九州電力の委託で「やらせメール」問題を調べる第三者委員会（委員長＝郷原信郎弁護士）は２０日、玄海原発（佐賀県）の運転再開を巡り、５月にインターネット中継された佐賀県向けの国の説明会で、県が九電にやらせ投稿を求めていたことを明らかにした。６月に放送された国の説明番組と併せ、九電のやらせに対する県の関与を認定した。
第三者委は、５月１７日に中継された国の説明会について九電社員が７月上旬に作った「厳秘」の社内メモを入手。メモには、佐賀県側から「中継しているユーストリームへの書き込みが反対派からのものばかりなので、賛成意見も書き込むように」との協力要請があったと記されていた。
中継中、九電本店の原発部門幹部が「今しがた（古川康・佐賀県知事の）事務所より『書き込みが反対派ばかりなので、九電も書き込みを行うように』との指示があった。本店でも手を尽くしているが、発電所や協力会社にも協力をお願いする」とのメールを社内に送信していた。中継には社内から再開賛成意見が約１０件書き込まれ、画面上に表示されたという。
第三者委は８日の中間報告でも、県幹部が「書き込みもしてほしい」と九電に求めたと指摘したが、知事や、その県幹部は「事実と違う」と反論。九電も、県側からの投稿要請はなかった、と否定していた。
６月の番組に九電社員らが再開賛成メールを投稿した問題では、事前に九電幹部と懇談した知事の発言が発端だと改めて認定。「（懇談後に九電幹部が作った）知事の真意とは異なる発言メモが発端」とする九電や知事の主張を退けた。
記者会見した郷原委員長は「中間報告で認定した事実は、より確かなものになった」と事実認定に自信を見せた。最終報告も、これをもとに３０日にまとめる見通しで、九電と県が一体となって原発を推進してきた姿が浮き彫りになった。焦点は、関与を否定し続けてきた県が独自調査に踏み切るかどうかに移る。（多田敏男、斎藤徹）
◇
〈古川康・佐賀県知事の話〉 （５月の国の説明会で、県が九電にやらせ投稿を求めた）事実はない。（調査報告書で指摘された）県幹部にも、（私の）事務所にも確認したが、「ない」と言っており、私もそう理解している。（知事発言がやらせメールの）発端となったかどうかは、九電側の受け止め。私が政治的に責任を取らなければならないことではない。
■崩れた県の反論
「九電も書き込みを」。九電第三者委員会は２０日、佐賀県の古川康知事側が九電に「やらせ」を求めたとする新たな証拠を突きつけた。知事は「政治責任はない」と繰り返すが、第三者委の結論は重い。詳細な説明を避けてきた知事の対応が、厳しく問われることになる。
「中間報告の見解に誤りはないと判断している」。東京都内での第三者委の会合後、記者会見した郷原信郎委員長は自信を見せた。
第三者委が８日に公表した中間報告に、佐賀県側は「事実と異なる」と猛反発した。論点の一つは、５月１７日にインターネット中継された国の原発説明会だ。中間報告では、県幹部が九電側に「知事の強い希望」として九電による質問・意見投稿を求めたとされた。県側は「県民の視聴や書き込みを求めたもので、九電に書き込みを求めたものではない」と反論した。
これに第三者委は新証拠を示した。真部利応社長の指示で九電幹部が作った「厳秘」のメモだ。「５／１７対応の事実関係について」と題され、こう記されていた。「県側から『ネット中継への書き込みが反対派ばかりなので、賛成意見も書き込むように』との協力要請があった」。そのうえで、県側の反論は「到底、合理性を認めることはできない」と結論づけた。
一方、玄海原発の運転再開に関する国のテレビ番組（６月２６日）について、九電の主張を崩す調査結果も公表した。九電は当時の副社長や原子力発電本部管理部長らが、社員に原発再開賛成の意見投稿を求めたとの第三者委の見解に対し、「番組の周知をしただけ」などと反論していた。
だが、第三者委の調査では、番組の５日前に知事と会った副社長は、同部長に「知事の所に行った。番組を盛り上げるように賛成意見がないといかん」と指示していた。さらに同部長は「再開容認の立場からネットを通じて意見を出してほしい」との知事発言メモを部下に示し「周知しろ。こういう要望が出ているので」と言ったという。
