です。しかし、行政やNGO、地域や家族、社会に存在する一人ひとりは、どれだけ路上の子どもたちの「現実」を知っているのでしょうか。

社会を動かすのは、子どもたち自身です。

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活動を通して伝承する技術

2010年09月28日 | 先住民ブラアンの子どもたち
たくや@ミンダナオ

この日、アイキャンは先住民族ブラアンの母親たちと共に「子どもの権利」について考える場を設けました。ミンダナオ第一事務所の若手スタッフに加え、マニラからベテランスタッフがファシリテーターとして母親たちの中に加わります。

ミンダナオ第一事務所の若手スタッフの一人のシーナは以前より母親たちをまとめ、活動を行ってきました。しかしベテランスタッフのファシリテーションを目の当たりにし、母親たちとの接し方に大きな違いを感じたといいます。人前では意見を出すことが出来ないと思い込んでいたブラアンの母親たちが、ベテランスタッフの前では自由に表現するようになったのです。彼女はファシリテーターとして母親たちの意見を引き出していたと言うより、リーダー的な接し方をしていたことに気がつきました。以後、ベテランスタッフの立振る舞いを観察します。

そして、若手スタッフがファシリテーションを行う番です。母親たちにまず「子どもたちの現状」をテーマに寸劇を披露してもらいました。ファシリテーターたちはそこで表現された出来事を「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」「生きる権利」などに分類する作業を促します。この過程で母親たちは自分たち自身の子どもの現状と、難しい言葉で語られがちな子どもの権利が結びつき、自分たちに身近で大切な考えであることに気がつきます。


【母親たちによる寸劇。一つしかないカバンを兄弟で奪い合うシーン。】


【寸劇を経て、母親たちの意見を引き出すスタッフ】

アイキャンの活動において、「ファシリテート」する能力は欠かせません。これは、地域住民と対等に接し、彼・彼女たちが持つ可能性を自ら引き出してもらうきっかけ作りをする存在です。若手スタッフは、活動の中で、先輩スタッフのファシリテーションの技を盗み、今日も成長していきます。

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路上の赤ちゃんアルフレッド

2010年09月27日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

路上の女の子、リタ(仮名)17歳の第1子として、5月にアルフレッド(仮名)が生まれました。1週間後には、もうアイキャンの活動にリタは、アルフレッドを抱えて来ています。しかし、アルフレッドは、栄養失調の状態で、とても小さく、腕も細く、黒ずんで、死んでしまうのではないかと思うくらいに体調が悪そうです。手を口に当てると、吸い付こうとするので、お腹もすいているようです。リタに聞くと、母乳が出ず、水しか与えられてないとのことでした。アルフレッドの父親は、今スリで捕まったままです。





看護師のスタッフを中心に、アルフレッドに対する緊急介入計画を作りました。
①ミルクによる栄養改善を図ること。
②リタが、自分で責任を持って育てていけるようになるように、赤ちゃんの世話の仕方を1つずつ練習してもらうこと。

①②をきちんと実行しているかを、アイキャンスタッフが週に1回モニタリングに行くことにしました。布オムツをどう折るか、ミルクを1日4回と水を2回与え、環境を清潔に保つこと、1つ1つ伝えました。聞く耳を持たなかったリタに対して、「本当に育てる気があるのか?ないなら施設に引き取る。」とスタッフが強く言ったときもあります。それでも、「育てたい」とぼそっと言うリタに対して、「じゃ母親として、しっかりしなさい」と叱咤してきました。



モニタリングの中で、リタも母親として細かく世話を出来るようになってきました。そして、アルフレッドの顔色、肌色も良くなり、笑顔が出てくるようになりました。目的を達成できたため、一旦緊急モニタリング体制は解消です。アイキャンの路上事業には、約300人の子どもが参加しています。私たちは、路上の子どもたち全体の状況が改善するように心がけて活動していますが、その中でも、今回のように緊急に対応しなければならないケースがあります。専門を持ったスタッフがチームを作り、路上の子どもたち一人ひとりの状況を見極めて、小さな変化を積み重ねています。

