業務日誌

許せないヤツがいる 許せないことがある
だから倒れても倒れても立ち上がる立ち上がる
あいつの名はケアマネージャー

近く会えると思います

2007年01月11日 | 事例検討
以前の職場の後輩から、年賀状の返事がきました。
「昨年は“業務日誌”で笑かしてもらい、またいろいろ考えさせられました(以下略)」
とありました。

後輩よ。
こんなブログを読んで、ものを考えるな。
このブログで得られるものは一抹の寂しさだけです。
ブログ“業務日誌”は、業界の荒野にはびこる雑草を目指しています。


今日、トシオさん宅にケアプランを届けて、ついでに色々と話をしてくるつもりだったのですが、緊急の用が出来てダメになってしまいました。
おかげで明日のトシオさんとの対決(ナマホCWを交えての面談)も保留。
トシオさんが眼鏡を購入するために眼科受診をし、見積もりなどを区ナマホ課に提出しにいくのをつかまえて、そのまま話し合いに持ち込もうというハラだったのですが、トシオさんはどうあっても私とリリーさんとナマホCWを同席させたくないようです。
色んなウソがバレて、自分の立場が悪くなるのを怖れているんですね。
そこで私もナマホ課に電話で打ち合わせして、トシオさんが区役所に顔を出したらすぐに出かけるようスタンバイして待つことにしました。
予定では、来週トシオさんとリリーさんが区役所に行くらしいことはわかってます。
トシオさんを追い詰めることはせず、しかしこれ以上誰も騙されないように見張ります。


今日、トシオさん宅に行くはずだった時間、私は利用者ショーヘイ氏宅で、ショーヘイ氏の吐いた血の海の中で、必死に心肺蘇生をしてました。


朝、ひがしデイケア職員から、ショーヘイ氏を迎えに行ったが未応答ですと連絡があり、家族に連絡をとって、隣家に鍵を借り、隣家のご主人に立会いをお願いして一緒に自宅に入ったところ、ショーヘイ氏が居間のフローリングの上で、自分の吐いた血だまりの中に顔を突っ込んで、うつ伏せに倒れているのを発見しました。
呼吸もない、脈もふれない、しかも冷たい。
すぐに救急車を呼び、到着するまで胸骨圧迫心臓マッサージ。
…すでに亡くなっているのは明白だったのですが、それでもなお、肋骨が折れるかと心配しながら必死で続けました。
一応救急救命講習とか受講したし、アタマでは理解しているつもりだったのですが、いざとなるとてんでダメですね。
大好きな利用者さんでしたが、本音を言えば死んだ「人」に触れるのが怖かった。
で、気付いたらめそめそ泣きじゃくりながら心臓押してました。

2年前にBLSのABCとか講習を受けたときは、

心臓マッサージ30回毎に人工呼吸を2回行う。人工呼吸をすばやく行い、心臓マッサージの中断時間を10秒以内に抑える事が重要。2人以上いる場合はこの30:2の心肺蘇生を1サイクルとし、5サイクル毎に心臓マッサージと人工呼吸を交代する。

と習ったのですが、消防隊の救急救命士の方によると、
「それ、去年の9月頃に改正になりましたよ」
だそうです。(参考までに
今は、心臓マッサージ15回のみ。
救急車到着までこれを繰返す、とされているとか。
血液などを吐いて倒れている場合、感染症などの危険があるためとのこと。
しかし、たとえどちらにせよ、私にはあの場で人工呼吸をすることは出来なかったと思います。

結局、救急車が到着し、本物の救急救命士による心肺蘇生処置ののち、救急車に同乗して病院へ。
ERで状況説明をして、家族の到着を待ち、方々へ連絡。
家族が到着してからは、混乱されているご家族にただ付き添い。
検査の結果、脳内出血が原因と判明したため変死扱いにはならず検死もなし。
また発見時に隣家の方とふたりで確認したことがよかったのです。
駆けつけた警察官からも「帰ってよし」と言われて少しホッとしました。
あとはご家族にお願いして辞去。

前日はデイケアで、金曜日の訪問のアポをとったのに。
「ヘルパーさんはどうですか?」
と聞くと
「うん、もう家族同様よくしてくれるよ」
と。
「デイケアではどうですか?」
と聞くと
「何もかもが楽しい。リハビリの連中もいい若者ばかりだ」
と。
福祉用具の相談員のことも、デイ送迎車の運転手のことも、配食サービスのお弁当のことまでも
「万事よし。本当にありがとう」
と答えて下さっていた、かわいい方でした。

病院は3ヶ月を過ぎて退院となり、老健では薬が高すぎて何軒も入所を断られ、在宅復帰を決心されてから限度額超のサービスを組んで頑張ってこられましたが、自分の計画に過不足がなかったか、在宅に戻ったことは正しかったのか、と今少し後悔しています。
「父はハリケンさんに本当に感謝していましたよ」
と言って下さったご家族の言葉に救われる思いです。

デイケアにて、ショーヘイさんが最後に書いた赤い花の絵の絵手紙。
その横には

近く会えると思います

の文字。

先に亡くなった奥様への言葉だったのでしょうか。
デイケアのナースは思わず泣いてしまったそうです。

ただただ寂しいです、ショーヘイさん。
どうか安らかに。