原子力発電所の新規制施行に向けた基本的な方針(規制委・田中委員長私案)=再稼働への布石

2013-03-21 09:10:46 | 社会
杉原浩司さんから
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3月19日午前に開かれた規制委の定例会合で、田中委員長の私案として「原発の新規制施行に向けた基本方針」が示され、委員間で議論が行われました。
短いやり取りを経て、大枠は合意となったようです。

原子力発電所の新規制施行に向けた基本的な方針(私案)
http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0033_12.pdf

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原子力発電所の新規制施行に向けた基本的な方針(私案)

基本的な考え方

○総論
安全の追及には終わりはなく継続的な安全向上が重要である、というのが原子力規制委員会の姿勢である。
事業者は、原子力発電所の安全確保の一義的責任を負う。
規制当局が、原子力発電所の安全性に関する証明責任や説明責任を負っていると履き違えると、安全神話に逆戻りしてしまう。
原子力規制委員会は、原子力発電所が規制の基準を満たしているか否かを確認し、その結果により達成される安全レベルの説明を行うことを役割とする。
また、原子力規制委員会は、その時点での最新の科学的知見を反映し、かつ、実現しうるものとして規制を定める必要がある。
他方、事業者は、常に規制以上の安全レベルの達成を目指す必要がある。
この両者が相まって継続的な安全向上が達成されることとなる。
なお、原子力発電所の再稼働を行うか否かは、原子力規制委員会の判断や事業者の説明を基に、エネルギー政策当局や地元関係者が判断すべきことである。

○新規制の考え方
新規制については、施行と同時に混乱なく運用できるものでなければならない。
また、バックフィットは、施行時の一度だけではなく、今後も繰り返して実施していくものである。
したがって、この新しい制度を定着させるため、明瞭かつ普遍的なシステムであることが必要である。
新たな規制の導入の際には、基準への適合を求めるまでに一定の施行期間を置くのを基本とする。
ただし、規制の基準の内容が決まってから施行までが短期間である場合は、規制の基準を満たしているかどうかの判断を、事業者が次に施設の運転を開始するまでに行うこととする。
(施設が継続的に運転を行っている場合は、定期点検に入った段階で求める。)
それぞれの節目の時点以降、規制の基準を満たしていない原子力発電所は、運転の再開の前提条件を満たさないものと判断する。

今回の新たな規制導入に当たっての取扱い
① 今年7月の新規制の施行段階で、設計基準事故対策及びシビアアクシデント対策(大規模自然災害やテロに起因するものを含む)として必要な機能をすべて備えていることを求める。
② シビアアクシデント対策やテロ対策の信頼性向上のためのバックアップ対策については、施行後5年までに実現を求める。

今回は「新規制の考え方」でいうところの「規制の基準の内容が決まってから施行までが短期間である場合」にあたるので、原子力規制委員会は、規制の基準を満たしているかどうかの判断を、事業者が施設の運転を再開するまでに行うこととする。

○ 7 月の新規制導入時点で稼働中のプラントの扱い
「新規制の考え方」と齟齬のない対応が必要である。
また、安全性の確認において例外はありえず、運転するに足るだけ十分に危険性が低いかどうか、しっかりと確認することが必要である。
原子力規制委員会は、導入直後の定期点検終了時点で、事業者が施設の運転を再開しようとするまでに規制の基準を満たしているかどうかを判断し、満たしていない場合は、運転の再開の前提条件を満たさないものと判断する。
ただし、今回は大幅な規制の基準の引き上げであり、通常のバックフィット以上に丁寧な対応をする必要があると考える。
そこで、運転中のプラントが新基準をどのくらい満たしているのか把握するための確認作業を、新基準の内容が固まった段階で速やかに開始する。
この確認作業は、今後他の炉に対して審査をするためにも有効であると考える。
そのうえで、安全上重大な問題があると認める場合には、原子力規制委員会として停止を求める可能性がある。