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炭でつながる村と町と日本

2010年09月24日 | 先住民ブラアンの子どもたち
たくや@ミンダナオ

「山に住む先住民族が、炭焼のために木を伐採するから、山から森が消えた。」
「先住民族は先のことを考えず、すぐに楽な目先の利益だけを追い求める。」

先住民族ブラアンの多くは、炭焼を行っています。畑作業と違って、機材や肥料などの先行投資を必要とせず、また木を伐採してすぐに炭にできるので作物のように何ヶ月も世話せずに済みます。できた炭はすぐに売れ、現金を得ることが出来ます。


【ブラアンの炭焼の様子。窯を使わない伏せ焼】

一方、その炭を購入するのは、バッシングする町の人たちです。ミンダナオの町では多くの家庭が調理の燃料として炭を使用しています。電気やガスより経済的だと言われています。また、大きな木は、1920年以降に急激に日本に輸出されています。住宅をはじめ、さまざまな用途の木材として、日本の生活を潤してきました。


【町内にある炭の問屋。奥に見える袋の中身はすべて木炭です。】

ブラアンが住む山に残るのははげ山と、それによる土砂崩れや鉄砲水による被害です。それでも、ブラアンにとっては、家族を養うために他の手立てが無いため、炭焼をせざるを得ない現実があります。

なかなか理解できない村と町、そして国を超えた人たち。
私たちが変えるべきは、その「関係性」です。

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路上で病むということ

2010年09月23日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

16歳の男の子マービン(仮名)が、先週入院してしまいました。ずっと、体調を壊しがちで、スタッフも心配していました。以前は、結核を患っていたこともあります。保健所などで薬をもらって飲んでいるかと聞くと、ちゃんと飲んでいるといい、いつも、大丈夫、大丈夫だからと気丈に振舞っていました。しかし、とうとう立って歩けないまでになり、SOSを出して来ました。「ローズお姉さん(アイキャンのソーシャルワーカー)、僕歩けなくなってしまったんだ。助けてくれない?」と泣きながら訴えて来ました。


【元気な時のマービン、写真右】

2009年4月に父親は結核で亡くなり、路上で野菜売りをして生計を立てる母親が3人の兄弟たちを育てています。路上で商売をすることは、法律で禁止されているため、捕まらないようにいつも場所を移動しながら売り歩きます。朝早くから野菜市場へ買出しに行き、小さい体でリヤカーを押します。

それでも、とても野菜売りでは、入院費を賄える収入を得られません。母親は、マービンが、アイキャンスタッフに痛みを訴えたことに驚いていました。「いつもは、どんなに痛くても、一人でじっと我慢してるの。家計が苦しくて払えないって分っているし、長男で自分がしっかりしないとって、ずっと我慢してるの」と。

マービンも、元気な時は、野菜売りを手伝ったり、路上で車の呼び込みや、廃品回収、キャンディやタバコ売りで、家計を助けていました。しかし、病んでからは、ただ路上で膝を抱えて座りこんでいました。



入院した時に、マービンは言いました。「入院できて良かった。路上で倒れても誰も助けてくれないけど、病院にいれば、助けてくれる人たちがいるからね」。

しかし、「入院」は、大変です。フィリピンの病院では、患者に必ず付き添いが付かなければならないシステムになっています。何か医師からの指示が出れば、薬、ガーゼ、針、点滴、時には輸血用の血液まで、付き添い人が買いに走ります。日本のように、病院に全て用意があり、看護師が面倒を見てくれるようになっていないのです。しかし、マービンの母親は、1日だって仕事を休むことは出来ません。仕事が出来ないことは、すぐにご飯が食べていけないこと、家族が生きていけないということに直結します。付き添い人がいない場合、ただ指示が枕元に置かれ、患者は、ほって置かれるだけなのです。

マービンをほっておくことは出来ないので、普段の活動を継続しながら、今もアイキャンスタッフが交代で付き添っています。医師の指示をひたすら待つ、途方もない仕事ですが、彼が1日も早く元気になって、笑顔を取り戻してくれることを願って、ひたすら待ちます。

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アイキャン日本人スタッフ研修

2010年09月20日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

アイキャン名古屋事務所、マニラ事務所、ジェネラルサントス事務所の日本人スタッフ、インターンが一同に集まり、ここマニラにおいてスタッフ研修が行われました。日本とフィリピンで4つの事務所に分かれて働いているため、こうやって合同研修を定期的に行います。

