新聞週間 知る権利に応えるために 10月14日(月)
http://www.shinmai.co.jp/news/20131014/KT131012ETI090006000.php
県警の内部資料を入手した。1988年のことだ。当時の本部長が非公開の会議で指示した具体的内容が書かれている。
覚せい剤取り締まりのため「他部門で逮捕した被疑者であっても必ず採尿鑑定を実施すること」「本年は特に警察署別の検挙目標を示してあるので、検挙者が全く無かったというような結果にならないよう」…。
つまり、ノルマ達成のため、どんな疑いで逮捕した人でも尿を採り、覚せい剤使用を見つけ出せ―ということだ。「必ず」というのは、採尿の任意性に問題がある。専門家の意見も聞いて報道した。
すると、「私も交通違反で逮捕されたのに採尿された。全裸にされての身体検査も受けた」という女性らが名乗り出た。採尿と全裸検査のあり方は県会や国会でも取り上げられていく。
県弁護士会や日弁連は「重大な人権侵害」と県警に警告した。女性は最高裁まで争い、県への賠償命令が確定した。
<抽象的な「特定秘密」>
私たちがふだん、うかがい知ることのできない権力の不適切な運用や不正を明らかにするのは報道の重要な役割だ。古い話を持ち出したのは、こうした権力の運用が検証できなくなる恐れのある法案が、あす召集の臨時国会に提出される予定だからだ。
特定秘密保護法案という。指定された秘密を漏らした公務員らへの罰則を強化し、最高で懲役10年を科す。
政府が自民党に示した原案では、「特定秘密」とする分野は(1)防衛(2)外交(3)外国の利益を目的とする特定有害活動の防止(4)テロ活動防止。この中から、防衛相や外相、警察庁長官といった行政機関の長が「漏えいがわが国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」と判断した情報を「特定秘密」と指定する。
地方でも、警察庁長官の指示で県警本部長がこれらの秘密の保護措置などを担う。
問題が多い法案だ。
秘密指定する4分野の中身を「別表」で見てみる。
例えば、防衛分野では「自衛隊の運用」、外交分野では「安全保障に関する外国政府との交渉内容」などと抽象的だ。しかも、各分野に「その他の重要な情報」と付け加えられている。
これでは、特定秘密が際限なく広がる余地がある。
最近、戦時中に旧日本軍がインドネシアの捕虜収容所からオランダ人女性30人以上を強制連行し、慰安婦にしたとの記載がある公的な資料が明らかになった。市民団体が資料を保存する国立公文書館に請求し、開示された。論議になっている慰安婦問題で軍の関与を裏付ける重要な資料だ。
これとて、この法があれば「その他の重要な情報」などにあてはめられ、開示されない可能性を否定できない。歴史の事実さえ覆い隠されかねない危険性をはらむ。
しかも、特定秘密にしたことが妥当かどうかをチェックする仕組みがない。
<議論が足りない>
既存の法との整合性も不明だ。
例えば、2006年に施行された公益通報者保護法。官庁や企業の不正を内部告発した人に不利益な扱いをすることを禁じている。
あるいは11年に施行された公文書管理法。国の政策決定の是非を国民が検証できるよう公文書管理の基本ルールを定めた。東大大学院教授の加藤陽子さんは、この法の精神に抵触する部分が出てくるのではないかと指摘している。
これらは、ほとんど議論されていない。
秘密指定がどんどん広がっていけば、公務員はどこで法に抵触するか分からない不安が募る。聞かれても何も話さない方が無難だ。不適切な運用や不正があっても内部告発もしない方がよいとなる。
情報にアクセスする側も同様だ。特定秘密を得ている公務員らに情報提供を求める行為が「教唆(そそのかし)」や「扇動(あおりたて)」などと見なされれば、処罰の対象になる。
アクセスする側、される側の双方が萎縮する。結果、権力の運用が国民に見えない形で進む。構造は戦前、戦中と同じだ。
<真実に向き合う>
批判を受けた政府は11日、「国民の知る権利に資する報道・取材の自由に配慮する」などと付け足した修正案を公明党に示した。
何をどう配慮するのか曖昧だ。小手先のごまかしにすぎない。法案の持つ本質的な問題点は何も変わっていない。
あすから第66回新聞週間が始まる。選ばれた代表標語は「いつの日も真実に向き合う記事がある」。高校3年生が考えた。
民主主義は、真実を知ることが基本だ。知らなければ国民は意見を持てないし、表明できない。そのために真実を追求する報道がある。標語は、その努力を求めているようだ。
真実に向き合うことを阻む法案に反対していく。
------------------
・「知る権利」守らなければ/あすから新聞週間(東奥日報14日)
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/sha2013/sha20131014.html
・「知る権利」文言入れず 秘密保護法案 自民幹部が明言(東京新聞14日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013101402000127.html
・特定秘密:どうなる?開示の規定 防衛秘密も統合の予定(毎日新聞14日)
http://mainichi.jp/select/news/20131014k0000e040142000c.html
よろしければ、下のマークをクリックして!
