根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

『ドキュメント72時間』

2007-03-01 13:49:34 | エッセイ、コラム
NHK総合で火曜日の11時から放送されている『ドキュ
メント72時間』が一旦3月で終了してしまうそうである。
同じ場所、同じ人物達に3日間つまり72時間密着し、
そこで起こったことを放送するというドキュメンタリー番
組である。
ミニマムな事象に肉薄することでみえてくる現代ニッポ
ンという感じで、派手さはないもののNHKらしい価値感
や良心をみるような良い番組だったので非常に残念だ。

視聴者の反響が大きかったということで先日再放送され
ていた「東京・山谷 バックッパッカーたちのTOKYO」の
回は秀逸で、外国人バックパッカーの目を借りてみえて
くるポップカルチャーに満ちた魅力的なトウキョウの風景
は非常に新鮮であった。
また自分探しをするために日本に来ている外国人バック
パッカー達の姿は“洋の東西を問わず若者の悩みは変
わらないもんだなぁ”と思わせるものでもあった。
例えるなら小林紀晴の名著『アジアン・ジャパニーズ』の
アナザー・バージョンといった所か。
「♪大人になってゆくほど涙がよく出てしまうのは
 1人で生きて行けるからだと信じて止まない」
というフレーズで始まる、山崎ナオによるエンディング曲
『川べりの家』も番組の主旨によくマッチしていて素晴ら
しい。
素材の選び方や編集の仕方で回によって出来・不出来
の差があったようにも思えるが、こういう番組は民放では
なかなかみれないものではなかったろうか…。

どういう経緯でこの番組が終了または休止になってしま
うのかは分からないのだが、もしそれが視聴率が悪いか
らというような理由であったらこれは大きな間違いだと思
う。
そういうことから乖離した所で良質な番組を作っていくこ
とがNHKの役割だからだ。
若者に媚を売った刺激的で欲望に満ちた番組は民放に
任せておけばいいのである。
紅白歌合戦を存続させるよりは、ドキュメント72時間の
ような地味だけど心に何か残る番組を作り続けることが
NHKの真の勤めであり大事なことのような気がする。