その日その時 写真で見る歳時記

気ままに写した写真に気ままな言葉たちの集まり

振舞水(ふるまいみず)

2007年08月20日 | Weblog

振舞水(ふるまいみず)

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小さなひしゃくで

きみが水を撒くと

いつも私はびしょ濡れになる

見ているほうと違うほうに水が飛んでくる

でも一緒に水撒きして

後で食べるスイカは

格別おいしいね

涼しい風が吹いてくる

昔の人はこの風を

極楽のあまり風と

いうんだっよと話すと

極楽ってなぁあに?

あまり風ってなぁあに?

なぁあに?なぁあにの連続で

スイカが食べられない

***

 

誰かのための行動

振舞水(ふるまいみず)

暑さの中

道行く見知らぬ人を思いやって

通行人に大切な水を振舞う・・

これが振舞水(ふるまいみず)

喫茶店などに入って

冷たい水が出てくるとホッとしますが

これも現代版の

振舞水(ふるまいみず)といえるのかも

こんな風習を

当たり前のように受け継いでいるかと思うと

素敵だと思いませんか

ところでこの「振舞う」という言葉

「行動する」「もてなす」の両方の意味で使われます

初めは単に

「行動する」という意味で使われていましたが

いつしか誰かのために行動するときも

「振舞う」というようになりました

どちらの意味が

より一般的になってゆくのか

これからも私たちの行動に

かかっている気がします

 

 

 

 

 

 

 

 


婀娜(あだ)っぽい

2007年08月18日 | Weblog

婀娜(あだ)っぽい

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切れ長の瞳を細めて

するり~するりと・・

お酒を飲むきみ

だんだんと上気していく

頬の色香が

わたしの心に

微熱を宿す

・・・

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女がなまめかしく色っぽいこと

婀娜(あだ)っぽい

女性の美しさの中でも

色っぽさ なまめかしさが

際立っている場合に

「婀娜(あだ)っぽい」という言い方をします

たとえば

湯上りのほつれ髪の女

谷崎潤一郎も

「あだっぽい姿をした湯上りの芸者・・」という

表現をしています

流行歌

「お富さん」に

「あだな姿の・・」とありましたが

これも婀娜(あだ)っぽい姿です

一般には

成熟した女性の持つ

粋で熟れた美しさのイメージがあります

池波正太郎や藤沢洲平の作品にも

キラリと光るいい味を出していますね

 

 

 

 

 


忘れ水

2007年08月16日 | Weblog

忘れ水

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森の中を歩いていると

決まってある場所に来ると

どこからともなく水の流れる音

二人は耳を済ませて

音の方角を眺める~

でもどこにも水は流れていそうにない

毎回同じような結果になる

今日も水はわれわれに

会いたがっていないのだって~

***

 

 

きっとどこかで・・

忘れ水

野中や木蔭を流れる

誰にも気づかれないような

水の流れを忘れ水といいます

川やせせらぎと呼べるほどでもない

ささやかな流れです

草陰に見え隠れして

途切れ途切れに流れているので

和歌の世界では

今にも途切れそうな恋のたとえによく使われます

野山を歩いていて忘れ水に出会うと

清涼剤のような

ほっとした爽やかさを覚えます

悲しい事件ばかりの新聞の中で

見つけたほっとする記事

時々出会う

名前も知らない笑顔の素敵な人

脚光を浴びるわけでもなく

存在すらも知られてもいないけれど

どこかで当たり前のようにひっそりと

流れているはずの忘れ水

そんな存在が

心のよりどころになったりするのですね

 


青葉闇(あおばやみ)

2007年08月15日 | Weblog

青葉闇(あおばやみ)

