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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮が弾道ミサイル実験再開の可能性 黄海側東倉里ミサイル発射施設周辺に動き

2012-12-01 23:48:55 | 防衛・安全保障

◆落下危険地域、南西諸島の緊張増大の可能性

 北朝鮮の東倉里ミサイル発射施設において弾道ミサイルの部品と思われる物体が組み立てられている様子を人工衛星などが発見、朝鮮宇宙空間技術委員会は今月10日から22日の間に人工衛星発射を行うと発表しました。

Bimg_4088 東倉里ミサイル発射施設は黄海側に位置し、これは今年四月に南西諸島方面へ向け長距離弾道ミサイル実験が行われた施設と同じ場所であり、これまで日本列島上空を飛行し太平洋方面に落着した弾道ミサイル実験は日本海側の舞水端里ミサイル発射施設より実施されていますので、今回も四月のミサイル実験と同じように南西諸島方面に向け発車される可能性が高く、今回も宮古島など先島諸島が落下の危険区域となります。場合によっては我が国領域に落下する可能性もあり、今回もイージス艦などによる厳重な監視が行われるでしょう。

Bimg_1372 四月の北朝鮮ミサイル危機においては、防衛省は南西諸島先島諸島にミサイル部品落下の危険があるとして、那覇駐屯地の第15旅団や南西方面航空混成団を支援するべく、先島諸島へ向け陸海空自衛隊を協同した沖縄救援隊を編成、人員900名を以て石垣島、宮古島、与那国島、沖縄本島に展開、このうち中部日本地域を防空管区とする第四高射群は弾道ミサイル迎撃能力を有するペトリオットミサイルPAC-3を沖縄へ展開し、第二次大戦中とは異なり沖縄を見捨てない、という姿勢を貫徹しました。

Bimg_2517 沖縄救援隊として四月に派遣された部隊の中で先島諸島へは、弾道ミサイルの燃料であるヒドラシンが落下時に漏洩する可能性があり、この有毒物質の拡散に備え特殊武器防護隊を派遣しています。性格には非対称ジメチルヒドラシンという物質で、発火性が強いため拡散すると爆発すると共に人体に付着すると腐食性を有しているため化学性火傷を負い、多量に浴びれば皮膚組織や粘膜などが速やかに壊死し、発がん性も有している危険物第五類となっています。

Bimg_1900 こうした部隊に加え、弾道ミサイル迎撃部隊に対し、万一の特殊部隊などによる攻撃が行われる想定の下、警備部隊も併せて展開しており、洋上からは弾道ミサイル迎撃能力を有するイージス艦が警戒、陸上からも迎撃準備を行うと共に落下時の負傷者救出における迅速な住民救助体制を確立した、という事です。もっとも、2012年4月15日に実施された北朝鮮ミサイル実験は発射二分後に空中分解し黄海に落下、迎撃部隊の射程に入ることなく海中に飛散したため、出番はありませんでしたが。

Bimg_3179 四月のミサイル実験では、余りに早く落下してしまったため、より高高度を警戒していた自衛隊の警戒監視体制は探知しませんでした。今回は、地上の防空監視所の圏内での発射初段階を警戒するため、九州北部から南西諸島の防空監視所はレーダーによる警戒を強化する可能性が高く、このため長距離を指向し低下する防空監視所、特に周辺空域への国籍不明機接近への対処を補完するために、早期警戒管制機による警戒管制支援が行われる可能性があります。

Bimg_3001 また、弾道ミサイル警戒に当たるイージス艦はSPY-1レーダーを収束し指向することで探知能力を先鋭化させ、長距離目標に対処するため、完全ではないものの防空能力が低下するため、航空自衛隊のF-15戦闘機を周辺空域に展開させ、戦闘空中哨戒を行うことで、イージス艦に対する航空機などによる妨害を排除する任務等も、四月のミサイル実験に際しては検討されていました。検討のみで終わりましたが、今回のミサイル危機に際しては、実施されるやもしれません。

Bimg_8208 そういいますのも、先島諸島のすぐ隣には尖閣諸島があり、現在日中の海上法執行機関同士が洋上において牽制しあっています。この周辺海域に弾道ミサイル迎撃能力を持つ有力な護衛艦部隊が展開し、有力な地対空ミサイル部隊が展開します。場合によっては中国軍の偵察を受け、緊張が増大する可能性があります。我が国の領域であるのだから気にする必要は、という視点はあるでしょうが、冷戦時代、陸上自衛隊はソ連に近い稚内に大部隊を駐留させることはありませんでしたし、対馬に対しても大部隊は駐留させてはいないのです。

Img_2642 尖閣諸島問題については、米政府が安保条約に基づき防衛義務があるとした上院決議を行ったばかりであり、中国政府の行動の展開が注視される状況にあるのですが、この際に敢えて弾道ミサイル実験を強行する北朝鮮、四月と同じ通り自衛隊が南西諸島に展開することは十分予測されるのですから、中国政府としてはこの時期に北朝鮮が実験を行うことは好ましくはないわけです。言い換えれば中国の北朝鮮に対しての影響力が大きく低下している、という端的な事例と言えるやもしれません。

北大路機関:はるな

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