【アイキャン日本人スタッフ一同】

研修の目的は、フィリピンの他NGOの事業や、開発への知識と理解を深め、それぞれの役割の中で、アイキャンの事業に活かしていくことです。

①フィリピンのNGO A
 高齢者のための、高齢者による活動を実施しているNGOです。この団体が活動している1つのグループを訪問させてもらいました。このグループでは、高齢者グループのメンバーが地域の高齢者の健康管理を行ったり、病気やお葬式の時の補助、団体のための資金調達活動を兼ねたバレンタインパーティーなどを行っています。1人の女性のメンバーは、「参加する前は、家でとても孤独だっかけど、このグループに参加するようになって、人生がもう一度楽しくなった」と話してくれました。

 

②フィリピンのNGO B
 1995年、ケソン市のある地域において、住んでいる土地から立ち退きを命ぜられた住民たちが、土地の権利を買うために作ったグループです。グループとなることで、一定の広さの土地を買い取る交渉がし易くなり、土地を所有するオーナーとの交渉のテーブルに着くことが出来ます。
 この住民グループは、1ヶ月に1,000ペソずつ貯金し、土地購入資金を貯めることから始めました。そして、土地を所有するオーナーの家に雨の日も嵐の日も通い、長い年月をかけた値段交渉の末、土地売買の合意に至りました。
 
 
【土地の権利を買取り、区画整備後、貯蓄したお金で家を建てました。】

 マニラの3割の人が住む権利を持たないままに暮らしていると言われており、「立ち退き」は、とても大きな問題です。鉄道や道路、大きなデパートを作る等の理由によって、再定住地先へ移住させられます。

この日、改めて感じたことは、人々が集まり、協調行動を取ったときに生まれる「力」です。日本でも、地域の助け合いが大切だと叫ばれますが、フィリピンでは、もともと地域社会が密接で、助け合う風土があるため、人々が地域で何か変化を起こそうとしたとき、機能しやすい土壌があります。その地域の力を信じるアプローチ、それが私たちアイキャンのようなNGOが重視する地域開発の「組織(グループ)化」というものです。

地域住民はグループを作り、そのグループが自分たちの問題を認識し、それに対してどのように行動していくかを決め、実行する、それをファシリテートするのが私たちの役割です。アイキャンのパヤタス事業では、先日アイキャンから独立した、薬局とクリニックを運営する協同組合がそのグループにあたり、路上の子どもたちの事業においては、マニラ各地の路上の子どものリーダーから成るジャストワーカー(Junior Street Workers)が、それに当たります。

 路上の子どもたちのグループ、ジャストワーカー(Junior Street Workers)も、力を付けて自分たちの問題を認識し、それに対して行動し、社会に変化をもたらすようなグループとなるように、大切に育てていかなければ。自分たちの事業を離れ、客観的にアイキャンの事業を見つめなおすことができた日でした。


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それが「現実」なのだ。

2010年09月18日 | ごみ処分場の子どもたち


ゆきよ@まにら

今、フィリピンは雨季。雷を伴う雨はめずらしくない。パヤタスでは雨の中でも、今日の晩御飯を家族に食べさせるために、明日子どもを学校に行かせるために、ごみ山の上で多くの人が働き続けている。先々月はごみ山で働いている間に雷に撃たれ、ひとり若者が亡くなった。その若者は立っていて、まわりにいた者はたまたま座っていたのだそうだ。

先日家庭訪問させてもらった家の18歳の女の子アンジー(仮名)は、その亡くなった若者と親しくしていた友人のひとりだった。「こんなことになって悲しい。人生で一番辛かったことは、彼に死なれたこと。」と話していた。友人が事故で亡くなること自体ショックだが、ごみ山の上で働いている途中に雷に撃たれて死なれるのは悲しすぎる。そんな彼女の弟もまだ16歳だが、通学経費が続かず高校を中退し、今はごみ山で働いている。母親は「危ないから本当は働かせたくないけど、ほかにチョイスがなくて。。。息子を止めることはできないの。」確かに誰がそんな危ないところで自分の子どもを働かせたいだろう。

アンジーの父親はトレーラーの運転手だが、もともと収入は不安定な上に、病気がちなこともあって、十分に家族が食べられる状況にない。先日は1週間働きに出ていて200ペソ(約400円)しか持って帰れなかった。母親は蒸しパンを仕入れて売り歩く商売をして、なんとかその日のおかずを少し買うくらいの収入(1日50ぺソ:約100円)を得ており、そんな中でアンジーの弟のごみ山で廃品回収をして得られる収入1日100ペソ前後(約200円前後)は、生活費の大部分を占めている。

