ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

ピキット学校建築までの道~コタバト市にて建材を購入~

2009年08月30日 | 紛争地の子どもたち
ゆきも@まにら

ミンダナオ島北コタバト州の川沿いの学校で、アイキャンは紛争の影響を受けたコミュニティの大人や子どもたちが長年夢見てきた「理想の学校づくり」を応援しています。

写真下の小学校は、7つの集落の中でも特に町から遠く奥地にあるカバサラン村の小学校です。ここに住むマギンダナオ族の人々は、30年以上続くミンダナオ紛争で幾度も土地を追われ、避難と帰還を繰り返してきました。

これらの集落に住む人々は戦闘が静まり集落に帰還したものの、学校校舎は暴力の傷跡を残し、子どもたちが日々安心して学校に通える状態ではありませんでした。

村の大人たちは、「子どもたちが再び安心して学べる学校を作りたい」との願いから、川沿いにテントを張り、青空学級の運営にコミュニティ全体でとりかかりました。


【2003年の政府とMILFの全面戦争直後の青空学級の様子】


【授業の様子。この頃集落ではいまだ戦火が振る危機的な状況であった。村に帰れない人々は村の側を流れる川のほとりで生活を再開させ、子どもたちの青空学級への通学を見守った。】

アイキャンの事業は、これらの集落で既に住民たちが力を合わせて取り組んでいた「手作り学校づくり」を後押ししようと始まりました。

現在では、このピキットから遠く離れたたくさんのアイキャンの仲間たちが、会員になってくださったり、寄付をくださったり、書き損じハガキ集めや街頭募金などを通して、学校作りに参加してくださっています。


【ボートから見る現在のカバサラン小学校】

このカバサラン小学校では、今年6月の新学期に400名以上の新入生が入学式を迎え、現在646名の小学生たちが学んでいます。この小学校では、3つの木造教室を建築し、子どもたちみんなが「校舎の中で」勉強できる環境作りを目指します。

この日は、建築に使う建材の購入を完了しました。
カバサラン小学校は7つの小学校の中でも一番「入りにくい」と言われる集落のひとつ。建材も、コンクリートや大掛かりな重たいものを運ぶのは大変!

次回は、その運搬の様子をお伝えします。









購入した先は、ミンダナオ第2事務所のあるキダパワン市から100キロほど離れたコタバト市です。先月には再びコタバト市で無差別爆破事件が起こり、12歳の子どもを含む罪のない人々の命が奪われました。

「紛争の終わらぬ土地」というミンダナオ島のひとつのイメージが過去のもの、となる日に近づいていることを信じて、アイキャンは人々の平和への祈りを形にしていきます。

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紛争の影響を受け、学校に復学した子どもが安心して勉強に集中できる日が来るように会員として事業を応援してくださる方を募集しています。
http://www.ican.or.jp/pikit.html

子どもたちの教育環境を向上させる「書き損じはがき」もまだまだ募集中です。
http://www.ican.or.jp/kakisonji.html

その他、アイキャンに関する情報はアイキャンのHPへ
http://www.ican.or.jp/
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路上担当ソーシャルワーカー メアン

2009年08月28日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

今回は、路上の子どもたちのソーシャルワーカーとして、路上の子どもたちから絶大な信頼を得ているメアンの紹介です。メアンの担当する事業地3ヶ所の子どもたちは合計約100人。1人1人の状態にいつも気を配り、家族や勉強、人生のこと、いろいろな話をし、アドバイスをしてきました。路上担当になって6ヶ月を振り返っていろいろ聞いてみました。



さえ:「6ヶ月の路上の子どもたちとの仕事を振り返って、感想を聞かせてください。」

メアン:「この仕事は、毎日外を歩き回って、大勢の子どもたちに声が届くように大声を出して、子どもたちがケンカを始めたりと、毎日とても消耗するけれど、子どもたちは、いつも私たちにありがとうって言ってくれる。それが、何より嬉しいです。それから、子どもたちの笑顔は、本当にきれいなの。だからすぐに、疲れなんて飛んでいきます。」

さえ:「仕事の中で一番辛かったことは、何ですか?」

メアン:「5月に路上の女の子が交通事故で亡くなったのですが、そのときが一番辛かったです。いつも物売りをしている路上で、他の子どもたちと遊んでいる時に事故にあってしまいました。病院に行っても、もう手の施しようがない状態で、私たちはただ側についていることしか出来なかった。その時、そして今まで、彼女に対して何をしてあげられたのか、私はベストを尽くしかってすごく自問しました。」

