忘れ水
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森の中を歩いていると
決まってある場所に来ると
どこからともなく水の流れる音
二人は耳を済ませて
音の方角を眺める~
でもどこにも水は流れていそうにない
毎回同じような結果になる
今日も水はわれわれに
会いたがっていないのだって~
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きっとどこかで・・
忘れ水
野中や木蔭を流れる
誰にも気づかれないような
水の流れを忘れ水といいます
川やせせらぎと呼べるほどでもない
ささやかな流れです
草陰に見え隠れして
途切れ途切れに流れているので
和歌の世界では
今にも途切れそうな恋のたとえによく使われます
野山を歩いていて忘れ水に出会うと
清涼剤のような
ほっとした爽やかさを覚えます
悲しい事件ばかりの新聞の中で
見つけたほっとする記事
時々出会う
名前も知らない笑顔の素敵な人
脚光を浴びるわけでもなく
存在すらも知られてもいないけれど
どこかで当たり前のようにひっそりと
流れているはずの忘れ水
そんな存在が
心のよりどころになったりするのですね