母親にごみ山をどう見ているのか尋ねると、「大変だけど確実に収入を得られる場所。でも危ないし体を壊すし、長期的に働くべき場所ではないと思っている。夢を持つ者はずっとそこで働くべきではないわ。」ごみ山は必要悪なのか。でもごみ山はあるべきかないべきかという議論とは別に、実際のところ「明日の生活費をどこからか得なければいけない」という切実なニーズが目の前に横たわっており、人々は今日もまたごみ山に登る。生きていくことは簡単なことではない。

「なぜ他の安全なところに引っ越さないのかって? 今サバイバルが大変で、引っ越す余裕なんてない。」と母親は語る。まわりの人々、とくに日本から来た日本人は、はなぜそんな大変なところから移動しないのかと単純に不思議に思うが、サバイバルのまっさなかにいる人たちはそこから出て行く手立てさえ持っていない。それが「現実」なのだ。

この家の娘アンジーは16歳で高校を卒業して(フィリピンは小学6年間のあと高校4年間のみ)さらに勉強したかったが家計が許さず、クラブで働いた時期もあった。まだあどけない華奢な彼女が、クラブで働いていたと聞いたときは驚いた。今はアイキャンの外部技術訓練支援(JICA草の根技術協力事業パートナー型の委託事業の一部)で、美容の勉強をしている。とりあえず技術を身につけて収入を得て、貯金ができたら、またさらに勉強したいという夢をもっている。「ちゃんとした職について母親たちを助けたいの。」いつか弟はごみ山で働かなくてもすむようになるだろうか。

私たちは、どこまでこの「現実」を変えていけるのか。



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マリガヤ村の校舎ができました!

2010年09月16日 | 先住民ブラアンの子どもたち
たくや@ミンダナオ

関連記事
去ってしまった30人が戻るためにできること
校舎建設が決定
マリガヤ校舎建設―中間報告―


【新校舎の外観】

ここフィリピンのミンダナオ島で、教育を受けることができる子どもたちが、また増えました。

ミンダナオ島ジェネラルサントスのマリガヤ村の校舎建設が完了し、校舎を教育省へ引き渡す式典を先日開きました。子どもたちや村人、学校関係者だけでなく、ジェネラルサントス市長や市議、教育長、更にご寄付くださった浜松南ライオンズクラブの皆さまも日本から式典に参加してくださいました。


【式典の様子】

この度、建設できたのは1棟2教室の校舎です。これにより小さな集会所を間借りしていただけの旧教室に通っていた1~3年生(約40名)の子どもたちが、より良い教育環境の下で勉強ができるようになりました。しかしこの校舎建設の効果はそれだけに留まりません。

「入学者数の増加」40人 ⇒ 110人
「学年の増加」1~3年生 ⇒ 幼稚園~6年生
「教師数の増加」1人 ⇒ 3人
「通学時間の短縮」約2~4時間 ⇒ 約5分~30分 など



【新校舎での授業風景】

新たに通うようになった70人の子どもの内、約20人は復学者です。

彼ら・彼女らは「学校が遠すぎる」「不十分な教育環境」などの理由から一度は学校を中退していました。学校に行きたいという思いがあるにも関わらず、断念せざるを得なかった理由は、「教育を受ける権利」を持つ子どもたちに対して、私たち大人たちが「教育を受ける環境」を提供できなかったためとも言えます。

この校舎建設の実現により、私たち大人がその責任を少しは果たせたことにうれしく思うと同時に、学校への思いを忘れずに復学を決断してくれた20人の子どもたちに感謝したいと思います。


【1年生として復学したジュメルくん16歳(中央)】

校舎建設に際し、「大人たち」の変化も顕著です。アイキャンが建設したのはコンクリート製の2教室のみですが、学校敷地内には更に竹製の予備教室が2つ建設されました。これはマリガヤ分校のPTAメンバーをはじめとする地域住民たちが自発的に建設したものです。それ以外にも給食調理や学校敷地の美化など、地域住民が子どもたちの学校環境の向上に積極的に取り組むようになりました。

マリガヤ分校のロータス先生は、「校舎建設は子どもたちだけでなく、大人たちをも変えました。予備教室作りや給食調理などを通して村人同士のつながりが強くなっていったのを感じます。」と言います。