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その人は

幾千の羨望を浴びながら

どこか苦しそうな

微笑を見せた

光が強くなるほどに

闇は暗くなる

闇の深さは

きっと誰にもわからない

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大自然のふところ

「青葉闇」「木下闇」「木闇」「木の暮れ」「木暗し」「茂り」

枝を伸ばし 葉をいっぱい茂らせた

大木の下は 昼間でも暗闇です

でも、恐ろしい闇ではありません

焼け付くような厳しい陽射しも

ここまでは届かない

ひんやりと 居心地よく包んでくれる空間

大自然のふところに抱かれているような

そんな落ち着きを感じます

人はこの闇に抱かれて

遠い遠い昔

母の胎内にいた頃のような

記憶を呼ぶのでしょうか

やがて

静かに満ちてくる安らぎの中で

疲れた心も癒えて

ふたたび歩き出す英気を養うのです

ただ、青葉闇も

大きく生い茂る木があってこそ

その大木は何十年 何百年掛けて育ったものです

私たちを包んでくれる優しい闇を

私たちは

私たちの手で守らなければいけないと思いますね

 

 

 

 

 


入道雲

2007年08月14日 | Weblog

入道雲

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海と空の境目に

真白な雲が

むくむくと

たかくたかく上ってゆく

私たちの夢も

大きく膨らませましょう

ふたりだけの

大きな夢を・・

・・・

***

 

大きな夏の友達

入道雲

坂東太郎 筑紫二郎 丹波太郎

奈良二郎 和泉小次郎 信濃太郎

石見太郎 豊後太郎 四国三郎

これ・・みな入道雲の異称です

入道雲がしばしば発生する

川や方角の地名を名乗っています

入道とは・・

頭を剃って仏門に入ることですが

坊主頭をさすこともあります

発達した積乱雲の

雲の先が坊主頭に見えることから

入道雲と呼ばれるようになりました

冬にも出来るのですが

やはり 夏のシンボル

青い空にもくもくと盛り上がった

白い雲を見ていると

「お~~い」と呼びかけたくなります

おおらかに私たちを見守ってくれている

力強い存在ですね

 

 

 

 

 

 


恋教え鳥

2007年08月12日 | Weblog

恋教え鳥

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あなたの旅のお土産は

ガラスで出来た 青い鳥

幸福を呼ぶ伝説は

本当みたい

こんなに近くで

愛を見つけた

・・・

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鳥のセキレイのこと

セキレイの異名

「古事記」の神話がその由来

伊佐那岐(いざなぎ) 伊佐那美(いさなび)の二神は

結婚したものの

どうしたら子どもができるかわかりませんでした

そこに番のセキレイが飛んできて交合

その所作を見て

二神はめでたく結ばれたといいます

以来セキレイは

「恋教え鳥」「恋知り鳥」といわれるようになりました

「古事記」の描写はなんともおおらか・・・

そして「恋教え鳥」とはんとも

粋な命名でしょうか

セキレイはつがいなれば

ほぼ一夫一妻

とても仲がよく

相手を変えない品行方正?な

「恋教え鳥」です

 

 

 

 


たおやか

2007年08月11日 | Weblog

たおやか

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もっともらしい方便で 溢れた世界に

きみはただ

静かな微笑で立ち向かう

しなやかな

その聡明は白い百合

自らの咲く場所を知る

大輪の百合

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しなやか しとやかで優美な姿

たおやかとは

姿かたち 物腰などがやわらかく

しとやかで 優美なさまを言います

また気立てや性質が

しっとりと優しく

穏やかな場合にも使います

「この女の舞ふ姿たをやかにして

楊柳の風の吹きかへすやうなるぞ」

「布衣たおやかに着こなし」というように

特に男性から見た女性の

理想の姿といえるかもしれません

百花繚乱の「源氏物語」の

女たちの中で

「なんとこの人はたおやかなのだろう」と

表現をされているのは

「帚木(ははきぎ)」の中の

空蝉の姿です

詳しく知りたい方は

ぜひ一度読んで実感してみてください

 

 

 

 

 


衣通姫(そとおりひめ)

2007年08月10日 | Weblog

衣通姫(そとおりひめ)

