名護市長に島袋氏・民意踏まえ「普天間」に道筋を。日米政府に翻弄されるな/琉球新報

2006-01-23 21:09:31 | 沖縄
米軍普天間飛行場の移設受け入れの是非と、経済振興の在り方などが問われた名護市長選は、政府との移設協議に柔軟姿勢の無所属新人・島袋吉和氏が、移設に絶対反対の我喜屋宗弘氏と大城敬人氏を破り、初当選した。
 島袋氏は、在日米軍再編で日米両政府が中間合意した宜野湾市の普天間飛行場を名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部へ移設する計画について、修正されれば協議に応じる考えを示している。名護市民は、経済振興のための政府予算がより期待できる「柔軟路線」を選択したといえよう。
 新市長には民意を踏まえ、普天間問題の解決に道筋を付けると同時に、市の経済が活性化するよう手腕の発揮を期待したい。

経済振興への期待

 岸本建男市長の後継として出馬した島袋氏は、本島北部の振興策の継続と発展を訴え、地元経済界や保守層をまとめた。小池百合子沖縄担当相や稲嶺恵一知事の応援も受け、政府や県とのパイプの太さをアピール。選挙戦では基地問題より経済振興を前面に出す戦術に徹した。
 選挙結果に、戦術が奏功したことがうかがえる。3月に再編協議の最終合意を取りまとめたい政府はこの結果に意を強くし、地元説得の動きを強めてくるだろう。
 ただ、この10年の経緯を見ても分かるように、普天間移設問題の解決は容易ではない。4年前の前回市長選では、辺野古沖への移設受け入れを表明した岸本市長が再選を果たし、移設作業は加速するとの見方が広がった。
 ところが実際には、騒音など住民地域への影響に、希少種のジュゴン保護など海域の環境問題も絡んで反対運動が根強く、結局は、日米政府が辺野古沖案の断念に追い込まれている。
 移設先変更の背景には、2004年夏の普天間基地配備ヘリの墜落事故がある。米軍へリは民間地の沖縄国際大学構内で炎上し、危険極まりない普天間飛行場の早期返還を求める声が高まった。
 政府は事態を受け、米軍再編協議に合わせて普天間飛行場の移設先を再検討し、辺野古沖からシュワブ沿岸部へ変更することで昨年秋、米側と合意した。
 しかし、この合意だと、環境問題のハードルはさらに高くなる。これをどうクリアするのか不透明で、稲嶺知事、岸本市長ともに拒否を表明。知事は辺野古沖以外なら「県外移設」しかないという立場を強調し、当選した島袋氏も、現在の沿岸案には基本的に反対だ。
 確かに島袋氏は、今後の政府協議で「地元が納得できる修正案が提示されれば、市民の声を踏まえて検討したい」とのスタンスである。だが、政府がこれを「沿岸部容認のサイン」と受け止めたとしたら、民意を見誤るだろう。

国は民意見誤るな

 島袋氏に、政府との対立を鮮明にすることは得策ではなく、引き続き振興策を引き出したい―との判断があるにしても、政府が沿岸案を修正することなく押し通せると考えるのなら、混迷を深める可能性がある。
 地域の人間関係まで引き裂いてきた移設問題に、市民の間で嫌気が広がっているのも事実だ。それは過去最低の投票率にも表れている。北部振興の遅れや、長引く不況で停滞する経済の活性化を市民が真っ先に望むのは当然ともいえ、本来なら基地問題がなくても力を入れるべき課題である。
 政府は、札束で顔をはたくような手法ではなく、地元がなぜ沿岸案を拒否しているのか、どのような形なら納得してもらえるのか―を真剣に考え、解決策を探ってもらいたい。
 一方、市長となる島袋氏には、政府に翻弄(ほんろう)されることなく主張すべきところは主張し、市民の大多数の声が反映する政策を期待したい。国の安全保障にかかわる問題なら、なおさら市民の安全保障にかかわる。政府にせき立てられ、拙速にならないことが肝要である。
 新市長の責任は重い。基地も、振興策も重要なテーマであり、リーダーシップが求められる。北部の中核都市として「人の和で明るい街・名護市」を実現したい、というのが島袋氏の公約だ。
 ほかにも行財政改革の推進、観光拠点の整備、雇用の創出、産婦人科の再開と課題は少なくない。漂う閉塞(へいそく)感を打破し、歴史の一ページを開く気概で市政のかじを取ってもらいたい。


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