家族会・救う会の新運動方針について(2)/救う会全国協議会ニュース★☆(2011.06.15) 

2011-06-15 21:07:04 | 北朝鮮
家族会・救う会の新運動方針について(1)/救う会全国協議会ニュース★☆(2011.06.15) から続く

西岡力(救う会会長)

 中国人拉致について、拉致問題対策本部のホームページに掲載されました。実
は今年の3月から、専門家の話を参考にしたということで、拉致問題専門家懇談
会を対策本部がやっています。専門家として参加しているのは座長として私、メ
ンバーとして島田さん、調査会の荒木さん、弁護士の会の川人さん、そして家族
会の増元さんの5人です。2週間に1回くらい、対策本部の事務方のトップの方々
と懇談しています。これまで1人ずつ報告をしてきましたが、島田さんが報告し
た中で、詳しくそのことを言いまして、掲載すべきと言いました。

 中国人拉致については、日本政府が昨年、訪日を招請した金賢姫さんが、私が
マカオで拉致されたホン(孔)さんの写真を見せた時、「この人は私の中国語の
先生です。私はこの人のことをよく知っています」と、当時の中井大臣や対策本
部の人がいるところで言ったのです。

 実はそれ以前に既にホンさんについては、崔銀姫(チェ・ウニ)さんという韓
国人で拉致された映画俳優が親しく会っていたということがあって、家族会・救
う会・拉致議連で年末にやっている国際シンポジウムで、崔銀姫さんのインタビュー
をビデオにとって話をし、産経新聞から出した本にも書いてあるんです。二人目
の証言が出たので間違いないんだからホームページに載せてくださいと言って中
井大臣の時に私も言って、「分かった」と返事があったのですが、なかなか進ま
なかったのです。

 今回、専門家懇談会の中で島田さんが、かなり厳しい要求をしたところ、「や
ります」と言って、文案が出てきて、ホームページに掲載されたということです。
懇談会ですから、何か決める場所ではないのですが、一部意見が生かされたこと
もあり、それについては率直に評価したいと思っています。しかし、まだ中国語
になっていないのであれば早くしてほしいと思います。

 次に、家族会・救う会の運動方針のペーパー(23.05.07メールニュース参照)
をお配りしましたが、その報告をいたします。

◆圧力をかけて交渉へ-家族会・救う会の新運動方針

 3月に予定されていた家族会・救う会合同会議を地震のため延期し、この間、
この東京集会も延期しました。この会場自体が節電で夜使えなかったのです。日
比谷公会堂での国民大集会(23.05.08)も、少し迷いましたが実施し、その1日
前に合同会議を実施し、運動方針を決めました。だいたい年2回くらい、家族会
と全国の救う会が集まって情勢分析をし、運動方針を決めています。

 それほど状況が変わっていませんので、大きく変わってはいません。運動の目
標について確認しました。「認定未認定にかかわらず、すべての拉致被害者の救
出が我々の目的である。当面の目標は、平成14年9月に金正日政権が発表した
『拉致したのは13人だけ。8人は死亡』というウソのシナリオをくつがえさせる
こと」です。

 そして救出方法として、2つ考えています。第1に、「交渉による救出」です。
そのために我が国政府が、(1)「全被害者が帰らない限り、制裁を強め支援は
しない」という姿勢を堅持し、(2) 制裁と国際連携の圧力などにより北朝鮮
がわが国との交渉に出てこざるを得なくなる状況を作り、そして交渉が始まった
時に、全被害者を助けることを目的にして、(3)主体的交渉を行うこと、です。

 交渉をしなければ交渉による救出はできませんが、そのためには彼らが出てこ
ざるを得ないような状況を作らなければならない。過去にチャンスが2度ありま
した。

 1回目は1990年金丸訪朝の時です。ソ連も東欧も中国も全部韓国を承認すると
いう危機になった時、日本に接近しようとしたわけです。そして交渉が始まった。
しかし、日本側は拉致問題を出さなかった。拉致について進展が起こりようがな
かった。