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金星が西の空に瞬く夕刻

彼女が誰かを待っていた

涼風が髪を揺らして覗いた首筋

白く 白く

透き通るその肌に

いったい誰が 触れるのだろう

手の届かない 宵の明星

嫉妬も出来ず

ただ立ち尽くす

***

古代史で 最大級の美貌を持つ姫

衣通姫(そとおりひめ)

「古事記」「日本書記」に登場する伝説の姫

その美貌は匂うばかり

美しい肌の色が衣を通して

照り輝いていたので

人々はこの姫を讃えて

「衣通姫(そとおりひめ)」と呼びました

なんとも美しい名前で

昨日の「小町」のように

気軽には使えない気がします

「古事記」では

姫は允恭(いんぎょう)天皇の皇女

軽大姫皇女(かるのおおいらつめ)であるとされています

同母兄 木梨軽皇子(きなしのかるみこ)と恋に落ち

木梨軽皇子が失脚後は

流刑地伊予まで後を追って

最後は二人で心中します

一方

「日本書記」では

允恭天皇の皇后の妹

八田王女(やたのおおじょ)であるといわれ

その美しさゆえ天皇の寵愛を受け

皇后の嫉妬を恐れた天皇は

姫を河内に住まわせ

はるばる通います

後世には

なぜか紀伊 和歌の浦の

玉津島神社に祀られれている

玉津島姫と同一人物とされ

和歌三神の一人として祀られました

最大級の美女となると

さまざまな伝説が生まれるのでしょうね

最近は・・

○○王子などといって

人気の若い人も出てきました(笑)

どんな伝説が生まれるのか楽しみです

 

 

 

 


小町(こまち)

2007年08月09日 | Weblog

小町(こまち)

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きみって 猫に似ているね

そういうと

きみは ぷくんとふくれるけれど

よくお聞き

猫というのは

神様が作った

一番綺麗な生き物なんだよ

・・・

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なんとか小町と呼ばれる美しい娘

小町(こまち)

小野小町(おののこまち)は

平安前期の女流歌人

六歌仙 三十六歌仙の一人で

哀調を帯びた情感溢れた歌を詠みました

「百人一首」に選ばれている

「花の色は移りにけりないたづらに

わが身世にふるながめせし間に」は

皆様もようくご存知でしょう

絶世の美女といわれ

伝説化され

謡曲 浄瑠璃 おとぎ草子などの

題材になっています

小野小町が美人であったことから

美しい娘のことを小町娘いいます

その時代の名や土地の名を付けて

代表する美人を○○小町といいます

天明小町 日本橋小町 秋田小町・・などなど

現代にも生きている言葉ですね

あなたは・・何小町

 

 

 

 

 


後朝(きぬぎぬ)

2007年08月08日 | Weblog

後朝(きぬぎぬ)

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夜の帳(とばり)を切り開く

朝の陽射しは

とても残酷

あなたがくれた優しいキスも

あたたかい抱擁も

うれしい言葉も

そして約束も

みんな溶かしてしまうから

せめて 風よ

シャツに残った 移り香だけは

飛ばしてしまわないで

・・・

***

 

愛を交わした翌朝の別れ

後朝(きぬぎぬ)

愛し合う男と女が

一夜を共にした翌朝の

別れをいいます

「きぬぎぬ」の由来は奈良

平安の昔にさかのぼります

男女が互いの衣を重ねて掛けて共寝をし

翌朝それぞれ自分の衣を身につけて別れたので

「衣衣」

その響きを「後朝」に重ね

風情のある言葉になったのです

一夜を共にした男女が

しらじらと夜が明けそめるころ

別れてゆく朝の余情は

通い婚ならではのことですね

後朝の別れの後には

必ず二人の間に「後朝の文」が交わされました

男は家に帰り着いたら

すぐに女のもとに歌を送ります

即座に贈るのが誠意の証でした

文を託す人を「後朝の使い」といいます

女も返歌し

本人が筆を取るのが礼儀でした

「百人一首」の名歌

「逢ひみての後の心をくらぶれば

昔をものをおもはざりけり」

(権中納言敦忠・ごんちゅうなごんあつただ)は

後朝の歌の傑作といわれます