むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

クロバイ:黒灰(クロバイはハイノキ?)

2017-05-13 18:01:53 | 植物観察記録
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窓から見える田圃を隔てた小さい里山に、白い花いっぱいつけた木があるのに気付いたのが、10年ほど前のことでした。
少し遠いので、はじめはカナメモチかなにかと気にもかけなかったのですが、友人があれはクロバイ:黒灰(ハイノキ科ハイノキ属)だと教えてくれてからは、毎年気になるようになりました。
それから10年、改めて山を見ると、ずいぶん大きくなったり新たに増えたりして、今年は小さい山のあちこちに大小10本を超すクロバイの花が認められました。
日本に自生する常緑性のハイノキ属は10種、そのなかでクロバイはもっとも広く分布しているといいます。クロバイは4~7cmの総状の花序につき、芳香があります。蜜が多いのか、たくさんの蜂が群れ飛んでいるのが遠くからでも見えました。
ふるい牧野図鑑では、ハイノキ(Symplocos prunifolia )、別名クロバイ、トチシバ、ソメシバとなっており、ハイノキの名は、この枝葉を焼いて灰汁を取り媒染料に用いることによるとし、別名クロバイは樹皮が黒みをおびることからいうとし、ソメシバは葉が乾けば黄色になり、菓子などを染めるのに用いられたとあります。
多くの図鑑では、ハイノキ(Symplocos myrtacea)が、クロバイと別種として載っています。こちらは九州ではイノコシバ(猪の子柴)と呼ばれ、狩りで獲た猪を縛るのに、この木の丈夫な枝を用いたためというはなしもあります。
クロバイとハイノキは同一種とするのがよいのか、別種とすべきなのか、ややこしいですが、目の前の山に咲いているのは間違いなくハイノキとも呼ばれるクロバイ(Symplocos prunifolia )で、クロバイではない方のハイノキ(Symplocos myrtacea)ではないようです。