名護市長選挙・島袋氏当選。真の「民意」はこれからだ/沖縄タイムス

2006-01-23 20:55:24 | 沖縄
移設問題新たな局面に/米軍普天間飛行場の移設受け入れの是非を最大の争点とした名護市長選挙は、無所属新人で保守系の元名護市議会議長・島袋吉和氏(59)=自民、公明推薦=が大差で初当選した。

 島袋氏は、在日米軍再編をめぐり日米両政府が昨年十月、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部で合意した普天間飛行場移設について、政府が修正すれば「交渉のテーブルには着く」と明言していた。

 こう着状態の移設問題が修正次第では受け入れの可能性も出てきたことになり、島袋氏の当選で、普天間移設問題は第二ステージに入った。

 しかし、日米両政府は修正に応じる様子をこれまで見せていない。両政府が地元抜き、頭越しの協議で合意した沿岸案に島袋氏は強く反対している。政府は、地元同意の足掛かりを得たとはいえ、今後どう対応するのか注目される。

 また、稲嶺恵一知事は現行案(辺野古沖)以外であれば「県外移設」を主張しており、両政府をはじめ、島袋氏も県の姿勢とどう調整を図るのか課題となる。

 地元の負担軽減を実現するためには、米軍再編をめぐる中間報告の見直しが不可欠であり、普天間移設問題はさらに曲折が予想される。

 島袋氏は、選挙戦で基地問題のほか北部振興策の継続、発展を前面に出す戦術を展開。新たな大型公共工事などを求める地元経済界や暮らしに結びつく政策などで市民から幅広い支持を集めた。

 また、政府とのパイプを生かし、「信頼関係」に基づく北部振興策の継続を訴えた。

 今年は、名護市長選を皮切りに十一月の県知事選まで、五市六町七村の首長選挙が続く。今回の選挙結果が、米軍再編の行方とともに県内政局にも大きな影響を及ぼすのは間違いない。

 一方、敗れた保革相乗りの我喜屋宗弘氏(59)=社民、社大、共産、民主、自由連合推薦、革新系の大城敬人氏(65)の二人は、沿岸案を含め名護市への基地の移設拒否を明確に掲げながら、候補者を一本化できず、結果的に共倒れになった。


「反対派」2陣営に割れる


 我喜屋氏は、一部保守系市議や共産党、社民党などの間で「『名護への移設反対』で大同団結でき、保守票も取れる候補」として擁立されたが、保革相乗り作戦は奏功しなかった。

 普天間移設という極めて重い課題を抱えた選挙でありながら、移設反対派が二つの陣営に割れ、島袋氏を有利に導いたと言っていいのではないか。

 今回の選挙で、我喜屋、大城両陣営は基地問題で政府との「対決」姿勢を鮮明にした。

 有権者は、政府との「対決」よりも

「信頼関係」の強化で経済振興策の継続を求めた、とも言える。

 政府が修正すれば、普天間移設の受け入れ余地を残す島袋氏に対し、有権者は住民生活への影響の少ない場所への建設なら「背に腹は代えられない」との判断が働いたとも受け取れる。

 ただ、これは有権者の「民意」としての積極的な基地の受け入れではない。その意味で、島袋氏を推した有権者が必ずしも「基地受け入れ派」というわけではないことを政府は認識すべきだろう。


「基地疲れ」で投票率低下


 名護市では、普天間飛行場代替施設受け入れをめぐり、一九九七年の「市民投票」以来、九八年、二〇〇二年の市長選で、地域を二分して争いを繰り返してきた。

 一般市民と基地関連工事の受注で潤う地元の建設業界などには利害の対立もあり、今では基地問題を語ることを避けるような嫌気が広がっていることも見逃せない。

 今回の市長選の投票率は74・98%で、一九七〇年の初市長選以来、過去最低となった。市民の「基地疲れ」に加え、保革相乗りの分かりにくさが投票率の低下にもつながったのもまた確かだろう。

 島袋氏の当選で、政府は行き詰まった普天間移設問題の事態打開の突破口としたい考えだ。米国は、日本政府による地元説得の行方を引き続き見守る構えである。

 名護市民にとって、真の意味での「民意」が問われるのはこれからだ。


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