さえ:「一番嬉しかったことは、何ですか?」

メアン:「私が、本当に子どもたちに対して役に立てたと思える仕事をした時です。その女の子が亡くなって、家族は精神的、経済的に落ち込みました。女の子も路上で物売りをしていたので、その子の分の収入の減少と家族の精神的なダメージの影響による収入の減少、亡くなった女の子の妹は、学校を続けていけるかいけないかという、とても厳しい状況に置かれました。

ICANは、子どもたちに対して学費や学用品の提供による通学支援もしています。その制度を利用して、彼女の通学支援を決めました。家族から、その子からとても感謝され、私自身も本当に役に立てる仕事が出来たととても嬉しかったです。」

さえ:「最後にメアンの目標は何?」

メアン:「No more children in street(路上から子どもたちがいなくなることです)」。



メアンは、路上活動の後に、「今日の活動はどうだった?」と他の路上の担当スタッフにいつも尋ねます。改善すべき点、よく出来た点を確認し次回の活動に活かしています。その前向きな姿勢は、子どもを亡くして辛い思いをした経験から来ているようです。

路上で生活する子ども、路上で物売りや物乞いをする子どもたちがいなくなる、その日が早く来るように、今日もメアンは自分に問いかけます。「私は、子どもたちのためにベストを尽くしたかしら」と。

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路上の子どもが幸せに成長できるように、会員さんを募集しています。
http://www.ican.or.jp/street.html
子どもたちの教育環境を向上させる「書き損じはがき」も募集中です。
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路上の子どもたちの学び

2009年08月25日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

ICANでは、マニラ6ヶ所の路上の子どもたちへ教育活動を行っています。ついこの間、路上の子どもたちに「今までICANを通じて、学んだことは何ですか?」と聞いてみました。



以下、子どもたちの声をご紹介します。

私たちの生活している場所は、路上だけれども、自分に自信を持つこと、自尊心を大切にすることを学びました。
お互いに尊敬しあうこと、そして自分をコントロールすることを学びました。
みんなと仲良くする、理解するためにどうしたら良いかを学びました。まず、自分が話をする前に、相手の言うことを良く聞くようになりました。
ICAN以外に学ぶ場所がないので、とても感謝しています。
保健教育では、自分が何かケガや病気になった時にどうすればよいかを学びました。友達に何かあった時にもアドバイスが出来るから、とても良かったです。

路上の子どもたちの中には、路上で生活するに至るまでに、また路上での生活の中で、親や大人からの暴力、差別、虐待、搾取等、様々な経験をしてきている子どもが多くいます。人への不信感が根強い子どもたちは、人との信頼関係、人間関係を築くことが難しくなってしまいます。

ICANの路上教育では、
① 自分について、周りの人について理解をすること。
② 自分自身を大切にするとともに周りの人も大切にすること。
③ 自分を理解し、表現できるようになること。

をゲームやワークショップなどを通じて経験的に学び、人との関係を再構築していく教育活動を行っています。その経験が、子どもたちが路上から出るための一歩となっていきます。



路上の子どもが1日も早く、愛情あふれる環境で生活できますように。

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路上の子どもが幸せに成長できるように、会員になっていただける方を募集しています。年に2回、事業のご報告と子どもたちからのカードを送らせていただきます。
http://www.ican.or.jp/street.html
子どもたちの教育環境を向上させる「書き損じはがき」も募集中です。
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学校がカラバオ(水牛)を購入!

2009年08月20日 | 先住民ブラアンの子どもたち
たくや@ミンダナオ

アイキャンはミンダナオ島の先住民族の子どもたちが通う村の5つの学校で、「今」空腹のあまり学校活動に専念できない子どもたちに給食を提供すると同時に、「将来」学校だけで給食活動を実施できるように、「学校菜園・家畜飼育活動」を行っています。


(ダタールサルバン小学校の給食の様子)

この日はそんなアイキャンの活動学校のうちの1つ、ダタールサルバン小学校の校長が、学校で飼育するための家畜「水牛」を購入しました。


(購入することにした、4歳メスの水牛ちゃん(仮名))


(購入に際して、集まったお母さん方)

