北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

十二月八日真珠湾攻撃から七十一年 政治家の勇ましいばかりの発言目立つ昨今を背景に

2012-12-08 22:41:47 | 北大路機関特別企画

◆太平洋戦争の背景に石油確保という事実

 本日は十二月八日です。真珠湾攻撃の開戦記念日ですが、改めて開戦記念日に昨今の勇ましい総選挙に伴う政治家の発言への思うところを。 

Simg_0819 1941年12月8日、我が国は大陸進出に伴うアメリカイギリスを中心としたABCD包囲陣による経済制裁が継続する中、禁輸措置が採られた石油資源の独力確保を期して真珠湾を空母六隻からなる機動部隊により強襲、第二次世界大戦は欧州大戦から地球全域を含めた本当の意味での世界大戦となりました。

Simg_9418 時は移ろい1957年5月、アメリカより初のウラン燃料としてウラン235が羽田空港へ到着、我が国ではこのウラン日本到着を、新聞を中心に原子力時代の口火を切った、平和の火だ、と好意的に伝えています。そして1973年の石油危機を経て、多くの国が軍事的リスクを犯して石油資源を確保する方向を模索する中、こうして我が国は石油資源から脱する選択肢を模索し続けました。

Simg_5503 我が国では、民主党政権交代を弾みに二酸化炭素排出25%削減を掲げ、更に石油資源を筆頭とした化石燃料からの脱却を掲げ、原子力政策へと歩みを進めたそのさなかに福島第一原発事故が発生し、事故対応の拙さから被害は拡大、除染と地域復興計画は手動を掲げた政治が打つ手を出せなかったため、今日に至ります。

Simg_4577 さて、昨今、もっとも勇ましい発言として注目を集めているのは脱原発と卒原発です。化石燃料への過剰な依存はシーレーン防衛への注力や、産油地域の安定への防衛力での寄与という覚悟があるのかを、いわば裏付けとなる根拠を説明しないまま勇ましく原発を全廃する、という言葉の一人歩きは非常な危機感を感じるとしか言いようがありません。

Simg_0003 クリーンエネルギーへの転換により量産効果で費用は安く、新しい雇用が生まれるとの卒原発論陣の主張は、その先進事例であるドイツが本年に続き来年も再生可能エネルギー普及への電力買い上げ制度の結果、電気料金が来年11%あがる、というZDFの報道を無視しており、インフレ率と経済成長率を遙かに超える電気料金が及ぼす悪影響を隠し、利点のみを強調する姿は彼らが批判する原子力推進派の姿そのものではないでしょうか。

Simg_8605 原子力を我が国が導入した背景には、二度と戦争を起こさず、二度と周辺のせんそぅに巻き込まれないための自主独立の手段として選ばれたエネルギーの自活手段です。これを放棄するという事は、かつて1941年に我が国が突きつけられた究極の選択肢において、戦後長く忌避してきた選択肢を選ぶ覚悟があるという、国民の総意と判断することが出来るのでしょうか。

Img_2616 自衛隊の国防軍、これも勇ましいという意味ではありませんが重大な論点のすり替えです。内には非軍隊、外には軍隊、この矛盾がおかしい、という主張がありますが自衛隊はSDF,しかし例えばイスラエル国防軍はIDFで、厳密にはForceを隊と訳しているか否かの違いです、これを批判するならば、もう一つの日本国が抱える最大の矛盾を指摘するべきでしょう。

Img_9104 それは日本国、という呼称そのものです。日本王国かと問われれば天皇陛下は国王ではありません、日本共和国かと問われれば共和制という割には大統領を選出する制度がありません、結局は天皇陛下は世界ではEmperorであるのですから、国名は本来、日本帝国とあるべきです。しかし国家の正式名称を日本国と言い続け、国家元首の制度上の大きな矛盾を放置してきました。

Img_6378 こうした国名という最大の問題があるにも拘らず、我が国が国家を運営し続けることが出来た最大の背景は、単純な二元論に陥らない多様への寛大さにあると考えます。もちろん、法制度上からの問題があるならば憲法改正は避けることはできません、しかし、名称は、国防軍という、陸上国防軍海上国防軍航空国防軍とするのか、国防軍での統合運用を図るのかはさておき、名称はそのままでよいのではないか、とも。

Yimg_5733 自衛隊という名称に軍という呼称が無いと指摘されますが、アメリカ海兵隊にも呼称はありません。そして、海上自衛隊は今年創設60周年を迎え、それなりに伝統文化が構築されてきました。例えば陸海空自衛隊の上級組織に防衛軍を創設し、防衛軍のもと陸海空自衛隊を統合運用する、という方式もあるのですが、伝統ある名称を一顧だにしない現状には若干の違和感を感じる、というところ。

Img_0305 なお、現与党は2010年11月18日にに予算を削減する分、名称を旧軍に戻し歩兵や砲兵に参謀本部などの名称を戻す提案を出しました、すると陸幕は参謀本部として上手くいくのでしょうが、海幕は軍令部になり、自衛艦隊は連合艦隊に、統幕は大本営になるので、少々賛同したい気持ちも生まれたのですが大丈夫なのか、と思ったところもありました。呼称は手を付け始めるときりがないという端的な事例ともいえ、このあたり再考を期待したいところ。

Img_8997 ともあれ、総選挙は間もなく、そして我が国は周辺国との緊張状態が続きつつ、原子力政策という重大な決定を、特に安全保障と直接かかわる分野において考えなければなりません。勇ましいばかりの機運で物事を決めるという事はあってはならないのではないか、この視点から少し書いてみました次第です。

北大路機関:はるな

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コメント (4)
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