北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報⑬ 機動打撃と戦果拡大

2012-12-27 22:56:54 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆戦車前進!、普通科前へ!

 遠距離火力戦闘により敵砲兵及び敵陣地に対し一定の損害を与えた攻撃部隊指揮官は、いよいよ直接火力戦闘への展開を決断しました。

Mimg_2266 命令一下、第11戦車大隊の90式戦車が随伴の装甲車と共に攻撃前進を開始しました。90式戦車は、高機動力高防御力を志向した第三世代戦車の要件となる1500馬力エンジンと複合装甲を備え120mm砲を搭載した国産戦車で、砲塔には第11戦車大隊を示す“士魂”が記されています。

Mimg_2262 90式戦車は特科隊の75式自走榴弾砲を追い越し戦闘加入してゆきます。90式戦車は対戦車戦闘を展開する直接照準射撃用の高初速戦車砲を搭載、一方75式自走榴弾砲は長距離の間接照準射撃を行う榴弾砲を搭載、一見詳しくない方には用途の違いが分かりにくいのですが、並べると運用思想の相違が分かるでしょうか。

Mimg_2294 戦車の前進を支援するべく第11施設中隊の96式装輪装甲車が70式地雷原爆破装置を搭載し、随伴します。戦車の前進に際し、字際が散布されている地域に接すれば機動打撃の重要な要素である衝撃力が削がれてしまいます、叩きつける鉄の衝撃が重要な要素である機動打撃には施設科部隊も機械化されていなければなりません。

Mimg_2300 機動打撃に合わせ航空部隊も再度展開、観測ヘリコプターOH-1は必要ならば敵観測いヘリコプターを空対空ミサイルにより撃破することも可能であり、UH-1J多用途ヘリコプターはレンジャー隊員の投入や重機関銃による支援など、様々な任務に対応できるのですが、脆弱性もあるのでこれは訓練展示の演出と割り切るべきやも。

Mimg_2309 96式装輪装甲車にて機動運用される70式地雷原処理装置は、ロケット弾により100m距離の人員用通路を地雷原爆破により啓開、対戦車地雷除去用の梱包爆薬敷設の端緒を切り開きます。地雷原を処理する以上、施設科部隊は時に戦車より前に出る必要があり、もっと装甲車両は必要です。

Mimg_2321 咆哮を上げる75式自走榴弾砲、施設科部隊の地雷処理支援を開始です。地雷は防御に際し、陣地前に機動打撃の速度を削ぎ、反撃の機会を作る防御地雷運用が正規戦では常道ですので、施設科部隊の地雷除去作業に際しては特科部隊を中心に火力支援を行い敵防御陣地の行動を封じねばなりません。

Mimg_2313 地雷原は処理されました。陸上自衛隊にはこのほか、主に方面施設部隊に装備され、対戦車地雷を直接処理する92式地雷原処理車が装備されています。しかし、このほか、土手や建物の瓦礫を利用した障害物が考えられ、最前線でこれら障害を処理するためには排土板を備えた施設装甲車が必要と考えます。この種の車両には施設作業車の装備が北部方面隊の一部に行われていますが、まるで足りない。

Img_2329 90式戦車が障害除去を終えた地域において再度機動打撃へと戦闘加入します。90式戦車は、我が国地形で運用するべく重量を第三世代戦車として最も軽量な部類に入る50tに抑えており、重量を抑えつつ防御力を各国第一線主力戦車との戦車砲を用いての殴り合いへ耐えるべく様々な新機軸を盛り込み、完成しました。

Mimg_2326第18普通科連隊の96式装輪装甲車も戦車部隊に協同し、75式自走榴弾砲の火力支援下に機動打撃へ展開します。75式自走榴弾砲と重なり、何やら写真では新型車両にもみえてくるのはご愛嬌、なお陸上自衛隊は本車の支援用に開発された重装輪回収車を用いて新型火砲である火力戦闘車を開発中です。

Mimg_2330_2 戦車長は直接周辺を警戒しつつ戦闘行動を展開します。90式戦車は、自動装填装置の採用により4秒間に1発、1分間に15発の連続射撃を可能としますが、この自動装填装置の採用により発射速度という打撃力を強化すると共に砲塔内容積を効率化、必要な装甲面積を人員防御用に割り切ることで、軽量ながら重装甲という難題を解決した凄い戦車、強い頼もしい。

Mimg_2332 戦車は陸上装備体系において最強度の防御力と非常に大きな打撃力を有し、高い機動力を有する装備体系の頂点に或る装備ですので、陸上戦闘は相手の戦車を如何に無力化するか、という難題を解決せねばなりません。航空機は悪天候に弱く加えて地域占有が不可能、ミサイルは最低射程距離や電線に木々といった障害物で容易に無力化されるため、戦車には戦車で、対応せねばなりません。

