鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

『セイウチと大工』 ③④:水が湿っている&砂が乾いている等々(GLASS4-12)

2008-05-26 00:23:03 | Weblog

 ③海は湿って、それ以上湿れない、砂は乾いて、それ以上乾けない  人は雲を見つけられない、理由は雲が空にない  どんな鳥も頭上を飛んでない、というのも飛ぶ鳥がいない  ④セイウチと大工が歩いている、手の届くほどでくっつくばかり  彼らはむやみに泣いた、見えるのがあまりにたくさん砂ばかり  「もし砂が取り除けられさえしたら」と彼らが言った、「それは心浮き立つばかり!」  PS1:海がありったけ湿っているのは水だからである。しかし砂がそれ以上乾けないだけ乾いているのは、水が湿っているのとは意味が違う。水は本来的に湿っているが、砂は本来的に乾いているわけではなく、ここでたまたま乾いているだけである。 PS2:雲が空になければ雲を見ることはできない。これは事実の継起的関係として正しい。ビンの中にママレードがなければママレードを食べることができないのと同じである。さて飛ぶ鳥がいないから鳥が飛んでいないのは正しいが、これは事実の継起的関係として正しいのではない。飛ぶ鳥がいないことと、鳥が飛んでいないこととは、同一の事態を言い換えただけである。トートロジーとして二つの言明が等値されているという意味で正しいのである。 PS3:セイウチと大工についてわかるのは、彼らが砂を嫌っていることである。だから砂ばかりだと知って彼らは泣き、砂を取り除けたいと思うのだ。 PS4:脚韻は③では、乾けない・空にない・いない dry, sky, fly である。④では、くっつくばかり・砂ばかり・心浮き立つばかり hand, sand, grand である。

イラスト: 大工とセイウチ