『改めて日本語を考える』その38。まずは冒頭の質問わかりましたか?これで『いたいけない』と読みます。意味はなんとなく分かると思いますが、今回注目したのは最後の2文字、『ない』というところ。普通に聴くとそれならば『いたいけ』が『ない』という意味となってしまいそうですが、実はそうではありません。
◯◯ないという形容詞が結構ある。例えば『いたいけない』『せつない』『あどけない』『こよない』『しがない』『はしたない』『せわしない』などである。しかし、これらの形容詞は『ない』=『無い』とは違う。
一方で『いくじない』『かぎりない』『あじけない』『そっけない』などは漢字にすると『無い』と書けるものもある。後者は漢字で書くと『意気地無い』『限り無い』『味気無い』『素っ気無い』となり、『意気地が無い』も間に『が』を入れると意味がはっきりする。
(意気地が無い)
つまり、前者の『ない』は強調する場合の『ない』であり、後者のような有る無しの『ない』とは異なる。
『いたいけ』は子供など痛々しく、いじらしい様を表すものだが、次の使われ方のうちどれが正しい使い方なのかご存じであろうか。①『いたいけない』②『いたいけ』③『いたいけな』の3つである。
答えを明かすと実はこのいずれもが今は正しい使い方。漢字で書いた場合は『幼気』となり、『いたいけ』は正しい。また、先ほどの『ない』の使い方は否定ではなく強調であるため、『いたいけない』はさらに強調した表現となる。『いたいけな』は形容詞の活用で連体形(だろ、だつ、で、に、だ、だ、ならと活用する)だから問題ないのである。散見されるが、『いたいけない』を『いたいけ』でない、つまり可愛くないという意味で使うのは誤りであることは言うまでもない。
ただ、これは『いたいけ』に限った使い方であり、他の『せつない』『あどけない』などを同様に使うことはないのである。法則があるようでない、こうした点が日本語をより難しくしているようであり、面白い点でもある。やはり日本語は難しい。