今、必要とするのは、介護保険制度をしっかり振り返ること・・・

2016-10-03 08:21:24 | 日記

  今、必要とするのは、介護保険制度をしっかり振り返ること・・・

    介護保険制度が2000年4月に施行された。それまでは行政が介護の必要な人を選別して、「行政処分」として老人ホームに入所させるなどの「措置制度」によって運営されていた。そこには議員あるいは行政の有力者に働きかけるという、いわゆる「コネ」が無ければサービスが受けられないというものが発生した。それを「利用者中心型の仕組み」としての保険制度に改められ、画期的なものとして「20世紀最後の大事業」あるいは「介護革命」などと呼ばれた。そして社会保障分野のみならず、国民生活に一大変革をもたらすものとして大きな「期待」と「高揚感」をもって迎えられた。   
    よって医療保険同様「保険制度」である限り介護は保障されると受け止めてきた。それが「いつでも、どこでも、誰でも、必要になったとき必要な介護が受けられる」が合言葉となって全国に広がっていったのである。そして丸16年が経過した今日、残念ながらこの介護保険制度への期待は色あせたものとなってしまった。これが「民間保険」であれば契約する人はいないばかりか「掛け捨て」を覚悟で脱退する人が続出するだろう。

    また、介護の仕事は「きついだけではなく低賃金」の職場となっていることに加え「雨の後のタケノコ」のように続出した民間の介護事業は、業者の不正行為や介護士不足により廃業、あるいは縮小、撤退の実態が続出している。

    これらの事実に対し安倍内閣は、昨年(2015年)6月に「わが国の経済と財政を立て直すため、社会保障改革の必要性を強調。介護分野については『慢性期な医療・介護ニーズに対応したサービス提供体制の見直し』『市町村における給付費の適正化と利用者負担の在り方』『軽度者に対する生活援助サービス』などについて地域支援事業への移行を含めた見直し」などの閣議決定を行った。

     しかも、これに先立つこと2014年4月に「要支援1・2」と認定された高齢者に対するサービスの総費用額に上限を設けて伸びを抑制する方針を軸とする「介護保険制度の改悪」の強行採決をはかった。この制度によって要支援1・2の認定者に対する配食・見守り・生活支援サービスなどを介護保険給付の対象外とし、ボランティアやNPO、民間企業の配食サービスなどを活用して行う「地域支援事業」に委ね、しかも3年の猶予期間をもつという厳しいものとなっている。

    そして今般「要支援向け移行の停滞」と題する毎日新聞(2016年10月1日)の記事を見る。「全国一律の要支援者向けの支援サービスを、市区町村に移行の実態が停滞しているという実態を明らかにした。また昨年4月に事業を始めた78自治体の実施状況を調べると、サービスの種類は増えたが新たな担い手となる住民やボランティアの確保などが進まず、これまでと同様、その担い手は介護事業者による訪問介護が74・5%、通所介護が87・4%になっている」とつけ加えている。しかし、「新介護による介護報酬の切り下げ」は経営が成り立たないとして、その介護事業者は担い手から撤退、あるいは介護拒否の実態を生み出している。それだけではない。施設介護への入所希望を絶たれた「要介護1・2」についても、「軽度の介護」と称して2018年度の介護保険制度の見直しに含まれている」と警鐘を鳴らしている。

     まさに「期待の20世紀最後の大事業」から「暗黒の大介護」の時代に入ったと強調したい。

     国会審議の場をはじめとして、国民を前にして語る安倍首相の姿を見て思うことがある。「このお方って年を取らないのだろうか。老後の心配はないのだろうか」と。「いやいや違う。私も年を取りますよ。当然身体が効かなくなるでしょう。でもお金で解決すれは良いのです。それが自助努力というものです」と言いたいのだろうかと疑う。

     なるほど何時ぞやのテレビで見た都内の高級有料老人ホームの光景を思い出す。そこには見晴らしの良いルームのゆったりとしたソファーでコーヒーを飲み、新聞を広げている場面が映し出されていた。そのホームは終身介護が条件である。入所一時金が5.000万円、月額90万円、そして入所者2名に1名のスタッフがつく。住人の経歴は医師、外交官、高級官僚、財界人とか。政治家の紹介は無かったが遠慮をしたのだろうか。