◇ 運筆参考資料の配布
- 先生から基本ができていないという言葉が聞かれる。
過去に配布した資料を持っていない希望者に配布することとなった。 - YouTubeで中国の書家の運筆の動画を見ると参考になる。
◇ 先生の講話
1.楷書- これまで甲骨文字誕生以来の字体の変遷、具体的には篆書、隷書、草書、行書、楷書について説明してきたが、楷書は他の字体との関わりの幅が広い。楷書は4世紀から5世紀ごろまでに一応の完成を見るが、その間に「六朝楷書」が発展した。
註 六朝時代の楷書:中国のいわゆる南北朝時代(南朝の宋、斎、梁、陳、北朝の呉、東晋の6王朝時代。5世紀前半から6世紀末まで。)に発達した独自の楷書体の総称。 - 楷書については、王羲之はじめ、欧陽諄、虞世南などが、つとに有名だが、オーソドックスな楷書とは違い、ごつごつした特徴を持ち、楷書の起源となった書体の一つである六朝楷書について、先生が半紙に臨書した作品と他楷書を比較して説明した。
表 楷書の書体の比較 (1)~(3)が六朝楷書(1) 爨宝子碑(さんぼうしひ)
四角に収めるのが特徴で、隷書に近い。当時の君は2画目の横画が左右に張り出していた。(2) 龍門二十品中(始平公造像記)
筆を入れたらすぐ立てる。最後は右下へ引き抜く。展覧会では評価が高い。(3) 張猛龍碑
中心がずれても平気で書かれている。(4) 王羲之(楽毅論)
きれいな字だが形が四角形ではない。(5) 鄭道昭の下碑
柔らかい線。当時の美:羊が大でなく、羊を火で焼く<美味(びみ)>。(6) 顔真卿(願氏家廟碑上)
右払いの払い方に特徴(段差をつけて払う)。
余り真似をしない。(7) 猪遂良(雁塔聖教序)
行書風楷書でやわらか。二度書きしてあるところもある。(8) 元新成妻李氏墓銘碑
隷書風、行書に近い。偏の行人偏は草書風。 - 文字は、時代によって変わる。
- 日本では王羲之を勉強した人が多い。
- 因泥さんのお手本に落款として「朱王山人」と書いたら、ご本人から「山人」の分“号”が追加になったのかという質問を受けたので説明する。
- 号の追加ではなく、○○書(“かく”と読む) ○○臨 のように書くのと同様の意味で、格好良く書く落款の一つ。(臨:100%形臨の場合に用いる。)
- 山、水 などを使う用例
山 : 山人 樵夫 樵客
水 : 釣徒 漁史
その他 : 仙人 道人 逸人
- 下手でも一生懸命
- 努力と忍耐
- 他人がみるのだからうまく書く ことではなく、感動(懸命さや努力)が伝わればよい
- アンバランスの美を考える
・余白 カスレ 太い 細い
・面白さがあると良い
・単純なほど良い - 3行の条幅では 40文字ほどが書きやすい。
先生が読売展に出した作品の下書き(2尺-8尺のサイズ)を掲出し、作品作りのポイントを説明。
- 約80文字書いてあるが、1・4行目は小さ目の文字(字数多)、2・3行目は大き目の文字(字数少)。
- 偏と旁をわざと少しはなす。
- カスレをどこにするか。
◇ 実技指導
各人課題、秋の作品展作品について個別指導が行われた。
(参加者 8名)(香村 記)