 2度目は2002年の小泉訪朝です。あの時も、ブッシュ政権が、核問題で北朝鮮
をイランとイラクと一緒の「悪の枢軸」として、テロとの戦争の目標にしました。
2002年1月に、ブッシュ大統領の有名な「悪の枢軸」演説があり、あの演説はた
だ世界のどの国が悪いかということを言った演説ではなく、テロとの戦争の目標
を明言する演説だったのです。

 あの時ブッシュ大統領は、テロとの戦争の目標は2つある、と言いました。第
1は、テロリストを攻撃して正義の審判を下し、その基地をたたくこと。これが
今回、ビン・ラディンに対してやられたことです。あるいはアフガニスタンのビ
ン・ラディンの基地を攻撃したことがこれに当ります。

 それだけでなく、2つ目の目標があるとブッシュ大統領は言いました。それは、
テロ支援国家が大量破壊兵器を持ってアメリカやアメリカの同盟国を脅かしたり、
その大量破壊兵器をテロリストに渡したりすることを防ぐことです。そのテロ支
援国家の内容として、「悪の枢軸」と言って、北朝鮮、イラン、イラクを挙げた
のです。

 つまり、北朝鮮、イラン、イラクの大量破壊兵器の開発を止めさせることを戦
争の目標としたのです。戦争をしてでも大量破壊兵器の開発を止めさせる、と明
言したのです。そしてイラクに対して戦争をしました。イラクに対する戦争は、
イラクがアルカイダを支援したからという理由ではなく、イラクのフセイン政権
が大量破壊兵器を持っているから、という理由でした。

 後で、持っていなかったではないかという議論になりましたが、とにかく、大
量破壊兵器をテロ支援国家が持ってそれをアメリカやアメリカの同盟国に対する
脅迫に使ったり、テロリストに渡すかもしれないと、それについては戦争をして
も止めさせるとブッシュ大統領は明言したのです。

 それを聞いていた金正日は大量破壊兵器を持っていないんだったら、誤解だと
言って話し合えばよかったのです。だが、持っていた。その後核実験をしました
から証明されたわけです。その後ミサイル実験もしました。実際核開発をしてい
たんです。秘密に核開発をしていて、「していない」と公然と言っている人間に
対して、「お前は核開発をしているだろう。戦争をしてもやめさせるぞ」と脅し
たのがブッシュ大統領の演説だったのです。

 その強い圧力があったので、日本との交渉に出ざるを得なくなった。それが
2002年9月に起きたことです。強い圧力がなければ北朝鮮は交渉に出てこないん
です。過去あったことがそれを証明しています。日本が米支援をした時は実質的
な交渉になっていないんです。取られて終わりだった。95年に加藤紘一さんが50
万トンの米を出したが、それで終わりだった。2000年に河野外務大臣が60万トン
出した時も、取られて終わりだった。

 しかし、2002年の小泉訪朝の時は米を出していない。国際社会、特にアメリカ
から強い軍事的圧力がかかった。そしてアメリカが北朝鮮を攻撃する時には極東
にあるアメリカの同盟国である日本と韓国が協力しなければできないんです。そ
れで北朝鮮は、アメリカから日本を引き離す必要から日本との交渉に出てきたの
です。構図は単純です。つまり、「制裁と国際連携の圧力などにより北朝鮮がわ
が国との交渉に出てこざるを得なくなる状況を作(る)」、と運動方針に書いて
ありますが、当時は日本一国の力ではなく、アメリカの強い圧力があったから、
北朝鮮が日本との交渉に出てこざるをえない状況ができたのです。

 しかし今度は、日本が主体的に拉致問題で制裁をかけ、そしてこのままでは支
援をしないということをきちんと言って、北朝鮮が交渉に出てこざるを得ない、
そういう状況を作る努力をしなければならない。他人任せではだめということを
我々はずっと言ってきています。交渉による解決を否定しているわけではなく、
真の交渉をするためには、北朝鮮が日本に近づかなければならないという必要を
作らなければならない。過去2回あったのにそれを生かしきれなかった。日本側
が被害者を絶対助け出すという姿勢が政府になかったからです。