 
【地域住民が建設した予備教室】【給食を配膳する地域住民】


新校舎という目に見えやすい変化だけでなく、見えにくい「小さな変化」を大切にしながら、アイキャンは今後もマリガヤ住民と共に活動していきます。


【マリガヤ分校に通う子どもたち】

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インド視察報告

2010年09月09日 | スタッフとオフィス
さえ@マニラ

パヤタス事業において協同組合を担当するポールが、インドのNGOの視察に行って来ました。インドにおいて活動するNGOは、数万から数百万と言われ、その数や資金量から世界有数のNGO大国と言われています。

今回の視察では、3つのNGOを回りました。①医療系NGO、②先住民族を対象にした医療、教育、生計向上活動をするNGO、③路上の子どもを対象にしたNGOの3つです。インドの路上の子どもは、1,100万人(1994年UNICEF)と言われています。

この視察の目的は、インドで活躍するNGOの中で、アイキャンの今後の事業に参考になるヒントとなるもの、参考に出来る活動の情報を持ち帰ること。ポールの任務は重大です。
飛行機に乗るのも、海外に行くのも初めてのポール、出国時は、正装でした(笑)。





帰国後、パワーポイントで作成した資料で、見聞きしてきた情報をマニラ事務所スタッフに伝えます。今日は、パヤタス担当、路上担当、アドミン担当と勢揃いでポールの発表に耳を傾けます。

発表を聞き、みなでどう今後の事業に活かせるか意見交換です。スタッフのバックグラウンドは、ソーシャルワーカー、看護師、路上教育者、会計担当とそれぞれ異なりますが、いろいろな背景を持っているからこそ、いろいろな意見が出てきます。「ポールの持ってきた情報と、そういえば、フィリピンでこんな活動をしているNGOがあった。それと組み合わせれば取り入れられるかもしれない。」などなど。

路上の子ども事業を担当する私としては、インドでどのような路上の子どもの活動がなされているのか、とても気になる部分です。③のポールの行ったNGOでは、駅など子どもの集まる場所にシェルターを持つと共に、子ども銀行(路上の子どもたちが、貯金をし、必要なときに引き出すことが出来る、またお金を借りることも出来る仕組み)、保健協同組合(子どもたちが、1ヶ月に5ルピー(約10円)ずつ出資し、保健サービスを受けられる仕組み)を運営し、また運営に子ども自身も関わっています。そして、元路上の子どもだった青年たちによる、食堂の運営もされているとのことです。たくさんの活動を持っているNGOですが、その活動の軸になっているものは、子どもたち自身の参加によって成り立っている活動だということです。とても、私たちの路上の活動にも大きなヒントになるものだと感じました。

この視察がどう活きていくのか、今後ご期待ください。

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平和をもたらすマンガ

2010年09月04日 | ジェネラルサントスの子どもたち
たくや@ミンダナオ



この日はアイキャン奨学生15名が事務所に集まり「マンガ作り」を行いました。

アイキャン奨学生が暮らすジェネラルサントス市はキリスト教系住民が大部分を占め、更にイスラム系民族や数々の先住民族が混在して暮らしています。しかし民族間の交流は頻繁ではなく、そのためか多くの住民は異なる民族に対してネガティブな偏見を持ち、互いに不信を抱いてしまっています。

そこでキリスト教徒である15人のアイキャン奨学生たちはグループに分かれ、自分たちとは異なる民族を訪問する「交流の旅」を5つの地域で実施しました。奨学生たちは訪問した地域を散策し、人々の話を聞き、家事を手伝い、子どもたちと遊び、お祈りに参加するなど、多くを体感してきました。訪問前は怖がっていた奨学生たちも、帰る際には新たな友達を多く作っていました。

過去記事:『交流の旅 -ティボリ編-』 『交流の旅 -マギンダナオ編-』

そして「交流の旅」で得た経験や気づきを「マンガ」にして、ジェネラルサントスの人々に広く共有することにより民族間の誤った偏見や不信を払拭することが、この「マンガ作り」の目的です。


【芸術を通して平和を説くファシリテーターの指導を受けるアイキャン奨学生たち】


【訪問した地域の地図を作ることによって記憶を呼び戻す作業中】


【登場人物を設定中】

子どもたちは、偏見や差別という地域の課題を乗り越えていく大きな力を持っています。そしてきっかけさえあれば、その力を持って、地域を変えていくことができます。

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