さて、学校で水牛を飼育することが学校給食の持続にどう繋がるのでしょうか?
以下が、ダタールサルバン小学校が考えた水牛の活用法です。

・水牛に学校の余っている土地を耕してもらう!
 → 耕した土地は学校菜園としてトウモロコシを植える。
 → 収穫したトウモロコシは売って学校の給食費の足しにしたり、給食の材料にする。
・水牛を近隣の農家に貸し、その土地も耕してもらう!
 → 貸した報酬として、収穫の10%を学校に入れてもらう。
 → その作物を売り学校の給食費の足しにしたり、そのまま給食の材料にする。
・交配し、子どもをたくさん産んでもらう!
 → しばらく育てた後、母水牛同様、子ども達の給食のため活躍してもらう。
 → 頭数が増えたら、売って学校の給食費の足しにする。

ダタールサルバン小学校とアイキャンと水牛ちゃんの挑戦はこれからも続いていきます。


(左から校長、村長、水牛の世話人。)

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ミンダナオ島の子どもが幸せになれるように、ICANでは3つの事業を行っています。会員になっていただける方、ご寄附をしてくださる方を募集しています。

1、ブラアン族の子どもたち(特に募集中!)
http://www.ican.or.jp/gensan_feeding.html
2、紛争地の子どもたち(特に募集中!)
http://www.ican.or.jp/pikit.html
3、ジェネラルサントス市内の子どもたち
http://www.ican.or.jp/gensan.html

子どもたちの教育環境を向上させる「書き損じはがき」も募集中です。
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路上の子どもたち 朝4時の出来事

2009年08月10日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら


「ネルソン君(仮名)が木から落ちて、病院に運ばれた。」という情報が彼の路上の仲間から、朝一番にソーシャルワーカーのメアンに入りました。

ネルソン君は、朝の4時に木登りをして遊んでいて、木から落ちたとのこと。スタッフが病院に駆けつけた時には、ベッドに寝かされ治療を待っていました。フィリピンでは、お金を払うまで治療は始められません。

ネルソン君の母親に連絡を取り、まず息子が病院にいることを伝え、治療費について相談をしました。アイキャンでは、路上の子どもたちへの緊急医療支援をしており、家族が治療費を賄えない場合や、身寄りがいない場合、アイキャンが必要に応じて医療費を負担します。

スタッフがネルソン君の事故について伝えると、母親から「もっと高い木から落ちて、死ねばよかったのに」という言葉が発せられました。

母親は再婚し、ネルソン君は、祖母といとこたちと生活しています。生計は苦しく、ネルソン君はいとこたちとサンパギータ(白いお花を編んだ飾り)を夜中の1時2時までフィルコアで売り歩いています。祖母と暮す家はフィルコアから1時間ほどと遠く、仕事の後はそのままフィルコアの裏にある広場で仲間と寝てしまいます。
その広場で起きた事故でした。

母親は子どもの治療中、痛々しくて見ていられないと子どもに近づいてきませんでした。ソーシャルワーカーのメアンが、「死ねばよかった」なんて言わないでと話をすると、彼女はとても自分を恥じていました。その「死ねばよかったのに」という言葉の奥には、自分の子どもがケガをしても病気になってもお金がなく、何もしてあげることができないという現実に対する悲鳴のように、私には聞こえました。



【ギブスをつけて、セッションに参加するネルソン君】

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変わっていく子どもたち

2009年08月05日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

子どもたちの表情や態度は、ICANのスタッフとの信頼関係を少しずつ築いてくるなかで、とても大きく変わって来ています。

最初は、私たちが声を掛けても、反応も薄く、心の奥に気持ちを閉ざしていた子どもがほとんどでした。

ブルーメントリットでは子どもたちの全員が全員、以前はラグビー(シンナー)を持参してセッションを受けていました。彼・彼女らは、家族と様々な理由により離れ、ほとんどが子どもたちだけで生活しており、6つある事業地の中でも、彼らがもっとも厳しい環境におかれています。

路上の子どもたちは貧富の差の激しいフィリピン社会の中で、差別の対象となる存在で、大人への不信感や人生への絶望感を抱えています。

私たちスタッフはそんな子どもたちのところに定期的に足を運び、話しかけ、セッションに誘い、彼らの声に耳を傾けます。

今では、ICANのスタッフが事業地に行くと、子どもらしい表情で「今日は、セッション何するのー?」「今日のご飯は何ー?」と駆け寄ってきます。腕がちぎれるくらい、何人も腕にぶら下がり、おんぶに抱っこに、全力でスタッフに甘えてきます。自分のことについても、仲間たちのことも少しずつ話してくれるようになりました。