◆3度目のチャンスが来る

 しかし、3度目のチャンスが来るとずっと言ってきたわけです。北朝鮮は今経
済的に大変苦しくなってきています。「最近の北朝鮮情勢」の所にも書いてあり
ますが、北朝鮮の経済は90年代半ばで破綻したのです。人口の15%が餓死しまし
た。人口の80%に当たる一般住民は、90年代半ば以降、配給をもらっていません。

 しかし、餓死は止まりました。どうしてかというと、闇市でみんな食べている。
本来、社会主義国家は、主食は配給制であり、そして職業は党が決める。計画経
済です。闇市は党が決める職業に入っていない。誰がやっているかというと、家
庭の主婦、おばさんたちがやっています。お父さんは工場など職場に出勤しなけ
ればならない。最近は、賄賂を払うと出勤しなくていい。そして闇市で商売をす
る。主婦はもともと出勤する場所がない。山の奥に入って、斜面でトウモロコシ
を作ったり、売ったりする。党や軍の幹部の親戚から援助物資をもらって横流し
する。日本から送られてきたお金で、中国から食糧を買ったり、中国から送られ
てきた食糧を売って食べている。あるいは泥棒、売春、そういうことでしか食べ
られないんです。

 人口の15%が死んだ後、残りの85%の内、20%の権力層を除く残りの人たちは、
こうやって食べています。一方、上の20%の人たちは未だに配給がある。金正日
はどうかというと、(元金正日の)料理人の本を読めば分かりますが、人口の15
%、300万人が死んでいた時に、トロやメロンを食べていたのです。三越の草餅
がいいというと、三越まで買いに来て食べていました。水上スキーで遊んでいた。
写真が残っています。20%と80%は全然別の世界です。

 我々が今かけるべきだと言っている制裁は、20%の人たちの配給、彼らの用語
では供給ですが、供給ができなくなるようにすべきだということです。その供給
の財源は、80年代から90年代は、朝鮮総連からの送金でした。最高時で年間1800~
2000億円が北朝鮮に送金されていました。これは内閣調査室が調査した金額です。
バブル崩壊後はそれが少なくなった。そして朝銀信用組合が破綻して、公的資金
が入るということがありました。

 そして90年代半ば以降、日本からの送金がなくなって苦しくなったのですが、
今度は韓国に金大中政権、盧武鉉政権という親北政権が1998年から2007年まで10
年間続いた。李明博政権の調べでは、10年間に70億ドル送金された。それ以外に
非公式のものもありますので、合計100億ドルと推計されている。年10億ドルく
らいであった。日本からの最高年20億ドルはなくなったけれども、年間10億ドル
くらいの物と金が98年から10年間送られた。

 それ以外の財源は、麻薬です。警察白書にも書いてありますが、2000年代半ば
まで、日本で流通していた覚醒剤の半分以上は北朝鮮製だった。質がいいのだそ
うです。山小屋みたいなところでつくるのではなく、国家が工場で作っているか
らです。

 しかし、日本に運ぶためには船で来なければならない。今、工作船の監視を厳
しくしています。アメリカの人工衛星の情報が日本に来るようになった。奄美沖
で覚醒剤を積んできた船が沈没させられたのが2001年です。急速に日本国内で北
朝鮮製の覚醒剤の流通が減りました。そして今、北朝鮮の中で、覚醒剤がたくさ
ん流通しています。売るところが段々なくなってきて、国内で売っているんです。
その分外貨が減ってきていることは間違いない。中国も、北が覚醒剤を国内で売
ることは厳しく取り締まっている。死刑になっている人もいます。

 もう一つは武器輸出です。特に核兵器やミサイル。シリアに核技術を売ったの
で、イスラエルがそれを攻撃しました。今、イランとミャンマーに核技術を売っ
ているという疑惑が出ています。ミサイルについては、イランに売っていること
が証明されています。それらについても、船で運ぶ場合には、今、大量破壊兵器
の拡散を防ぐという国際行動計画があって、北朝鮮の貨物船はアメリカに臨検さ
れて、ミサイルの部品があったら没収されるということが続いています。PSIと
言います。