![](http://politics.blogmura.com/politicalissue/img/politicalissue88_31.gif)
よろしければ、もう一回!
http://www.shinmai.co.jp/news/20131014/KT131012ETI090006000.php
県警の内部資料を入手した。1988年のことだ。当時の本部長が非公開の会議で指示した具体的内容が書かれている。
覚せい剤取り締まりのため「他部門で逮捕した被疑者であっても必ず採尿鑑定を実施すること」「本年は特に警察署別の検挙目標を示してあるので、検挙者が全く無かったというような結果にならないよう」…。
つまり、ノルマ達成のため、どんな疑いで逮捕した人でも尿を採り、覚せい剤使用を見つけ出せ―ということだ。「必ず」というのは、採尿の任意性に問題がある。専門家の意見も聞いて報道した。
すると、「私も交通違反で逮捕されたのに採尿された。全裸にされての身体検査も受けた」という女性らが名乗り出た。採尿と全裸検査のあり方は県会や国会でも取り上げられていく。
県弁護士会や日弁連は「重大な人権侵害」と県警に警告した。女性は最高裁まで争い、県への賠償命令が確定した。
<抽象的な「特定秘密」>
私たちがふだん、うかがい知ることのできない権力の不適切な運用や不正を明らかにするのは報道の重要な役割だ。古い話を持ち出したのは、こうした権力の運用が検証できなくなる恐れのある法案が、あす召集の臨時国会に提出される予定だからだ。
特定秘密保護法案という。指定された秘密を漏らした公務員らへの罰則を強化し、最高で懲役10年を科す。
政府が自民党に示した原案では、「特定秘密」とする分野は(1)防衛(2)外交(3)外国の利益を目的とする特定有害活動の防止(4)テロ活動防止。この中から、防衛相や外相、警察庁長官といった行政機関の長が「漏えいがわが国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」と判断した情報を「特定秘密」と指定する。
地方でも、警察庁長官の指示で県警本部長がこれらの秘密の保護措置などを担う。
問題が多い法案だ。
秘密指定する4分野の中身を「別表」で見てみる。
例えば、防衛分野では「自衛隊の運用」、外交分野では「安全保障に関する外国政府との交渉内容」などと抽象的だ。しかも、各分野に「その他の重要な情報」と付け加えられている。
これでは、特定秘密が際限なく広がる余地がある。
最近、戦時中に旧日本軍がインドネシアの捕虜収容所からオランダ人女性30人以上を強制連行し、慰安婦にしたとの記載がある公的な資料が明らかになった。市民団体が資料を保存する国立公文書館に請求し、開示された。論議になっている慰安婦問題で軍の関与を裏付ける重要な資料だ。
これとて、この法があれば「その他の重要な情報」などにあてはめられ、開示されない可能性を否定できない。歴史の事実さえ覆い隠されかねない危険性をはらむ。
しかも、特定秘密にしたことが妥当かどうかをチェックする仕組みがない。
<議論が足りない>
既存の法との整合性も不明だ。
例えば、2006年に施行された公益通報者保護法。官庁や企業の不正を内部告発した人に不利益な扱いをすることを禁じている。
あるいは11年に施行された公文書管理法。国の政策決定の是非を国民が検証できるよう公文書管理の基本ルールを定めた。東大大学院教授の加藤陽子さんは、この法の精神に抵触する部分が出てくるのではないかと指摘している。
これらは、ほとんど議論されていない。
秘密指定がどんどん広がっていけば、公務員はどこで法に抵触するか分からない不安が募る。聞かれても何も話さない方が無難だ。不適切な運用や不正があっても内部告発もしない方がよいとなる。
情報にアクセスする側も同様だ。特定秘密を得ている公務員らに情報提供を求める行為が「教唆(そそのかし)」や「扇動(あおりたて)」などと見なされれば、処罰の対象になる。
アクセスする側、される側の双方が萎縮する。結果、権力の運用が国民に見えない形で進む。構造は戦前、戦中と同じだ。
<真実に向き合う>
批判を受けた政府は11日、「国民の知る権利に資する報道・取材の自由に配慮する」などと付け足した修正案を公明党に示した。
何をどう配慮するのか曖昧だ。小手先のごまかしにすぎない。法案の持つ本質的な問題点は何も変わっていない。
あすから第66回新聞週間が始まる。選ばれた代表標語は「いつの日も真実に向き合う記事がある」。高校3年生が考えた。
民主主義は、真実を知ることが基本だ。知らなければ国民は意見を持てないし、表明できない。そのために真実を追求する報道がある。標語は、その努力を求めているようだ。
真実に向き合うことを阻む法案に反対していく。
------------------
・「知る権利」守らなければ/あすから新聞週間(東奥日報14日)
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/sha2013/sha20131014.html
・「知る権利」文言入れず 秘密保護法案 自民幹部が明言(東京新聞14日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013101402000127.html
・特定秘密:どうなる?開示の規定 防衛秘密も統合の予定(毎日新聞14日)
http://mainichi.jp/select/news/20131014k0000e040142000c.html
よろしければ、下のマークをクリックして!
![](http://politics.blogmura.com/politicalissue/img/politicalissue88_31.gif)
よろしければ、もう一回!
![人気<strong></strong>ブログランキングへ](http://image.with2.net/img/banner/banner_22.gif)