その日その時 写真で見る歳時記

気ままに写した写真に気ままな言葉たちの集まり

後朝(きぬぎぬ)

2007年08月08日 | Weblog

後朝(きぬぎぬ)

***

夜の帳(とばり)を切り開く

朝の陽射しは

とても残酷

あなたがくれた優しいキスも

あたたかい抱擁も

うれしい言葉も

そして約束も

みんな溶かしてしまうから

せめて 風よ

シャツに残った 移り香だけは

飛ばしてしまわないで

・・・

***

 

愛を交わした翌朝の別れ

後朝(きぬぎぬ)

愛し合う男と女が

一夜を共にした翌朝の

別れをいいます

「きぬぎぬ」の由来は奈良

平安の昔にさかのぼります

男女が互いの衣を重ねて掛けて共寝をし

翌朝それぞれ自分の衣を身につけて別れたので

「衣衣」

その響きを「後朝」に重ね

風情のある言葉になったのです

一夜を共にした男女が

しらじらと夜が明けそめるころ

別れてゆく朝の余情は

通い婚ならではのことですね

後朝の別れの後には

必ず二人の間に「後朝の文」が交わされました

男は家に帰り着いたら

すぐに女のもとに歌を送ります

即座に贈るのが誠意の証でした

文を託す人を「後朝の使い」といいます

女も返歌し

本人が筆を取るのが礼儀でした

「百人一首」の名歌

「逢ひみての後の心をくらぶれば

昔をものをおもはざりけり」

(権中納言敦忠・ごんちゅうなごんあつただ)は

後朝の歌の傑作といわれます