 もちろん(密売が)ゼロにはなっていません。特に中国が、空輸によるミサイ
ルの輸出を黙認していることもあって、ゼロにはなっていませんが、武器輸出も
減っています。その上、韓国からの支援も、李明博政権になってからかなり止まっ
た。大変苦しいんです。

 そして日本に接近すれば過去の清算資金がもらえる。あるいは朝鮮総連に対す
る制裁が解ければ、日本から部品や送金が来る。目の前に餌がぶらさがっている
わけです。

 しかし、そのことに対して我々は、条件を絶対に降ろさない。それは全被害者
の救出です。日本からの物や金がほしいのであれば、全被害者の帰国が条件です
よということを彼らに分からせることができるか。だから、先ほども言いました
が、「全被害者が帰らない限り、制裁を強め支援はしない」という姿勢を日本政
府が堅持することが前提です。

 2002年9月の時のように、「北朝鮮が拉致した人は13人だけ、8人は死んだ」と
いうシナリオでも日本からお金が来る可能性があると彼らが思っている間は、真
の交渉はできません。これは我慢比べのようですが、しかし彼らがほしいものを
我々が持っているという条件がある以上、こちらが交渉のための交渉で、「2、3
人返してくれればいいですよ」と言ってはならないのです。

 もちろん2、3人返してくれたことがスターとならいいんです。全員いっぺんに
とは言いませんが、2、3人返してくればそれで終わりということは絶対に認めら
れないということを強調しておきます。「全被害者が帰らない限り、制裁を強め
支援はしない」という姿勢、今はそういう姿勢ですが、その姿勢を堅持すること
ができるかどうか。それを堅持する条件のもとで北朝鮮側から話合いがしたいと
いう申し出がくれば真の交渉になると思います。

 そういう点で私は、平沼先生が交渉に立ってくださるというのは大変ありがた
いことだと思います。それはどういう意味かというと、北朝鮮が家族会、救う会
や拉致議連等の一番厳しい人と交渉しない限り日本国民は納得しないんだという
ことが分かるということです。平沼さんを北側が窓口に選ぶということは、そう
いうことです。

 田中均さん(元アジア大洋州局長)のように、北朝鮮が拉致被害者の消息さえ
出してくれればいい、被害者は一時帰国で北朝鮮に戻してもいい、死亡の根拠を
出さなくてもいいとか、事前に家族の調査もしないで助けようという意思がない
人と交渉するのは、彼らには楽なんですが、それで北朝鮮から見てもお金を取る
ことに失敗したわけです。世論は納得しなかったのです。

 彼らは拉致を認めたのに身代金はもらえなかった人質犯なわけです。もらえな
かった理由は何か。日本は民主国家で、国民が怒っている間はだめなんだという
こと、この問題に対する国民の怒りを代表する政治家と交渉しない限り、いくら
時の総理大臣がサインしてもだめなんだということです。

 そういう点で私たちは平沼先生に100%信頼を置いています。平沼先生はやみ
くもに、私が行くから会ってくれということを言っているわけではありません。
私は交渉の窓口になる用意はある。しかし、その交渉の窓口というのは、全被害
者を返すという交渉だと。それを向こうが呑むかどうか。そのためにも、「全被
害者が帰らない限り、制裁を強め支援はしない」という姿勢が堅持されて、国際
連携と制裁の圧力で北朝鮮を交渉の場に出すという今の政策が続くことが必要だ
ということです。

◆交渉相手がいなくなるかもしれない混乱事態の想定を

 もう一つ、ここでも言いましたが、交渉による救出の方が、安全に取戻せるか
らいいんですが、交渉相手がいなくなるかもしれない。金正日が突然死んでも、
次の政権が安定的に継承すればいいわけですし、その可能性もゼロではないと思
いますが、しかしそうではなく混乱が起きる可能性もあります。その可能性の方
が高いのではないかと私は思っていますが、どちらにしても未来のことで100%
断定はできませんが、混乱が起きる可能性があり、交渉相手がいなくなってしま
う。その場合には、被害者に危険が及ぶ可能性がある。

