イラク・イスラム党の憲法容認は織り込み済みとバース党/アラビア・ニュース

2005-10-13 20:10:52 | イラク
イラク傀儡政権に参加しているスンナ派最大政党である「イラク・イスラム党」は、これまで憲法の草案に反対してきた姿勢を突如擲(なげう)ち賛成に回ると表明した。これに対して、イラク・バース党はこのほど発表した声明文で、「イスラム党という傀儡政党は、占領軍による占領の結果出来た政党で、憲法を何が何でも承認させるという米国の計画にタイミングを合わせて行動をしている」と痛罵した。それもそのはず、「米国・イラク調整委員会の手書き極秘文書が漏洩」と題した、イスラム党の本質を白日の下に晒した手書きの極秘文書が7月2日付の著名なニュース・サイトのバスラ・ネットで写真付きで報じられているので紹介しよう。
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極秘

イラク政治・治安

 2005年6月26日調整最高委員会は会合し、報道、政治、治安各委員会から同委員会に持ち込まれた勧告を協議、以下の最重要方針を確認した。残りの方針は、それぞれに付記された本委員会の見解に基づき更に深く再検討するために各委員会に返送した。

1- イラク・イスラム党がスンナ派アラブ人の積極的な政治参加とテロ行為の放棄に向けて支援したことと共に、彼らが政治的に敗北したことを強調し続ける。その原因は、彼らが選挙に、従って政治活動にも加わろうとしなかったことである。衛星テレビ局はこの点に重点を置いて放映する。

2- テロリストの前線部隊を粉砕することの重要性は今まで通り言及し続けながら、一部の武装勢力の一団と米国側との交渉が持たれたことの意味と、彼ら、特にサダム(フセイン元大統領)の支持者たちに対して、その他の諸グループが独自に合同する形態をとったこととを関連付けることの必要性、並びに「崇高な抵抗勢力」とはテロであると強調し続ける。
 サダム支持者たちをテロリストから引き離すことで孤立させるか、現段階では少なくとも中立化させるという最終目標に到達するまでは、米国は今後も政治的役割を演じる重要なカードを持ち続けるとの印象をサダム支持者たちに与え続けなければならない。

3- スンナ派アラブ人の有力者、部族長、宗教家に向けて、それ無しには治安安定は実現しない政治参加と暴力終結の必要性を説得するための工作の活発化させる。ヤーウェル(前大統領)氏と「対話戦線」、ハジム・ハサニー氏(イラク・イスラム党のメンバーで、米国籍を保持しイラク占領後帰国したイラク国会議長)をこの方向で支持する。但しそれが、彼らとムクタダ・サドル(シーア派の強硬派反米指導者)やジャワード・ハーリシー(シーア派反米指導者で、宗派や民族を超えた反占領統合組織のイラク愛国国民会議代表)との相互接近や連携、或は部族や旧バース党との紐帯強化に結びつくことは阻止しなければならない。

4- 政府の治安回復努力を支援するため、テロリストのイメージを毀損し彼らへの支持を断ち切ることになる特殊活動を継続すると共に 拉致活動を中止する。除去作戦はテロリストと対決する基本的な柱ではあり続けるが、アーミリーヤやニュー・バグダード、シャーラ、給水施設(いずれも爆破事件が起きた場所)での作戦で生じた否定的な要素も考慮に入れること。

5- 飛行士や部族長、宗教家、大学教授、医師、政治家の除去作戦は認可しない。必要欠くべからざる理由がある場合は、それぞれ個別の事前承認を必要とする。

6- 「稲妻作戦」(米軍とイラク軍によるスンナ派諸都市への大規模一斉無差別攻撃)を、テロリストとその支持者たちに恐怖と恐慌状態を植付けることや、住宅や地域への一斉急襲強制捜索作戦での逮捕者への尋問を通じて、テロ支援活動歴があるとされた者たちの除去に利用する。但し、その手段や方法には説得力ある口実が無くてはならない。

7- 集団墓地やハラブチャ(イラク北部のクルド人都市)の爆撃やサダムに反抗したバース党員の処刑、隣接諸国の治安を脅威に晒したこと、サドル一派やその他宗教家の処刑、形式だけの短期裁判実施、公務員の給料低下、石油と食糧交換プログラムでの不正、憲法に違反する決定を下したことを強調し続けると共に、サダム・フセインを戦場離脱の罪状で送検するよう要請する。

8- 新イラク建設に際し少数民族や宗派の役割を強調すると共に、民族文化を否定し、そのいかなる価値や理想をも排斥し続ける。それには現在のアラブ・イスラム諸国へのイスラムの侵略に先行する古代民族文化の復活が不可欠である。

9- イラクでのテロを背信行為と糾弾するようサウジアラビアやシリア、エジプト、レバノン、アラブ首長国連邦、アフガニスタン、その他のイスラム諸国への働きかけを拡大する。またイランやシリア、ヨルダン、サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、イエメン、リビア、レバノン、アフガニスタン、ロシア、フランス、パキスタンの各国で、それぞれの諜報機関が新たな展望に立って諜報活動行うようにする。一方米国側は、テロ支援者、資金提供者、普及者を引き渡し、衛星テレビ局がテロへの支援とその思想の普及を禁止するように、他国に圧力を掛ける。