ブルーメントリットの子どもたちも、ICANのセンターを使ったあとは自分たちできれいに掃除をし、今はラグビーを吸っている仲間がいれば、「辞めようよ!」と子どもたち同士でけん制しあいます。

【ブルーメントリットの子どもたち】


子どもたちが見せてくれる表情は実に豊かです。冗談を言い合って笑ってる顔。ケンカして怒っている顔。拗ねている顔。さみしそうな顔。。。

こうして信頼関係を築く中で日々変化する子どもたちの表情や態度が、明日へ向かう私たちの力となっています。私たちとの信頼関係のなかで、子どもたちが自分の人生を切り開く力をつけられることを目指して、また今日も子どもたちに会いに路上へ向かいます。


【路上の事業では、マニラの6ヶ所で実施しており、その内の1つミンダナオ通りの子どもたち】


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生き延びるための知恵

2009年08月01日 | ごみ処分場の子どもたち
(ICANの診療の日、ケアセンターにて医療スタッフに手当てをうける子ども。いつどこでこのようなサービスが享受できるか情報を持つことは、ぎりぎりの生活をしている住民たちにとって生き延びるための知恵である。)

ゆきよ@まにら。

パヤタスは人口20万人とも言われる巨大な町である。パヤタスにあるゴミ山周辺に住む人々はおよそ1万人。外からのイメージとしては、廃品回収で生計をたてている「貧しく」「教育のない」人々が住む「危ない」地域なのでタクシーにも乗車拒否されてしまう。しかし実際パヤタスと一概にいえども、階層レベルもさまざまで、生活の余裕度もまったくさまざまである。

先日訪れたゴミ山近くの家は、とくに生活状況の厳しさのうかがえる家だった。13人で8畳足らずのスペースで生活している。両親ともにゴミ山で働いていた。出戻りの長女に7人の子どもがいるので、圧倒的に家族数が多すぎる。子どもたちは公立学校でさえ通えない。学費は無料なので新学期には学校に入れるが、毎日のお弁当代や通学交通費が足りず十分にご飯も食べられない。

私たちが訪れた日も前の晩から食べていなかった。ゴミ山で働くしかほかに生活手段がない。学校にいけなくなった子どもたちも一定の年齢をすぎるとゴミ山で働き始めた。「楽しいこと、大変なことは何ですか?」という質問に、「楽しい気持ちになることが難しい。。。」長女の息子は持病を持っているが、毎日の食費も十分ないのに、治療費に有り金を使うことができない。やっと短大を出た次女は職探し中だが、交通費もないので、それもままならない。閉塞感に息が詰りそうな生活苦がそこにある。

一方同じゴミ山近くの家で、同様にゴミ山でお父さんが働いている家庭も訪ねた。
お母さんは、その地区のボランティアとして学校や役場の掃除をしたり、いろいろな世話役を引き受けている。そのような地区ボランティアは政府からの奨学金や手当てが出ることになったときに、優先的にそんな情報をゲットできる。実際、3人以上の学生のいる家に出るという政府の手当てや子どもたちの通学ための奨学金をその家庭はもらっていた。ここのお母さんのように、政府やNGOのサービスに敏感で、家族みんなが必要としているいろいろなサービスを受けられるように立ち回っているお母さんたちをパヤタスではときどき見かけることができる。それぞれのサービスを獲得するための知識は、ここでは生き延びていくための知恵なのだと思わせられる。同様に現金収入が限られていても、このような知恵を持っている家庭は生活の余裕を獲得できるのだ。

現金収入を求めて田舎からパヤタスに来た人々は、ゴミ山で1日働いても法定賃金の半額以下しか稼げない現実のなかで、それでもなんとかサバイバルしている。限られたリソースを入手するためには、どれだけ広いネットワークを持ち人間関係を築いているかが大きな鍵となる。「貧しさ」とは、ただ現金がないことではなく知識を持たないことだと言ったパヤタス住民がいたが、地域に広がる社会関係からの疎外もまた「貧しさ」の一部である。

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パヤタスごみ処分場の子どもが幸せに成長できるように、会員になっていただける方を募集しています。
http://www.ican.or.jp/payatas.html
子どもたちの教育環境を向上させる「書き損じはがき」も募集中です。
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