 混乱時には、韓国軍と米軍が北進し、北朝鮮を吸収統一する作戦計画があるわ
けで、その中で被害者をどう助けるのかということを、自衛隊の使用も含めて準
備しておかなければならない。

 そういう点で、今回、韓国と中国の首脳が日本に来た時に、拉致問題での協力
を求めたというのは大変不十分で、「混乱事態において被害者を救出することは
日本として絶対譲歩できないことだ。そのことについて協力してほしい」という
具体的な言及がなされるべきです。もちろんオープンにしなくていいですが、そ
ういう言及があったのかどうか。

 菅総理は12月に、「自衛隊を使って助けなければならないことが起きるかもし
れない。しかし韓国を通って自衛隊を送るにはまだ取り決めができていない。韓
国とそのことを話し合わなければならない」と言ったんです。韓国と話し合う機
会が今回あったんです。そのことに言及されたのかどうか、きちんと聞きたいと
思っています。

 つまり、今の厳しい状況の中で、交渉による解決にもっていくということを主
としながら、いつ混乱が起きるか分からないのでその準備も日本としてしておく
ということが、運動方針の救出方法です。

 北朝鮮では、上の20%の人たちに今物資を与えることができないくらい苦しく
なってきています。上の20%の中の下層の人、2%か5%か分かりませんが、ある
程度飢えてきています。平壌市民は上の20%に入っていたんですが、平壌市を狭
めました。南側を平壌市から外したのです。配給できなくなったからです。

 それから今年2月、軍隊が動員されてウランを掘っていたのですが、ウラン鉱
山の兵士たちの食糧が来なくて、栄養失調になって倒れて作業ができなくなった。
最近の話では、軍の部隊から脱走が続いている。これは政治的な理由ではなく、
お腹がすいているからです。軍隊の兵士たちには優先的に食糧が来るのですが、
その優先的に来たものを、中隊長とか大隊長が家族のために横流しする。全体と
して量が足りなくなって軍人の飢えが深刻化し始めているということです。

 次に私が注目しているのは政治警察、すなわち国家安全保衛部の動向です。保
衛部が機能しなくなったら独裁体制は倒れます。実は96年、97年くらいは、保衛
部の幹部の亡命がありました。中朝国境で脱北者狩りをしていた人が逃げてきた。
あるいは保衛部の密偵といいますが、保衛部の手先になって監視をしていた人間
がかなり逃げてきています。密偵だった人の手記が読めるようになったのも90年
代後半です。

 ところが国際社会の援助が入ったために、保衛部の動揺が止まってしまった。
保衛部を維持するためには、上の20%の人たちのためのお金が必要です。それが
維持できなくなる時が独裁体制の終わりです。金正日政権としては、絶対それを
防がなければならない。しかし、各保衛部から上がってくる反体制の動きは、金
正日のところにだけ入ってきます。それを24時間見ることができない健康状態に
なった。軍の幹部、保衛部の幹部、一般警察の幹部、党の幹部の動静も全部彼の
ところだけに入ってきます。他の人間に見せないようになっているのですが、で
はそれを金正恩に見せるのか、20代の若者に国中の監視をして、怪しい人間を収
容所に入れたり、処刑したりさせるのか、それができるのか。大変不安定になっ
てきていると思います。

 そういう中で日本は、お金を出すと可能性があると北朝鮮からは見えている。
民主党政権になって日本に様々な働きかけがあったようですが、鳩山政権から菅
政権になり、今菅政権もいつまで続くか、つまり誰と交渉したらいいのか向こう
が分からなくなってきているということはあると思います。