10- 事前に合意したスンナ派有力者との新聞やテレビでの対談を密に実施する。特にファフリー・カイシー博士やイサーム・ラーウィー、ムハンマド・ドレイミーは皆サダム・フセインの教義とバース党の教義が風靡する時代を過ごし、他のグループとも親交があるので重視する。
 従って、スンナ派全般、特にテロリストへの同情者に吹き込むために、彼らは自分たちの話を広め、バース党に対する敵愾心を駆り立てることになる。他方、,ミサール・アルーシー(チャラビの子分)やインティファード・カンベル、ターリク・マームーリーのような議論の的となり辛辣な話者が対談相手となるようにする。
 対談では分派主義や政治への参加、あらゆる形態の暴力の否定、バース党員の罪人視、イスラム法学者機構の姿勢に疑念を抱かせること、スンナ派に正当な代表が欠如していること、選挙こそが正当な代表を決定しそれ無くしてはいかなる集団も真の代表が存在すると認められない点を強調する。

 次回の集会は2005年7月3日に、同じ場所と同じ時間に行われる。
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5ページにわたる手書き原文の写真 http://www.albasrah.net/ar_articles_2005/0705/katib_010705.htm

文書を掲載したバスラ・ネットの解説:
 この文書の提供者は、イラク・イスラム党の関係者から入手したという。
 この会合は、イスラム党を含む、占領当局と交渉のある全ての売国勢力や機関が参加する、米国とイラクの政治・治安調整機関である。
 これらの文書には、重大な内容の付属文書があるので、入手次第公開する。
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同文書を転載したイラク・パトロールの解説:
 サダムが占領軍との戦いで戦場を離脱したというのは、これまでの全ての罪状が虚偽であることが明らかになったので、最後にひねり出した罪状である。米軍最高司令官のブッシュ大統領が、最近ホワイトハウス上空を小型飛行機が飛んだ折、シェルターに逃げ込んだことを我々は覚えているが、サダムが戦場離脱したという話は聞いていない。
 公務員の給料低下は、サダムのせいではなく、経済封鎖とそれに伴うイラク・ッディナールの対ドル交換レートの低下によるものである。封鎖前は給料が千ディナールの職員は貯金も旅行も出来た。封鎖前は1ディナールが3ドル半であったが、封鎖後は1ドルが3千ディナールになった。
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同文書が漏洩したことで、イラク・イスラム党は相当な衝撃を受けた模様である。漏洩したことで方針が多少変更されることはあっても、大筋では米国の方針とその指令に基づいてイラクの関係各部署が実行していることが明瞭に読み取れる。

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【参考記事】
□スンニ派主勢力、イラク・イスラム党が憲法反対を撤回へ [アルジャジーラ]


 http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1436092/detail

【アルジャジーラ特約12日】イラク・スンニ派信徒の主要政治勢力の一つである「イラク・イスラム党」は、対抗する政治勢力から一定の譲歩を確保した後、今週から始まる国民投票で憲法草案を支持する態度を決定した。同党筋が12日、明らかにした。

 同筋は国内多数派であるシーア派とクルド人の代表たちと終日、会談した後、「われわれの要求の幾つかが受け入れられたので、党としては憲法を承認し、人々に賛成の投票をするよう促していく」と語った。

 同筋はまた、正式な発表は12日、タラバーニ大統領の公邸で行われるだろうと述べた。 党の姿勢についてテレビ番組で確認を求められた同党書記長は、同筋よりやや慎重で、党として要求している変更が法的に確認できるば、憲法草案に対する反対をやめることになるだろうという言い方だった。

 複数の消息筋によると、イラク政府の交渉担当者は国内少数派のスンニ派が出していた、12月の総選挙後4カ月目に憲法の修正について国民議会で見直しをするという主要求について合意した。

 大統領スポークスマンはこの点について、15日に国民投票に掛けられる憲法草案のどの条項が見直しの対象となるのかを明確にするための話し合いが続いており、12日に公式発表があるだろうと述べた。

 イラク・イスラム党のアヤド・アルサマライエ(訳注アヤード・サマライのこと)氏は、もし現在の議会がこの方式を認めるなら、「憲法を拒否するキャンペーンを中止し、スンニ派のアラブ住民に賛成の投票をするよう呼び掛ける」と語った。

 スンニ派に属するフサイン・シャハリスターニ国会副議長は、スンニ派アラブ住民は、ほとんどが今年1月の選挙をボイコットし、その結果、国会での憲法問題での折衝で影響力を失ったが、12月15日に予定される総選挙では大挙して投票するだろうと語った。「このところの討議は大体において有意義であった・・・現時点では、スンニ派は修正点について学習し、討議することができるのだから」と同副議長は語った。

 米国外交官は、スンニ派が過去2年間にわたってイラクを荒廃させた暴力に傾かないように、両勢力が合意に達するよう懸命な作業を行ってきた。

 モスリム学識者協会(訳注:イスラム法学者機構のこと)のシェイク・ハリト・アルダリ(訳注::ハーリス・ダーリーのこと)事務局長は、アラブ連盟使節団との会談の後、スンニ派側の条件として外国軍隊の撤退日程,テロの定義とイラク抵抗勢力の認容,イラク軍の復権などを挙げている。(翻訳・ベリタ通信=日比野 孟)

【アラビア・ニュース】  齊藤力二朗  会員以外の転載希望者は個メールで受付
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