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韓国経済ウォッチ~膨らみ続ける家計負債 満期が集中している2019年

2016年08月04日 16時42分10秒 | Weblog

2016年07月11日

韓国経済ウォッチ~膨らみ続ける家計負債

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

韓国経済は、過去数十年間にわたって経済成長を謳歌しており、企業も個人も、投資をすれば投資額以上の成果が期待できる時期であった。

しかし、経済が低迷している今は、環境が一変し、積極的な投資よりも、

むしろ負債を警戒する時代になっている。

最近、韓国経済にも低成長が定着し、わずか2%くらいの成長しか期待できなくなっている。

また、造船などで一時期活況を呈していた蔚山(ウルサン)などは、深刻な不景気に悩まされている。
 

このような厳しい時期に起こったイギリスのEUからの離脱は、韓国経済により一層の不透明感を与えている。

それに、今まで韓国経済を牽引していた造船、鉄鋼、電子などの分野は、中国の追い上げによって、成長の壁にぶつかっている。

さらに、世界経済の先行きへの不安は増大していて、韓国の輸出にも陰りが見え始めている。

韓国政府はこれを乗り越えるための次の成長エンジンを探しているが、まだそれが見つかっていない。

そのようななかで、韓国の家計負債は膨らみ続け、世界各国の主要機関も韓国の家計負債に警鐘を鳴らしている。

korea2min 韓国の2016年第1四半期での家計負債総額は、約1,223兆ウォンである。

前の四半期に比べて、家計負債は金額ベースでは20兆6,000億ウォンも増加している。

韓国の家計負債は、金額の大きさもさることながら、家計負債の増加スピードが速くて懸念する声も多い

韓国の家計負債は、13年第2四半期から11四半期連続で史上最大の記録を更新し続けている。

国際決済銀行(BIS)の発表によると、韓国のGDP対比の家計負債の比率は88.4%で、アメリカ(79.2%)、日本(65.9%)、ユーロゾーン(59.3%)との比較でもいかに高いかがよくわかる。

GDP対比家計負債の比率では、13年連続で新興国のなかで1位になっている。

韓国の家計負債比率は、1962年に1.9%で、2000年に50%で、2002年に60%であったが、直近の5年間で家計負債が急増している。

アメリカのコンサルティング会社であるマッケンジーでは

韓国が世界7大家計負債の危険国であるとしているし、

OECDでは韓国は利子の支払いなどで内需が縮小するほど、韓国の家計負債が深刻な水準であると指摘している。


負債を返済できる能力を評価するときに、よく使われている可処分所得に占める家計負債の比率というのがある。

韓国の可処分所得に対する家計負債の比率は、去年すでに163%を超えている。

負債の多いアメリカの113%と比較しても、もっと高いのが韓国の家計負債である。

それでは、なぜ韓国の家計負債は膨らみ続けているのだろうか――。

韓国家計負債の74%を占めているのは、実は住宅ローンである。

韓国の住宅ローンの特徴は、元金を払わず、利子だけを払うという点である。

利子だけを払うことになっているので、

まだ問題が顕在化していないが、

満期が集中している2019年には元金をも払わないといけないので、

大きな問題になるという指摘がある。

住宅ローンのもう1つの特徴は、集団ローンと言う制度である。

この集団ローンは、建設会社が金融機関と交渉をして入居者に用意するローンであり、個人への個別審査はない。


 今年の1月~5月の住宅ローンの増加額19兆ウォンの52.6%にあたる10兆ウォンの内訳は、集団ローンであった。

この集団ローンは個別審査がない分、後になって延滞問題を起こす可能性が高い。

家計負債が増え続けているもう1つの要因は、韓国の住宅制度そのものにある。

韓国には「全貰(ジョンセ)」という制度があるが、今、その全貰と言う制度が崩れつつある。

大家は家を貸すときにテナントから保証金を預かり、その保証金を運用する。

ところが、低金利時代が到来することにより、大家は資金を運用するところがなくなっている。

運用先を失った大家は、これまでの全貰から、毎月家賃をもらうことができる「月貰(ウォルセ)」に切り替えている。


一方、毎月家賃を払うことに負担を感じるようになった若い層は、

これを機に少し無理をしてでも住宅を購入しようということになる。

金融機関も住宅ローンは、担保があって一番安全だし、住宅ローンは良いビジネスになるので、積極的に住宅ローンを販売する。

住宅を買う側も金利が安いので、この時期に住宅を購入しようという心理が働いて銀行の融資が増えていき、それによって家計負債は膨らみ続けている。

もう1つの原因は、韓国の不景気である。

韓国の40代、50代の平均資産額は3億4,000万ウォンくらいだという統計がある。

資産と言っても、キャッシュは3万ウォン前後で、後は不動産などで所有している。

だが、景気が低迷しているので、足りない収入を金融機関から借りたお金で賄っているのが現状であろう。

ところが、このような家計負債に対して韓国政府では、それほど深刻な状況として受け止めていない。

負債を返す能力を評価する際には、収入と支出よりも、資産と負債を比較するのがもっと大事である。

日本も政府の負債が1,200兆円ほどあるが、財政危機に陥ることがないのは、日本には借金を上回る資産があるからだ。

1,500兆円近くある個人の金融資産もあるし、政府の税収入なども資産になるので、日本ではむしろ国債がマイナス金利になるような不思議な事態が起きているのだ。

そのように、韓国では家計を5つのランク分けにした際に、

上位1位、2位のランクが負債の70%を占めていて、返済能力は十分あるという評価である。

それに、金融資産は負債額の2倍くらいあるので、家計負債はまだ危険ゾーンではないという政府の判断である。

ところが、今の状況では、そのような評価になっているかもしれないが、環境がどのように変わるかわからないため、実は韓国の家計負債もまだ安心できる状態ではない。

アメリカの金利上げ、不動産バブルの崩壊、さらなる景気悪化など、不安材料はいくらでもある。

ある専門家のシミュレーションによると、不動産価格の下落より、金利上げのほうが家計負債への影響が大きいようだ。

中国の企業負債の急激な増加で、中国発の経済危機も噂されているこの頃だが、そのような危機が訪れる前に備えることは賢明なことだろう。


これからは所得の増加、雇用の増加、成長率の増加などが見込めない時代が到来する。

その時代にあった対応として家計負債の縮小は韓国政府の緊急課題である。

 



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