 だからこそ、世論を代表する人物と交渉しなさいというのが我々が出したメッ
セージです。向こうも日本に接近したいと思っているフシはありました。特に民
主党政権になってから。今にらみ合いが続いているけれども、向こうが苦しくなっ
てきていることは間違いない。ただ、もう一回韓国に接近するということはあり
ます。李明博政権に接近しようとして、南北首脳会談の準備を何回もしていたの
ですが、その一方で天安艦爆沈、延坪島砲撃ということがありつぶれてきたとい
うことです。

 ではなぜ、李明博政権に接近しながら軍事緊張を高めたのかということについ
ては、様々な説があります。北朝鮮の中が割れているんじゃないかという説、韓
国から取るものを吊り上げようとしているという2つの説です。まだ分かりませ
ん。そういう点でも、北朝鮮の内部が非常に微妙な段階です。

 こういう中で、家族会・救う会としては、まず第1に世論を高めるのが我々の
運動の戦略だということです。今日来てくださった皆さんや、地震の中でも日比
谷公会堂に1300人の方が来て下さったことに非常に感謝しています。

 今年は、「生きているのになぜ助けられない!」というスローガンを掲げてい
きたいと思います。飯塚さんがおっしゃったように、拉致被害者ががれきの下で
声を挙げているように見えると、同じことなんだと。

◆政府は北朝鮮に調査のやり直しを迫れ

 こちらのちらしは6月の全国一斉行動のために作ったのですが、北朝鮮は3年前
に一度拉致問題で譲歩してきました。福田政権の末期に、「拉致問題は解決済み」
という彼らの態度を改めて、「被害者を送り返すための調査のやり直しをする」
と言ったのです。その時彼らが要求したのは、米やお金ではなく制裁を緩めてく
れということでした。万景峰号を新潟に入れてくれ、朝鮮総連の幹部が北朝鮮に
自由にいけるようにしてくれ、チャーター便を許可してくれという要求でした。
万景峰号は絶対だめだと言って、だめになったのに、それでも調査のやり直しを
すると言ったのです。それが8月12日です。

 平成20年8月12日の日朝実務者協議について、対策本部から我々のところに来
た報告のペーパーをみなさんにお配りしました。8月13日付けのもので、「12日
に瀋陽で日朝実務者協議があった。最も大事な問題である再調査について合意し
た」と書いてある。

 そして、「北朝鮮が、拉致問題の解決に向けた具体的行動をとるため、すなわ
ち生存者を発見し帰国させるための、拉致被害者に関する全面的な調査を行うこ
とで合意し、すべての拉致被害者が対象」となっています。そして、「北朝鮮側
は、権限が与えられた調査委員会を立上げ、調査を迅速に行い、可能な限り今年
の秋までに調査を終了すること」とあります。秋までに調査すると言ったのです。

 さらに、「調査の進捗過程について日本側に随時通報」する。最後に、「日本
側が関係者との面談、関係資料の共有、関係場所への訪問などを通じて調査結果
を直接確認できるよう協力する」と。我々は、共同調査は絶対反対と言いました。
北朝鮮が調査し、それを我々が検証すると。

 一応その枠組みができている。かなりいいところにまでいった合意だったので
す。しかしその代わり、人的往来とチャーター便規制の緩和を行うと日本側も譲
歩した。この譲歩についても様々な議論があったことは事実ですが、また北朝鮮
が本当に全員を返そうとしていたのか、そこまで3年前苦しかったのかについて
はよく分かりません。何を彼らは狙っていたのか。もしかしたらもう1回偽の遺
骨でも出してくるのではないかと大変緊張していましたが、動きがあったことは
間違いない。

 ところが9月の初めに突然、「福田総理が辞任の公表を命じたので、この合意
は守ることができなくなった」と北朝鮮が発表しました。総理大臣と関係のない
ことです。金正日が倒れたために新たな戦略的なことがすべて中止になったのか。
特に、9月9日に大々的に建国記念日の準備をしており、その時朝鮮総連の幹部を
日本から飛行機に乗せて呼ぼうとしていたのです。だから朝鮮総連の自由往来と
チャーター便が必要だったのです。その必要性が金正日が倒れたためになくなっ
た。