新たな規制に合致した規制方法への移行
新たに要求するシビアアクシデント対策については、施設や機材の備えだけでなく、それらを使用して事故の進展を有効に防止するための事業者の運用や体制、教育訓練なども重要な要素である。
従来の規制においては、基本設計、詳細設計、運転管理などの審査を段階的に、言い換えれば細切れに実施してきた。
しかし、シビアアクシデント対策を新たに要求する以上、この手法は適切でない。
このため、事業者の負担にはなるが、設置変更許可、工事計画認可、保安規定認可といった関連する申請を同時期に提出させ、ハード・ソフト両面から一体的に審査することとする。
各種の検査は、これらの一体的な審査手続後に行うこととする。

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文書には「新規制導入の際には、基準への適合を求めるまでに一定の施行期間を置くのを基本とする」と書かれています。
更田豊志委員は「一律、即時の適用は硬直的で教条主義的」「一定の施行期間を置くのは国際的にも常識」と述べ、「日本をまたガラパゴスに後戻りさせないためにもこの方針は守られるべき」と強調しました。
さらに、「新規制導入に当たっての取扱い」の項には、
①今年7月の新規制の施行段階で、設計基準事故対策及びシビアアクシデント対策(大規模自然災害やテロに起因するものを含む)として必要な機能をすべて備えていることを求める、
②シビアアクシデント対策やテロ対策の信頼性向上のためのバックアップ対策については、施行後5年までに実現を求める」
との区分けがなされています。
「施行後5年まで」の猶予期間を認めるのは、まさしく再稼働への布石でしょう。
これに関して、更田委員は、①の中に沸騰水型軽水炉(BWR)のフィルター付ベントを入れ、一方で加圧水型軽水炉(PWR)のフィルター付ベントは②に含めています(下の動画参照)。

PWRは西日本に多く、そのため、伊方、川内、玄海の各原発が今秋以降の再稼働有力候補として報じられ、「年内に再稼働出来るのは伊方の1基と川
内の2基くらいではないか」との経産省幹部の発言も伝えられています(発売中の『週刊ダイアモンド』3月23日号)。

◆上記関連の更田委員の発言は(1時間32分45秒~1時間35分45秒)(1時間44分00秒~1時間49分00秒)です。
ぜひご確認ください。
      ↓
【動画】第33回原子力規制委員会(3月19日)
http://www.youtube.com/watch?v=gQeL0VNa_L8&list=UU5_urTtPY2VjNc1YOI4rBCg



<参考:更田委員による区分けの文字起こし>
①設計基準として要求しているもの、地震・津波への防護機能、溢水への防護対策、火災防護対策、非常用冷却装置の配管などの静的機器の多様化、シビアアクシデント対策に関しては、炉心損傷防止のためにスクラムを失敗した場合の未臨界確保の機能、高圧時低圧時の冷却、圧力容器を減圧するための機能、最終ヒートシンクへの熱移動、格納容器損傷防止対策(減圧、冷却、放射性物質低減機能など主に可搬機器で求めているもの)、BWRのフィルターベント、電源系統の強化など

②特定安全施設、可搬施設でとっているシビアアクシデント対策やテロ対策に対して、さらに後ろの備えとして、信頼性を向上させるためのもの、主には恒設ポンプによる格納容器スプレーとか、別の策を事業者が提案することも可能だが例えばPWRのフィルターベントとか、3つ目の恒設の直流電源など。

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田中委員長は更田委員による区分け方針を受けて、「どれをどちらにするかはこれからもう少し議論してほしい」と述べていました。

これに対して、私たちがどのような要求をどう伝えていくべきか、28日の次回の新安全基準検討チームでのパブコメ審議に向けて、考えどころだと思います。

「猶予期間を認めず、可能なすべての安全対策を義務付けよ」という主張を、いかにして広めて、規制委にプレッシャーをかけられるかが再稼働を止めるために不可欠だと思います。
知恵を出し合って具体的な取り組みを作りましょう。

【関連記事】
大飯原発は新基準導入後も運転継続へ、9月以降に原発ゼロも=規制委
(朝日:ロイター、3/19)
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR201303190132.html


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