町の財政を維持するために「止まっている原発内の使用済み核燃料」に税金を課す

2016-10-08 14:12:01 | 日記

  町の財政を維持するために「止まっている原発内の使用済み核燃料」に税金を課す

 

    九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町議会が「原発内に貯蔵されている使用済み核燃料に課税をする条例を可決した」という報道を見た。同原発基地内には約830トンの使用済み核燃料があり、1キロ500円の税額で年間4億円を上回る税収を見込むという解説もつけ加えられている。(福島民報・10月8日)

    それは玄海1号機の廃炉に伴う交付金の減額や固定資産税の減少の穴埋めが目的であるという。しかも、議会における決議を前に、町長は9月中旬に九州電力との合意を得ているという手際のよいものであった。

    これをどのように受け止めたらよいだろう。

    福島県民の一人として、福島県が電源三法交付金を受け取ってきたことは承知をしている。立地地区の住民ではないが交付金の恩恵を受けてきたことは事実である。そして原発三基の破壊により放射能汚染に慄いた一人でもある。その不安と怒りは忘れることはできないが、その立場にたちながらもこの度の玄海町が決議をした「使用済み核燃料」に対する課税について、それが町の財政破綻を救う手段であるとするところに「暗闇の淵」に立つ想いを強くするものである。

    2015年度の玄海町議会で岸本町長は次のように述べている。「原発の運転停止が続き、今後の財政の見通しは不透明。事業を見直し、最小限の経費で最大の効果を上げる必要がある」と強調したうえで、川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市などが使用済み核燃料に課税している事例を示し、新税導入に向けて「九電や議会などの同意を得た上で、国とも協議したい」と答えている。また「玄海町の15年度一般会計予算案は82億2300万円で、原発関連の歳入が43・7%を占める。そのうち原発施設などの固定資産税は23億300万円だが、減価償却で毎年14・2%ずつ減少している。1号機が廃炉になると、固定資産税の課税対象の多くを占める大規模償却資産が16%減る見込み」と町の財政破綻の窮状を当時の地元紙「佐賀新聞」は報じている。

     これは何も玄海町、あるいは薩摩川内市に限ったことではない。青森では六ケ所村の再処理工場にある使用済み燃料などに県は90年代から課税を続けてきた。税収は年間200億円程度にものぼるが、六ケ所村やむつ市など立地市町村には全く配分されていなかった。むつ市が条例素案をつくったのはなぜか。それは「原子力施設はみな下北半島にあるのに、県が課税するだけで地元にカネは来ない。それなら自分で課税しようと考えた。早い者勝ちということ」だったと「むつ市」幹部が語った記事を読む。

    ではどうなるのだろうか。「原発交付金、あるいは課税で成り立ってきた町の財政が破たんをする」という状況の中で原発の廃炉を住民は同意をするだろうか。あるいは住民が再稼動を求めるという状況を生み出しはしないか。

     同時に次の記憶を思い出す。「玄海町の岸本英雄町長(62)が4月下旬、毎日新聞のインタビューに対し、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場受け入れに前向きな考えを示した。究極の迷惑施設とも言える最終処分場を容認する発言は政治家にとって命取りともなりかねず、最初は耳を疑ったが、町長は本気だった。背景を取材すると、長年の原子力依存から抜け出せなくなった「原発の町」の現実が見えてきた。町長はインタビューに『最終処分場も選択肢の一つ明言し、今のところ手を挙げるつもりはないが」と述べた。(毎日新聞4月27日)

     ここに「消すことができない、燃やしてはならない核の火」に手を付けてしまった結果、「行き場のない使用済み核燃料を新たな収入源として留め置かれること」の実態を見せつけられる。もはや、その責任は誰、彼のものではない。私も福島県民の一人として、これらの事実に電源交付金をはじめとする「金目」に慎重ではなかった責めが問われることを痛感する。そのことをあらためて認識をした今般の報道であった。