鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

想像世界の馬と現実世界のネズミ:出会う可能性ゼロ(GLASS8-10)

2010-01-24 18:53:26 | Weblog
 馬の鞍にくくりつけられたネズミ捕りについてアリスが「何のためにそこにネズミ捕りがあるのかしら」と言う。そして付け加える。「馬の背中にネズミがいるなんてこと全くありそうもないわ not very likely 」と。
 「おそらく、全くありそうもない not very likely だろう」と白の騎士が言い「しかし万一ネズミどもが現れたら、そいつらを走り回らせたくないのだ」と続ける。

 PS1:ここでは「可能性」がテーマとなっている。馬の背中にネズミがいる可能性はきわめて低い(全くありそうもない not very likely )が、ゼロではない。ネズミが属する現実世界(ここでは「鏡の国」)に馬も属する限り、馬の背中にネズミがいる可能性がある。
 しかし馬が想像世界に属し、ネズミが現実世界に属するなら、両世界は出会うことがない。この場合、馬の背中にネズミがいる可能性はゼロである。
 かくて可能性がゼロでないので、白の騎士は「万一ネズミどもが現れた」ときを心配し馬の鞍にネズミ捕りをくりつけたのである。

 PS2:白の騎士はただ心配性だからネズミ捕りを準備したのではない。論理的にネズミ捕りが必要なのである。