Mimg_2333 戦車が航空部隊の支援下に攻撃前進を開始しました。正面装甲はチタン合金とセラミック等を併せた複合装甲により防護されており、対戦車ミサイルの装甲を溶かす極高熱ジェットを高熱に最も強いセラミックが、戦車砲弾の音速数倍という衝撃と貫徹を硬度が最も高いチタン合金が、それぞれ貫徹を防ぎ、その前後に挟まれた合成樹脂により致命的衝撃を削ぎ、乗員を守る。

Mimg_2335 90式戦車は70km/hの速度を発揮可能で、これは国産の1500馬力エンジンと変速機を含めた精巧だが頑丈、という足回りによるもの。そして砲は安定装置により最高速度で走行しつつも照準を保持でき、火器管制装置は一度捕捉した戦車などの目標を自動追尾することが可能、走りながら自動装填装置により連続射撃を行うことが可能、頼もしい国産戦車です。

Mimg_2345 96式装輪装甲車が戦車に続きます。戦車の弱点は歩兵の肉薄、先の大戦では我が国もこの戦術により多数の戦車を撃破しましたし、世界の地域紛争では対戦車火器により戦車の被害が数多く報じられ、これを防ぐためには歩兵には歩兵で、その接近を装甲車に随伴する普通科部隊が排除せねばなりません。

Mimg_2355 降車戦闘、戦車が砲撃により無力化した敵装甲車と敵陣地へ向け、96式装輪装甲車から次々と普通科隊員が89式小銃を手に降車しました、歩兵への長距離での戦車脅威から戦車が防護し、精度の高い戦車砲と、肉薄した普通科部隊の敵陣地への正確な同軸連装銃による支援、このように歩兵陣地への攻撃を直接火力支援する戦車、これが協同戦闘です。

Mimg_2359 普通科部隊前へ!、89式小銃を連射しつつ、戦闘に最後の決着をつけるべく普通科部隊の突撃が開始されました。侵略とは、突き詰めれば我が方の土地を収奪し、占領することにあります。従って、戦闘の決着とは我が領土を占領する敵を直接陣地から引き摺りだし、土地を奪還することにあります。

Mimg_2357 降車した小銃班では班長が鋭い号令を飛ばし、部隊を前進させてゆきます。土地の奪還とは嫌がる敵を陣地から引きづりだし、この為には小銃と銃剣が交わる究極の近接戦闘となり、従って普通科が直接戦闘靴で相手の一歩を踏みしめ、掻き出さねばなりません、即ち、戦闘に最後の決着をつけるのは生身の人間、ということ。

Mimg_2367 一際大きな爆発音が仮設敵陣地の方から響きました、特科部隊の突撃支援射撃、その最終弾落下です。ここまで、敵陣地は特科火砲と戦車砲の制圧により、普通科部隊の突撃への防御行動を阻害され、最終弾落下と共に普通科隊員は敵陣地へ肉薄、いわゆる突撃が開始されました。

Mimg_2360 最後の戦闘の決着は普通科、この為に陸上自衛隊普通科では、小銃射撃と銃剣術を最も重視し、併せて体力練成を行うとのことです。現代戦の花形は戦車と航空機であることに異論はありませんが、最後は人と人との激突、小銃射撃は確実に一発必中の連続を図り、銃剣術は一人と一人の戦闘を最後に決し、生き残るための奥義です。

Mimg_2363 普通科隊員が戦車の列線を超越しました、もう戦車砲は使えません、発砲焔とともに砲弾の装弾筒が音速の数倍で弾道周辺に飛び散り、人命に危険を及ぼすためで、ここから戦闘の決着までの瞬間、決して長くはない生命を左右する重要な時間が、個々人の普通科隊員と、相互に支援する小銃班、小隊、中隊の協同により決する。

Mimg_2366 上空を航空部隊が警戒します。空中機動は今位置、携帯地対空ミサイルなどの防空火器が大きく性能向上するとともに広範に配備されているため、補給や、強襲ではなく前進拠点への部隊輸送など、その役割は変化しています、しかし、地形を超越し空中機動を行う意義というものは、薄れていません。

Mimg_2373 最後は体力、平時からの鍛錬が、実戦ならばこの瞬間にものを言うというところ。89式小銃とMINIMI分隊機銃を以て突撃を行った普通科部隊は敵陣地へ到達、反撃を封じ、これを排除すると共に遁走する敵に対し、即座に戦車装甲車とともに戦果拡大へと移ります。攻撃は成功しました。

Mimg_2374 状況終了、撮影は観閲行進の撮影位置から陣地転換したため、望遠レンズにて列の後ろの方から、殆ど勘を頼りに撮影しましたが、まあまあの写真に仕上がりました。北部方面隊隷下部隊の模擬戦は第七師団の東千歳駐屯地祭以外ではこの真駒内駐屯地祭が当方にとって初めて、訓練展示は決して長い時間ではありませんが、こうして見返すと迫力は凄い。来年掲載となる次回からは装備品展示やその他の模様を紹介しましょう。

北大路機関:はるな

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