暮れになると翌年の干支、『猪』が付くものをさがしてみる。前回に猪の付く駅は5つ(猪苗代湖畔駅は休止のため、実質4駅)、坂はないという話題を書いたが、地名も少ない。それでもあるサイトによると千葉県には11箇所あるが、埼玉県は2箇所、神奈川県はトンネルの名前のみ。肝心な東京は2箇所、しかし1箇所は小笠原諸島(母島猪熊谷)のため、行けるのは1箇所しかない。
その1箇所とは狛江市猪方(いのかた)である。狛江市は都内ではもっとも狭い市、全国的にも埼玉県蕨市に次いで2番目である。猪方は市南部にあり、鉄道駅は小田急線和泉多摩川駅が最寄駅、成城学園前から多摩川を渡ってすぐの左側に見えるあたり。
猪駒通りにバスが走っていてこの道はほぼ多摩川と平行している。小田急バスのバス停には『猪方』『猪方4丁目』の2つがあり、いずれからも多摩川の堤防まではごく近い。
私も猪方で降りて堤防まで行くが、ちょうど堰が設けられていて、沢山の水鳥が羽を休めていた。また、付近は大きく開けていて小田急線の陸橋がよく見える。
猪方の地名は古く、1889年に町村制が敷かれた際に駒井村・和泉村・猪方村・岩戸村・小足立村・覚東村の6つの村が合併して狛江村となったとのことで江戸時代からあった地名のようである。さらに現在も『猪方』の名称は残されている。
付近を歩いてみると比較的古くからの住宅街と新たに作られたマンションが混在していることが分かる。今は平穏な場所だが、テレビドラマ『岸辺のアルバム』にも描かれた1974年の多摩川水害の被害が出たのもこの猪方4丁目付近である。杉浦直樹、八千草薫などが出ていたショッキングなドラマとは違うかもしれないが、子供の頃に家が水害で川に流されていく風景は忘れられない。
そのため、川岸からは3段階の高さで堤防が作られていて、川を見るために登るのも階段を20段くらい登らなくてはならないのだ。『猪』の付く地名を探していて、ふと昔の記憶が戻ってきた。