暑い暑いと言いながら過ごした9月も過ぎ、10月に入るとだんだん気温も下がってきた。鍋が恋しい季節ももう直ぐだが、この季節になると足が浅草に向かう。
今日は上野で美術館に行った帰り、地下鉄銀座線浅草駅で降りて駒形橋を目指す。この辺りには老舗と言われる店が多い。鰻の前川、とろろの浅草むぎとろ、蕎麦の並木藪蕎麦、これらの前を通過して『どぜう』の大きな看板を目指す。創業は1801年だからかれこれ230年以上にもなる『駒形どぜう』である。
店構えは昭和39年に建て直されたものだが、一見江戸時代から建っているように見え、特に店の入口は映画のセットのようである。中に入ると『1階にしますか、2階にしますか』と聞かれ、反射的に『1階で』という。(1階は炭火のコンロ、2階と地下はガス)靴を脱ぎ、中に入る。少し前までは下足番のおじさんがいたが、今は着物の女性が代わる代わる勤めていて、大きな木の板(下足札)をくれる。
店内も独特、大きな板が横に渡されていて向かいあって座る。真ん中に炭の入ったコンロを置き、その上に直径20cmほどの金属製の鍋に入ったドジョウを煮るのである。
もちろん、酒や味噌で下煮をしてあり、柔らかくなったドジョウが20匹ほど隙間なく入っていて上に乗る限りのネギをふりかけ、ぐつぐつと煮えてくるのを待つ。
店内を見渡すと土曜日の6時というのに席は結構空いている。前回はコロナピークだったので一列2組と人数を制限していたが、今はそれもない。多分理由は2020年に1850円だったマル鍋が3000円(税抜)に値上げした影響もあるだろう。
瓶ビールで乾杯した後、小さな取り皿にどぜうとネギ、さらに山椒を振って頂くがこれが美味い。泥臭さなど全くなく、骨も感じない。江戸っ子が精力をつけるために食べたと言われているが、身がほろっとしていくらでも食べられる。
ネギは薬味と専用ケースに入っているが、これを箸で入れ放題。ぐつぐつ煮詰まるとネギを足し、割下を入れる。高いので申し訳ないが、あっという間にネギもおかわりとなる。
やはりこの店に来たら枡酒、少し甘口のふりそでを飲む。ちゃんと粗塩も皿に乗ってくる。
鯉の洗い到着、ぶっかいた氷の上に並べられ、酢味噌で頂く。この塩梅が素晴らしい。ついつい酒が進む。
食べ終わる頃に追加のマル鍋。お姉さんが器用に持ってきた鍋をコンロにかかった鍋に揺らしながらどぜうだけ移してくれる。ネギ、割下を足してまた頂く。
いつも頼んでいた『どぜうの蒲焼』はメニューからいつのまにかなくなり、『べったら漬』を追加。皮付きと皮無しが半分ずつ、皮付きの甘さ控えめの厚く切ったべったらを一口、これも酒に合う。調子に乗って2合半、益々繁盛(枡々半枡)で切り上げました。
ところで胡座の組めない人用に風呂の椅子のようなアイテムが加わってお隣の人は座っていたのには驚いた。ご馳走さまでした。
駒形どぜう
台東区駒形1ー7ー12
0338424001