ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

大きな平和-その後-

2013年04月05日 | 紛争地の子どもたち
こうじ@コタバト

2012年10月に署名されたフィリピン政府とモロ・イスラム・解放戦線(MILF)との「和平の枠組み合意」後、大きな武力衝突は起きていません。最後の衝突事件は、昨年8月初めにマギンダナオ州で起きた、枠組み合意に反対する武装勢力による攻撃でした。しかしこれも、政府軍による鎮圧やMILFによる仲介を経て、1~2週間のうちに収まりました。
その後コタバト市周辺には、政府機関やMILFの「枠組み合意を支持する」ことを示した横断幕や立て看板が、国道沿いや橋の上に貼られています。

コタバト市に入る橋に掲げられた、和平合意支持の横断幕

今年2月には、アキノ大統領みずからコタバト市を訪れ、イスラム住民を対象にした政府の支援プログラムを発表しました。イスラム地域への具体的支援策を示すことで、信頼関係をさらに醸成し、和平の最終合意へ弾みをつけようとするものです。その内容は、生計向上のための資金の貸付け、健康保険制度への加入支援、学生への奨学金の提供などです。

新たなイスラム住民支援策を発表した会見で、政府交渉団の代表(右)とともにMILFムラド議長と歓談するアキノ大統領(中)

2月末には今後3年間で、イスラム自治政府の枠組みを決める合意案をつくり出すための移行委員会(Transit Committee)のメンバーも決まりました。4月にも具体的な話し合いが行われる予定です。

表向き、順調に進んでいる和平交渉ですが、水面下では様々な動きがあります。1996年に政府との和平合意を結び、ムスリム・ミンダナオ自治区を立ち上げたモロ民族解放戦線(MNLF)は、現在の和平合意に強く反対しています。MNLFは、イスラム地域全体の支持を失ってきていますが、自分たちの和平合意がないがしろにされ、メンツをつぶされたと受け取っています。

また、最近マレーシアのサバ州で起きたフィリピン系住民と警察との間の銃撃事件は、「和平交渉を仲介しているマレーシア政府とフィリピン政府の間に問題を起こして、和平交渉を中断させようと画策されたものだ」という解釈も出ています。和平に反対する勢力はまだいるのです。

移行委員会が新しいイスラム自治政府の枠組みを決める合意案をつくり出すまでには、まだまだ不透明な情勢が残されています。和平への期待と反対が絡み合いながら、今後もミンダナオ情勢は動いていくと考えられます。

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