北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報⑫ 遠距離火力戦闘展開

2012-12-17 22:37:15 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆敵の砲兵を叩け!特科部隊射撃開始!

 偵察部隊及び航空部隊の展開に続き、いよいよ火力戦闘部隊の展開が開始されます。

Mimg_0207 第11特科隊の75式自走榴弾砲が射撃位置への侵入を開始しました。最大射程19kmの155mm榴弾砲を搭載し、自動装填装置により素早い効力射と陣地転換が可能な自走榴弾砲により、第11旅団隷下の普通科部隊は火力支援とともに敵砲兵脅威から守られることとなる部隊がやってきました。

Mimg_0205 本砲は回転式弾倉二基を、その砲塔内部に搭載し、人員装填に大きな重量或る155mm砲弾を自動装填し、早い射撃速度を有しますが、旧式化が進んでいることも事実であり、現在では第11特科隊へも後継装備として99式自走榴弾砲の装備が開始されています。

Mimg_2221 二門の75式自走榴弾砲が展開を完了しました。しかしすぐには発砲しません、特科隊長の決心まで、そういうのも射撃すれば155mm砲弾は即座に地中マイクロフォンや対砲レーダ装置により標定される危険があり、確実に撃破できる情報まで、自己位置を秘匿しつつ命令一下即射撃まで準備するということ。

Mimg_0210 陸上自衛隊は部隊として戦います、特科部隊は野砲と共に対砲レーダ装置や支援車両と共に行動し本領を発揮しますし、広く展開すれば航空攻撃の脅威にさらされますこうして、これらの事態に対抗するべく各部隊が有するそのほかの車両も続々と展開を行ってゆきます。

Mimg_0175 93式近距離地対空誘導弾、野戦特科部隊を航空攻撃より支援するべく展開したのは通称近SAMとよばれる第11高射特科中隊の防空装備で、この装備の人mは対空レーダ装置による情報を処理する師団防空システムとの連動により遠距離での目標情報を共有し、射程内に入った瞬間にこれを排除無力化する、というもの。

Mimg_0189 そして普通科連隊が用いる120mm重迫撃砲RTも展開を開始しました。120mm重迫撃砲RTはフランス製の最大射程8100mという迫撃砲で、射程延伸弾を用いた場合13000mもの先の目標を射撃可能、夜戦ではIR照明弾による暗視装置支援なども実施可能で、普通科連隊の頼もしい友人です。

Mimg_0198 重迫撃砲は高機動車を牽引車として運用、部隊としては師団普通科連隊では重迫撃砲中隊に12門が配備されますが、旅団普通科連隊では普通科連隊の中隊数が効率化され、併せて重迫撃砲も本部管理中隊に置かれる重迫撃砲小隊に4門が配備されています。牽引車は遠距離から発見されやすくなるため、砲と弾薬を展開させたのち素早く去ってゆく。

Mimg_2284 75式自走榴弾砲が、航空部隊により判明した敵の火力戦闘部隊に関する位置情報に基づき、効力射を開始しました。砲兵の任務とは火力支援と誤解されがちですが、それ以前に自らが敵砲兵により無力化される以前に、対砲兵戦を展開し、敵火砲を砲撃により叩き潰さねばなりません。

Img_2237 破裂音は大気を震わせ、響き渡ります。二門の75式自走榴弾砲が交互に射撃を行います。ちなみに撮影ですが、どちらが先に射撃するかわかりませんので、広角で撮影して射撃後、まだ発砲していない車両の方へズーム、なんとか発砲焔を撮りたいところで、撮影位置にてここが踏ん張りどころと。

Mimg_0188 我が方の特科火砲の攻撃に対し、航空機が接近です。仮設敵方向から航空攻撃が仕掛けられることとなり、重機関銃により対空戦闘準備を開始します。重機関銃は一世紀前からと同じM-2機関銃ですが、重量こそ大きいものの弾丸威力と持続射撃能力等装備としての信頼性は大きい。

Mimg_0183 仮設敵航空機役はOH-6観測ヘリコプターが乱舞、想定は攻撃ヘリコプターとのことでしたが、実際には観測ヘリコプターに発見された目標は同時に火力戦闘部隊や航空攻撃目標となるので、ヘリコプターそのものの能力は武装を有さないため決して大きくなくとも、その存在は無視できません。

Mimg_0180 航空脅威を排除するのは93式近距離地対空誘導弾、射程5kmの91式携帯式地対空誘導弾を光学照準装置と防空システムの連動により運用するもので、これが充分な離隔距離を以て展開することで航空攻撃を寄せ付けない準備を構築、訓練展示でも本装備により目標は排除されてゆきました。

Mimg_2283 敵砲兵部隊へ続いて射撃が行われます。今回は空包射撃ですが、実戦であれば6.8kgのTNTを内蔵した43.6kgのM-107榴弾等各種砲弾を投射してゆきます。ところで、後ろに見える建物は駐屯地の建物ではなく札幌市営地下鉄自衛隊前駅の高架駅舎、駅前で自走榴弾砲が射撃を続けます。

Mimg_2252 自動装填装置により次々と射撃が行われ、目標を無力化します。射程19kmの75式は射程のみでは見劣りが否めませんが、日本の地形では19km先を見通せる場所はほぼなく、確実な目標の評定と迅速な陣地転換により、敵砲兵射程の懐でも任務遂行は可能で、これは湾岸戦争やイラク戦争において射程の小さな米軍砲兵は長射程のイラク軍砲兵を一方的に撃破しました。

Mimg_0193 重迫撃砲の展開も合わせて展開されます。背景には戦車も写り込んでいますね。重迫撃砲は、対砲兵戦ではなく、普通科部隊の最前線での近接戦闘を、その長大な射程と高威力の打撃力により支援します。逆に迫撃砲の制圧が砲兵の任務の一つでもあるため、迅速な展開と射撃に撤収が部隊の生存を左右するということ。

Mimg_0200 120mm重迫撃砲の装填動作展示、迫撃砲に装填される動作に、咄嗟な耳の反故を行う方がいるのは先ほどの75式自走榴弾砲の空包射撃の迫力が凄かったから、なのですけれども、実は重迫撃砲は基本空包射撃は行えません。もっとも、部隊によっては手製の内筒に火薬を仕込むこともあるようですが。

Mimg_2258 90式戦車が1500馬力のエンジン音を響かせ、75式自走榴弾砲の背後を第一線へ。特科火砲の射撃により敵砲兵部隊に一定の損害を与え行動不能とさせ、いよいよ戦闘は目標を観ない間接照準射撃による遠距離戦闘から、戦車と普通科が直接脅威を無力化する直接火力戦闘へ展開するという事に。

Mimg_2257 90式戦車の低く、しかし獰猛なシルエットとともに進入してゆきます、この戦車部隊展開と共に、遠距離火力戦闘から訓練展示は近距離火力戦闘へと転換して行きます。この近距離火力戦闘の様相は次回の真駒内駐屯地記念行事詳報に掲載することとしましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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