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インド海軍が南シナ海シーレーン防衛へ艦隊派遣の可能性示唆 ジョシ海軍参謀長発言

2012-12-03 23:42:22 | 国際・政治

◆インド海軍は空母・原潜等有力な戦力を保有

 インドのPTI通信を産経新聞が引用し配信した記事によれば、インド海軍は必要ならば艦隊を南シナ海へ派遣するとのことです。 

Iimg_1238 これはジョシインド海軍参謀長の発言で、中国海軍の増強とともに、その海軍力がヴェトナムとの共同資源開発や南シナ海での海洋自由通行に影響が及ぶことを懸念し、必要であれば海軍部隊を派遣する、としたものでした。実はインド海軍の規模は中国海軍よりも大きく、この発言は大きな意味を持っています。特に空母機動部隊の派遣が可能なインド海軍がこの海域での行動を示唆したことで、中国海軍の防衛計画は大きな再編を強いられることだけは間違い無いでしょう。

Iimg_1267 インド海軍は1961年にイギリスより新造艦を購入する形で初の航空母艦ヴィグラントを就役させて以来、外洋海軍の建設を継続した海軍国であり、1987年には英空母ハーミーズを取得しヴィラートとして就役、久保二隻体制を確立させたほか、印パ戦争では実際に工区母艦の実戦投入も行いました。現在初の正規空母としてMiG-29を艦載機とするロシア製空母が完成引渡しを間近としていて、初の国産空母ヴィグラント(二代目)も2014年に就役を予定しており、戦力投射能力では中国海軍を全く寄せ付けません。

Iimg_1329 今年五月には水上戦闘艦三隻と補給艦一隻を含む艦隊を横須賀へ親善訪問させ、日印合同救難訓練も実施されています。水上戦闘艦ではロシアの技術的支援を受けており、6700tのデリー級ミサイル駆逐艦三隻、5000t前後でステルス性を意識したシヴァリク級とタルワー級が9隻、4970tのやや旧式のラジプット級ミサイル駆逐艦五隻を中心に駆逐艦フリゲイトなと21隻、コルベット24隻とロシア製アクラ級攻撃型原潜を含む潜水案17隻を運用するかなり大きな海軍として成長しました。

Iimg_1463 元々中国とインドの関係は良好ではありません、何故ならば1962年に中国軍がインドに侵攻し、インド軍は死傷者4000名以上という決して少なくない犠牲を払っているためです。このほか、中国政府はインドとパキスタンとの間で三度発生した印パ戦争においてパキスタン側を支援しており、武器供与も行っており、中印関係は実のところ非常に悪い、という現実があります。中国は我が国に対し、侵略を受けた側は侵略を仕掛けた側と違い、絶対に忘れることはない、と常々主張していますが、その通り、という事になります。

Iimg_1574 特に1962年の中印国境紛争は中国の周恩来首相とインドのネルー首相が両国間の平和共存を求めた平和五原則による良好な両国関係の樹立で合意した安定下で中国側がインド侵攻準備を行っていたため、現在ではインドは核戦力を含む強大な軍事力を整備し、ヒマラヤ山脈の先からの侵攻に備えています。同じくヴェトナムも1979年に中国からの侵攻を受け民間人一万名以上の犠牲が出ているため、中国との経済的交流を行いつつ、どうしても警戒を解けない、という問題があるのです。

Iimg_1693 インド海軍は現在運用する空母の後継として、2015年までにMiG-29を運用する航空母艦を少なくとも二隻整備します。MiG-29は中国が空母で運用するSu-27コピー機よりも小型ですが、中国海軍とインド海軍の航空母艦では発進時の最大離陸重量に制約があるため、射程90kmのR-77空対空ミサイルやマッハ4.5の速度を有するKh-31対艦ミサイルを搭載しての運用が可能です。このほか、インドはロシアとの良好な関係を活かし、アクラ級攻撃型原潜というアメリカのロサンゼルス級攻撃型原潜後期型に匹敵する静粛性を備えたを取得しています。これら強力な装備を有するインド海軍参謀長の発言は、中国としても無視はできないでしょう。

北大路機関:はるな

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