 そこで、9月9日まで引っ張って、朝鮮総連の幹部だけ朝鮮に入れてからもう1
回調査のやり直しをやったという作戦だったのか分かりませんが、とにかく彼ら
が一度約束したんですから、日本政府はこれの実行を強く求める責任がある、す
べての手段を使って実行を求めるべきだ。菅政権も実行を求めると言っているわ
けです。

 私たちもこのちらしに書いてあるように、実行を求めるべきだと。そして「石
の上にも3年」という言葉があります。3年経っても実行しないなら、何らかの措
置をとってほしい。こちらから期限をつけて、北朝鮮に対して、「約束を守りな
さい。そうしないならば追加の制裁をしますよ」と言って、北朝鮮に対し、期限
を切って迫ってほしいと。これは国民大集会で、飯塚さんなどが「期限を切るべ
きだ」とおっしゃったことが運動方針となったものです。

◆9月の時点で北朝鮮が対応せず、政府が何もしなければ、より強い行動も

 我々にも我慢の限界がある。一度ここまで約束をしたのだから、日本政府は、
政府の責任でこの約束を守らせるべきです。守らないなら追加制裁。北朝鮮は在
日朝鮮人が自由に行けるようにしてくれと言ったのだから、幹部だけでなくもっ
と多くの在日朝鮮人が行けないようにすべきです。すべての在日朝鮮人の北朝鮮
を渡航目的とする再入国許可を不許可にすることはできるわけです。

 すべての送金を停止することも現行法規でできます。それをやってほしいとい
うことをアピールしようと思います。我々の方で期限を切って、世論を盛り上げ
ようということを運動方針として決めました。そのために6月5日にデモ行進をし
ますし、6月前半を全国一斉行動としてこのちらしを撒いて、北朝鮮はこんな約
束をしていたんだとアピールします。北朝鮮は制裁を緩めてくれとここまで譲歩
してきたんです。制裁は効くんです。もっと強くすればこの約束の時点に戻る可
能性はあります。

 とにかく政府は、この約束を守らせる責任がある。日本国民は怒っていると、
約束を守れと声をあげて、政府にアプローチをすることを9月までしていきたい
と思います。9月の時点でも北朝鮮が約束を守っていない、それなのに政府は何
もしないのであれば、集会やデモ行進以上の強い行動も考えざるをえないと家族
会・救う会の合同会議でも確認しました。

 以上が私の報告です。

■救う会全国協議会ニュース

発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905

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1 コメント

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精神科医 (宮地 達夫)
2011-07-28 18:49:55
救う会の方針と活動には異論があります
拉致が明らかになり、横田めぐみさんの遺骨鑑定を2カ所で行った際、2カ所のうちで、1カ所の鑑定結果だけを採用しましたが、これにはサインがなく、natureでもその信憑性を疑っています。その後、自民党の右派議員と結びつき、一連の活動をされているようですが、そもそも、大戦中、何万人もの朝鮮人を「拉致」しながら、それに対する謝罪は全く瀬宇は全くせず、北朝鮮を悪の権化みたいにえがく
 これはどうみても公正ではない。下は南スーダンの独立ついついてコメントしたときに書いた朝鮮戦争の簡単な歴史です 朝鮮の分離独立については歴史的経緯があります。
第二次世界大戦終了後朝鮮では独立戦争が起き
アメリカは、これを抑圧すべく、日本では軍隊を解体したのに朝鮮に駐留していた日本部隊には、継続して独立派と戦うように指示しました。それがやがて1950年の朝鮮戦争に通dき、アメリカ軍を主体とする国連軍が介入、それに対して中国が介入して一時休戦になり、今に至っており
法的にはまだ戦争状態です。ですから国連が弾三者というのもおかしな事でです。戦争の当事者だったわけで
元々、朝鮮統一の独立内戦を抑圧するためだった。
 だからこれを解決する事ができるのは、内戦の非当事者、例えばスイス、のるウエイ位しかないでしょう、その前にアメリカが、戦争責任を謝罪することが当然の前提ですが
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