郷原氏と共に会見した第三者委の岡本浩一・東洋英和女学院大教授は、九電の姿勢について「あちこちをかばおうとしたのでは」と話し、原発を推進してきた知事らを擁護しようとしたとの見方を示した。（斎藤徹、河村能宏）
＊２０１１.９．２１朝刊
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中継中、九電本店の原発部門幹部が「今しがた（古川康・佐賀県知事の）事務所より『書き込みが反対派ばかりなので、九電も書き込みを行うように』との指示があった。本店でも手を尽くしているが、発電所や協力会社にも協力をお願いする」とのメールを社内に送信していた。中継には社内から再開賛成意見が約１０件書き込まれ、画面上に表示されたという。
第三者委は８日の中間報告でも、県幹部が「書き込みもしてほしい」と九電に求めたと指摘したが、知事や、その県幹部は「事実と違う」と反論。九電も、県側からの投稿要請はなかった、と否定していた。
６月の番組に九電社員らが再開賛成メールを投稿した問題では、事前に九電幹部と懇談した知事の発言が発端だと改めて認定。「（懇談後に九電幹部が作った）知事の真意とは異なる発言メモが発端」とする九電や知事の主張を退けた。
記者会見した郷原委員長は「中間報告で認定した事実は、より確かなものになった」と事実認定に自信を見せた。最終報告も、これをもとに３０日にまとめる見通しで、九電と県が一体となって原発を推進してきた姿が浮き彫りになった。焦点は、関与を否定し続けてきた県が独自調査に踏み切るかどうかに移る。（多田敏男、斎藤徹）
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〈古川康・佐賀県知事の話〉 （５月の国の説明会で、県が九電にやらせ投稿を求めた）事実はない。（調査報告書で指摘された）県幹部にも、（私の）事務所にも確認したが、「ない」と言っており、私もそう理解している。（知事発言がやらせメールの）発端となったかどうかは、九電側の受け止め。私が政治的に責任を取らなければならないことではない。
■崩れた県の反論
「九電も書き込みを」。九電第三者委員会は２０日、佐賀県の古川康知事側が九電に「やらせ」を求めたとする新たな証拠を突きつけた。知事は「政治責任はない」と繰り返すが、第三者委の結論は重い。詳細な説明を避けてきた知事の対応が、厳しく問われることになる。
「中間報告の見解に誤りはないと判断している」。東京都内での第三者委の会合後、記者会見した郷原信郎委員長は自信を見せた。
第三者委が８日に公表した中間報告に、佐賀県側は「事実と異なる」と猛反発した。論点の一つは、５月１７日にインターネット中継された国の原発説明会だ。中間報告では、県幹部が九電側に「知事の強い希望」として九電による質問・意見投稿を求めたとされた。県側は「県民の視聴や書き込みを求めたもので、九電に書き込みを求めたものではない」と反論した。
これに第三者委は新証拠を示した。真部利応社長の指示で九電幹部が作った「厳秘」のメモだ。「５／１７対応の事実関係について」と題され、こう記されていた。「県側から『ネット中継への書き込みが反対派ばかりなので、賛成意見も書き込むように』との協力要請があった」。そのうえで、県側の反論は「到底、合理性を認めることはできない」と結論づけた。
一方、玄海原発の運転再開に関する国のテレビ番組（６月２６日）について、九電の主張を崩す調査結果も公表した。九電は当時の副社長や原子力発電本部管理部長らが、社員に原発再開賛成の意見投稿を求めたとの第三者委の見解に対し、「番組の周知をしただけ」などと反論していた。
だが、第三者委の調査では、番組の５日前に知事と会った副社長は、同部長に「知事の所に行った。番組を盛り上げるように賛成意見がないといかん」と指示していた。さらに同部長は「再開容認の立場からネットを通じて意見を出してほしい」との知事発言メモを部下に示し「周知しろ。こういう要望が出ているので」と言ったという。
郷原氏と共に会見した第三者委の岡本浩一・東洋英和女学院大教授は、九電の姿勢について「あちこちをかばおうとしたのでは」と話し、原発を推進してきた知事らを擁護しようとしたとの見方を示した。（斎藤徹、河村能宏）
＊２０１１.９．２１朝刊
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