三流読書人

毎日の新聞 書物 など主に活字メディアを読んだ感想意見など書いておきたい

ドングリ小屋住人 

鹿児島県議選捏造事件

2007年03月02日 19時48分49秒 | くらし
 03年4月の鹿児島県議選をめぐる選挙違反事件の判決が23日、鹿児島地裁であり、谷敏行裁判長は公職選挙法違反(買収・被買収)の罪に問われた鹿児島県志布志市の元県議・中山信一被告(61)ら12人の被告全員に対し、「いずれも犯罪の証明がない」と無罪を言い渡した。谷裁判長は、2回の買収会合に出席していないとする中山被告のアリバイを認定し、「買収会合の事実は存在しなかった」と判断。6人(起訴後死亡した1人は公訴棄却)の自白調書は「脅迫的な取り調べがあったことをうかがわせ、信用できない」などとして、検察側の主張をことごとく退けた。
 恐るべき「犯罪のデッチ上げ」であり、背筋が寒くなる。

 大谷昭宏というジャーナリストがいる。しょっちゅうテレビに出てくるのでご存じの方も多いと思う。
 3月2日付『ニッカンスポーツ』のコラム「大谷昭宏フラッシュアップ」に次のように書いている。

【 無罪を報じるテレビニュースでコメントしながら、「これを冤罪といってはいけない。警察が全く架空の事件を作り上げた事件だ」と言って、私はすべての局で捏造事件と言い換えて放送した。
 先週、鹿児島地裁で、03年に行われた鹿児島県議選で買収などの罪に問われた被告12人全員に無罪が言い渡された。その判決の数日前、私は買収事件の舞台となった志布志市四浦の懐集落を訪ねた。鹿児島空港から車で1時間半の志布志市。その中心からさらに山間を縫って50分。こんな山奥に、という所に戸数わずか6戸、20人が住む懐集落がある。
 なぜこんな集落が警察のデッチあげ事件に使われたのか。答えは簡単。人里離れた集落の人たちは公選法の買収の意味も弁護士の頼み方も知らない、県警はそこに目をつけたのだ。いくら地方の選挙とはいえ、有権者のたった0.2%。そんな集落の十数人の有権者のために候補者が4回も会合を開き、10人余りに191万円もの金を使うことはあり得ないとわかっていながら、集落の人を次々に逮捕。当然のことながら、男性はもちろん女性も素裸にして体の細部まで調べ上げた。そんな純朴な人たちに「お前以外はみんな自白した。お前一人のせいでみんなが村に帰れない」「交通違反の切符に拇印を押すのと同じことがなぜ、できんと」と責め立て、金を配った側に仕立てられた県議は1年以上、集落の人も4ヶ月、5ヶ月と留置場や拘置所にぶち込まれた。
 買収した側とされた志布志市内の男性の足下には、刑事が故人になった父親や、かわいい孫の名前を書いた紙を置き、その字を踏ます「踏み字」を強要。引っ張られて、あまりの痛さに男性の足が踏み字につくと「この人でなし。お前は親や孫を踏みつけるのか」と大声で罵倒された。
 デッチ上げられて被告とされてしまった人たちは小間物屋一つない山奥の集落、薪で炊いたご飯のお握りを作って私たちを待っていてくれた。判決に期待しながらも、インタビューが警察の取り調べの様子に及ぶと恐怖の体験からガタガタ震え出す人や、あまりの辱めに涙がこぼれ落ちそうになる人もいた。
 何より怖いのは、こうした架空の事件の調書に対して裁判長が「あるはずのない事実が具体的、迫真的に書かれていることだ」と述べていることだ。つまりプロの裁判官だから、出来過ぎている事が見破れたという。それが再来年に始まる素人参加の裁判員制度だったらどうなるだろうか。
 被告にされた人たちは必死で私に覚え立ての「取り調べの可視化」を訴えていた。こんな苦しい思いをもう誰にもさせたくない。だから調べの様子を録画や録音しておいてほしいというのだ
 いま私たちがせめて出来ることは、この方たちに可視化なしには、断じて裁判員制度を導入しない、と約束することではないだろうか。 (ジャーナリスト) 】

 これが法治国家とされる日本の警察、検察の姿である。『美しい国」とはなにか。