勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
日本の衆院選をあざ笑う
「親中」が逆の結果生む
(2014年12月16日)
韓国人の物の見方は、「単眼」のようである。
「複眼」で見なければ物事は立体的に把握できないはずだ。
「単眼」とは、言うまでもなく「原理主義」に通じる。
ある一面だけを取り上げて判断することである。
その最たる例は、朴大統領の「慰安婦問題」である。
日本が謝罪して頭を下げない限り、日韓首脳会談を開かないと主張している。
この問題で、日本が妥協することはあり得ない。
強制連行という事実が存在しない以上、日本が1965年の日韓基本条約を反故にして、慰安婦問題で謝罪するはずがない。
今日のテーマは、韓国社会の単眼=原理主義という特色を考えながら、韓国経済が「自縄自縛」になっている実態を考えて見たい。
韓国には、問題の本質を見通す視点がない。
私が、韓国社会を単眼集団と判断した理由は、今回の日本の衆院選に対する解釈が、きわめて一面的であり「複眼」的な視野がないことに気づいたからだ。
もう少し、立体的に考えられないのだろうか。
日本の衆院選をあざ笑う
『朝鮮日報』(12月7日付け)は、「日本の総選挙の3大不思議」というコラムを掲載した。
朝鮮日報の金玄基(キム・ヒョンギ)東京総局長 の記事である。
① 「長いあいだ日本の政治を見てきたが、12月14日に行われる総選挙ほど珍しい選挙もない。
『消費税を上げる』というものでもなく、『上げるのを先送りする』ということを国会解散の名分としたことからして喜劇だった。
しかし法律に『総理全権事項』となっているのだから、それはそうとしよう。
問題はとうてい『理解不能』の与野党、そして日本の有権者だ。個人的に『3大不思議』と命名したい」。
長い間、日本政治を見てきたと言うにしては、次のパラグラフの記事に現れているように、選挙民の投票行動に対する認識が足りないように思う。
詳細は、次のパラグラフで解説したいが、今回の選挙は安倍政権への信任投票である。
これから、集団安全保障問題やアベノミクスの「第3の矢」が実行に移される。
これに当たり、改めて国民の信を問うという性格の選挙である。
② 「各種世論調査を見ると、一様に安倍政権を支持しないという声の方が多い。
アベノミクスに対しても否定的だ。
それでも『どこに投票するのか』と尋ねると自民党を選ぶ。驚くような統計がある。
最近の朝日新聞の調査によると、安倍政権の集団的自衛権、原発政策などに反対する回答者も『投票する政党』1位には自民党を選んだ。
与党が嫌だと言いながら、いざ選択するのは与党ということだ。
まともな野党が不在という理由もある。
しかし民心の反映、民意の投影の道具が選挙だ。それが民主主義の核心だ。
それを崩して『民心と結果が別々』に進めば、それは結局、国際社会で日本の有権者の政治意識不在、さらに日本の限界に帰着するだけだ。それだけに残念で気の毒だ」。
選挙民の立場から言えば、一つの政党が掲げる公約に100%支持を与えることはあり得ない。
あの政策には賛成。この政策には反対というように、いろいろと賛否が分かれる。
ただ、選挙民は総合的に判断して一つの政党に投票するものだ。
政策間で賛否はあるが、プラス・マイナスを総合して一つの政党に投票する。
その点、韓国では絶対と言ってよいほど「妥協」しない政治である。
選挙民が白か黒かで分かれてしまっている。
こうした投票行動は単純そのものである。韓国政治が単眼である理由だ。
日本政治の複眼とは、意味合いが異なっている。
こうした前提で、この記事を読むときわめて興味深い。
「各種世論調査を見ると、一様に安倍政権を支持しないという声の方が多い。
アベノミクスに対しても否定的だ。
それでも『どこに投票するのか』と尋ねると自民党を選ぶ」。
一つ一つのテーマについて世論調査をすれば、賛否は分かれるはずだ。
自らの利害関係に絡むからである。
だが、総合的に判断すれば、「自民党」という回答が最も多かったのだ。
人間の評価でも、調査項目を細分化すればするほど、「好き嫌い」が出て当然である。
ただ、人間として評価する場合、好悪を超えた総合点として出てくるはずである。
「これだけの欠点はあるが、それを補ってあまりある美点がある。
よって、総合評価で上」という結論になる。政党も同じことなのだ