北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

台湾との防衛協議の必要性 与那国問題の反省と南西諸島防衛での自衛隊行動増の場合

2012-12-15 17:16:02 | 国際・政治

◆中国反発はあろうが衝突回避の視点から

 台湾、現在我が国との間に正式の国交はありませんが、南西諸島問題が今後緊張度を増す場合、特に領空侵犯事案が続く場合には台湾との防衛協議の必要性が生まれるでしょう。

Img_2485 尖閣諸島の領空を中国機が侵犯し2日が経ちました。我が国は今後南西諸島の防空体制を再構築する必要性が生じたわけで、現在南西方面航空混成団は増勢の方向で推移していますが、早期警戒管制機の効率運用や場合によっては後継機選定や保有数への影響、空中給油輸送機の増強などが必要となるやもしれません。

Img_90_00 一方で、中国空軍の戦闘機は基本的に尖閣諸島領空へは接近できません、中国大陸から尖閣諸島は距離的には航空機ならば遠くはありません、そして航空自衛隊の那覇基地からも距離があるのですが、中国大陸から尖閣諸島へ接近する場合、台湾の防空識別圏に接近することから台湾空軍の新竹基地より発進するミラージュ2000の迎撃を受けるからです。

Bimg_8208 現実的には空中給油機による戦闘空中哨戒や訓練強化、早期警戒機と早期警戒管制機の展開を行うことで南西諸島の防空網を強化する形となるのでしょうが、併せてこの行動も台湾空軍の防空識別圏近傍を飛行することには変わりなく、無用な摩擦を避けるためには台湾空軍と航空自衛隊との情報連携体制を構築しなければならないでしょう。

Img_0024 何故台湾か、それは日本西端の与論島を巡り、実は2005年に台湾との間で摩擦が生じたことがあります。航空自衛隊は領空侵犯対処任務として、領空線外に防空識別圏を設定し、この防空識別圏を国籍不明機が突破した場合に航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させ対処していますが、この防空識別圏は航空自衛隊発足以前のアメリカ空軍が設定しました。

Img_4577a しかし、1972年に沖縄県がアメリカより本土復帰が果たされますと、先島諸島の西端にある与論島の中央に日台防空識別圏の境界線があり、我が国の領土領海領空の一部が防空識別圏外に設定され、併せて台湾、正式には中華民国の防空識別圏内に含まれているという状況だったということ。

Img_4954 実際の運用は台湾空軍が与論島近海の我が国領域を半円状に外して実運用していましたが、この事案は台湾空軍機への対領空侵犯措置が増大していた2005年に国会で問題として取り上げられ、運用として外すのではなく我が国の防空識別圏境界線を運用に合致させる方向へ改正する方針が定められ、防衛庁は台湾へ一方的に変更を通知、これが外交手順を踏んでいない措置として反発を招きました。

Gimg_0046_1 中国は国交を結ぶ諸国に対し、台湾との国交を結ばない一つの中国を求めています。一つの国家に二つの政党政府は外交関係条約の関係からあり得ず、中国は政党政府である中華民国政府と内戦状態にあった交戦団体である中華人民共和国とが国共内戦を経て入れ替わった、というかたちであるのですが、我が国が台湾との外交関係を、特に協議という形でも推進すれば反発は避けられません。

Img_1025 しかし、緊張増大と偶発衝突の可能性は日本も台湾も望まない状況であり、事前通知制度などを創設するべきでしょう。特に台湾空軍はF-16戦闘機150機、ミラージュ2000戦闘機60機、IDF戦闘機130機という優勢な航空戦力を有しており、無用な摩擦を避ける、という事はある意味当然のことと言えるでしょう。

Img_3305 他方、尖閣諸島問題は台湾もその領有権を主張しているため、事前通知制度や情報連携体制を構築しておかなければ日中台入り乱れての航空戦や、そこまで問題が大きくならずとも日本領空に接近する中国機へ台湾空軍が緊急発進し、航空自衛隊の航空機と遭遇することで緊張が増大、という可能性もあります。

Img_5626p 国境を接する国では領土問題は普通であるのですが、管轄権を有する国に対し管轄権を有さない国が併合しようと実力を行使することは異常です、平和的対処を行うよう、特に予防外交の観点から協議は必要です。しかし、こう考えると共に、本年は日本と中国の1972年における日中国交正常化40周年の記念すべき年ですが、併せて日台断交40周年という、中台問題の現状を考えなければならない一年間でもありました。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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