八木秀次という人物がいる。現在は高崎経済大学の教授なのだそうである。
札付きの自民党たか派のプロパガンダをつとめてきた男である。「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーでもある。まともに相手にしたくないが、5月18日付『産経新聞』のコラム「正論」に書かれている内容はあまりにひどいので記録しておきたいと思った。国会に提案された教育基本法改悪案のなかでも愛国心についての主張である。全文は紹介できないが、どうしても許せぬという部分を抜粋する。《 》内抜粋部分
《 学習指導要領では、例えば小学六年生の歴史学習の目標として、「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てる」と明確に規定している。しかし、この法規としての性質を持つ学習指導要領が存在するにもかかわらず、教育現場では「国を愛する心情」どころか、「国を憎悪する心情」が育てられてきた。それゆえに愛国心教育の必要が改めて求められ、教育基本法に盛り込もうということになったのではなかったか。 》
「国を憎悪する心情」を育てる教育とはどんな実践をいうのか。具体的に示してもらいたい。
おそらくは、第二次世界大戦中のキチンとした事実に基づいた歴史を伝えることを彼らは「自虐史観」という造語で攻撃してきたが、そのことを指すのだろうが、史実に基づいて歴史教育をすることを否定するのが彼らの主張である。
ドイツ大統領ヴァイツゼッカー氏が敗戦40年を記念して連邦議会で行った演説が「荒野の40年」として岩波のブックレットになっている。一読してみてはどうか。
また、「教育基本法に盛り込もうということになったのではなかったか。」というが、どこでなったのか。それも聞きたい。
《 国旗・国歌斉唱も、やはり学習指導要領で「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国家を斉唱するよう指導するものとする」として指導が義務づけられている。だが教育現場が順守しなかったことから国旗国歌法の制定にまで発展したのである。》
また、天皇の位置づけについて、政府案のなかでの天皇の位置づけについてふれ、かれの国家観との関連では不満があるらしいが、
《 学習指導要領では小学校六年生の社会科で「天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること」と規定されている。この点も国会で政府に十分確認すべき事項である 》
国と国家を巧妙にすり替え、使い分けていること。
学習指導要領を「この法規としての性質を持つ学習指導要領」といい、したがって教育基本法に盛り込むべきだという論調。
学習指導要領は、文部省(現文部科学省)の役人と政府系御用学者が時の政治権力の意向を先取り、あるいは強制されて作られた文章であり、「法規としての性質を持つ」などとは無茶な言いぐさである。
やはり、教育基本法改悪には根拠はない。
参考 2003年3月中教審答申