根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

微笑み

2009-08-21 07:37:20 | エッセイ、コラム
いつかお話しした『不思議の国のアリス』の“飛び出す絵本”を待合い室に置いていて、他の絵本のラインナップにも趣味の好さを感じさせる、とある調剤薬局に久し振りに行って来ました。
その調剤薬局と単純な距離の近さから連動しているクリニックへの通院を、私がサボっていたから『久し振り』なのです。

用意して貰う薬剤が増えた事もあり、いつもは長居する事がないその調剤薬局に、少しだけ長く留(とど)まりました。
まずはさり気なく置いてあるインテリアを観察、その後絵本の背表紙だけみて、出版社を確認。
うんやはり、趣味が好い、と再確認。

近くに小児科は無く、子供が頻繁に出入りする様子もみたことがないので、このあたりは完全にその調剤薬局を取り仕切っている女性の趣味なのでしょう。
元々5分も掛からず、薬剤が出てくる事もあり、前回まで私が気付かなかっただけなのでした。
お客に差し出す薬剤に間違いはなく、薬剤の準備も素早いのがこの薬局のいい所。
ただ彼女に笑顔がみられず冷たい印象をお客に与えてしまうのが、ちょっと残念だなぁっといつも思っていました。

彼女と薬剤の説明以外で、軽い世間話をする機会もなく、前回私が『アリス』の絵本にヒドく反応した事を受けて、彼女がその絵本を手に入れるまでのいきさつを、それまでの彼女からは想像出来ないほどの熱さで語ってくれた時が唯一の例外。
その時に

「そんなに絵本がお好きなら、私が知ってる秘密の絵本の古本屋を教えますよ」

と宣言して帰ってきたのでした。

それで今回薬剤を用意して貰い薬局からの去り際、用意してきた「古本屋」の名前、連絡先が記されたものを彼女に

「あっこれお約束していた古本屋の名前・連絡先です」

っと渡すと、今まで彼女と接してきた中で一番の笑顔を私にみせてくれました。

実は彼女はかなり恥ずかしがり屋さんで、他人と接する事があまり上手じゃなく、また自己主張も苦手な性格なのでしょう。

写真は薬局のインテリアの一つ。
こういったものが地味に、そう目立たない形で待合室の要所要所に配置されています。
こんなさり気ない所に彼女の性格やセンスが現れている気がします。